ある野球少年の為に…
2005/07/26 23:17 登録: えっちな名無しさん
昔、球場にオーロラビジョンが設置され始めたごろ、三十代後半のAという男が10歳のBという野球少年の為にプロ野球の始球式を投げた。
Bは1年前に少年野球の練習から自転車に乗って帰る途中、車と接触して右のスネを骨折したが、骨折は完治してあとはリハビリをすれば走ることもできるようになる状態だった。
しかし、Bは松葉杖がないと歩けないと思い込んで離そうとせず、リハビリの予定が進まない状態だった。
その事をBを担当する医師が以前、治療したAにBを勇気付けるように頼んだ。Aはバイクの事故で左のスネを骨折し、後遺症で足の指が2本動かないが、リハビリをして無理をしなければ普通に歩ける状態にまで回復した人物だった。
しかしBの思い込みはすごく、リハビリはできなかった。
そこでAはBに「○月×日の□△対★△を見てほしい」とプロ野球の試合を見るように言って帰って行った。
「見てほしい」と言った○月×日、普段は19時ごろからテレビ放送が始まるはずのプロ野球の中継放送がなぜかこの日だけは17時50分から始まることになっていた。
17時50分になりテレビを見ると、マウンドにはAが立っていて、この日の始球式を投げることになっていると放送で言った。
17時54分ごろ、力強く始球式のボールを投げ、ノーバウンドでキャッチャーに届いた。
その後、Aはマイクを持って話し始めた。
「少しの間、話をさせてください。私が今日、始球式をすることになったのはある野球少年を勇気付けるためです。その少年は事故でスネを骨折し、骨折部分は治ったのですが松葉杖を離しての歩行が怖くてリハビリがちゃんとできていません。その少年を励ますため、私はその少年に合いに行きましたがまだ怖くてリハビリができていません。今回はその少年に勇気と希望を与えるために始球式を投げました。私はバイクの事故の後遺症の為に足の指が2本動きません。今、カメラマンに私の左足を写してもらうのでオーロラビジョンを見てください」
この時、オーロラビジョンにAの一部分が変形して見ただけでも「指が動かないのでは」と思えるような足が写しだされこれはテレビ放送にも流れた。
Aの話は続き…
「B君、私は事故で足を怪我して足の指が2本動きません。しかし、私は始球式という形でプロ野球のマウンドに立ち、キャッチャーまでノーバウンドで投げました。B君は私より若く未来がある。私が事故を起こして足を怪我したのは25歳の時でリハビリをしてここでボールを投げました。B君はまだ10歳です。頑張ってリハビリをすれば私と同じように始球式を投げられるかもしれない。もっと頑張れば選手になれるかもしれない。勇気を出して松葉杖を置いて第一歩を踏み出し、リハビリを頑張ってください。そしていつかはこのマウンド上で会いましょう。私の言うことはこれて終わりです」と言って頭を下げた。
そして両方のブルペンの前に行き、大きい声で「協力してくれてありがとうございます」と言って頭を下げた。
Aがマウンドからおりる直前、観客の見ている前で両チームの監督から「B君へ渡してください」と1軍選手のサイン色紙を渡された。
AはBの実家に「B君に渡してください」というメモ用紙と一緒に色紙を郵送した。
この事はスポーツ新聞はもちろん一般の新聞にも取り上げられ、大きな反響だった。
Bはこの後、頑張ってリハビリをして6年後に高校野球で甲子園に出場し、高校を卒業後にプロ野球に入団した。
Aは始球式をした時には有名になったものの「これ以上はテレビやラジオに出たくない」と断わり、仕事をコツコツと続けていた。
Bはプロ野球に入団して2年目に、テレビ放送の再会番組で「10歳の時に勇気付けてくれたAさんを探している」と言い、「Bが私を探している」とAは知った。
Aはテレビには出なかったが、放送収録中に電話をつなげてもらってBに言った。「B君…もう会っている。私はB君が試合に出た日に球場に行って何度も見た。今は都合が悪くて行けないがB君は試合に出た時、観客の中に私がいると思えばいいんだよ」と…
Aはその時、若い時に無理をして足を酷使したために半年ほど前から歩行が困難になっていた。その他にもガンを発症していてテレビに出れる状態ではなかった。
Bが入団したプロ野球チームがリーグ優勝し、日本リーグで優勝して日本一になった3日後、Aは静かに息を引き取った。

(・∀・): 249 | (・A・): 68
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