不良の敗北と不良に立ち向かえなかった私の話
2012/02/14 21:01 登録: えっちな名無しさん
高校の時、同じ学年にSという怖い不良がいました。
ものすごく暴力的でケンカをするために習っていたボクシングをわざわざ止めたという噂もある・・・・180cm以上はある大柄で眉が薄く威圧的な外見の男子でした。
無断で持ち出したボールを使っての廊下バスケットで窓ガラスを割り、仲間が万引きした漫画を体操着などを入れるロッカーに平気で隠し、大人しいかったり少し変わった男子を執拗にからかって少しでも反抗されれば即暴力・・・周りが制止を振り切り気にいらない相手を追いかけてまで殴りつけるのを目撃したことすらありました。
階段の踊り場で同じく不良の仲間たちと共に平気でタバコ吸っているところに出くわしたときはあまりのベタさに引きもしましたが、面白みに欠けるほど普通でどちらかと言えば真面目に学校生活を送っていた私にとってはやはりSは本物の不良というか怖い人だという印象を受けました。
いや恐らく私だけではなく高校という狭い世界における価値観の中でSは彼の仲間以外の人にとって、最も怖い存在だったのでしょう。
しかし、2年生の時私はそんなSと同じクラスになってしまいました・・・
高校初めてのクラス替えで一年時から仲良くなった友達と一緒のクラスになれたことにホッとしていたところでSが教室に入ってきたのが見えたとき、私が感じた憂鬱は今でも忘れられない記憶としてハッキリ覚えています。
Sとクラスが一緒になって解ったのは意外にも彼が授業の妨げになるようなことをあまりしないということ、女子にはほとんど絡まないこと、そして男子には異常に絡むということでした。
Sはクラス内で少し浮いていたりおとなしかったりする男子を執拗なほどにからいます、暴力をふるうことはなかったのですが・・・例えば休み時間に席で本を読んでいる男子に向かって取り巻きと一緒になって小さくちぎった消しゴムをずっと投げつけたり、2〜3人で話している男子のところに行って無理やり変な事をやらせて馬鹿みたいにはしゃいでいました。
とてもくだらないし見ていて気分が悪くなるような陰湿な嫌がらせがいっぱい行われていました・・・でも誰も正面からそういったことを批判できる人はいませんでした。
みんなSと彼の取り巻きが怖かったんだと思います、嫌がらせを受けている男子はほとんどSに合わせるように笑っているか黙って我慢しているかだったし、被害をこうむらなかった男子や女子は見て見ぬふりでした・・・私も見て見ぬふりをしていました。
卑怯だと解っていながらもSに立ち向かう勇気を持つことはどうしてもできませんでした。
先生に話してもSの嫌がらせが止まらない事は想像がついたし、このままの状況がずっと続くんだろうと思っていました。
誰もSに立ち向かえない、立ち向かわない・・・・暴力を振るわれるのが怖いのか、自分も嫌がらせの対象にされるのが怖いのか・・・・少なくとも私は起きてもいない想像の恐怖に負けてSに立ち向かうことを放棄して目を逸らしてしまっていました。
しかし、結局Sをそこまで恐れていたのはもしかしたら私だけだったのかもしれません。
クラス替えが行われて2カ月後、だいぶ蒸し暑くなってきた6月の終わりごろ、男女に別れた体育の授業が終わり私を含めた女子達が男子にだいぶ遅れて教室に戻ってくると私のクラスの周りに妙に人が多く集まっていました。
体育の着替えの時間、仮の男子更衣室となっていた私のクラスでSとYくんという男子が殴り合いのケンカをしたらしいとのことでした。
YくんはSに最もしつこく嫌がらせを受けていた男子だ、いつも静かに本を読んでいる大柄の男子で、誰かと話しているところをあまり見たことがありません。
Sが目の前で声をかけても無視して、嫌がらせには全く反応せず本を読み続けるために他の男子たちより明らかに多く執拗に絡まれていました。
しかし、Sにされていたことを考えるとおかしいことではないとはいえ、おとなしいYくんがあのSに向かっていくなんて信じられませんでした・・・。
休み時間が終わり次の授業が始まりましたがSとYくん姿はありませんでした、特に説明等はありませんでしたが二人とも先生方に連れて行かれたようです。
また気が付きませんでしたが、Sの仲間の一人いなくなっていました。
休み時間になってとりあえず私は友達と一緒にクラスの男子に事情を聞いてみることにしました、クラス中、もしかしたら他のクラスでも話題になっていたと思います。
YくんはともかくSは有名でしたし悪い意味で目をひきましたから・・・
ケンカのきっかけはいつものようにSがYくんに絡んでいったことだそうです、着替えの邪魔をしたりYくんの脱いだ服を仲間内で投げ合ったり・・・・そのうち調子に乗ったSの仲間の一人がYくんの鞄の中を漁りだしたそうです。
これにはYくんも怒ったらしく鞄を漁っている男子の頭を思いっきり殴りつけたとのことでした、その光景を見てSはYくんに殴りかかっていったようです。
SはY君の顔殴りつけ、Yくんも殴り返して・・・殴り合いが始まったそうです、
YくんはSに顔を殴られて鼻血を出していたそうですが、怯むことなく殴り続けていつの間にか一方的にSを追い詰めているようなっていったようです。
YくんはSに並ぶほど大柄でしたし、相当怒りをため込んでいたのだと思います・・・たくさん喧嘩をしてきたであろうSを怯ませるほどに・・・
Yくんが遂に抵抗をやめてしゃがみ込んだSを蹴り続けている間、Sの仲間もY君を止めようとしたそうですが逆に殴りつけられて止めようにも止められなかったようです。
男子の誰かが先生を呼んでくるまでYくんはずっとずっと・・・・Sに暴力をふるい続けたそうです。
YくんもSもケンカをした日からしばらく学校に姿を見せることはありませんでした、二人とも停学になったそうです。
SはY君に相当酷くやられたそうで文字通り病院送りにされてしまったそうなのでどっちにしろ登校できなかったようですが・・・
YくんはSや彼の仲間に振るった暴力の度合いから退学の話すら出かかったらしいのですが、Sの素行は先生方にも知られていましたしそもそもは嫌がらせが原因ですので停学で済んだそうです。
二人とも2週間の有期停学ということで落ちついたそうですが・・・・いくら暴力をふるっていたとはいえSが今までY君や他の男子にしてきたことを考えると二人に対しての罰が同じというのは正直納得がいきません。
・・・私にはそんなことを言う資格がないのでしょうが・・・・
停学が明けてYくんはすぐに学校に来ていました、前と変わらず静かに本を読んでいてまるでなにごともなかったようです。
Sは停学が明けてもしばらく学校に来ることはありませんでしたが夏休みに入る少し前にから学校に来始めました。
Sは明らかに前よりおとなしくなっていました、Y君の事を見向きもしない・・・というより意識しないようにしているようでした。
私はSがYくんへの仕返しを考えていないかと心配だったのですが・・・登校し始めてから他の男子にすらほとんど絡むことはなくなっていました、仲間内集まってはいますが騒がしさは消えました。
Sやその仲間は結局虚勢を張っていただけなのかもしれません・・・あれだけSたちを恐れていたのに・・・Yくんとのケンカ以来Sのことがそれほど怖くなくなりました。
もし私がSを過剰に恐れずに勇気を出していれば、YくんはSを殴る必要がなかったのかもしれないのです・・・過ぎたことの後悔に意味はありませんが、やはり私は勇気を出すべきだったのだと今でもでも思います。
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