歯牙にもかけない

2012/02/14 21:32 登録: えっちな名無しさん

受験シーズンで思い出した少し前のお話

当時ラーメン屋でアルバイトをしていた。深夜のシフトに入っていたので、酔ったリーマンがよく来客した。たまに店員に絡んでくるおっさんがいるので、その相手をするのが結構苦痛だった。

ある日、明らかに酔っ払って声がでかいおっさん3人組が来店した。大声でしゃべるは下品な笑い声を上げるはで、相当周囲に迷惑をかけていた。他の客はどんどん帰っていき、おっさん3人組だけとなっていた。

さらには店員に絡み始めた。その日初めて深夜シフトに入った新人バイトのA君がそのターゲットとなっていた。俺は何かあったら助けようと注意しながら仕事をこなしていた。

その時のおっさん達とA君のやり取り:

おっさん1「ラーメン屋の店員なんて、両親泣いてるだろ?」

A君「そうなんですかね?よくわからないですけど」

お1「どうせちゃんと勉強しなかったんだろ?」

お2、3「ぶゎっはっはっはー!!!!」

A君「そう言われたらそうですね」

お1「俺の息子はな、J智受かったんだぞー! すげーだろ?おい」

A君「すごいですねー・・・って実は知らないのですが、J智って国立とかでしたっけ?」

お1、2、3「ぶひゃひゃひゃー!!!!」 「これがゆとりだよ!」

A君「すみません。無知なもんでして・・・」

そこからおっさん1のハイパーレクチャータイムが始まった。格付けが何やら、マーチとは何やら、日東駒専、大東亜帝国が何やらと延々と説明していた。

A君は嫌そう にしているかと思えば、意外に楽しそうに「そうなんですかー!?」「いや、全然知りませんでしたよ!」「これで恥かかないで済みそうです、ありがとうございます!」などと受け答えしていて、おっさんも満足そうだった。

なぜか店長はそのやりとりをニヤニヤしながら見ていた。その時は、A君のコミュスキルに満足していたんだろうなと思っていた。

おっさん達がドヤ顔をして、「アンタは素直そうだからな、身の程をわきまえたらそれなりに頑張れるんじゃないかな?ま、それなりだけどね」とA君にアドバイス?をしたところで、店長がA君に声をかけた。

店長「おーい、A君、勉強になったか?」

A君「そうですね。全然知らないことばかりで勉強になりました」

店長「だろ?A君 はN高校出身だから、私立大学のことなんか全然知らないんだろ?皆T大かK大狙いだから、そもそも滑り止めという観念すらないんだろ?」

A君「いやーそうなんですよね。知らないので恥かきましたよ」

店長「A君も受験はT大一本だったの?」

A君「ええ、そうです」

店長「すごいねー」

A君「いや、すごいというよりも何も考えていなかっただけですよ。周囲が皆そうだからそういう物だと思っていましたから」

・・・その会話を聞いているおっさん連中の顔が見ものだった。気まずそうな雰囲気が漂い、すぐに無言で会計を済ませていたのが印象的だった。一瞬で全員の酔いが醒めたようだった。

おっさんらが帰った後、店長は「さっきのすげーすっきりしたよな?」と終始上 機嫌だった。それに対し、A君は「いやー僕は初めてマーチの意味を知りましたよ。面白いお客さんでしたよね?」とニコニコしていた。

俺は初めて「歯牙にもかけない」という意味を本当の意味で理解できた。学歴厨にとって、相手にすらされないということは一番のダメージだったであろうと思う。

ただし、ダメージを受けたのはおっさん達だけではない。すっきり話や復讐話が好きで、萌えコピ読者が止められない俺にとっても、胸の奥に突き刺さる出来事だった。俺や店長は、A君という人のふんどしですっきりさせてもらったが、よく考えたらA君自身にとってはそれすらも歯牙にもかからないどうでも良い話であるからだ。

結局のところA君との人間性や思考レベルの違いをまざまざと見せつ けられただけだった。理解できたのは、ある意味自分もおっさんと同じだということだった。

他人の武勇伝ですっきりすることはいいことでしょう。でもそれがあたかも自分の武勇伝であるかのように錯覚すると、あなたもおっさんです。

出典:オリ
リンク:痔アナル

(・∀・): 218 | (・A・): 80

TOP