偉大な父親

2012/06/18 15:10 登録: えっちな名無しさん

俺と親友Aは家が隣同士で、産まれた日も病院も一緒だった。生まれながらのライバルというわけだが、そんな設定にノリやすい俺は、5歳にして厨二病院に罹患した。俺とAは勇者かヒーローかよくわからんが、とりあえず地球を救うような何かものすごい使命を帯びて産まれて来た宿命のライバル同士だと思い込んでいた。

Aとは保育園も一緒だった。一方的なライバル心を燃やす俺にとって、身体測定は一大イベントだった。身長と体重がどれだけ大きいかがステータスだった俺は極限まで背筋を張ったりして努力したが、結局在園中は全敗だった。

しかし、小学校に上がると転機が訪れた。身体測定の項目が増えたからだ。

やってきた運命の日、俺は対抗心を極限まで燃やし、測定時には異常なほどに興奮していた。もちろん、俺の中では究極にまで小宇宙を高めた聖闘士のつもりだったが、当時は男女一緒に身体測定をする時代だったので、変に興奮していた俺は、別の意味で担任を困惑させてしまったかもしれない。

そして運命の結果発表…

俺は歓喜した

身長と体重は負けたが、ついに一つだけAに勝ったのだった。

狂ったように喜び、サンバと盆踊りとタケノコ体操を乱れ打ちする俺を、狂喜乱舞という言葉以外では表現できなかっただろう。テンションMAXのまま家に帰り、父親に報告した。

俺「やった!やったでー!! ついにAに勝ったでー!!!」

父「どうしたんや?」

俺「あんなー、今日身体測定あったんやけどなー、身長と体重は勝たれへんかったけど、ついにいっこだけ勝ったんやでー!!!」

父「何で勝てたん?」

俺「座高!!!!!!」

一瞬微妙な顔をしたが、父親はすぐに満面の笑みを浮かべて俺を褒めちぎった。

という話を思い出したので、父の日で実家に電話した昨日、この話を父親にし、何でこんな壮大なボケにツッコミを入れなかったのか尋ねた。

すると、「お前は一生懸命になっている人間に対して馬鹿にできるのか?」と言われた。続いて「俺はな、一生懸命やってるアホな奴が好きなんや。そういう奴を馬鹿にして足を引っ張る奴よりもよほど価値があると思ってるんや」と言っていた。

自分からやりたいと言い出したことについては、トコトンまでやらせてくれた父親がいたからこそ今の自分があるんだと改めて理解し、思わず涙が出て言葉に詰まった。

そんな俺に対して、「でもな、今だから言うけど、俺は半世紀以上生きてきたけどあれ以上に面白いギャグはなかったで。千回以上は思い出し笑いしてるで。ぶへへへ」と照れ隠しで笑わせてきた。

やはりまだまだ父親にはかなわない。普通のおっさんだが、俺にとってはいつまでも偉大な父だ。

出典:オリジナル
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