悠と佑子とあっちゃん その1

2005/09/04 11:23 登録: えっちな名無しさん

「もしもし」
『あ……えっと』
「……もしもし?」
『あ、佑子さん、は?』
「は?」
『佑子さんは……ってか、キミ息子さん?』
「そう、ですけど」
 何だこいつ。
「あ!」
「あ、母さん」
「ちょっと待ってあっちゃん。電話、代わる」
「なんか変な電話だよ?」
「いいから。あ、じゃあ2階ので取るね。いいって言ったら、置いて」
 母さん? しばらくして。
「あっちゃん、いいよー」
「あいあい」
 がちゃん。……なんだろ?まあいいか、さみいさみい。
「失敗失敗、あはは」
 しばらくして、エプロンを外しながら母さんが降りてきた。
「……ねえあっちゃん。母さんちょっと出かけてくるからね」
「えー。おかゆあっためてくれるって言ってたじゃん」
「洗濯で忙しかったの。あっためるくらいできるっしょー?」
「つーか、どこ行くの」
「んー……買い物。なんか美味しいもの買ってくるから、ね?」
「あい」
「っていうか、あっちゃんもちゃんと寝てなさいよー。まさかサボりじゃないでしょうね?」
「ちがうってば。……んじゃ、おとなしくおかゆ食って寝ますわ」
 母さんはそれ聞いて、奥に引っ込んでガチャガチャと。その間におかゆあっためて。さすが母さん、うめー。
「んじゃ、行ってくるから。ガスちゃんと止めたー?」
「止めたー。おみやげよろしくー」
 食卓からちょっと振り向いて。あ?
 へえ。母さんの髪、あんなに長かったんだ。いつも結んでるからわかんなかった。


「さて……おおうっ」
 部屋に戻ろうとして立ち上がったら寒気。今年のカゼはたちが悪ィ。
「えっと。たしか……父ちゃんらの部屋に」
 薬箱は「危ないから」と夫婦の寝室に置いてある。そんなに子供じゃないんだけどねー。
 がちゃり。ここも寒っ!早く薬飲んで寝るぞ。薬箱は……。
「あ。いいモン見っけ」
 前に母さんが寒い時によく着てたちゃんちゃんこ。「ババくせえ」っていったら着なくなったけど。
「なんか重いな……でもあったけー」
 ますます病人なビジュアルになる俺。あとは薬。
「ないなー……もしかしてタンスの中かよ」
 部屋の一番でっかい衣装ダンスを開ける。んで、ソッコーで見つける。
「あったー。あー頭痛ェ……かぜ薬はどこだぁ?」
 あ。
 がちゃん。
 やっちまったー。薬箱落としちまったー。頭ふらついてるとロクな事ないね。
「片づけんと……おろ?」
 薬箱の下に、小さな本。「Diary」って書いてある。これくらいなら俺の学年でも読める。

 見るでしょ?見るよね。よって、見る。

12月28日
おたがいに「ゆう」だって。待てよ?相手は偽名って可能性もあるのかー。 じゃあ、本名名乗ったわたしの致命的ミス(笑)!?
1月1日
今年もパパとあっちゃんが健康でありますように……とかいいつつ、初詣に出かける前のTELにはびびった!
番号伝えたけどこんな時間にかけてくるなよっ!おばさん怒っちゃうぞ!あせっちゃうぞ!
でも「おめでとー。俺が初めて?でしょでしょ?」の言葉には、うーむ……アリだな。
1月5日
会えないって。なんどもいわせるな
1月10日
ヘンなことに使ってるらしい。写真を。写真でもきれい!とかいわれると困る。まー声は自信があるんだけどね。
1月20日
彼女でもできたかっ!?おばさんをヤキモキさせやがって!もー知らん!電話来ても無視!
1月22日
携帯買おうかな。でもあっちゃんにダメっていってるからムリか。
1月23日
そういう言葉は彼女にいうもんだ。ダンナも子供もいる女にいっちゃいけないよー!焦る焦る。
2月5日
愛してる と キスしたい って どっちが効く?今のわたし には
2月10日
会ってきます。説教してきます。
2月11日
・・・・・・・・・げ。生徒手帳に「悠」。あっちゃんと同じ歳。こりゃー、ちゃんと教育しちゃらなあかん!
2月12日
された。急に来た。それもファミレスで。 ドキドキしてはいけない。妻として母として。 でも なにもいえなかった どうしてだろー
2月15日
4日TELなし やばいやばいやばいやばいやばい!
2月16日
プリクラ内でされる。明日も、とかいわれる。きっと出かけてしまうわたし。 だれが とめる?

読まなきゃよかった。頭がガンガンしてきた。日記を直して薬箱を直してちゃんちゃんこも脱いだ。寝た。寝られなかったよ。


(・∀・): 32 | (・A・): 102

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