世界一優しいおばあちゃん

2012/08/20 19:07 登録: 痛(。・_・。)風

私は小さい頃からおばあちゃん子だった。

私の家は団地で、ばあちゃんは私の隣の部屋に住んでた。

保育園や小学校から帰ったら真っ先にばぁちゃんちに行って、必ず私の好きなお吸い物やココアを作ってくれて、保育園であった事や学校であった話をいつもニコニコして嬉しそうに聞いてた。

ばぁちゃんは私が親に怒られた時や風邪を引いた時は、いつも美味しい物を作ってくれた。

私が学校で友達と喧嘩したと聞くと、「奈央子ちゃんイジメられとると?」と言って泣いてた。
「えっ?違うよ!ちょっと言い合いしただけよ(笑)」と言うと
「良かった..良かった..」って言ってまた泣いて私を抱きしめてくれました。
昔の私は親よりばぁちゃんと一緒に居た時間の方が多かったと思う。
中学校になって私は友達とばっかり遊ぶ様になった。
その頃はばぁちゃんは体が弱くなっていたので、隣の部屋で叔母さんと二人で暮らしてた。

私は徐々にばぁちゃんちに行く回数が減った。
毎日だったのが週に1、2回になった。
叔母さんは仕事をしていたので、ばぁちゃんは毎日朝から夕方までひとりぼっちで椅子に座ってテレビ見てた。

ばぁちゃんは毎日毎日、「 昨日はこんやったけど今日は8時から奈央子ちゃんの好きなテレビあるけん、もうすぐ来るかね? 」って行って私の好きな番組にチャンネル合わせて
「 今日もこんね.. 」ってずっと待ってたよって叔母さんに聞いた。

ばぁちゃん、ごめんね。

私が高校に入ったらますます顔合わせる回数が減った。
気がむいた時にフラ〜ッとばぁちゃんちに行ってて、挨拶程度しかしなかった。

でもばぁちゃんはそれでも「久しぶりやね!」ってすごい喜んで、一生懸命いろいろ話しかけてきてた。
でも耳が悪くて声が小さいばぁちゃんと会話するのがかったるくて、私は目も合わさずに「うん」と軽く返事してテレビ見て帰るって感じだった。

帰る時ばぁちゃんはいつも「奈央子ちゃん、明日も来てくれる??」って聞いてきてた。

私は「んー分からん。」って行って帰ってた。

その一年後、ばぁちゃんがあんまり起きれなくなった。

いつも椅子に座ってテレビ見てたのに、その頃からベッドに寝てる事が多くなった。

そしてあんまり喋る事が出来なくなって、ご飯もあんまり食べなくなった。

そしてばぁちゃんは入院した。
私が学校帰りにお見舞いに行くと、あんまり喋れないけどニコ〜ってなって、私が帰る時は寂しそうに「もう帰ると??」って小さい声で聞いてきてた。

私が「明日も来るよ」って言ったらすごい嬉しそうにして寝たきりのまま見送ってくれてた。

3ヶ月くらい入退院繰り返して、ばぁちゃんはご飯も食べられなくなった。

ばぁちゃんは胃に穴を開けてチューブ通して、そっから栄養入れる手術を受けた。

その手術から1ヶ月後、ばぁちゃんが死んだ。

死ぬ前の日、私は学校に居た。授業中に先生に呼ばれて、おばあちゃん危篤だから早く帰る様に言われた。

私は急いで病院に行った。

家族みんな居た。

お医者さんが、
「今やっと持ち直しました。でも今夜が危ない…峠になると思います」
みたいな事言ってた気がする。

みんな泣きそうにばぁちゃん見てた。

私はばぁちゃんの手を握って「ばぁちゃん、奈央子きたよ。聞こえとる?」
って言った。
その時意識なかったばぁちゃんが目覚まして「奈央子ちゃん...」って小さい声で言った。みんなびっくりしてばぁちゃんの名前呼んでた。
私は「奈央子ちゃんよ!ばぁちゃん!はよ元気なってよ!」
って言った。

そしたらばぁちゃんが私の手を握り返してニコッて笑った。

私達はその時、少しホッとした。大丈夫やろうな、と思ってた。

そしたら叔母さんが
「今夜はアタシついとるけん、アンタらご飯も食べてないやろ?食べてき。なんかあったらすぐ電話するけん!」って言った。

私達はじゃあ食事だけでもとろうかってなって、一旦帰る事にした。

ばぁちゃんに「またね!」って言って手を握った。

そしたらいつもの様に
「明日も来る...?」って言った。
私達は「心配せんで!あとでまた来るよ!」って言ったらばぁちゃんはニコッて笑って見送ってくれた。

その何時間後かに叔母さんから電話があった。

私達は急いで病院に行った。明け方だった。

看護士さんやお医者さんがばぁちゃんの周りにいっぱいいた。

間に合わなかった。

ばぁちゃんは眠った様に亡くなってた。ばぁちゃんの口の周りには血がついてた。

吐血して窒息しそうになってたところで吸引されて、苦しそうに亡くなったって叔母さんが泣きながら言ってた。

叔母さんも付き添いの途中に少し寝てしまって、一人で逝かせてしまった…って後悔してた。

ばぁちゃんの手に触れた。まだ少しあったかい。

ばぁちゃんの手は昔よりシワが増えてガリガリだった。
すごく小さかった。

ああ、そっか私が大きくなったんだ。

ばぁちゃん、小さい時から私はいつもばぁちゃんと居たね。
いつもニコニコして頭撫でてくれて、七五三や入学式は私の親より喜んで 可愛い、可愛いって言ってくれたね。

ばぁちゃんの遺品からは私が小さい時にあげた人形や絵が大事に保管されて出てきた。

懐かしい…「150歳まで生きてね!!!」って書いて昔プレゼントした冠、まだあったんやね。もうボロボロやん。

こんな下手な絵、なんで取ってくれとるん…


私は今までで一番泣いた。泣いて泣いて泣きまくった。

もうお吸い物飲めない。

ばぁちゃんと話出来ない。
ばぁちゃんの匂いかげない。

ばぁちゃんごめんね。もっともっと一緒にいたかったです。

ばぁちゃんが居る事が当たり前だと思ってた。当たり前すぎて存在の大きさに気づいていませんでした。

あなたは、誰よりも優しい人でした。私のおばあちゃんは世界で一番優しい人って今でも思ってます。きっと皆そう思ってると思うよ。


ばぁちゃん、今年、奈央子結婚するよ!ばぁちゃんも絶対気に入るすごくすごく優しい人です!

必ず幸せになるけん!
子供産まれたらすぐに報告するね!
それで、ばぁちゃんみたいに強くて優しい子に育てるけん!

兄ちゃんも結婚して、今は可愛い奥さんに、子供も二人おるとよ!すごいやろ!

他にも、ばぁちゃんに話したい事が、いっぱい、いっぱいあるよ!

もう上で見てくれよるかいな?

ばぁちゃんなら、絶対見守ってくれてると信じてます。

ばぁちゃん、私はばぁちゃんが大好きで大好きで大好きです。

声も、笑った顔も、これから先忘れる事はありません。

ありがとう、ばぁちゃん。
ありがとう。
大好き


奈央子より

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