屈服の円舞曲(序章)
2012/09/07 16:35 登録: えっちな名無しさん
ビッシャンッ!!
骨まで響くような乾いた音が辺りに響き渡った。
村松徳之は平手打ちされた頬を抑えもせずに、口元を怪しく歪めた。
「きっつい性格してんじゃん、いいねぇ、なかなか面白いよ。」
そんな村松を凛とした表情で睨みつけている女は、
15歳の村松と比べれば、ずっと上の年齢に見える。
しかし、その容姿は清純派女優のように繊細で整った顔立ちをしていた。
活発そうに艶やかな黒髪はアップにまとめられ、しなやかな白い首筋に目を奪われ、
白いコットンのワンピースに細身のジーンズというラフな服装でありながらも
そのプロポーションの見事さは際立っていた。
「村松君!」
思い切り頬を打って痺れた手を摩りながら、その女、宇都宮若葉は言葉を繋いだ。
「もう、バカなことはやめなさい!」
「弱い者を虐めて何が楽しいの?。 空しいだけだということは、
村松君程の子だったら、もうとっくに気づいてるんじゃないの?」
そう諭す若葉は、大きな瞳に力を込めて、目の前の少年の瞳をまっすぐに覗き込んだ。
地元の名士の息子で成績もずば抜けて優秀でありながら、裏では不良達のボス的存在で
学校では教師さえも、ただ眉をひそめるだけで逆らわない。
そんな村松にとっては、若葉の真摯な眼差しも、全く怯むものではなかった。
「虐められるような弱っちい息子に育てた母親にも、責任あるんじゃね?」
村松は、ニヤついた顔で言う。
「いいえ!」
若葉は、間髪入れずに答えた。
「それは絶対に違う。虐める側の詭弁よ。健太は虐めなんかに負ける弱い子じゃないわ!でも」
若葉の頬は、怒りによって上気していた。
「私は健太の母親として、見過ごすわけにはいかないの。君が卑劣な虐めをやめない限り、
どんなことをしても戦うわ」
村松は、真顔になって、しばらく若葉の顔を見つめていた。
やがて、その視線は、若葉の足元に落ちて行き、スラリとした脚から、くびれた腰、
そしてワンピースの胸元を膨らませる豊かな胸へと移っていった。
その目の奥が怪しく光ったことに、若葉は気付かない。
「なんとか言いなさい!恥知らずな虐めをやめると約束しなさい!」
「威勢がいいな。その高慢な態度、いつまでできるかな?」
そう言うと、村松はくるりと背を向けた。
「ちょっと!待ちなさい!」
若葉は、勝手に立ち去ろうとする村松の背中に向かって叫んだ。
「もう虐めはやめるって約束して!」
村松は無言で若葉のほうへゆっくり振り返った。
「普通なら、俺が殴られっぱなしで見逃してやるなんてこと、有り得ないぜ」
低い脅すような口調だった。
それでも、若葉は怯まず、毅然とした態度のまま、村松に言い放った。
「暴力に訴えるならやりなさい!私は必ず健太を守るから!」
村松は、また数秒、若葉の顔を見つめた。
「ほんと信じられないな。うちのババアとは、あらゆる面で大違い。」
それだけ言うと、くるりと背を向け、その場から歩み去っていった。
(つづく)
出典:本気でやる
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