あるニートの輝いていた時代
2012/09/28 15:16 登録: えっちな名無しさん
これは僕が小学校5年生の時の話だ。
僕は地域の子供会で野球チームに参加していた。
子供会の野球チームが16チームが集まるブロック大会がある。
ブロック大会で2位までに勝ち抜くと、表彰され、ブロック大会より上の中央大会に出場できる。
中央大会に出たなんて小学校のクラスで自慢すればヒーローになれる。女の子にもモテる。
そんな子供達のヒエラルキーが形成されていた。
しかし、僕たちのチームは万年一回戦負け、出ればいつもボコボコにコールドにされて負ける弱小チームだった。
負けても、ヘラヘラしながらジュースを飲んで帰っていく、ダメなチームだった。
しかし、僕が五年生になり監督が変わり、チームを鍛え上げ、チームの意識が変わり、僕たちのチームは強くなっていた。
僕たちのチームは
6年生が5人、5年生が10人、4年生が8人、3年生以下が5人のチームだった。
6年生は全員レギュラー、5年生から4人がレギュラーに選出される。
僕は1年生からこのチームに所属しており、経験からも5年生ながらレギュラーだった。
打順は七番、ポジションはサードを守っていた。
季節は春だった、僕たちは夏の中央大会予選にむけて、練習に励んでいた。
練習や練習の時間は気合いが入っており、苦しくても楽しかった。
苦しい練習のあと、チームのみんなで駄菓子屋に行きジュースや菓子を食べるのが最高の楽しみだったからだ。
こんな練習の日々が積み重なり、梅雨も開け季節は夏に、そして、僕たちは中央大会の予選を迎えた。
264 自分:名無しさん@引く手あまた[] 投稿日:2012/09/19(水) 15:33:10.05 ID:5pvZs/0XO [3/17]
16チームから2チームが中央大会に行ける。
一回勝てばベスト8、
二回勝てばベスト4、
三回勝てば中央大会の切符がつかめる。
しかし、僕のブロック、いや野球とは一回勝つのが非常に難しい。
相手チームも必死に鍛練を重ねて強いチームを作ってくる。
勝つ厳しさ、あと少し及ばない悔しさ、四年間、たくさんの先輩達の涙を見てきて知っている。
僕は心がしまっていた。
一回戦の相手は格下と言われる、タケノコ子供会だった。
タケノコ子供会との試合が始まった。
僕達、あおぞら子供会の先攻で始まったが、お互い6回まで点が入らず、タケノコ子供会は食らいついてきた。
最終回の7回まできた、先頭打者の大島先輩は相手ピッチャーのコントロールが定まらないのを見抜き、四球を選んだ、
二番の金子先輩は送りバント、三番の小野寺先輩は特大ながらライトフライに倒れ、四番の柿沼先輩に回った。
柿沼先輩は僕の憧れの人だった、僕が幼稚園から小学生になって間もない頃からずっとチームで苦楽を共にしてきた。
僕は祈った「柿沼先輩どうか打って下さい。。」
柿沼先輩は2ストライクまでおいこまれた。しかし、追い込まれた3球目、高めに外そうとした球を柿沼先輩は見逃さずにフルスイング、
打球は遥かレフト後方に飛ぶ特大のホームランだった。
僕は飛び上がって喜んだ。やっぱり柿沼さんはカッコイイや!
結局そのまま、2ランホームランの二点を守り抜き、僕たちは2回戦に駒を進めた。
2回戦はまた来週、今日はチームみんなで銭湯にいって汗をながした。大盛り上がりだった。
266 自分:名無しさん@引く手あまた[] 投稿日:2012/09/19(水) 16:51:52.90 ID:T2DxeonV0
書籍化希望
2回戦の日が来た。相手は南地区子供会、主砲に小学生離れした体格を誇る左の大砲・近藤を雄する手怖いチームだ。
しかし、出塁率の高いリーディングヒッターの大島先輩、2大大砲の小野寺・柿沼先輩、抜群のコントロールの投手・佐藤先輩がいる僕達あおぞら子供会が総合力では上だった。
そして中央大会への熱い気持ちを持った仕事人・僕もいる。
南地区子供会の先攻で試合が始まった。4回まで両チーム無得点のまま、試合が流れた。
そして5回の表、ツーアウト・ランナー2塁で打席には四番・近藤が入った。外野は大きく下がった。
怖かった、打席に入るだけで圧倒的な威圧感、近藤の打席だけは待機中の他のチームの選手も試合を見に来る。
それくらい有名な実力者だった。
僕はサードを守っていたが、打球が飛んでこないで欲しいとドキドキする心臓を必死でなだめていた。
そして、ピッチャー・佐藤先輩は近藤との勝負を避けず、振りかぶって投げた、近藤は迷わずフルスイングした。
カーン!!!
凄まじい音と共に、僕に向かって凄まじい速さのライナーが飛んできた。
「ギャー!死ぬー!!」
僕は反射的にグラブで顔を守るように前に出し、顔をそむけに目はつぶってしまった。
「あっー!もうだめだぁー!僕は死んだぁ!」
スパーン!!
何が起こったか分からなかった、気を失ってしまったのか
アーウ!!
審判から声が聞こえてハッキリわかった、僕は捕ったのだ。
顔を守るようにグラブを出したらマグレで打球が収まったらしい。
スリーアウトチェンジ
ベンチに引き返す時、僕は観客の拍手喝采とチームメートから賞賛を受けた。
結局、あおぞら子供会は大ピンチをしのぐことができた。
試合は0対0のまま延長戦に突入した、そして8回の裏、僕らにチャンスが訪れた。
ワンナウトランナーなし、打席には大島先輩が入った、大島先輩はヒットを打ち、一塁へ。
これでワンナウト一塁。
相手ピッチャーのモーションを盗み、二塁に盗塁した。ここでキャッチャーが悪送球!
大島さんは三塁を陥れ、一気にチャンスが拡大した。
バッターはバントの名手・金子先輩。バントの構えを見せず打席に入った。
そして一球目!スクイズを警戒した相手ピッチャーは大きく高めに外そうとしたが、キャッチャーの頭上を越えてバックネットへ、
大島さんは一気にホームを駆け抜け、サヨナラ!!
大島先輩は皆に頭を叩かれ祝福を受けた。僕も思い切り喜んだ!
試合後、整列の時に相手の近藤さんに話かけられた
「まったく、お前にやられたよ、チュウタイ行けよ!!(中央大会)」
「ハイ!ありがとうございます!」
こうして僕らはいよいよ準決勝に進んだ。
中央大会まであと一勝!
今日の僕達のねばりなら、来週も勝てる!
自信と希望に満ち溢れていた。
271 自分:名無しさん@引く手あまた[] 投稿日:2012/09/19(水) 20:54:18.46 ID:5pvZs/0XO [8/17]
コピペじゃないよ。実話。
翌日、僕は学校に行ってみると。
僕が近藤さんの弾丸ライナーをキャッチし、あおぞら子供会のピンチを救った話は有名になっていた。
クラスの友達達から
「すげーな小野!(僕の名字)、お前、近藤さんの弾丸ライナー捕ったんだって?」と聞かれ
僕はすっかり有頂天になっていた。
「まあね、素早く反応し、グローブを出したんだ。僕ならいつものプレーだね!」
「マジですげーな、あと一回で中央大会だろ?いいなぁ」
そして、給食の時間、
好物のカレー、僕のは大盛にしてもらえたり、
クラスの女の子にも親切にされたり。僕はVIP待遇を受け続けた。
「小野!チュウタイいけよ!」みんなの期待を一心にうけていたのだった。
そして、平日は過ぎ、次の日曜日、いよいよ準決勝の日がやってきた。
準決勝の相手は、北丘町子供会、反対側のブロックと比べ準決勝で当たるには、一番やりやすい相手だった。
目立ったスター選手もおらず、最近の対戦成績でも僕達が上回っていた。
先攻は僕達のチームだった。
初回に二点、三回に二点、四回には三点を取った。5回に二点を失ったものの。
小野寺さんや柿沼さん、佐藤さんのホームランなどで猛打を叩き込み、
七回表の攻撃が終わり、7対2と試合の流れを完全に掴んでいた。
僕は勝利を確信した。そして終止笑顔だった。
「僕達の夢・中央大会まであとアウト3つか!」
嬉しくて嬉しくて、期待一杯に七回裏の最終回の守備についた。
そして、北丘町の攻撃が始まった。
一人目の打者・島野の打球は痛烈で手前でバウンドし僕は弾いてしまった。ノーアウトランナー1塁
「まあ五点差だし」
僕は笑いながらゴメンのポーズで佐藤さんに球を渡した。
たくさん見に来ている、多くの野球仲間やクラスの友達にも笑ってテヘペロ顔をしていた。
二人目の打者・森田はフォアボールで出塁した。
ノーアウト一塁二塁
三人目の打者・岡島は今日は全く打たず、打撃は普段もあまり大したことはない。
ショートの守備が非常に優れているためレギュラーな五年生だった。
「よし俺のとこ飛んできたら、トリプルとって終わりにしてやろう」
そのくらいに考えていた。
岡島は佐藤さんの速球に合わせようとバットを短く持ち、プレッシャーの中、一球一球、佐藤さんの球を見極めたり、ファールで粘っていた。
そして岡島に投じた8球目、僕守るサードにに緩いゴロが飛んできた。
僕は取り、三塁をふみにいった。しかし、二塁は素早くスタートを切っており間に合わず、
ノーアウト満塁にしてしまった。フィルダースチョイスがついてしまい、この回2失策目となった。
僕の顔からは笑顔は消えた。
しかし、まだまだ五点差だし、大丈夫だと思っていた。
そして四人目のバッターにピッチャーの代打・野村が入った。
野村は僕の方を見ながらニヤニヤしている、そして、僕を狙い済ましたかのように佐藤さんの内角の球を三塁線に向かって引っ張った。
カキーン!
打球音と共に、僕の手前で大きくイレギュラーし、僕は後ろにそらしてしまった。この間に二人が帰り、7ー4で三点差。
尚もノーアウト二塁・三塁のピンチとなった。
敵陣からヤジか飛んできた、
「サードのヤツ、穴だぞ!狙え!狙え!」
そして、味方で同学年のレギュラー・安田にも
「お前、今度こそエラーするなよ!」
といわれ、緊張とプレッシャーで徐々に頭が真っ白になっていた。
小野寺さんと、柿沼さんは
「ドンマイ、ドンマイ」
と冷静に励ましてくれたが
この回3失策という自分の責任、安田からの叱責、敵のヤジ、小野寺さん柿沼さんは最後の大会、50人近い人が見ているという重圧がここにきて一気にのしかかった。
恐怖と不安で足がガチガチに震えていた。
「神様どうか僕を助けて下さい、なにごともなく、中大に行かせて下さい」
三塁を守りながら、足が震えたまま祈っていた。
次の打者・溝口も僕を狙いすまして三塁に叩きつけるようなゴロを転がしてきた、
極度のプレッシャーで正常な精神状態ではない、身体が金縛りにあってしまっている僕は取れるはずもない。
ランナー二人が帰り、ノーアウトランナー1塁で7対6となった
応援「小野、テメーなにやってるんだよ」
応援「おい!小野、しっかりしろよ!なぁ」
安田「死ねよ!ばーか!」
敵「サードのヤツ!穴だぜ穴!」
五人にも六人にも十人にも聞こえる、攻撃的なヤジ
僕は祈り続けた。。
「神様どうか助けてください」
しかし、神様は残酷だった。
僕を容赦なく地獄へたたき落とした。
次の打者もサードの僕をめがけて打ち込んで来た。
そして、次の打者も、そして次の打者も。
試合は終わっていた。。
誰からの声も耳に入らないまま、僕は精神的なショックで気を失いグラウンドに倒れ、父母の車で病院に運ばれた。
打球でケガ・病気は一切ない、、重度のプレッシャーとショックと恐怖などで精神が完全に破壊された状態として、病院に運ばれた。
僕の五年生の夏は終わった。
僕は二日間入院した。
そして、一日家で休み、夏休みまであと一週間である学校へと登校した。
僕を待ち受けていた現実は散々たるものだった。
下駄箱には呪いの手紙と、うわばき内部には8個の画ビョウがセロハンテープでしっかりととめてあった。
僕は、画ビョウをはがし、教室に入ると安田と安田の友人8人が僕を待ち受けていた。
「おっ!トンネル野郎の登校だ」
「エラーの天才・小野ちゃん」
「何がいつものプレーなら楽勝だよ(笑)鼻で笑うぜ」
先生がくるまで、9人の男子に殴る蹴るの暴行を受けた。
女子からの視線もバイ菌をみるかのような冷たいものだった。
こんな日々が続いた。
僕は家に帰るとアザだらけの身体を母親に見られては、
「あんた何があったの?」
と聞かれ続けた、心配した母は学校に連絡し、教師はクラスにイジメがないかを児童を問いただしたが、何も変化はなかった。
来る日も来る日もいじめられ、季節は冬に近づいていた。
僕は野球のグローブとバットを押し入れにしまってから4ヶ月が経過していた。
僕は人望も友達も失い、家に帰ってきても誰も遊んでくれなかった
そんなとき、引退した柿沼さんと小野寺さんと自分が写る写真を見て胸が締め付けられた。
「おれのせいで6年頑張った柿沼さん、小野寺さんを中央大会にいかせてあげられなくて。。」
悔しくて涙が出た。
泣いて泣いて泣いた、
泣いて泣いて泣いた後はもう涙が出なくなる事を知った。
そして、僕は自転車に乗り柿沼さんと小野寺さんのお宅に向かっていた。
卒業してしまう前にどうしても謝りたかったのだ。
僕「柿沼さん、申し訳ありませんでした。僕の連続エラーで中央大会いけなくて。」
柿沼さん「はっ?!お前まだそんな事、気にしてたのかよ。きにすんなよ☆
それより、お前、まだ、おおぞら続けてるのか?」
僕「いえ、もう行ってません。仲間にも、会わせる顔ないし」
柿沼さん「原因は安田だろ??、まあ一つあるなら、来月あいつ親の都合で転校らしいがな」
僕「ほんとですか?」
柿沼さん「ああ」
そして、安田は転校していった。引っ越す前日まで僕を殴り続けていたが。
しかし、僕は安田が去っても、おおぞらには戻らなかった。
柿沼さんに最後までやれと言われても。
そして、冬が過ぎ、季節は春を迎えていた。
柿沼さんは中学生に、僕は6年になった。
新年度になり、3日のことだった。あおぞら子供会の監督を務めてくれていた近所のおじさんが亡くなったのだ。
僕をレギュラーとして買ってくれており、エラーして負けても責めず、僕が倒れて病院に運ばれた後もすぐに駆けつけてくれた恩師
僕は写真を見て、気が狂ったように泣いた。
泣いて泣いて泣いた。涙が枯れるまで泣いた。
そして数週間後、正気にもどった、僕に迷いはなかった。
僕はまた、あおぞら子供会に戻った。
故・監督、柿沼さん達が果たせなかった中央大会に行く。
一心不乱にバットを振り続け、守備を固めた、嫌われながらも、絶対に中央大会に行くのだ。
チームの仲間は安田がいなくなってからは普通に話してくれるようになった。
大一番で連続エラーをし中央大会の夢を壊したメンバー、という、冷たい視線や言葉もいまだに投げつけられるが
僕にはそんなことは関係ない、「絶対に中央大会にいく。」
強い気持ちの塊が僕を燃え続けさせてくれた。
僕はバットを振り続け、守備の練習を繰り返し、筋肉も鍛えた。同時に成長期も訪れ、体格も増した。
日に日に強くなり、練習試合で長打を重ねる僕に文句を言うものは一人もいなかった。
そして、納得のいく練習をこなし、最後の中央大会予選の日を迎えた。
一回戦の相手は去年、4強で破れた北丘子供会だった。
僕を見るなり、去年の僕の失態を嘲笑う去年メンバーが数人いたが気にせず打席に集中した。
初回、チャンスで回ってきた、去年、僕側に打球が行くよう狙い撃ちしてきた野村がエースとして投げていた。
僕にメラメラと火がついた。
もう僕は柿沼さんや小野寺さんに甘える甘えんぼうではない。こんどはチームの主砲として牽引する。去年の借りを返す!
そして、野村がカウント稼ぎに投げてきたストレートを見逃さずに振り抜いた。
スリーランホームランとなった。
結局、大差で2回戦に進んだ。
2回戦の相手は、ひまわり子供会だった。
左の本格派・西崎を擁する守備の堅いチームだ。
試合は、お互い6回まで点が入らず、投手戦となった。7回の表、ひまわりの攻撃、バッターには西崎が入った。
僕のチームのエース・前田はきわどいコースに投げ分けていた。西崎は食らいつこうと何球も何球もファールで粘った。
結局、12球目にショートゴロに倒れてくれ安心した。
そして7回裏、次の打席は我等がドカベンことホームランバッターの熱田からだった。
前田は熱田と僕を呼び、こう話した。
「初球から狙っていけ!!2球目も必ず振れ!!3球目もびびらず必ず振れ!」
なんでか分からなかったが、勉強も秀才の前田が言うからには間違いないと熱田と僕は頷いた。
熱田が打席に入り、一球目
大きな空振りだった。
そして二球目、これも大きな空振りだった。熱田はベンチにいる前田を見つめ、
「なんでだよー、やはり、西崎の球は当たらないじゃないか〜」という顔をしている。
しかし前田は、「いいから!次も振れ!」の強気のサインを身体全体を使いオーバーリアクションで出した。
「あーあ、しょうがないなー、、」という顔を疑わしい顔をしながらも、熱田は小さく頷いた。
そして3球目、熱田はフルスイングした
カキーン!!!
音とともに、白球は一直線に飛んだ。外野が一歩も動けないほど特大のホームランだった。
サヨナラソロで試合に勝った!僕とチームメートは熱田の頭をたたき、祝福した!
大歓声がわいていた。
試合後、熱田と一緒に前田に、なぜ「全部振れ」なのかを聞いた。
前田は「西崎の打席で疲れているのがわかった、だから早いカウントからストライクを投げてくると思ったからさ」と答えた。クレバーである。
前田は本当に頭がいい。
何をやってもスマートだと思った。
喜びをかみしめアイスを食べながらみんなで帰った。
いよいよ来週、運命の準決勝だ。
準決勝が始まった。
相手はウイング子供会だった。
会場では50人近い人が見ていた。僕は緊張して去年の衝撃が身体を貫いていたが、気持ちは強く持てていた
試合は前田と、相手ピッチャーの中川の投げ合いとなった。
中央大会のキップがかかった試合で、お互い打撃が堅く、ヒットがなかなか出ない。
出ても打線がつながらなかったからだ。
そして最終回、七回の裏は四番の熱田、五番の僕、六番の森川に回る。チャンスだった。
熱田が打席に入ると、
ホームラン!コールが湧いた。
僕も心から祈った
「熱田、頼む!」と
しかし、三振に倒れた。
僕に打順が回ってきた。
自信がなかった、「どうせゴロか三振かなと、」
そして去年の準決勝の試合で僕がボロボロにされるのを見ていたウイングの控えの連中はそんな僕を見て
「うたねー!うたねー!外野前進でいいよ〜」
とヤジを飛ばしてきた。外野も前進してきた。
それを見た僕の中にビリビリと電撃が走った。
悔しかった、、憎らしかった。。しかし、それは相手ではなく自分にだった。
打席に入る前から自信もなく、熱田の長打や一発を期待するばかり。
去年も柿沼さん、小野寺さんの腰巾着で、誰かが引っ張ってくれるのを期待するばかり。
守れば「打球とんで来ないでください」。。
去年から僕は変わってないじゃないか、成長していないじゃないか!
そんな自分に腹がたった。
僕は渾身の力で振り抜いた。
カキーン!
熱田の後、僕が打席に入り、前進気味の外野の頭上を越えた。
僕は顔をグチャグチャにして必死にベースを回った。
相手レフトの頭上を抜けた球を必死に追いかける。
「回れ!回れ!回れ!回れ!小野!」
「いけー!三塁まで!」
監督や仲間の声が聞こえた。
「止まれ!止まれ!」
三塁で止まれと言う指示が飛んできたが、僕は突っ走った
「バカヤロー!戻れ戻れ!アウトになるぞ!」
僕は命令を無視して突っ込んだ!僕が三塁を回ったとき、レフトから中継された球は内野に到達していた、しかし
僕は慣れないスライディングでホームベースに滑り込んだ!!相手キャッチャーの高嶋のミットも僕の身体をタッチしたのがわかった。
大歓声だった場内は一気に静まり返り、場内全員の視線は審判に注がれた。
セ、セーフ!!セーフ!!
ゲームセット!!
その瞬間、僕はこの世のものとは思えない最高の嬉しさが身体を突き抜けた!
やったぁぁー!やったぁー!
チームメート監督達が一気に駆けつけ僕を取り囲み、頭を叩いた!
僕はやったのだ!
サヨナラランニングホームランで中央大会を決めた。
僕はチームのスーパーヒーローだった
いつも、ヒーローの熱田や前田にも
「まったくお前は、おいしいとこ全部もっていきやがって!!」
「チクショー!ほんとにありがとな!!」
と讃えられた。
僕たちは応援にも整列し一礼した。
応援の中には、柿沼さんと小野寺さんも来ていたのだ。
僕から近づき
「柿沼さん、小野寺さんのおかげです!本当にありがとうございました。」と伝えた。
柿沼さんは
「何言ってんだよ!お前の努力だよ。お前ら中央大会をつかんだんだ」
僕はそのありがたい言葉に、去年僕のせいで負けたという、心に深く刺さっていたトゲが抜けたのがわかった。
次の日、僕は学校に行った。
小6の春にはいじめはなくなっていたが、
「期待ほどでもないヤツ」
という冷たい視線の中生きていた。
それも1日で、180度変わっていた。
「小野!中大決めたんだって?」
「スゲーな!お前がランニングホームランできめたんだろ?」
女の子もなんだか優しい。
もちろん僕は嬉しかったが、
その日から慢心を捨てて精進していこうと決めた。
去年、中央大会の切符を前に、調子に乗り、天狗になり、地の底までズタズタに落ちた怖さは今でも忘れていない。
そして、泥沼から這い上がる苦しさや、掴んだ時の幸せも知った。
僕にはこの後、決勝や中央大会が待っている。
今の気持ちを忘れず、軽快に走り抜けたい。
明日を開くの風は誰にでも吹くのだから。
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(・∀・): 29 | (・A・): 23
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