553 ◆kKJLWMS1vQ 、はよ最後までかきんしゃい

2005/10/15 08:41 登録: えっちな名無しさん

553 えっちな21禁さん New! 2005/09/27(火) 00:38:56 ID:2b3paeN/0
そろそろいいか?
ずっとROMってたんだがここでなら全て話せそうだ・・・。
中学2,3年の俺のトラウマでもあったわけだが。

555 553 New! 2005/09/27(火) 01:13:29 ID:2b3paeN/0
ちなみに鳥なんて付ける必要はないよね>553のまま走っていいだろうか?

557 553 sage New! 2005/09/27(火) 01:30:44 ID:2b3paeN/0
>556

サンクス!
それでは・・・・・

最初に当時(中学)の背景と俺の家庭環境から
いわゆる不良、暴走族が幅を利かせた頃、30代の人なら分かると思うが、どの学校にも教育指導員と名の付くこわーい先生がいた頃だった。
また、同時に内申、偏差値がもっぱらの判断基準で、子供が進学校に行く事が親にとってもステータスだった頃。

当時の俺の家庭は非常に教育熱心な親の元にいた。まあ、兄貴がバリバリの進学高校に通っていた経緯もあったせいか、親にとって俺への関心は中間、期末テストの点と成績表の結果だけだったような気がする。

558 553 sage New! 2005/09/27(火) 01:31:31 ID:2b3paeN/0
兄貴は人並みにスポーツもできたが、勉学に関して秀でていた。
俺は勉学よりもスポーツが好きで、中学も1年から3年まで陸上部に所属しトラックを駆け回っていた。
勉学の方は親の強力なプレッシャーもありとりあえず上の下位の成績はあった。でも正直辛かった。

559 553 New! 2005/09/27(火) 01:32:02 ID:2b3paeN/0
俺が中学に入学したときに、2人の新米教師がいた。
そのうちの一人(仮称:美香子先生)はいわゆる副担任で、現文の教師だった。表現が的確ではないかもしれないが、副担任はまだ教師になって経験が少ない先生が、いきなり一つのクラスの主担任にはならず担当学科のみ教えるやり方であったと記憶しているが違ったかな。

560 553 sage New! 2005/09/27(火) 01:33:17 ID:2b3paeN/0
美香子先生は若かった事ももちろんだが、とても明るく何よりも笑顔が可愛い先生であったことをよく覚えている。
今で言うところのミキティみたいな感じ。男連中から人気であった事はもちろんのこと、女の子達からも人気があり
先生の周りにはいつも笑いが絶えなかった。職員室にまで押し掛ける女生徒達がいたぐらい。まあ、松田聖子の時代でもあったから、
ぶりっこムカツクと毒を吐く連中もいたわけだが。
1年の時は、俺も機会があれば、他の生徒に混じって先生と良く話をしていた。正直楽しかったよ。
入学当初陸上部に入部したが、その後美香子先生が陸上部副顧問になったときはとっても嬉しかった。夏の合宿もみんなでわいわい楽しかった
そんなこんなで1年目は終了。

一つ付け加えておくがこの時点で先生との距離が近かった気は全然していない。いつも他の生徒の後ろから話に参加している感じだった。

562 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/27(火) 01:35:21 ID:2b3paeN/0
***スマン、一応ここから鳥付けるわ

俺が中学2年の時に事はおきた。
当時主担任だった英語の爺さん先生が体調を悪くして入院してしまった。夏休み直前ぐらいだったと思う。
急遽美香子先生が俺のクラスの担任代行となった。夏休み前の挨拶では、慣れない出席確認の後に
「皆さん宜しくね」
と笑って挨拶をした。女生徒達はきゃーきゃー喜んで騒いでいたし他のクラスで
「俺の担任氏なねーかな」
なんて物騒なことを言う連中もいた。正直俺も嬉しかったよ。
そのまま浮かれた気分で夏休みに突入。

夏休み明け、いよいよ俺のトラウマができていくわけだが今日はここまでとするよ。
俺会社勤めなんで明日も早いから・・・正直スマン
明日のこの時間頃、続きを書きます。

ノシ

572 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 00:59:02 ID:IJi+X+Hy0
それでは本題に入る前に、一つ美香子先生が担任になった最初の夏休みの話をさせてください。

美香子先生がまだ副担任だった夏の始めに、体育の授業として当然プールがあった。
先にも書いた様に当時学校が一部荒れていた関係上、体育の先生=生活指導員の教師(国士舘出)だった。
見た目マジでほとんどヤクザ。不良連中も一目置く存在だったよ。orz
副担任の美香子先生も時折プールの授業に来ていたが、あくまでも授業の補助役の仕事で、コースロープの張替えや、
ビート板の片づけ、タイム測定をやっていた。あげくに水着姿は全く無し。

573 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:00:07 ID:IJi+X+Hy0
ただ、唯一白シャツ短パン姿が拝める時間であったため、美香子先生が来たクラスの男連中は、
今日の授業は当たりだーとばかりに色めき立っていた。白くて長い足がとても綺麗だった覚えがある。

ただし、女子はそんな男子生徒を見て非難轟々。

574 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:07:23 ID:IJi+X+Hy0
しかし国士舘が睨みを利かせている為、声を掛けたりまじまじとのぞき込む無謀者はいなかった。
俺も同様、ゴーグル越しにこっそり姿を覗き見するぐらい。
ただ、風に吹かれてちょっと膨らんだシャツの下からお腹とへそが見えたのが強烈に印象に残っている。
他の連中は、やれブラ線が見えただの色が何だったのだの授業の後には大盛り上がり。
お前ら国士舘の監視下でよくそこまで見れるなと感心していた。

575 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:08:29 ID:IJi+X+Hy0
また美香子先生の姿を見たいが故、授業をサボって体育館の影から覗き見る不良連中も居た。
が、もう一人の生活指導教師(身長185cm位のプロレスラーのような社会の先生:サッカー部顧問)に見つかり、
後に生活指導室で国士舘とタッグマッチでシバかれていたとの噂。
マジデガクブル

そんなんだからますます美香子先生の水着姿は御法度になった様な気がする。

576 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:09:14 ID:IJi+X+Hy0
そんな前ふりがあって夏休み。

俺の学校では夏休みになると、毎年恒例ではあるが一定期間学校のプールが生徒に解放される。
目的は2学期の初めにある水泳大会の自主練のためだ。
水泳大会は各学年ごとにクラス対抗で行われた。競技内容はタイム測定によるものと選抜リレーがメイン。

577 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:21:02 ID:IJi+X+Hy0
夏休みが始まった直後の2週間を学年毎に午前、午後に分けて練習を行うが、あくまでも自主参加。
俺にとっては、家で缶詰状態で勉強をさせられるのが耐えられなかったため、外に出て行くにはもってこいの理由だった。
だから1年のときも全日参加していた。
今年も早々に家を逃げ出し、このプールに参加していた。自主参加であるがために、結構参加者は少なく全部で20人ぐらいだっただろうか。
1年の時もそうだったが、日に日に参加者が減る。1週間たつと半分の10人以下になり、監視役の先生も1人となった。
ある意味この減り具合も毎年恒例だったな。
俺はブレスのタイム測定に出場する予定だったのでひたすら遠泳練習をしていたが、実は潜るだけの方が好きで、
息継ぎ無しで何メートル潜水できるかなんてことをしていたな。やっていることは1年の時と一緒。


ただ今年唯一違っていたのは、練習日がラスト4日を迎えたときに突然美香子先生が登場したことだった。

このころになると、練習に出ているのは全部で5〜6人ぐらいだっただろうか。それもほとんどが水泳部。
監視員も水泳部顧問(女性体育教師)だった。

美香子先生が現れると、早速水泳部女子が「どうしたのー」とか騒いで群がる。相変わらすの人気者だ。
プールサイドにある監視員の日よけから現れた美香子先生は、
「あれー、ずいぶん少ないのね」
と生徒の数を見て笑っていた。服の種類は違えども相変わらずの短パン、Tシャツ姿だった。白い足がまぶしい。
「水泳部だけしかいないんじゃない?」
唯一水泳部以外で残っていたのは俺ともう一人の女子。その女子は水泳部の子と仲がよく、それで付き合いで出席していた感じ。

580 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:27:36 ID:IJi+X+Hy0
陸上部の副担任でありながら普段率先して話をしたこともなかったけれど、この時は自分の担任になった事もあり勝手ながらちょっとだけ
先生を身近に感じることができた。そんな気持ちもあって、俺はちょっと目立ちたい気分でプールサイドに座りながらゴーグルを取ると
先生に小さく手を振ってみた。

581 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:29:38 ID:IJi+X+Hy0
俺を見た美香子先生は、驚いたそぶりもなくいつもの様に笑ってこっちに来てくれた。
「○○君頑張ってるねー。今年も今のところ全部練習に参加しているの?」
今年も?・・・
「はい、今のところ全部出ていますが・・・先生今年”も”って?」
先生はにこっと笑って
「担任になると受け持つ生徒のことを事前に調べておかないといけないの。○○君のことも全部覚えたわよ。
G組、出席番号13番、陸上部所属、成績はまあまあね。1年の時の先生は君を飽きっぽい性格だと言っていたけど・・・ホントかな。
去年のプールの自主練習去年全部参加してたでしょ。
大会ではあまりいい成績ではなかったみたいだけど、私は頑張った結果だからいいと思うな」

今で言うところの”萌え”

582 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:30:31 ID:IJi+X+Hy0
俺はちょっとどきどきしながら
「俺得意なのはブレスなんだよ。小学校の時からずっとそうだったし、去年はフリーしか出られなかったから・・・」
そう言うと美香子先生は”ほお”という顔をして
「自信ある?それじゃあ、大会のタイム計測で優勝してね。クラス優勝を狙ってるんだから」
「優勝?本気ですか?うちのクラス水泳部一人もいないんですよ・・・」

と話の最中で水泳部の女子が割り込んできた。
「先生泳がないの?水着持ってきてるって言ってたじゃない」
美香子先生はうーんと言いながら周りを見渡して
「じゃあ、ちょっとだけ泳ぐかあ」
と言って更衣室に消えていった。水泳部の女子連中は大喜び。
俺も毎日欠かさず練習に参加していて良かったと心底思った。

583 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:31:39 ID:IJi+X+Hy0
10分位した頃だったと思う。美香子先生が更衣室から出てきた。
競泳用のスイムスーツだ。ちょっと残念。でも今考えればビキニなんてありえないし。
肩下まであった長い髪はキャップの中にしまっている。
俺はプールサイドに座りながら先生の体をゴーグル越しにまじまじと見ていた。いや、見入っていた。
細身の体にあまり大きすぎない胸、C,D位だろうか
ウエストの細さが綺麗だった。そしてそこから伸びる長く細くも太くもないバランスの取れたおみ足・・・。

584 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 01:32:13 ID:IJi+X+Hy0
当時の競泳用はVゾーンの切れ込みは今ほどきわどくない。でも見ていてこっちが恥ずかしくなる位の角度はあったと思う。
今でこそ無駄毛の処理なんて考えもするが、当時はそんなことも考えられなかった。
ゴーグル越しであっても見入ってはいけない場所と恥ずかしさとで、全身をあまり直視できなかったのを覚えている。
心臓ばくばくだったよ。

美香子先生はとても色白だった。夏の日差しの中でとても綺麗だった。輝いていた。たった一つを除けば・・・。

605 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 23:51:22 ID:IJi+X+Hy0
唯一おかしな場所、それは二の腕の半袖焼けが白い肌に思いっきりついていたことだった。
見た目白い肢体に茶色いロング手袋をしているような。

先生の出現と共に女子達がキャーキャー騒ぎ出す。きれーい、白ーい、細ーい・・云々かんぬん
先生は恥ずかしそうに腕を胸の辺りに当てていた。
しかしその二の腕を見て今度は爆笑の渦。
「だからやだって言ったのよー、部活をやっているとこうなっちゃうのよー」
先生も笑いながら二の腕を隠して騒いでいた。そこで水泳部顧問の先生が
「じゃあ、最終日まで一緒に練習に参加すれば日焼けの差も目立たなくなりますよ」
と言った。なるほどさすが水泳部顧問。全身こんがり焼けている。女子たちはみんな大喜びで
「あと3日しかないから全部出てねー」
と練習への参加を約束させている。先生も
「今度笑ったらもう出ないからね」
と笑って答えていた。

606 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 23:52:09 ID:IJi+X+Hy0
美香子先生はフリーの泳ぎしかできなかった。けど、とても綺麗な泳ぎをする人だった。
飛込みをしてもあまり水しぶきがたたない。だけど泳ぎは流れるように速かった。少なくとも俺のフリーよりかはずっと。

それから最後の4日間の練習ははとても充実したものだった。
コースロープを張り直すときとか、片づけ作業の時に先生の体と偶然触れ合う時もあった。
あちらはまったく気にしていなかっただろうけど、俺の心臓は死にそうなほどバクバクしていた。
また水泳部の部長以下男子たちは、新学期が始まったら絶対みんなに美香子先生の水着姿を見たことを
自慢すると息巻いていたのが笑えた。

607 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 23:52:48 ID:IJi+X+Hy0
練習が終わって数日後、先生から暑中見舞いが来た。そこにはこんな事が書いてあった。
”夏休み中担任になる引継ぎ作業で大変だったこと、夏季登校日も兼ねて気晴らしでプールに来たら頑張っている俺の姿を見て嬉しかったこと、
そして最後に”水泳大会で優勝狙ってるから一緒に頑張りましょう”(小さく女の子がVサインをしている絵)みたいなことが書いてあった。
見た目と違って結構熱い人なんだなあという印象と共に、ラブレターももらったことのない俺だったから、手書きの手紙がとても嬉しかった。

夏休みが明けて案の定、水泳部連中が美香子先生の水着姿を見た自慢をしたらしく、
男子連中から羨望のまなざし(?)で見られていた。
しかし不良連中からは何で写真とらねーんだよとブーイングを食らっていたし、
何よりも女子連中から”いやらしい”と総スカンを食らっていた。

608 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/28(水) 23:55:08 ID:IJi+X+Hy0
俺は聞かれれば答えていたが、自分から率先しては話はしなかった。当事で言うムッツリスケベってやつだったかもしれない。
そんな話が巷をにぎわせていても、美香子先生はいつも笑っていた。
それとなくクラスの連中に先生から暑中見舞いをもらったか聞いたが、誰ももらっていないようだった。
俺はとてつもなく大きな優越感に一人でほくそ笑んでいた。俺って暗いな orz

水泳大会はクラス優勝は逃したが、2位だった。優勝したクラスには部長を含めて水泳部が5人もいたし、
水泳部のいない俺のクラスは非常に検討したと思う。
ちなみに俺はブレス50mタイム測定に出場し、僅差で水泳部を抑えて優勝することができた。
その時、手をたたいてぴょんぴょん跳ねながら満面の笑みで喜んでくれた美香子先生の姿は今も忘れることができない。

612 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:04:22 ID:IJi+X+Hy0
裏話といいつつ非常に長くなってしまったことをお詫びする。スマソ

本題に戻ろう。

先にも述べたとおり、俺の家は勉学に関して非常に口うるさい。
テストの点に関しても非常にうるさく、平均点近い得点なんて取ろうものなら殺されそうになる。
数学には自信があったが、英語がだめでいつもそこを攻められていた。
2学期の中間試験が迫る中、俺は部活と試験勉強の板ばさみになっていた。
今思えばきちんと両立できていたやつもいたわけで、俺の意思の弱さの問題。疲れたから寝てしまうという緊張感が欠けた生活を送っていた。
美香子先生も、初めての担任で最初の試験を迎えるせいもあってか、俺たちにテストの準備は抜かりないよう再三注意を促していた。
先生本人も試験日が近くなるに連れてやや緊張した面持ちがあったと思われる。
2年の2学期以降の試験は、進学する高校に提出する成績、内申書に重大な影響をもたらすから当たり前だな。

613 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:08:05 ID:SKuTVGb70
俺の緩慢な生活態度はあまり改善されることなくテスト当日を迎える。その結果当然の報いを受けることとなる。
中間テスト初日は、数学と現文だった。そこで自称得意としていた数学で大コケを演じた。自宅に帰って数学の自己採点して顔が青ざめた。
まずい、まずすぎる。
生きた心地がしなかった。この時今の状態がとんでもないことになっていることにやっと気づく。
同時に他の教科も全くだめなんじゃないかという強烈な不安に襲われた。
冷や汗をかきながらどうしようと考えた俺の答えは・・・・最低の行為カンニングだった・・・。

筆箱の下敷きの裏、消しゴムの表面、定規の裏、気がつく限りカンニング情報を書き尽し
以降のテストを受けた。見つからないように、ただそれだけを考えて本来の緊張とは別の
邪な行為をすることによる緊張感と背中合わせのテストが行われていく。

614 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:09:24 ID:SKuTVGb70
今思い出しても胸が苦しくなる。
ただその時はその背徳の行為の達成に必死であったし、また俺は卑怯な人間に成り下がっていたため、
一度うまくいくと味を占めて行為をエスカレートして逝った。
そして全テストが終了する。

やばい、書いていていろんな事を思い出してマジデ鬱になってきた・・・orz

616 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:10:38 ID:SKuTVGb70
テスト終了から数日後の現文の授業で初めて、採点されたテストの返却が行われた。
テストを受け取った連中の悲鳴や歓声が教室を満たしていく。みんな互いに答案を見せ合ったり
していたため教室内はごちゃついていた。

俺の名前が呼ばれた。
答案を受け取った瞬間目を疑った。俺の答案は全く採点されていなかった。
マルやバツがない。点数もない・・・。美香子先生を見上げた。先生は俺の顔を見ずに一言だけ小さな声で言った。
「後で話があります。放課後、生活指導室に来てください」

背筋に冷たいものが走った。orz

618 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:13:03 ID:SKuTVGb70
カンニングがばれた!?

いや、現文の時はやってないし、それに他の時も教壇の先生の動きをちゃんと見ていたから大丈夫のはず。
俺の中で取り繕う自分がどたばたと走り回っていた。冷や汗が大量に出てきた。
落ち着かない心を必死に抑えていた。授業なんてほとんど耳に入らなかったよ。

そして放課後になった。

俺は生活指導室に行った。美香子先生はまだ来ておらず、電気もついていなかったため少々薄暗かったが、
電気をつける気にもなれずに校庭の部活練習をボーっと眺めていた。陸上部の練習が目に留まった。
当たり前だが美香子先生はいなかった。いつもなら今頃あそこに俺も先生もいるはずなのに、なんてことを考えていた。
美香子先生と二人っきりになれる!なんて考えは全くなかった。俺も薄々言われることを察していたからかもしれない。

10分ほどして誰かが廊下を歩く靴の音が聞こえた。
美香子先生だ。俺は緊張した気持ちで部屋に立ち、先生が入ってくるのを待った。

625 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:22:18 ID:SKuTVGb70
ヘタレな俺が体験する現実はこういうものでした。



部屋に入ってきた美香子先生の表情は今までに見たことがないぐらい曇っていた。
手には大きな封筒を持っていた。部屋に入ると俺に椅子に座るように促した。俺はそれに従って窓側に座った。
美香子先生は机を挟んで俺の向かい側に座り、机の上に封筒を置くと机に視線を落としてしばらく黙っていた。
視線を上げて俺の顔を見ると静かに口を開いた。
「今回の中間テストの結果に関して、私に何か言うことはない?」
全て見透かされている、今まで見たこともない鋭く冷たい視線だった。

626 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:23:22 ID:SKuTVGb70
明るく笑ういつも見慣れた先生の顔はどこにもなかった。俺の中で取り繕う悪い虫がうごめき始める。
「・・・なにが?」
先生は一つため息をつくと封筒から俺が出した全ての教科の答案を取り出して机の上に並べた。
全て現文同様全く採点がされていなかった。
そして再び質問した。
「これを見て私に言うことはない?」
しばらく沈黙が続いた。この期に及んでも俺はまだしらを切ろうとした。最低だった。
「なんで俺だけ採点してもらえないんですか」

・・・・・

632 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:36:30 ID:SKuTVGb70
次の瞬間、先生の細い手のひらが俺の左頬に飛んできた!

目から火花が飛ぶぐらいの痛みだった。
たたかれることを薄々感じていたのかもしれない。俺は全く動くことができなかった・・・。

633 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:37:20 ID:SKuTVGb70
先生の顔を見ると、夕日に照らされた目が涙で潤んでいた。
それを見た瞬間、俺は自分がやってしまったことの重大さを肌で感じた。
全身から血が引いていくのがわかった。たたかれた頬だけが脈を打っている。

634 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:37:56 ID:SKuTVGb70
女の人に頬を叩かれるのは生まれて初めてだった。その初めてが憧れの人だったなんて・・・。
俺の目からとめどなく涙がこぼれてきた。俺はなんてことをしてしまったのだろう。後悔が俺の心を踏み潰す。
ただただ謝るしかなかった。

635 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:38:26 ID:SKuTVGb70
だが、今更謝ったところで美香子先生の胸にはその言葉は届いていなかったと思う。
先生の目にはもう涙はなかった。ただ冷たい視線だけが俺の心を見据えていた。

636 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:39:32 ID:SKuTVGb70
カンニングをしたことを打ち明けたあと、どの教科をやったかという話になった。
俺がカンニングをしている情報を他の先生から受けた美香子先生は、それ以降のテスト中
教室の後ろの廊下から俺の動きをずっと見ていたと言った。だから何の教科に対して監視されていたかは、俺にはわからない。
ただ、初日だけはやっていない。俺はそれを告げたが美香子先生は冷たく言い放った。
「もうあなたを信用できない」
心に突き刺さった。

637 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:40:27 ID:SKuTVGb70
全てが崩れ去っていくのがわかった。俺がやってしまったことが、更に先生に対して嘘をついたことが信頼を失い、笑顔を失い、全ての楽しかった思い出を失うことになるなんて。
今更後悔しても全ては遅かった。時計を逆回しにしたかった。全てを元に戻してほしかった。
自業自得だった・・・・。orz

638 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:41:05 ID:SKuTVGb70
その日先生との話し合いが終わったのは夜7時を過ぎていたと思う。
暗い夜道、家に重い足取りでたどり着くと、既に電話で詳細を知らされた両親が厳しい形相で待っていた。
俺の長い夜は続いた・・・・。この時生まれて初めて母親を泣かせてしまった。
正直氏にたかったよ。orz

639 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:41:56 ID:SKuTVGb70
それから1週間、放課後になると美香子先生との個人面談が始まった。俺は終始うなだれっぱなし。
この時から先生と目を合わせることができなくなっていった。自責の念に駆られてただ謝ることしかできない日々。
もうテストの初日はカンニングをしなかったなんて言い訳をする気力はなかった。
それよりもこれ以上美香子先生に負担を掛けたくなかった。だから全てを受け入れた。
その後約1ヶ月をかけて、美香子先生+生活指導の先生との面談、迷惑をかけた各教科の先生への謝罪、反省文の作成と続く。
そして最後は母親と共に校長、教頭との面談、謝罪。母親はこの時も泣いて詫びていたっけ。

640 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:42:36 ID:SKuTVGb70
その後俺に出された裁定は、全ての教科の得点を赤点扱い(平均点の半分)。停学等の処置はなかった。
俺はすっかり落ち込んだ毎日を過ごすことになる。先生とはなるべく顔を合わせないようにしていた。
楽しかった陸上部も退部届けを出して辞めてしまった。
とにかく先生と距離をとりたかったし、先生と目が合うと俺を叩いた後の涙をためたあの顔が思い浮かんで
自責の念に駆られ、ひたすら辛かったから。そしてそれがトラウマとなっていった。

642 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:44:07 ID:SKuTVGb70
その後しばらくして先生はまた明るい表情に戻っていった。
相変わらず女子の取り巻きがいて、いつも楽しそうに話をしていた。
俺は仲間とそこそこ楽しく生活をしていた。ただ相変わらず美香子先生とは距離を置く生活だった。
また、口数が少なくなった。仲間内からもあまりしゃべらなくなったと言われた。
この頃から辞めてしまった部活の代わりに、近所の市民センター内のスポーツジムに通うようになった。
時間無制限で入場料が300円とくれば使わない手はない。また、以前から興味のあった硬式テニスも始めた。
市民センターの裏手に壁打ちコートがあったから。ただ、これらも家で悶々としていると辛かったことから外に飛び出した結果であったに過ぎない。

643 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:45:20 ID:SKuTVGb70
>641

ありがとうございます
じっくりまったり読んでいただけると嬉しい限りです
宜しくお願いいたします orz


644 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/29(木) 00:46:17 ID:SKuTVGb70
期末テストは冷静に準備し、受けることができた。結果はカンニング前とあまり変わらず。
部活をやめたのにもかかわらず成績が上がらないことを親にとやかく言われるかなと思ったが、
何故か親はそれに関して何も言わなかった。ただ一言頑張れと言った。親にも辛い思いをさせている自分が情けなかった。同時についに見放されたかなという気もした。

そのまま俺と美香子先生の間には深い溝が残った状態で2年の学校生活が終了する。

そして3年のクラス替えのときそれは起こった。

705 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:38:51 ID:z128oqMz0
カンニングの事件から半年ほど経つと、自分に生まれたトラウマ的感情に少々腹立たしさも感じていた。
カンニングした事実に対して正当化するつもりはなかった。
ただ、何でいつまでもこんなにも辛い思いをしなければならないのか。心にやり場のない怒りで壁を作っていた。


今思えば自己中心的な考えだったと思う。
でもその時はそう思わなければ先生と会うたびに自責の念で凹まなければならずそんな自分が嫌だった。
そしてあんなことがあったのに、その後先生はまるで何もなかったように他の生徒に対して接している。
笑っている。はしゃいでいる。楽しそうに。

確かに俺が悪いよ。でもなんでいつまでも吹っ切れないんだ・・・。

706 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:39:24 ID:z128oqMz0
3年になって構内の掲示板に新しいクラス編成表が張り出された。
俺は自分のクラスを探していた。すると突然後ろから誰かに抱きつかれた。
俺の遊び仲間連中だった。
「やったな!同じクラスだぜ!」
みんな嬉しそうだった。俺もうれしかった。今まで同じクラスになったことがなかった連中だったし、
何といっても修学旅行がある事を考えると、その嬉しさもひとしおだった。
ただ、その嬉しさも仲間の次の一言で瞬間冷や水をぶっかけられた気分になる。

709 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:43:57 ID:z128oqMz0
「それにお前美香子先生が担任だぜ!最高!云々かんぬん・・・・」
後の言葉は全く耳に入らなかった。
あの人がまた担任!?俺は掲示板を食い入るように見た。
3-C・・・俺の名前がある・・・担任は・・・美香子先生!

心臓を捕まれた気分だった。嬉しいなんて気分は一瞬にして吹き飛んだ。
クラス替えでやっとあの人の呪縛から逃れられると、それだけを期待していたのに。
大体全クラスが8クラスもあって何でまた俺の担任なんだよ。

ふざけんな!!

710 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:44:28 ID:z128oqMz0
突きつけられた現実に理不尽な腹立たしさを感じた。

そんな俺をよそに、仲間連中ははしゃぎまくっていた。

なんでだよ・・・

711 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:45:58 ID:z128oqMz0
それぞれ生徒が新しいクラスに分かれて教室に入った。黒板には事前に決められた席順が書かれている。
俺は窓側の真ん中位だった。
始業のチャイムと共に美香子先生が入ってくる。
髪を三つ編みにして1本に束ねていた。前列の女子がそれを見てかわいーいとか言っている。先生は
「ちょっとイメチェン」
と言っていた。そのやり取りがなんだか腹立たしく、俺は目線を合わせないように外を見ていた。

712 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:46:37 ID:z128oqMz0
美香子先生は自己紹介を済ますと、その後、俺が2年の時に担任だった爺さん先生は復帰したが、
体調上の問題で担任業務はできないため今年からフルで1クラスを担任することになったこと、
いよいよ受験の年を迎えたこと、修学旅行のこと、そして中学最後になる体育祭の話をしていた。
俺は相変わらず外を見ていた。ただ耳だけは先生の声を追っていた。



713 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:47:17 ID:z128oqMz0
最後にちょっと大きな声で
「体育祭では優勝狙ってるから一緒に頑張りましょう」
どこかで聞いたことのあることを言ってるなと思い振り向くと、俺たちに向かって腰に手を当て得意げにVサインを出した。
思いきり臭いポーズに盛り上がる連中、ブーイングする連中、笑っている連中と周囲は騒然。
その時、Vサインを見て思い出した。
去年の暑中見舞いの内容と同じことを言ってるしやってる。
その時、周りを見回す先生と俺の目が合った。

715 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:48:09 ID:z128oqMz0
俺の心臓は凍りつく。ここ数ヶ月いつもそうだった。だから目が合うたびに瞬間的に目線をはずしていた。いつもそうやって逃げてきた。
ただ、このときは違っていた。

先生は俺の目を見て優しく微笑んだ。

716 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:49:07 ID:z128oqMz0
一瞬の出来事だった。
俺が座っている席が窓側だったからまぶしくてそういう表情になったのかもしれない。
俺の勝手な勘違いだったのかもしれない。

いずれにせよいつも俺を苦しめる心の痛みとは明らかに違う何かが余韻として残っていた。
それが俺の心に響いていたのは確かだった。
凍りついた心が、苦しかったはずの心が、不安と興奮で激しく熱く鼓動を打っていた。



あの時のこと、先生は今どう思っているのだろう。
そんなことを考えた。

718 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:49:41 ID:z128oqMz0
でも俺の中のトラウマはそんな簡単にはいなくなりました、とはいかないようだった。
その後も学校生活の中で先生と目を合わせることが多くなったが、俺が取る行動はどうしてもぎこちなかった。
それまで自分で勝手に壁を作って距離を置いたことが、今になって大きな障害になっていることに気がついた。
それまでの自分の浅はかな、幼稚な態度が情けなかった。

もがきながらも少しずつ前に進んでいたと思う。でもなかなかうまくいかない。まともに話ができない。
ハイとかイイエ位しか言えない。俺はあほか?

719 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/09/30(金) 00:52:01 ID:z128oqMz0
またこの頃、美香子先生も俺のことをちょっと意識していた様な気がする。
授業中、誰かに教科書を読ませているとき、ふと顔を上げると先生が俺を見ていてビックリする事
が時々あった。最初は嬉しかったというよりも監視されてる様な気がしてちょっと嫌な感じもした。

でもその気持ちは次第に、そして明らかに美香子先生を意識する気持ちへと、変わっていった。

805 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:44:03 ID:k9LWiUOG0
結局なんだかんだ自分でごまかしても、壁を作っても、逃げても
俺にとって美香子先生は憧れであり無視することなんてできない存在なんだ。

そう気が付いたとき、今までやってきたことが何だかとても恥ずかしく思えた。


そして修学旅行・・・

806 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:45:01 ID:k9LWiUOG0
俺が行った場所はk都。定番の場所だった。
よく旅館での入浴時や宿泊時に思い浮かべる過激なシチュエーションは全くなかった。ちょっと期待していたけど現実はそんなもの。
でも女子の普段見られないパジャマ姿等に男子連中は少なからずとも興奮していたと思う。
自由時間は互いの部屋でくっちゃべったりトランプしたり。それはそれで刺激的だったかもしれない。

807 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:45:58 ID:k9LWiUOG0
男連中の話題と言えばアホな内容ばかりだった。
風呂場では毛が生えたやつ、ムケたやつが話題を集め、寝るときは好きな女子の話に盛り上がる。
誰が胸が大きいとか、誰と誰が付き合ってるとか・・・まあ、ある意味ごく健全だったかも。
当然と言うか美香子先生の話も出た。やはり男連中には大人の女性として非常に気になる存在であったようだ。
俺はそんな話を聞きながらプールのこと、怒られたこと、その後のことをいろいろ思い返していた。
突然仲間が俺に誰が好きなのか聞いた。どうしようか悩んだ。この時美香子先生と言っていたらどうなっただろうか。
でもそんな事絶対に言えなかった。
ごまかそうとしたが、皆既に好きな子を告白していたのでなお一層迫られた。
当たり障りのないところ・・・、そう考えとっさに答えた相手はクラスで一番人気の子だった。
なんだお前もかと話が続いていく。木を隠すなら森の中。何とか誤魔化せたようだった。

ちなみに後日聞いた話では、他のクラスでは旅館でもっと恐ろしい男祭りをやっていたらしい。orz

808 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:46:35 ID:k9LWiUOG0
旅館での美香子先生は定番(?)のジャージ姿。食事のときを除いてほとんど見かけることはなかった。
観光で回った場所は今となってはあまり覚えていない。ほとんどの観光地での美香子先生は引率に忙しく、
自由時間は常連の女子連中と共に買い物をしていて近づくことは無理。


ただ、k水寺は唯一先生と触れ合う事ができた場所だった。

809 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:47:35 ID:k9LWiUOG0
k水寺を観光した後、k水坂での自由時間があった。
よく知られる通り、この坂沿いには多くの店が立ち並び、また多くの観光客でにぎわっていた。

俺と仲間連中は、早々にみやげ物を買い他の店をぶらぶら見て回っていた。
しかし、他の学校の修学旅行生も含めて人の多さに辟易して裏路地に逃げ込んだ。

k水坂から一本裏路地に入ると客足はずっと少なくなった。
それでもいい雰囲気のお店がちらほらと並んでいたためなんとなく得した気分になり、俺たちは余った時間を使っていろいろな店を見て回っていた。

しばらく歩き回りまたもとの場所に戻ってくる途中、俺は歩きながらふと目にした雑貨屋に美香子先生の姿を見つけた。

一人きりだった。

810 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:48:15 ID:k9LWiUOG0
仲間連中は気がついていないようだった。俺はどうするべきか迷った。
店に入る判断がつかずあたふたしている間に、俺のところに来た仲間の一人が店にいる先生を見つけてしまった。
「美香子先生だ」
「何やってんだろ、行って見ようぜ」
次々と店に入っていく仲間の最後に続く俺。orz

812 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:48:49 ID:k9LWiUOG0
店内は半分が民芸品のような小物雑貨が所狭しと並び、奥の半分には下駄が並んでいた。
美香子先生は下駄を見ていた。薄いピンク色のスリムなシャツにひざまでのズボンをはいた姿だった。
ズボンから伸びる白いふくらはぎが艶(なま)めかしい。

何やってんのーとばかりに仲間が先生に近づく。先生は驚いた様子もなく
「ちょっとね、下駄を買おうかなと思って」

先生の視線が仲間連中を通り越して一番後ろにいる俺に届く。
その目が合った瞬間とっさに目線をはずす俺・・・またかよ、何やってんだ俺。自分のとっさの態度に腹立たしさを感じた。心臓が激しく鼓動する。

813 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:50:15 ID:k9LWiUOG0
俺は綺麗に棚に並ぶ下駄を見て、形、下駄の色と鼻緒の色、模様の取り合わせに驚いた。
そしてその異なる組み合わせが、一つ一つの下駄の雰囲気を微妙に変えているのに気づいた。

その後先生と仲間連中は、並んだ下駄を前にあれがいいだこれがいいだいろいろ話していた
しかし、いつまで経っても一向にこれだと思うものが決まらない。もしかして美香子先生は優柔不断か?
一人、また一人と先生の元を離れ、所狭しと並ぶ雑貨売り場の方へと散っていった。

俺はまだ下駄が並ぶ棚の前にいた。色々な下駄を手に取り眺めていた。

突然隣で声がした。
「いいでしょう。私こういう和風なもの好きなの」

815 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:51:57 ID:k9LWiUOG0

予測していない状況に脈拍が加速する。一気に汗が出てきた。
平静を装うのに必死だった。ばか、静まれ俺の鼓動。

「○○君はこういうの興味ある?」
「・・・・はぃ」

隣をそっと見ると先生は下駄を手に取り、笑いながら一言
「そっかぁ」
横顔がとても綺麗だった。この人が和服を着たらどんな風になるんだろう、そんなことを考えた。とてもいい匂いがした。

816 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:53:28 ID:k9LWiUOG0
先生は続けた。
「洋服ってその時代の流行があるからいずれ着られなくなっちゃうでしょ。でもね和服って時代を超えてずっと着ていけるの。
いい素材、作り、絵柄のものはいつの時代に着てもやっぱりいいものなの。
私おばあちゃんからもらった着物と浴衣があるんだけどね、すごいお気に入りでそれに合った下駄を探しているの」
俺は下駄が並ぶ棚に目を戻した。なんとなくわかるような気がした。

「本物はいつの時代でも本物って事ですね」
そうぽそっと言ってみた。先生はすごく嬉しそうな顔をして俺を見てうんうんしてくれた。
恥ずかしい。とりあえずこのどきどきをなんとかしてくれ、鼓動よ止まれ。

818 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:54:31 ID:k9LWiUOG0
その後、二人で一つの下駄を選んだ。試し履きをしようということで、先生は靴と靴下を脱いだ。
俺はそのしぐさを見てどきどきしっぱなしだった。先生の白い生足がすぐそこにある。
まだ鼻緒が固くてうまく履けないようだった。無意識かどうかは良くわからない。
美香子先生は支えとして俺の肩に手を掛けた。

暖かな、柔らかな手だった。俺は既にてんぱっていた。鼓動が、汗が止まらない。顔は赤くなっていたと思う。
先生は俺よりちょっと背が低かった。先生の髪の臭いが漂う・・・。幸せな瞬間だった。
うまく下駄が履けず、うだうだやっている俺と先生を見かねたのだろうか。店のおやじが椅子を持ってきた。
先生は礼を言うと俺から離れて椅子に座った。

おやじ余計なことすんな!

820 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:55:52 ID:k9LWiUOG0
そのおやじは先生から状況を聞くと
「じゃあ鼻緒を付け替えましょうか」
と言って先生と俺を店のレジの奥にある小さな部屋に案内してくれた。
そこは工房だった。まだ鼻緒が付いていない様々な形の下駄が並び、そしてこちらも色とりどりの鼻緒が天井から垂れ下がっていた。

おやじは縁台の様な作業場に上がるとごそごそと準備を始めた。
先生が興奮した面持ちで下駄作りについて聞いていた。
おやじの話からすると、下駄にもその年の流行の形があるらしい。それと季節に合わせて下駄の色を決め、鼻緒のデザインや太さは店先の売れ行きに応じて変えたりするらしい。

821 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:57:39 ID:k9LWiUOG0
それを聞いて俺はとっさに思いついた。
「じゃあ、ここにあるものの中から選んだ物で下駄を作っていただけませんか?」
おやじは笑いながら二つ返事で了解してくれた。

おやじ最高!

822 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:58:39 ID:k9LWiUOG0
美香子先生は目を細めて子供のようにはしゃぎながら
「すごーい、ありがとうございます」
と言うと夢中で素材を選び始めた。

それからの時間は先生にとって夢のような時間だったと思う。
おやじからのアドバイスをもらいながら下駄の形、色、鼻緒の色、太さを選んでいく。
素材を選んでからはさすが職人、作業が早い。先生の足に合わせて鼻緒を締めていく。
先生は終始作業を見ながら”すごいねー”を連発していた。ほんと先生というより一人の女の子だった。
先生の歓声に気を良くしたのかおやじは出来上がった下駄を渡す際、下駄の裏の鼻緒止めにかぶせた金属部分を指して言った。
「この部分が凹んで履きにくくなったり、鼻緒の微調が必要になったら持って来てください。いつでも無料で面倒見ますよ」
下駄の裏にはこの店の名前が書かれた金属プレートが貼り付けてあった。

先生大喜び。でもここにそうちょくちょく来れるのかという疑問もあったが。

823 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 00:59:12 ID:k9LWiUOG0
喜ぶ先生の笑顔を見て俺はさりげなく
「記念撮影していきませんか?」
と聞いてみた。先生は即OK
先生との2ショットが撮れる!俺は興奮をこらえつつカメラを取り出しおやじに手渡そうとした。が、おやじは既に先生の横に立って”俺が撮る”のを待っていた。

おやじ空気嫁よ orz

824 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:00:07 ID:k9LWiUOG0
店を出ても先生は買った下駄を入れた袋を大事そうに抱えていた。
そして俺を見て
「○○君ありがとう、すごく嬉しかった」
と興奮冷めやらぬ声で言った。
「いやあ、言ってみるもんですね」
俺も別の意味で興奮しっぱなしだった。

この時初めて仲間連中が既に店にいない事に気づいた。
俺は時計を見てバス乗車の集合時間が迫ってきているのに気が付いた。
先生にそれを告げようと辺りを見回すと、先生は離れたところにいる観光客とおぼしきおばちゃん連中と話しをして何かを渡していた。
「先生、時間が・・・」

825 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:01:06 ID:k9LWiUOG0
先生は笑いながらおばちゃんを連れて戻ってきた。
そして次の瞬間俺の腕を取り、横に寄り添った。
うわっ!!
おばちゃんが笑ってカメラをかざす。
フラッシュが光った。

美香子先生はおばちゃんからカメラを受け取るとお礼を言って俺のところに戻ってきた。
「記念にね」
そういって笑う先生の顔がたまらなく可愛かった。一人の女としての無防備な笑顔だった。

826 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:01:59 ID:k9LWiUOG0
しかし次の瞬間、”先生”に戻っていた。
「さあ、急いで!時間がないわよ」

俺は早足で歩き出す先生の後を追った。
さっきまでの興奮が一気に冷めていた。

827 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:02:38 ID:k9LWiUOG0
このあと、もう特別なことはなかった。
バスに戻った俺は仲間に”途中で先生と消えやがってどこ行ってた””ホテルか?”
と散々冷やかされた。勘弁してくれ。

バスに揺られながら、俺はついさっきの出来事を思い出していた。
下駄を買っていたときのあの無邪気な先生、その後急ぐように言った先生・・・・。
無邪気な先生を前にしたとき、俺は今までに無いぐらい興奮していた。また同時に安らぎを感じていた。
でも美香子先生が”先生”に戻ったとき・・・あの時は間違いなく張り詰めた苦しみに縛られていた。
先生が持つ二つの性格(?)のような物に俺は悩まされることになる。

あともう一つ、先生のカメラで撮ったあの2ショット写真はもらえるのだろうか・・・。

828 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:03:42 ID:k9LWiUOG0
修学旅行での出来事は、少なからずとも俺の勉強に影響を与えはじめていた。
1学期期末テストの結果は、今まであまりかわりばえしなかった教科の伸びを示していた。
母親はその結果を見て手放しで喜んでくれた。
父親は勉強に関して自分の思うようにやってみろと言った。ただし、条件として親父が決めるレベル以上の学校しか受けてはいけないこと、全て落ちた場合は即働きに出ること。

今までひたすら管理されてきた勉強面で足かせが取れた。その分責任と言う荷物を背負い込むことになったが。
それでも俺にとってはやっと手に入れたささやかな自由だった。

835 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:13:04 ID:k9LWiUOG0
体育祭・・・・

美香子先生が3年のクラス着任当初掲げていた目標があった。
クラス優勝

この時期になると受験の準備で慌しかったが、クラスとしてのまとまりは非常に良かったため、十分優勝を狙える雰囲気はできていた。
どこの学校でもメインイベントは恐らくクラス対抗リレーだろう。当然配点も高いため、選抜メンバーはどのクラスでも悩んでいたと思う。
俺の学校では男女に分かれてそれぞれ実施される。距離は一人当たり男200m、女100m、選抜人数はどちらも5人。
女子の方は豊富な人材の下、決まるのは早かった。何せソフトボール部の一団がいたから。

836 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:15:42 ID:k9LWiUOG0
男の部門では、俺のクラスにはサッカー部員が2人、陸上部1人(部長)・・・。あと2人を決める段階で誰も立候補者がいなかった。
俺は途中退部している身だから、ひっそりと気配を消していた。いや消そうとしていた。
おもむろに美香子先生が言った。
「○○君、あなた陸上部だったでしょう。走らないの?」
ブランクがありすぎる。不安があった。確かに辞めた後ジムに行ったりテニスをしたりはしていた。
ただ、ほとんど走り込んでいない。本番まで3週間もない。
俺が悩んでいる間、既に先生は黒板のリレーの項目の下に俺の名前を書き込んでいた。
振り返った先生と目が合った。心がちょっと苦しくなった。でも走っていい結果が出せれば、先生にもっと近づけるかもしれない。

俺は言った。
「やります」
決断した。

838 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:19:18 ID:k9LWiUOG0
俺は夜になると近所の公園で練習を始めた。
約100mのコースを走って俺は愕然とした。
部活を辞めてから約1年のブランクは俺が考える以上に大きかった。陸上部当時、俺の主競技はハードルだった。でも200mダッシュはよくやっていたし、そんなに息が上がった覚えもなかった。
今は明らかに違った。走りこんでも走りこんでも当時の心と今の体のギャップが埋まらない。気持ち的にはもっと早く走れている感覚があるが、体か追いつかないのだ。
ただ焦燥感だけが募る。
それでも不安を拭うためには、走り続けることしかできなかった。
目立って先生に近づきたいから出るという俺の浮ついた心に現実が突きつけられた夜だった。

840 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:20:13 ID:k9LWiUOG0
そして体育祭当日を迎える

俺はいつになくはしゃいでいたような気がする。
そうでなければ不安とプレッシャーで沈みそうだった。陸上部の時の大会で味わった緊張と明らかに違っていた。
自分が積み重ねてきた練習がもたらす自信が自分を支えていた。
それが走りに対する集中力を高めていた。

今回は付け刃的な気持ちが残っていて、どうしても気持ちが前に出て行かなかった。

実力は伴わないくせに足の裏はぼろぼろだった。俺はクラス全員リレーが終わった段階でテーピングをやり直した。

女子の部が始まった。大方の期待通り俺のクラスは圧勝した。やっぱり鍛え方が違うか。

841 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:21:49 ID:k9LWiUOG0
男子の出番が来た。
緊張感が高まる。もうどうにでもなれ。俺は腹をくくった。

号砲と共に第一走者がスタートする。俺は5人中4番目の走者だった。抜きつ抜かれつの中、バトンタッチで落下してしまった2クラスが戦線を離脱する。

俺のクラスの第三走者が3位でバトンを受け、一気に2位に浮上、そのまま先頭との差を詰めて行く。約5m差まで詰めて俺とタッチ。俺は無我夢中で走った。もう周りの歓声は耳に入らない。
俺は静寂を切り裂いて走っていた。聞こえるのは俺自身の息遣いと足音のみ。
足の裏の痛みは全く感じなかった。しかしトラックを半周した辺りから、明らかに足取りが重くなっていく。

842 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:22:26 ID:k9LWiUOG0
練習の時に散々味わったあの、気持ちと体のアンバランスな感覚が大きくなる。この辺りから先頭との差が広がっていくのがはっきりわかった。
最終コーナーに差し掛かる時、はっきり聞こえた。後ろから迫る足音。
次第に迫るその音はコーナー中盤で俺を追い抜いた。

一人。

また一人。

最終コーナー立ち上がりでまた一人・・・。

・・・最悪

843 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:23:20 ID:k9LWiUOG0
アンカーにバトンを託すと、奴は”任せろ”と叫んだ。
俺はふらついた足でトラックの中に倒れこんだ。

胸が熱い、焼けそうだ。のどが痛い。

転がったサークル内で俺はアンカー達の行方を目で追っていた。
奴は、俺のクラスのアンカーは陸上部部長、生徒会長までこなす正真正銘の優等生。
俺がバトンを渡した時先頭とは半周近い差があった。奴はバックストレッチ前のコーナーで
俺を抜いた3人を軽く抜き去っていた。
軽やかな走り、長いストライド。
奴の主競技は100mだったが、100mを過ぎてもそのペースは全く落ちない。逆に伸びている。
最終コーナーの真ん中で既に先頭に追いついていた。だが無理をせず抜きにかからない。
コーナー立上り、一気に加速、前へ出る。
そのまま悲鳴と大声援を受けてテープを切った。

844 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:24:19 ID:k9LWiUOG0
場内は割れんばかりの拍手と歓声で騒然としていた。
クラスの連中にもみくちゃにされた奴はクールに笑っていた。この体育祭は奴のためにある、そんな気がした。

かっこいいよお前。

845 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:25:10 ID:k9LWiUOG0
走り終わって初めて足の裏の痛みがひどくなっているのに気づいた。
俺は喧騒から離れたかった気持ちもあり、テーピングをやり直すために職員用の通用口に入って廊下に座った。
ひんやりとした冷たさが心地よかった。

テーピングをやり終えると俺はそのまま廊下に寝ころんで薄暗いを眺めていた。もうすぐ閉会式が始まる。
俺はとても戻る気にはなれなかった。自分に対する腹立たしさが胸を満たしていた。

847 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:26:12 ID:k9LWiUOG0
「こらー、もうすぐ閉会式が始まっちゃうよ。席に戻りなさい」

そこに美香子先生が入ってきた。何かを職員室に取りに行くような感じだった。
俺は慌てて起き上がると、はがしたテーピングを丸め靴を履いた。
見られたくなかった。

俺は先生と目を合わせなかった。いや合わせる事ができなかった。
「よく頑張ったじゃない。さすが元陸上部って走りしてたよ」
明るい声で先生が話す。

「・・・・でも3人も抜かれたんじゃあ話になんないでしょ」
俺は外を見ながら憮然とした表情で答えた。恥ずかしかった。もっと格好いいところを見せたかったはずなのに。奴みたいに。
先生はそれには何も答えず俺の横に来ると腕を取った。
「ほら立てる?」

848 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/02(日) 01:27:22 ID:k9LWiUOG0
次の瞬間俺はその手を振り払っていた。
そして自分の足で立ち上がると、外に向かって歩き出した。

俺を追うように先生の小さな声が聞こえた。

「ばかぁ」

震えた声だった。
慌てて振り返ると既に先生の姿はなく、小走りする足音だけが廊下に響いていた。

後日、放課後に先生と廊下で出くわした時に俺は腕を振り払った件を素直に謝った。
先生は一言
「気にしないで」
と言った。俺に向けたその目は”先生”の目だった。

32 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:00:52 ID:Hbr+rTes0
またいつもの普通の生活が始まった。
体育祭が終わって間もなくは、俺は自分の心にもやもやとした気持ちがあった。しかしそれも迫ってくる受験のプレッシャーにかき消されていった。

先生と俺の間はそれ以降近づくことも無く年を空けた。
年賀状には試験頑張ってとだけあった。Vサインは無かった。

3学期になると、先生は受験校に対してボーダーにいる生徒の対応に追われていた。
放課後はその生徒たちとの補修授業、父母面談等いつも忙しそうだった。俺はほとんど話をした覚えも、目を合わせた覚えもない。
心にぽっかりと穴が開いたような気がした。空虚とはこういう気持ちなのかもしれない。

2月頃だったと思う、俺は滑り止めのために受験した私立の合格を決めた。

33 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:01:44 ID:Hbr+rTes0
そして冬空が残る某日公立高校受験日を迎えた。

後日学校で自己採点が行われた。その結果、俺の取った得点ではボーダーラインに対して非常に微妙な所にいることが分かった。
美香子先生はそんな結果に対しても、終始”大丈夫”を繰り返していた。今思えば自分にも言い聞かせていたのかもしれない。

数週間後、ついに公立高校の合格発表日がやってきた。
結果、辛くも合格だった。合否掲示板の前で力が抜けた。が、次の瞬間俺は自転車に飛び乗っていた。
この結果を誰よりも早く知らせたい人がいた。

俺は合格の結果を持って学校へ突進した。とにかくあの人に知らせたかった。この時期、受験がらみで登校している3年の生徒はまばらだった。
階段を駆け上がって自分の教室に行くと、既に受験が終わっている連中が数人遊んでいて、美香子先生は職員室にいることを教えてくれた。

既に先生は俺が私立を合格したことは知っている。同時に俺の第一希望が公立であることも知っていた。
俺は久しぶりに先生と顔を合わせて話ができることが嬉しかった。それも第一志望合格の通知をもって。

34 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:02:16 ID:Hbr+rTes0
「失礼します」
職員室に入ると俺は興奮を抑えてかしこまった表情で美香子先生を探した。先生は自身の机に座って何か事務をしていた。
俺は側に行くと何も言わずに先生の横顔を見ていた。いつもどおり綺麗だった。長い髪を軽く束ねていて細く白い首が見える。
耳にはピンク色のイヤリングをしていた。ただ、表情はちょっと疲れている様に見えた。

先生は俺に気が付くと、こちらに椅子を向けて尋ねた。
「どうでしたか・・・」
先生は緊張した面持ちで俺を見上げている。先生の目に不安が見える。ごく短い間だったけれど俺は思い切り先生の目を見つめ返した。

俺は合格したことと、久しぶりに二人で話ができる興奮を爆発させた。
「やったよ!」
と先生の目の前にVサインを出して答えた。先生は口に手を当てると
「本当?!やったぁ!」
と満面の笑みで俺の言葉に答えてくれた。
その後も俺の話しを聞きながらうんうんとうなずいてくれた。

35 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:02:48 ID:Hbr+rTes0
突然美香子先生の細い手が俺の制服の袖をつかんだ。見る見るうちに美香子先生の目に涙がたまっていくのがはっきり見えた。
その瞬間脳裏に、頬を張られた時の情景が蘇り、俺は自分が何かまずいこと言ってしまったかとうろたえた。

先生は俺の袖を掴んだまま、人目もはばからずうつむいてひっくひっくと泣き出してしまった。
俺は焦って周囲を見た。他の先生達がこっちを見ている。
何か美香子先生の気にさわることを言ってしまったか?嫌なことを言ったか?
俺の頭は猛スピードで今先生に話したことを振り返っていた。

俺はどうしていいか分からなかった。まさか泣き出すなんて思いもしなかったし、他の先生たちがいる職員室でこんなことになるとは思ってもみなかった。冷や汗がどっと出てきた。

とにかく冷静に振舞おうと考え、咄嗟に余った手でハンカチを取り出すとうつむく先生に渡した。
「先生・・・これ・・・俺何か変なこと言った?・・・ごめんなさい・・・」
先生は泣きながら小さな声で”ちがうの・・・ごめんね・・・ちがうの・・・”と言ってハンカチを受け取り、目に押し当てるとなおいっそう泣きだした。

36 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:03:25 ID:Hbr+rTes0
この状態を見ていた他の先生が集まってきて口々に言った。
「あーあ、○○!美香子先生を”ついに”泣かせやがったな」
「今度は何やらかした」
「心配掛ける様な事ばかりやりやがって」
俺はあえて周囲に反論しなかった。ああだこうだ言い返して話を大きくしたくなかった。
今は俺より美香子先生のほうが辛そうだったから。俺は周囲が言うことにただ”すいません”を繰り返した。

国士舘がこっちに来るのが見えた。背筋に冷たいものが走った。俺はぶっ飛ばされるんじゃないかという恐怖を感じた。

37 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:04:21 ID:Hbr+rTes0
国士舘は俺の横にしゃがむとドスの効いた声でぼそっと言った。
「この前自己採点したとき、美香子先生がどれだけ心配していたかお前知らねぇだろ」

俺は美香子先生を見た。俺の袖を握ったまま泣いていた。俺は自然と先生の前で正座をしていた。
「こういう人を”恩師”って言うんだ、覚えておけ」
国士舘が立ち去ると、他の先生もばらばらと散っていった。

俺は今まで美香子先生に対して何をやってきたのだろう。
色々な事を思い出して俺は一瞬目頭が熱くなった。
今、目の前で泣いている先生は小さく、か弱く見えた。抱きしめたくなるほど愛おしかった。

38 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:05:12 ID:Hbr+rTes0
間もなく先生は泣き止み、俺の袖をずっと持っていたことに気が付くと顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。
目は泣いて赤くなっていたけど、優しそうな目で俺を見て改めて
「おめでとう」
と言ってくれた。俺は目にじわっと来るものがあったが必死にこらえた。
俺はとても幸せだった。

39 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:05:50 ID:Hbr+rTes0
その後、先生と一緒に職員室を出て教室に向かった。俺を含めた合格発表組が来るまで一応自習だったが、
午後からは終業式の準備を皆で手分けしてやることになっていた。

俺は職員室での出来事を通じて、美香子先生との距離が急速に近づきつつあるような気がしていた。
気持ちが高ぶっていた。そんな俺の気持ちを、先生の一言が大きく後押しした。

40 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:07:38 ID:Hbr+rTes0
階段の途中、先生が俺に言った。
「さっき職員室で泣いちゃったけどみんなには内緒だよ」
俺はいたずらっぽく尋ねた。
「なんで?」
「だって・・・みんなに笑われちゃうでしょ」
美香子先生はちょっとうつむき加減で恥ずかしそうにそう言った。
踊場に差し掛かったときに、俺は足を止めて続けた。
「じゃあ、袖を握って離さなかった事は?」
「・・・・・」
先生は無言でうつむいた。

41 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:08:15 ID:Hbr+rTes0
おもむろに俺は先生をぎゅっと抱きしめていた。
愛おしい。
そして耳元でささやいた。
「先生ありがとう、とっても嬉しかった」

俺は手を離すと振り返りもせずダッシュで残りの階段を駆け上がった。かなり恥ずかしかった。
「こらー」
背後から先生の怒った声が聞こえる。でも不思議と優しい声に聞こえた。
俺は教室の前まで夢中で走った。そこで始めて廊下を振り返ると、美香子先生はこっちに向かってゆっくり歩いていた。
優しい目で俺を見て嬉しそうに笑っていた。

42 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:09:58 ID:Hbr+rTes0
結局俺のクラスは私立、公立を合わせて全員が進学を決めることが出来た。
後は数週間後に控えた終業式を待つのみ。

そんなある日、ことの穂端は不明であるが、先生の取り巻きの女子からパーティーをやろうという提案が挙がった。

その話が俺のところに回って来たときには、既に場所まで決まっていた。
場所は美香子先生の自宅。
先生が手製のカレーを振舞ってくれるとのこと。
俺は何かが起こるのではないかという勝手な期待を胸に、二つ返事でOKした。

でも現実はそんなに単純ではなかった。

結局クラスの半数(20人ぐらい)が参加することになった。

43 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:10:39 ID:Hbr+rTes0
当日、午前中から仲間と共に先生の自宅に向かった。
先日学校で、カレーの仕込をするから午前中から来てねと”仲間連中も含めて”言われていた。

先生の家は、俺の家の最寄の駅から4つ行き、更に駅から歩いて15分位のところにあるマンションの5階であった。
呼び鈴を押す手がかすかに緊張していた。中から一番に顔を出したのは先に来ていた数名の女子だった。

44 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:11:27 ID:Hbr+rTes0
玄関には花が飾ってあった。やっぱり女の人の家なんだなあと思いつつ中に入った。
部屋に入るととても綺麗に整理された部屋で、とてもいい匂いがした。部屋割りは2LDK。
角部屋のせいか部屋の明かりを付けなくてもとても明るい。ここにも出窓に鉢植えの花があった。
それにあまりごちゃごちゃ物が置いていない。すっきりとしていた。
まあ、俺たちが来るから片付けた可能性もあるわけだが。
仲間連中は”おおー”と感嘆の声を上げている。何が”おー”なのかいまだもって不明。

45 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:12:07 ID:Hbr+rTes0
あまりゆっくりと部屋を見ている暇はなかった。
美香子先生は既に数人の女子と共に仕込みの作業に取り掛かろうとしていた。
この時始めて俺は各自持ってくる約束になってたエプロンを忘れていることに気が付く。
先生は笑って自分のエプロンを貸してくれた。白いフリルの付いた水色の可愛いエプロンだった。
この時俺は初めて先生の格好に気が付く。膝丈よりちょっと短いスカート姿だった。
普段学校で見ている”先生”という固いイメージはそこにはなく、一人の女性を感じた。俺は恥ずかしさにその姿を凝視できなかった。

エプロンを付けた俺を見て周囲が腹を抱えて笑う。先生も笑いながら写真を撮ってくれた。

47 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:13:39 ID:Hbr+rTes0
先生はカレーに関してはかなりのこだわりがある様で、やれ野菜の切り方はこうがいいだの、たまねぎのいため具合が大事だの、
しまいにはにルーを調合(?)するにあたってはなんだか呪文のような難しいことを言って周囲の女子連中を感心させていた。
ジンジャーで辛みを調節するとか、ターメリックだコリアンダーだなんだらかんだら今でも良くわからない。
俺はもっぱらジャガイモと人参の皮剥きと洗いものをやらされる羽目に。仕舞いにはキッチンが手狭になって洗面所でやるはめになった。
一通りの作業が終わって煮込みに入る頃から、遅れて残りの連中がやってきた。
遅れてきた連中は先生にいろんなプレゼントを用意していた。お花、お菓子、ぬいぐるみ etc
先生は嬉しそうにもらったプレゼントを出窓に飾っていた。

それからカレーが出来るまではみんなでいろんな話をした。

48 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:14:53 ID:Hbr+rTes0
俺は出されたお茶を飲み一休みしながら改めて先生の部屋を見回していた。
よくよく見ると、あちらこちらに和風な小物が置いてある。修学旅行のときに話をしいたが、本当に好きなんだと改めて感じた。
TV台も和風なキャビネだし、間接照明も和紙で作られたようなカバーがされていた。
窓側にシンプルなソファが置いてある。二人掛け程度の大きさだったろうか。
棚には色々な小物が飾ってあった。その一番下に見覚えのある下駄が飾ってあった。
一目見てそれがk水寺で一緒に買った物であることがわかり俺は嬉しくなった。
片方を手に取ると生徒たちと話をする先生に目線を送る。少しして先生も俺の視線に気が付きこっちを見て少し笑った。
俺は二人だけにしかわからないものがあることにちょっと優越感を感じていた。

49 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:15:38 ID:Hbr+rTes0
話は修学旅行、体育祭、受験、通常の学校生活等色々なことに及んだ。
その話題も尽きかけた頃、女子の一人が閉ざされたもう一つの部屋を空けてしまった。先生が慌てて静止する
「そっちはだめー」
女子を先頭にみんなわっと部屋になだれ込んだ。
俺も他の連中に続いて部屋を覗き込んだ。

50 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:16:38 ID:Hbr+rTes0
部屋にはベッド、机、本棚があり、壁は扉に鏡が付いた作り付けのクローゼットになっていた。
ベッドにはきちんとカバーが掛けられていた。先生の几帳面な性格がうかがわれる。
ただ、その上に大き目のクマのぬいぐるみが置いてあった。それを見た女子連中は大喜び。先生は恥ずかしそうにしていた。
「机の上のものは絶対に触ってはだめ」
机の上には色々な書類が置かれていた。また本棚にも色々なファイルがあった。
どうやら教育上の資料も含まれているらしい。
俺は自分の部屋と比べて余りにもきちんとしている先生の部屋にちょっと凹んでいた。
俺の部屋って汚いし漫画とか服とかラケットとか散らかってるし。orz

51 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:17:10 ID:Hbr+rTes0
みんなしばらく物色していたが、そのうち先生に促されて部屋を出ようとした。
その時、女子の一人がどこから探し出したのか先生に写真を見せて
「せんせーこの人だあれ?」
と聞いた。何事かとばかりに他の連中も群がる。先生は慌ててその写真を取り上げると机にしまった。
俺はその写真を見ることが出来なかった。
「だれ?恋人?」
女子連中がここぞとばかりに激しく突っ込む。先生は苦笑いしながら否定する。
「でも先生肩組まれてたよ、こんな風に」
その女子は隣の女子の肩を抱きよせた。周りの連中がいっせいに先生を冷やかす。
先生は相変わらず苦笑いしながら、友達であることを訴えていた。また別の突込みが入る。
「じゃあ、今は彼氏がいないの?」
「好きな人はいないの?」
先生は何も答えず苦笑いをしたままキッチンに逃げ込んだ。
「あー逃げたー、ずるーい」
明確な答えがもらえなかった連中のブーイングが先生を追った。

53 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:20:24 ID:Hbr+rTes0
この時、俺は先生の家に入ってからずっと感じていた違和感の理由がわかった様な気がした。

大人の領域

いくら俺が勝手に美香子先生との距離が近づいたと思っても、親密な感情を持っても、
所詮先生と生徒の関係、大人と子供の関係に過ぎないのではないか?
俺に対して向けてくれた先生のあの表情は全て生徒に対する感情だったのでは?
職員室で泣いてくれたあの時も?
廊下で抱きついた後のあの笑顔も?

そして”恋人”と言う名の存在
恋人という言葉がこんなにもリアルに感じたことは一度もなかった。

突きつけられた現実は俺の浮かれた気持ちを粉々にするには余りあるほど重かった。
俺は自分の気持ちが余りにも安っぽい気がしてやりきれない気持ちになった。

55 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:22:07 ID:Hbr+rTes0
その後出来上がったカレーを皆で食べ、近くの河原に遊びに行った。
俺はあまり気持ちが乗らなかったが、先生の前でそんな表情は見せたくなかった。
先生にもうこれ以上嫌な思いをして欲しくはなかった。俺は笑っていた。でも心は空っぽだった。

56 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:23:31 ID:Hbr+rTes0
先生の家に戻り一息つくと既に外は夕刻になっていた。
「そろそろお開きにしましょうか」
先生の一言が号令となり皆帰宅の準備を始めた。
みんなが外へ出ていく。俺が最後だった。玄関を出るときに今一度先生を見た。
先生は笑って言った。
「今日のカレーおいしかった?」
「はい、とっても」
笑って答える俺。
「よかった。みんな頑張ったもんね」
どうして笑っていられるんだよ俺、こんなんでいいのかよ。
先生もそうやって笑ってられるのが大人としての対応なのかな。先生としての対応なのかな。
やりきれない気持ちを胸に俺は先生に頭を下げて玄関を出た。
怖くて先生の顔を見ることが出来なかった。

57 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:25:37 ID:Hbr+rTes0
先生はマンションの外まで俺たちを送ってくれた。
全員で今一度お礼を言うと、ばらけながらもみんなで駅に向かった。
俺は振り返ることもなく駅へと歩いた。

電車に揺られながら俺は他の連中と今日あったことを話していた。
と言っても俺は外を見ながらほとんど連中達が話すことを聞くだけで、時々そうだねとか相づちを打つだけだった。
全てこれで終わってしまったのか。
でもこのままでいいのだろうか、このままで本当にいいのだろうか・・・。先生に思いを告げもしないでいいのか?
・・・
でもまたあしらわれてしまうよ。
相手は大人だし、先生なんだぜ。
俺の心でいろんな感情が、想いが交錯する。どうしたらいいか分からなかった。

59 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:26:09 ID:Hbr+rTes0
今日の出来事の話の中で女子の一人が写真に写っていた先生の恋人の話を始めた。最初に見つけた子だった。話はだんだん熱を帯びてくる。
俺は聞きたくなかった。胸が痛む。だけど確実にそちらに耳を奪われていた。

その写真はいつ撮られたものかわからなかった。でもどこかに出かけたときの写真である事は間違いなさそうだったと彼女は言った。
一緒に写っていた人は背が高く結構格好いい人であったこと、そして美香子先生の方を抱いていたこと、先生は笑っていたこと・・・。
みんなああだこうだと勝手なことを言い始めた。
女子は格好いい彼氏がいて写真を見られたなら別に”彼氏がいない”なんて否定しなくてもいいんじゃないかと言いだした。
「・・・別に聞かれてまずい人がいるわけでもないんだし・・・・」

60 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:27:15 ID:Hbr+rTes0
聞かれてまずい人・・・・俺はこの言葉を聞いたとき自分の中に先生にもう一度会って真意を聞きたいと思った。
でもその後どうなるのだろう。うまくいってもつき合えるのだろうか?俺が恋人になれるのだろうか?大体うまくいく可能性なんて全然無いじゃないか。
いろんな不安が心を駆け抜ける。でもその時俺の心にはそんな不安よりもとにかく先生に会って全てを話したい、そんな衝動が支配していた。

61 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:27:53 ID:Hbr+rTes0
電車を降りると仲間連中が俺をゲーセンに誘った。
俺はちょっと用があるからとそれを断って自転車置き場の方へ歩いていった。
と言うよりもそっちへ行くそぶりをしただけだった。
周りの人ごみにまぎれて皆が見えなくなると、俺は急ぎ足で駅に戻り電車に飛び乗った。

もと来た道を戻りながら俺はただひたすら緊張と激しく高鳴る鼓動とそしてどうしようもなく俺を支配する不安と戦っていた。
足が震える。
これで良かったのだろうか。

62 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:28:47 ID:Hbr+rTes0
先生の家に向かう最中、俺は一つの決心をしていた。
先生を困らせないように、決して迷惑を掛けないように、きちんと今までの事に対してお礼を言って。
確かに恋人と思われる人に対する嫉妬があったと思う。だから尚更大人の対応をしないと嫌われてしまう気がしていた。
そんなことを考えれば考えるほど甘い理想はどこかへ吹き飛んでいく。そんな言い方で想いが伝わるのだろうか?
大人の現実が俺の前に立ちはだかっていた。

それに俺は生まれて今まで告白なんてしたことない。orz

63 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/06(木) 01:29:28 ID:Hbr+rTes0
先生の家の前に立つ。止めようかと怖気づく。震える足。逃げ出しそうになる気持ち、でも今止めたら絶対に後悔すると押しとどめる気持ち。
俺は震える手でインターホンを押した。頭の中が真っ白になった。

ちょっと間があって美香子先生の返事が聞こえた。
俺は震える声で自分の名を名乗った。
またちょっと間があって先生は言った。
「どうしたの。忘れ物でもしたの?」
まだ寒い時期だというのに汗が噴き出す。
「先生に伝えておきたいことがあって。今いいですか?」
先生は何も言わずにインターホンを切った。
先生は出てきてくれないのではないか、高々十数秒の間だったと思うが、俺には果てしなく長く感じられた。
ドアの鍵が開けられる音に俺の体はビクッと反応した。
そしてドアが開いた。

日が落ちつつあった。

334 553 ◆kKJLWMS1vQ sage New! 2005/10/15(土) 01:51:58 ID:GvNBIApZ0
>63

続き・・・・・


当然先生の格好は分かれたときと変わらない。でもさっきとは違う雰囲気を感じた。
目を見てすぐにわかった。”先生”の目で俺を見ている。現実の壁を突きつけられ俺はここに来た事を後悔した。
半開きのドア越しに先生は俺に
「どうしたの?」
と問いかけた。俺は先生をちらちらと見ながらギクシャクと話をし始めた。
カンニングの時はすごく迷惑を掛けたこと、その後あまり先生の期待に答えられなかったこと、受験時も心配を掛けたことetc
話をすればするほど俺の中で今まで高ぶっていた緊張と興奮が氷のように冷めていくのがわかった。口調も淡々としたものになっていく。たぶん表情も笑ってはいなかったと思う。

俺の中の”言葉にできない情熱”と俺が選んだ”大人の言葉”がかけ離れたものになっていくのを感じた。

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現在ここまで。
エロい描写がないのでエロくない体験談というかとで。

女の先生とのエッチな思い出 放課後
http://sakura01.bbspink.com/test/read.cgi/hneta/1113046235/553-n
女の先生とのエッチな思い出 9時間目
http://sakura01.bbspink.com/test/read.cgi/hneta/1128243944/27-n

(・∀・): 150 | (・A・): 80

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