ありがとう、お母さん

2012/10/31 00:00 登録: えっちな名無しさん

地元のけっこう大きめの観光ホテルがさ、10年位前に経営危機になってしまって。
まあ受け皿企業が見つかって、それまでの古いやりかたからどんどんチャレンジ経営へ。
近郊都市からの無料バス整備やら。バイキング料理強化やら。
屋上超展望露天風呂やら。その並びに温水プールやら。平日鬼値下げ宿泊プランやら。
で。
しばらく家族の中で「いいなー、メシ美味そうだし風呂もよさそうだし」とか色々言ってた。
一番乗り気だったのは親父、その次に中2の妹。
俺は中間。温泉は興味ないけど、バイキングは気になる。
母親は若干引き気味。経営陣が変わる前に職場の慰安旅行で行ったらしく、その時の印象が最悪で。
「マズい料理を古臭い歌謡ショー見せられながら食い、その疲れはジジイ共と混浴の風呂では癒せなかった」らしい。
まあ、現実的に行こうって感じになったわけではなく、まあ地元でも有名なホテルの話題だったから、
まあCMが流れるたびにその話題がなんども挙がってった、ってくらい。

急展開したのは、そのホテルがあるB市の信用金庫に勤めてる姉ちゃんが帰ってきた日から。
B市でカラオケボックスとかパチンコ屋やら焼肉屋とかを経営してる会社で働いてるという、茶髪の男を連れて。
俺的には「もう2人でいっしょにアパートで暮らしてる」「いかがわしい感じじゃない。真面目に付き合ってる」
「結婚とか話したことないけど、まあ、ねえ」みたいな話を初対面で家族の前で話す男が信じられず。
しかし親父は、近所にもあるそのパチンコ屋にたまに行ってて、その話題になぜか食いつく。
妹は「○ャニーズのMに似てる、超イケメン!」と俺の知らない名前出してはしゃぐ。
母親と俺は愛想笑い×2。まあどうやら、この森っていうイケメン男は家族の3/5に受け入れられたらしい。
午後10時過ぎ。B市に帰る姉ちゃんと森。「あ、これ渡すの忘れてた」となんか紙の束。
「○○ホテルの宿泊サービス券。彼が用意してくれたの家族全員ぶん。だから、来月みんなで行こ?」
相変わらず地味メガネだけど、明らかに目元周りの化粧が変わった姉ちゃんが、森と帰っていった。

「結婚間近だな」と親父が感慨もなくあっさりと言い、妹は「同棲とか、今夜もしまくりじゃん」と言い母に叩かれ。
「私どうもあの人好きになれそうにない」という母の意見に、俺も同意した夜。

その日までの催促電話に根負けし、うちら家族はそのホテルに家族で行くことになった。
まあ高校3年にもなってだけど、久々の家族イベントに少しだけテンション上がってた。
B駅に迎えに来てた、姉ちゃんと森の姿を見るまでは。

一応俺の家族のスペック。
父親(44)。そこそこでかい電線屋の部長さん。顔&体はTHEおっさん。「少し背の高いきたろう」的。
野球大好き。学生時代は俊足野手だったとウソをこく草野球マニア。
母親(39)。ずっと専業主婦。似ている芸能人は若め、少し太め、地味めの高畑淳子。
ガーデニングの鬼。草むしり命。スティック式植物栄養剤に異様に詳しい。
俺(17)。特別何もない普通の高校生。多分普通に大学行く。
妹(14)。本人は蒼井優に似てると豪語する、パッと見地味な中学2年。
なのに全然蒼井優的じゃない、なんかレインボーやらラメやらが飛びまくるTシャツが大好き。

スポーツバッグやちっちゃめの旅行かばんをそれぞれに担いだ、どこから見ても家族旅行な面々。
それを駅で出迎えた姉ちゃん(20)は、メガネなし。黒いタンクトップ。ミニスカート。髪解き。意外と乳デカ。
森はそんな姉ちゃんの腰に遠慮なく手を回す。
同じようなタンクトップになんか凝ったシャツ。裾短いカーゴ。シルバーアクセ。
家に来た時は一応スーツだったけど、今はまず俺が着ても似合わないチャラけたカッコ。
なのに妹はテンションが上がり、父親は不機嫌な顔にもならない。

「・・・なあ、俺ちゃん」
「なに」
「ちょっと真面目に嫌やわ、森って子。なんで姉美はあんな子とつきあってんだろ」
「まあね」
「一応楽しく過ごしたいけど、ちゃんと姉美に言っとかないと、ね。俺ちゃんもそう思うでしょ」
「まあ・・・それは親から言ったほうがいいわ、なあ」

ホテルに向かうバス車中で、隣の俺にずっとそんなことを話してた母親。
姉ちゃんの露出過多な姿と、チャラい森の姿を交互に眺めながら。
そんな合間も座席でちち繰り合う2人の姿を眺めながら。
母親は露骨に俺と嫌な顔をしていた。嫌な顔をしていた、はずなのに。

ホテルに着いて、あからさまに森について違和感を口にしたのは意外にも妹だった。
親父と母親は、新しいホテルのパンフレット見ながらロビー&売店を散策。
俺と妹はチェックインの手続きしてる姉ちゃんと森から少し離れて荷物見張り。
俺はどうでもよくてただ携帯いじってたんだけど、妹はフロントのほうをずっと見てた。
そしたらしばらくして、俺をひじでちょんちょん突っつく。

「・・・何?」
「なんか、あの人違うわ」
「何がよ」
「・・・自分のバッグ、ホテル女の人に投げたりしてる」
「ああ、まあ」
「・・・ずっと姉ちゃんのお尻触ってるし」

見たら、確かに姉ちゃんのミニスカートの上から触りまくり。

「何だよ。かっこいいとかさっきまで言ってたやん」
「顔とかじゃなくて、仲良くなれんタイプやって思っただけ」

結局、最近家族団らんでエロトークをよくして苦笑いされてた妹も、普通の中2だったと。
俺はと言えば、姉ちゃんの尻の撫で回され方に少し興奮してたけど。

「そういうのは、母さんにちゃんと言っとけ。親父はこの件では信用ならん」
「ん」

そしたらそのタイミングで、両親が戻って来た。親父はなぜかバカ高いアイスをほおばってる。
少ししたらチェックインを終えた姉ちゃんたちも戻って来た。

「バイキングも無料チケットもらっちゃいました。俺の力で」
「おお、なんか森くんすげえなあ」

やはり親父は、分かりやすく感激するスタイルで、森と肩組んだりなんかしてる。
そんな2人を笑顔いっぱいで眺める姉ちゃん。愛想笑いの俺と母親。愛想笑いも消えた妹。

そのまま森主導で、客室へと案内されていく俺ら家族。
母親が親父に売店で「あんた、姉美のことこんな感じでいいの?」と聞いたら、
「ガンコ親父っぽいのは合わん。昔から相手が来たら「よっしゃよっしゃ」でいこうと決めてた」そうな。
そして。順番に案内された部屋割りがなんか納得のいかない感じだった。
1部屋めは親父と母親の部屋。眺めのよさそうな普通のツイン。少し離れて姉ちゃんと妹の部屋。同じようなツイン。
俺は、なんか異様に広い感じの部屋。本来家族連れが泊まりそうな和室。山側だけど。
12畳くらいあって、その真ん中をふすまで仕切れる感じの。俺この時点で意味不明。

「俺、せっまいシングルで1人泊まりますんで。しばらく家族で楽しんでくださいよ。じゃあまた後で」

実際階も違う場所に、森はさっさと降りていった。家族、きょとん。

「まあ、家族旅行っぽい感じ作ってくれたんやろう。感謝せんとな」
「それなら2部屋くらいでいいやん」
「いっぱい取ってくれたことに感謝せんか」

俺と親父の話はそれ以上進まず。姉ちゃんと妹はなんか楽しげに会話。前の雰囲気に戻ってはしゃいでる。
まあ各自部屋に荷物を運ぼうってことで、一時解散し俺も、ツイン2室から少し離れた和室に移動してたら。
トイレに行ってた母親が俺ん所に来て。

「ほら見てこれ!エステのタダ券もらった!普通は25000くらいするらしいって」
「そりゃすげえな。ホテルの人に?」
「ううん。たった今、森くんに。トイレの前で」

一瞬だけ、なんか違和感を感じて。その時俺は「値段高すぎるだろ」くらいの違和感かと思ってたんだけど。

「あんたごめん。父ちゃんとお風呂一緒行ってて。このエステ4時までだから急がんと」

まあさっきまでの微妙な表情とはうって変わって、母親は自室に走っていった。多分すぐにエステに行く気。
俺は自分の部屋にいったん戻って。ふとさっきの違和感を思い返してた。

一旦下に下りて、エステのチケット渡すためにすぐに戻って、母親を女子トイレの前で待ってたのか?森って奴は。


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