純愛

2005/11/09 00:39 登録: えっちな名無しさん

2003年夏、私には好きな人がいた。

部活の合宿までは、すでに一ヶ月をきっており、合宿中の行動単位となる
五人一組の班はもう決定済みであった。
私の部活では、毎年班を分け、班の中で二年が一年を指導することになっており、
班内の二年は基本的に二人か三人であった。
奇跡的に、私の班の二年は私とその子の二人のみ。

これほどの好条件はないのだが、とある理由により私の心境は複雑だった。
私の親しい友人も、その子の事が好きだったのである。
お互い直接話したことはないが、おそらく両方ともその事に気づいていた。

そんなおり、ちいさな事件が起きる。

合宿を一週間後にひかえた土曜日の午前。
私はなんのきなしもなしに、友人と同じ班である女の子と座って話していた。
が、それがいけなかった。私としては普通に話していたのだが、
周りからはとても仲が良さそうに見えたようであり、それを見ていた企画係の人が
後で私のところへ来て「班かえてあげよっか?」といったのである。

もちろんその場は全力で否定したが、家に帰ってからとある恐怖が私を襲った。



よく考えると、少し前に私が冗談で友人に「班かわってやろっか?」といった時、
企画係は私のすぐ近くにいた気がした。
もし、それもあいまって今日私にあのセリフを告げたのだとしたら、これは非常にまずい。
否定したのを照れ隠しと取られたなら、勝手に班をかえられかねない。
せっかく好きな子と同じ班になったのに、そんなことをされてはたまったものではない。

私は急遽企画係に連絡を入れることにした。
が、しかし、私はおくてであり女の子のアドレスなんて知る由もなかった。

悩んだ結果、私は部活の連絡簿を使うことにした。
流石に私も直接アドレスを訊かずに女の子にメールすることがどれだけ罪であるかぐらいは
知っていたが、まぁそこは全力で謝ることにした。
というか、それどころではなかった。

結果、なんとか要件は伝えることができた。

その後一週間は比較的平凡に終わり、例の合宿を向かえることになる。



…残念ながら、合宿は私が望んでいたものとはやや違った。
なんと例の友人は合宿中ほぼずっと私の班に付きまとったのである。
まさかこう来るとは思っても見なかった。
が、よく考えると相手はかなり手馴れた告白男。今思えばこのくらいは想定すべきだったのかもしれない。

私の好きな子(以後Aさん)が私に話しかけようとしたりすると、
そいつがわざとらしく話しかけて邪魔をするのである。

実際あれはひどかった。

それでも、私はAさんと同じ班であることが嬉しくてたまらなかったし、それだけで幸せだった。
そう、今思えばこの時なら「同じ班になったし、アドレス教えて」ととても自然にアドレスを訊けたはずであった。
が、しかし、当時私は本当におくてで、アドレスを訊くことさえ頭になかったのである。
そうして合宿は幕を閉じる。


その後幾度となくアドレスを訊こうとするも、私にはたったそれだけの勇気もなくて訊くことができなかった。
結局、私がAさんのアドレスを知るのはそれからだいぶたった十二月のことである。
その頃すでに、アドレスも満足に訊けなかった私はどうしたらいいかわからなくてこのことを友人に打ち明けていた。
そう、ひょんなことからメールするようになっていた、あの企画さん(以後Bさん)である。





そして時は流れ2004年夏。
果てぬことのない陽射しの中、私はとある駅にいた。
告白なんてしたことのない私が、どうしたらAさんが一人の時に遭遇できるかを
必死に考えたすえの苦肉の策である。

高校三年の夏休み。本当なら受験勉強をするべきなのだろうか。
もう何日同じ場所にいたかわからなかった。
いったい何時間ときをこぼしたのかわからなかった。
でも私はずっと同じ場所にいて、ひたすらAさんを待っていた。

そして


…結果はわかりきったものだった。いや、実は初めからそのつもりだった。
ただ、気持ちを伝えたかったのだから。
それでも、わかりきっていたけれど、全てが終わった後はどうしようもなくて、
その日私は、生まれて初めてあの言葉では言い表せない感情を知ったんだ。




それから約二ヶ月。
ほぼ予想していたことが私の身に降りかかった。
そう、Bさんのことを好きが気になり始めたのである。

そしてさらに時は流れ十二月のとある日、私の友人(前半の人とは別人)が私に向かって
「Bさんってめっちゃ萌えるよなー」と言ってくることがあった。
その時、なんだかよくわからないけれど「許さん」という感情にかられ、
私は私の中で本気でBさんが好きなんだ、ということを確認した。

が、しかし、すぐには告白できなかった。いや、今回は意図的にしなかった。
センター試験をまじかにひかえたこの季節、私が告白して動揺させるなんてことはしたくなかったのである。



そして卒業式。
残念ながらこの日はBさんをつかまえることはできなかった。
その二日後、私はBさんに電話で告白することになる。
電話で告白するのはあまり気が進まなかったが、もはや仕方がなかった。

結果は、恐ろしく悲劇的なものだった。




とても消え入りそうな声で、とても言いづらそうに私はこう言われた。
「友達以上には思えなくて…」と。


今度こそ全てが終わった、と思った。俺の中で全てが崩れていった。
七帝の一つに受かったが嬉しくもなんともなかった。
その月中に二度ほどその子からメールが来て、私の高校生活は終わりを告げた。

だが私は大学生になった後も、その子のことを思い続けた。
二度と会えないはずの、その子のことを。
そして五月の中旬。
その子の誕生日の日。
今日しかないと思った。もちろん三月以来メールなんて送ったことはなかった。
けれど今日メールを送れば、それは奇跡となりうるかもしれないと思った。

‘ハッピーバースデイ’
この一言に全てをこめて、ずっと今でもすきなんだよという気持ちをこめて私は送信ボタンを押した。


…はたして奇跡は起きた。

帰ってきたメールには「あの、突然ですが今から電話していいですか?」の文字。

そして

大学入ってからのこととかを少し話した後、こう言われたんだ。

「あのね、あたしね、○○君のこと、好きになってきました。」と。

(・∀・): 58 | (・A・): 61

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