サイレンスバレンタイン
2013/01/21 10:13 登録: えっちな名無しさん
バレンタインの思い出。
朝早く学校に行って、好きな人の靴箱にチョコを入れておいた。
教室で、私の後ろの席で彼が、うれしそうに友達と話してるのが聞こえた。
「俺初めてだようれしいよ〜」
「よかったなー!でも誰から?」
「それがわからんのよー」
そんな会話が聞こえた。
彼と友達が小さな声で、推理を始めたのが、私にも少し聞こえてきた。
彼が期待してる活発でかわいい女子とは、私は根本的にタイプが違う。
あの子じゃないか、どの子じゃないかと、彼が話してる名前の中に、私の名前はなかった。
でもそれで良かった。私にとって恋とは忍ぶものだった。
初めて女からチョコをもらった!と彼が喜んでくれてるからそれで良かった。
私からだと知ったら、彼はきっと嬉しくないと思う。
翌年も同じように、彼の靴箱にチョコを入れようと思っていた。
でもその時は彼には彼女がいて、完全な横恋慕だった。
迷って行動を起こせずにいる内に、結局チョコをカバンに入れたまま、放課後までを過ごした。
でも放課後うっかりして、そのチョコを持ってるとこを見られてしまった。彼に!
私はあわてて言ってしまった。
「君に渡して欲しい、って預かったんだよ!」
「ふうん、誰から?」
モテるようになって彼女もいる彼は、喜ぶ顔は見せなかった。さみしくなった。
どうあれ、私からだと言うわけにはいかない。
「それは…言っちゃダメなんだって」
「そっか…去年も似たようなことあったなあ。正直気持ち悪いから要らないよ。その人に返しといて」
実らぬ恋だと知っていても、彼が喜んでくれなかったこと、チョコを受け取ってくれなかったことは、私を失望させた。
失意のまま家に帰り、自分でチョコを食べ始めた。
そこに弟が帰って来て、驚くように言った。
「それどうしたの?」
「好きな人に、受け取ってもらえなかったよお…」
泣き始めた私を見て、弟も自分のカバンからチョコを取り出すと、寂しそうに言った。
「俺も。兄ちゃんもそっか。俺たち似たもの兄弟だね」
そのあと一切言葉はなかった。静かに静かに、2人で慰め合った。お互いの唾液が混ざったチョコはほろ苦い味がした。
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(・∀・): 38 | (・A・): 43
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