達也と南:本当のその後1
2005/11/25 12:05 登録: えっちな名無しさん
新体操インターハイ優勝の朝倉南と、夏の甲子園優勝投手の上杉達也は、それぞれに
明青高校や出身地の街や自治体の優勝祝賀を終え、マスコミによる取材攻勢を「普通
の高校生に戻り、進学の準備に入ります」と宣言して、巷の喧騒から逃れるように二
人連れ立って和也の墓参に訪れていた。
「和也、お前の無念を晴らしたぞ。」
「カッっちゃん、見守っていてくれてありがとう。タッっちゃんは、カッっちゃんと
南との約束を代わりに果たしてくれて・・・。甲子園優勝というおまけまでつけて
くれたよ。カッっちゃんが投げていても、そうなっていただろうけど・・・。」
「後はお前との約束・・・。南に相応しい男として二人で争うことはできなくなっち
まったな。・・・ここからは、お前の代わりではなく、上杉達也として、南を!
それでいいよな。・・・ばかやろう・・・お前以外に・・・南を奪える人間なんか
・・・現れるわけねじゃねえか・・・。ははは、悩む必要も苦しむ必要もなくなっ
て、こんなに楽なことは・・・・・・なくなっちゃたよ。」
「カッっちゃん、カッっちゃんが気付いていた通り、南は・・・・南が好きだったのは
ずっとタッちゃんだった。・・・・。それなのに、南は・・・私は、カッっちゃんに
重荷を背負わせて・・・グスッ・・・『甲子園に連れて行け』だなんて・・・言っ
て、南のために、頑張って・・・頑張って、その約束を果たしてくれても、南から
は何にもしてあげられないのに・・・。南のためだけに、・・・全てを私のためだ
けに・・・・。ウッ・・・ごめんね。ごめんね、カッっちゃん。」
「和也。お前は、俺を南に相応しい人間に育てるために、一緒に生れてきてくれたの
か・・・。・・・違うよナ?!・・・。でもな、お前が認めてくれていた俺という
男の価値は、確かにお前によって大きく育ててもらったよ。今の俺を育ててくれた
のは、誰でもない・・・・南でさえない。和也だよ。だから、今の上杉達也は、
上杉和也の代わりではないけど、・・・・上杉和也はまぎれもなく俺の中に居る。
・・・・ありがとう。」
帰途の電車の中。
「なあ、南。大学な・・・。やっぱ、お前と一緒のとこに行くってぇのは無理がある
だろう。学年トップクラス、偏差値68のお前と、2年半もろくろく勉強もしねえ
で偏差値50の俺が、実質5ケ月でお前のレベルにあわせるってのは無理がねえか」
「なぁに言ってんだか。タッちゃんの中にはカッちゃんが居るんだって自分で言って
たじゃない。カッちゃんは、いつも私の上に居たわよ。全ての能力は・・・僅かず
つだけどタッちゃんの方が上だったじゃない。そりゃ今の学力は・・・ねぇ、自分
で言ってる通りだけど、それは自業自得ってものよ。後は、南のために頑張ってよ。
年内、とにかく一緒に頑張ってみよ。」
「また、南のためか・・・。さっき、和也に謝ってなかったか?」
「だって、今までだってタッちゃんは南との約束だけは破ったことがなかったでしょ。
誰よりも南のことを思って、・・・南がいくら隠しても、他の誰もが気付かない・・
カッちゃんでさえ分からない私の体や心の変化を敏感に感じて、危うくなると必ず側
に居て、何気なく支えてくれた。 ・・・ねぇ、私と一緒じゃなくてもいいの?
今まで、ズッと一緒だったんだよ。これからの大事な人生で、最も輝いていられる
時期に、何で離れなきゃいけないの? ・・・タッちゃんは強いよ。それは南が一番
良く知ってる。でも、私は・・・・、南にはタッちゃんがいつも側に居てくれない
生活なんて・・・・考えられない。」
「そんな簡単なもんじゃねえと思うけど・・・。分かったよ。まあ、頑張ってみるか。
しかし、これは甲子園以上の重荷だな。」
「よ〜し、それじゃあ、勉強はビシビシいくからね。その代わり、もし約束が守れたら
3泊4日の旅行をもれなくプレゼントっていうのはどう? もれなく南が付いていき
ます!」
「・・・・・・・」
「・・・・何で、黙るのよ!!」
「・・・ば〜か。言いながら耳まで赤くしてんじゃねえよ。」
「・・・・だって、タッちゃん、自分からは絶対そういうこと言ってくれないんだも
ん。 ・・・・純情可憐な乙女にこんなこと言わせるな(俯いてか細い声)。」
「・・・・・・・(ニヤケ)」
「あっ、Hなこと想像してる・・・。えっち、えっち。」
「るせえよ。ば〜か。その前に襲っちゃるぞ・・・!」
「あらら、開き直ってるよ。なんでしょ。
残念ながら、それまでは他の事考えてる余裕ないからねーだ。」
電車を降り、二人の家への帰路にある河畔の小さな公園のベンチに腰を降ろし、ジッ
と黙って感傷に耽っていた二人。宵闇の中、切れ掛かった街頭がまたたいていた。
達也が南の方に顔を向けると、南は思いつめた様子で達也を見つめていた。
南が達也の首に手を回す。達也は遠慮がちに唇を寄せ、軽く南の唇に触れると、
南は回した手に力を込め、達也の顔を引き寄せ、それまでの思いをぶつけるように
達也の口中を貪った。
目には一筋の涙がつたっていた。
あっという間に月日は流れ、二人三脚のそれこそ脇目も振らない猛勉強で、みごとに
志望校に合格し、進学準備やクラスメート、部活の仲間たちとの別れのセレモニーが
続いた後、卒業式も無事終えた達也と南は、特別に配慮された和也の卒業証書を持っ
て墓参を済ませ、約束の旅行に出かけた。
<続く>
続編:達也と南:本当のその後2
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