分かれた母親との再会
2005/12/04 14:05 登録: 白
俺の家庭はちょっとだけ変わった環境になってる。いわゆる離婚して、父子家庭ってやつだ。親父は悪い奴じゃないし、分かれたのは母親の浮気だったから、俺は親父と二人で、結構仲良くやっていた。
俺が大学に入った少し経った時、急に親父が
「母さんに会いに行こう」
って言い出した。俺からしてみれば10年ぶりくらいの再会だから、当然緊張するし、拒絶したい考えもある。けど、せっかくだし会いに行った方が良いのかと思って付いて行ってみた。
着いたのは、都の中でも一番デカイ病院だった。名前は伏せとくけど、多分知ってやるは結構多いと思う。どうやら、母親はそこに入院しているみたいだった。
ナースステーションで記帳して、病室まで歩いた。母親の部屋は個室だった。扉を開けると、そこには人工呼吸器に繋がれ、か細い呼吸をする母親の姿があった。親父が寄っていって、そっと頬を擦った。
「悪かった。もう少し、もう少し早く許してやれば良かった・・・」
親父は泣いていた。後で聞いた話だが、俺が来る前日に、余命がもう数日しか無い事が親父に伝えられていたらしい。
親父がベッドから離れると、今度は俺に行くように親父が首を振った。俺はベッドに寄ったが、話す事が見付からない。もうずっと会っていなかった母親に、何を話せば良いのだろうか。
「なぁ・・・お袋。アンタは幸せだったか?」
俺は無意識にそう尋ねていた。今、あの時なんでそんな事を言ったのかと聞かれても、きっと答えられない。
「アンタは浮気して、離婚して、再婚して・・・幸せだったのか?」
「・・・・・・」
「答えろよっ!」
母親は答えなかった。見れば、心拍数は極めて低い値を示していた。
「!?オヤジ、医者を!」
親父に心電図を見せ、すぐに医者を呼び出す。急いで来た医者に連れられ、集中治療室へと運ばれた。
ーーーーーーーー
母親は、結局死んだ。死因は心筋梗塞と、肺炎だった。
親父は毎年、母親の墓に花を供えている。
だけど、俺は供えていない。
あんな別れ方をして、話しにくい雰囲気だったんだ。
もう、二度と話す機会はない。
だが、一つだけ言える。
俺はもう、母親に会えない
それが無性に、寂しかった・・・
(・∀・): 45 | (・A・): 53
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