ベトナムに残してきたもの

2014/03/24 14:03 登録: 誠司と金

18の時にアメリカに長期滞在することになったんですがそん時の話。
すっげぇ豪快なおっさんがおりました。ガハガハ笑いながらビールグビグビのんで
何ポンドあんのか分からん肉にむしゃぶりつくような、まぁ頭からヤシの木はえてる系の人です。
彼は銃砲店をやってるんで、ガンオタな私とはすぐ意気投合。
話を聞いてるとベトナムに出てたらしいんですね。おぉ、すっげぇ。
若い頃は女の子が自分から股を開いたくらいのイケメンだったといってました。
(実際イケメンでしたが今は油ぎとぎとなおっさんです)
で、ちょっと口に出せない様な作戦とかにも参加してたらしくって(どんなのか私も知りません)
勲章とかを自慢げに見せてくれました。ここのみなさんはよくわからんと思いますが、
シルバースターやらパープルハートやらいろいろ持ってました。私が知らない勲章も沢山。

そんな人は、普通軍隊に残って職業軍人やってるようなもんだと、私は思ってました。
でも、そのおっさん、なぜか自分の土地に帰ってきてずーっとここで銃砲店やってるみたいなんです。
なんでだろ?と思ってましたがその理由は全然しゃべってくれませんでした。近所の人に聞いても理由は
教えてくれませんでした。
どーしても気になったので、まぁ、酒を一緒に飲んでるときにちょっと探り入れてみたんです。
するとね、あっさり教えてくれました。
ベトナムにいってた頃に地元民と仲良くなったみたいなんです。ベトナム戦争っていっても
必ずしも
「逃げる奴はベトコンだ。打ち返してくる奴はよく訓練されたベトコンだ。ここはほんとに地獄だぜフーファファー!」
状態では無かったようです。でもって、そんなかにプマリって言う子がいたらしいんです。
プマリって子は、彼曰く絶世の美人だったそうなんです。彼らはそれはもう激烈に熱情的な恋に落ちたらしいんですが、
運命のテト攻勢の日。サイゴンとはまた別の都市ですが、北ベトナム共産軍の猛烈な攻撃を受けて
そこから一旦撤退する事になった時、プマリにも逃げる様に教えたらしいんです。

「北側は敵が包囲してるから、南側に逃げる。俺らはもうちょっととどまって敵の頭を抑える。
 ベニーが砲兵部隊にいるから、ベニーのところへ行って先逃げろ!」
(ベニーっていうのは共通の友人だったらしいです。)
と、指示を出して、逃がしたところ、しばらく撃ち合っているとベニーのいた砲兵部隊の撤退している方向からものすごい爆発音が。みると迫撃砲でどかどか砲撃されてるみたいでした。
なんとか逃げ仰せて、あとで砲兵部隊に行ってプマリを探したところ、
ベニーは死亡。プマリは知らない。と言われたそうです。
実際砲兵部隊は再編成にまわされるほど被害がひどかったらしいです。
彼は思った。死んだな。
その後、ご存知の通りアメリカが撤退を始めた訳で、彼ももれなく本国に帰った訳です。
私「それとここにいるんと何の関係があるの?」
おっさん「ぐぇーぷ。俺はプマリにここの住所を渡しておいた。終わったらアメリカにつれて帰るつもりだったし。
だから俺は今でも待ってんのよ。そのうち呼び鈴ならして入ってコネェかなって。」
ちょっと昔を思い出したのか、遠い目をしながらそう言ってました。軍隊やめてこの実家に居座り続けてるのもそのためだそうな。
他にもベニーとかの思いでとかも聞いたりして、すっごい仲が良かったです。学校終わったらおっさんとこで遊んでたし。帰国してからもエアメールでやり取りしてました。彼が「パソコン?ha! FxxK!!!」って人だったので。

でもってつい最近。私も25になり、そろそろニートかと思いだした頃です。
エアメールが来ました。「お、ジョーイ久しぶりじゃん」と思いつつ、開封したところ、
写真と手紙が。とりあえず手紙を読みました。見慣れた汚い字です。

「イェーハッハ!元気にしてるか?お前もそろそろ年頃だな!
どうだ?そろそろ嫁さん見つけてよろしくやってるころか?それともまだ一人でか?
俺の方はぶったまげる大ニュースだ!どこぞの筋肉バカが知事になったのよりもっとスゴいニュースだ!
プマリが来たぞ!あいつは生きてた!ベニーの砲兵隊には追いつけなくて北の連中にまぎれて逃げたらしい!考えてみりゃそっちのほうが賢いわな!イェーハー!とりあえず俺らは結婚した!しばらくはここでプマリとやってくつもりだ!俺の息子が使い物にならなくなる程長く待った甲斐があったもんだ!またこっちに顔出せ!」
(意訳です、イェーハーは本当にyeahhhhhh! と書いてあります。)

…マジで?
どうやらプマリさんは生きててアメリカに渡航して彼のところまで行ったみたいです。
すげぇ〜。と思いました。何年かかったんだろか。
スゴく長い年月かかりましたが、ベトナム帰りのジジイにも春が来たようです。頭の中はいつも春でしたけど。
同封の写真を見ると、ニッカリ笑顔のみっともない太鼓腹のじいさんが初老のアジア人女性と並んで立ってます。
ベトナムの話をするジョーイはすごく寂しそうでしたが、送られてきた写真を見て納得しました。

あぁ。ジョーイのベトナム戦争は今終わったかと。

俺はあんな風にはなれません。彼はコレからもファッキン・グッドな人生を歩むんじゃないかなと。
むしろそれを願います。
涙が出るほどイイ話ではないけど人生最高に良い話。おしまい。



すんません、ジョーイは銃砲店のオッサンの事です。
海外の事だし本名でもだれもわかんないでしょ。多分。
あ〜寝られん。今日15時まで寝てたのがいかんのかなorz
熟年結婚うらやますぃ。

出典:2ch
リンク:2ch

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