動かされる心
2006/02/17 22:03 登録: えっちな名無しさん
「……」
「……」
沈黙を保ったまま、並んで歩いていた。
そっと、雪尋の顔を見る。自然と、視線はその唇へと向かう。
雪尋の、唇。あたしとキスした唇。Eとキスした唇。…そしてきっと、他の人とも。
雪尋はキスに慣れている、と思う。それは以前、キスしたときにも思ったことだけど。今日のEとの様子を見て、やっぱりそう思った。
Eがキス魔なのは、あたしたちみんなが知っている。あたしも、酒の上での戯れで、Eとキスしたことがあったけれど。
Eはもの凄くキスが上手い。舌を巧みに絡めて、相手の思考を奪ってゆく。
恥ずかしいことに、あたしもあっという間にフラフラにされてしまった。相手を虜にするキスというのは、ああいうものなんだろうと思う。
でも雪尋は、Eとキスしながらも抵抗してみせた。
Eが飲み会でいろんな人とキスをするのを見てきたが、抵抗できる人を見たのは初めてだった。
だからきっと、雪尋も相当にキスが上手いんだと思う。そして、キスは慣れで上手くなっていくものだ。
…雪尋が、いろんな人とキスをしている。あたしの知らない、誰かと。
そう思った途端、背筋が震えた。胸の奥から、よくわからない衝動のようなものが一気に込み上げて来た。
嫌だ、って思った。雪尋が誰かとキスするなんて、嫌だ。
もう一度、雪尋を見る。少しだけ、乾いた唇。
誰にも、渡したくない。その唇を、独り占めしたい。
…あたしは、かなり酔っていた。
だから、あたしを激しく突き上げる衝動を、止めることが出来なかった。
それはきっと、あたしがそれを望んだから。心の底から、そうしたいって思ったから。
だから、あたしは、
「…ねぇ」
その衝動に、身を任せることにした。
「…あたしにも、してよ」
―――乾くくちびる ひとりじめするの―――
(・∀・): 53 | (・A・): 95
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