「俺が子供の頃の土曜日ってよかったなぁ」を読んで
2006/02/24 13:44 登録: えっちな名無しさん
1年半前くらいかな、式の3週間前に、婚約を破棄されたんだ。
当時、俺は31歳で彼女は27歳で、俺と彼女と5年つきあってた。
1999年の9月から、そのキャンセルは2004年の8月だった。
思い出はね、そりゃたくさんある。
色々なところに出かけたし、いっぱい遊んだし、長く長く一緒にいたから。
例えば、小学校からずっとサッカーやってる俺が、日韓W杯のチケットを取りたくて、
あちこちの電話を使って登録してた時、
彼女は「私も家族の電話みんな使って登録するね」と言ってくれて。
そしたら、彼女の登録番号が最優先の番号になった。
下2桁が、70幾つか、だったと思う。
それはつまり100分の1の確率で、「俺とコイツは運命だな」、なんて思ったりした。
思い出は、話せばキリがない。
いいことも、そうでないことも、笑った景色も泣かせたことも、
幸せだった思い出もたくさんある。
そういうのが全部、真っ白っていうか崩れたっていうか、
全てが否定されたような気持ちになった。
何度も泣いた。
親や会社の上司に、「結婚、ダメになっちゃいました」って話しては涙が溢れて、
会社の非常階段で1人で泣いたこともある。
「楽しいことも悲しいことも、幸せな気持ちもたくさんもらったけど、
結婚するには、あなたはどこか、違うんじゃないかなと思いました」
って、彼女からはたったそれだけの手紙をもらって。
手紙から2週間して、ようやく会って話せた時も、途中からはボロボロに泣いた。
泣いたら駄目だ、ちゃんと話をしなきゃって思うほど、溢れる涙が止まらなかった。
もう、引き返すことは出来ないんだなって。
その手紙をもらう、ほんのその3日前まで、俺は彼女と夏休み旅行に行っていた。
後から考えれば、そういえば様子が変だったかなってとこもあったけど、
その時の俺は、彼女の様子に気付けなかった。
浮かれてたのかな、結婚で。
ちょっと自分がアホみたく思えた。
プロポーズは、04年の2月29日したんだ。
言葉はありふれてて、「俺と、結婚してください」って。
でも4年に1回しか来ない、そんな日を選んで。
滑りに行った雪山の真っ白な中で、そう伝えた。
「うん、いいよ」
そう言った彼女の笑顔が、嬉しそうだった。
俺が言いたいことは、その婚約破棄が泣けるとかどうこう、ということじゃなくてね。
今、少し前の「土曜日」の話を読んでて、「あの頃は空が澄んで見えた」って。
それで、少し泣けそうになったから。
もう今は、あの失恋のこともほとんど思い出しもしないけど、
ふと、泣けそうになって。
しばらくずっと、「待とう、戻ってくる」って、俺はそう思ってた。
もう1度、きちんと気持ちを伝えに行こうと思ってた。
でも結局、出来なかった。
もう1度拒否されるのが、たまらなく怖かったんだと思う。
どうせ」ムリなんじゃないかって。
情けないけど。
大人になるのは、汚れていくことだ。
「あの頃済んでたのは、空じゃなくて俺たちの目と心だ」。
経験して、世間を知って、大人になって。
人はそうして汚れていくくせに、臆病にもなっていくんだなって。
例えば何も知らない初めての失恋だったら、
何も考えずに、当たって砕けても、もう1度向かって行けたんだろうか。
「どうせ」駄目だった、としても。
大人になっていくことは、何かを失うことなのだろうか。
失ったものの代わりに、何を得られたんだろう。
俺は、彼女を恨んだし、憎んだ。
どうして俺の人生を潰すようなこんなひどい醜いことを、
と呪いたくなるくらい苦しかった。
手紙だけで、俺と向き合って話しもせずに責任逃れして、って。
けれど、自分の心に向き合えず逃げたのは、俺だったのかもしれない。
ふとそれを思い、俺はちょっと泣きそうな気持ちになった。
土曜日のその澄んだ空に、戻らない景色が1つずつ、流れてはまた、消えていくようで。
色あせた空の色。
「長かったね」、って彼女の最後の言葉を、駅のホームのベンチで聞いたのを思い出した。
半年後に俺は、彼女からもらったモノを全て、ダンボールに詰め込んで送り返した。
もらったプレゼントも、その包装紙も、借りてた本やCDも、手紙も写真も全て。
もしかしたら、ひどく傷付けてしまったのかもしれない。
でもきっと、あの時は、ああするしか出来なかったんだろうとも思う。
あれから1年、俺は来月、結婚する。もちろん、全く別の女性だ。
彼女との5年間は、それ以上でも以下でもない。
自分の大事な人生の中の、5年間と言う変わらない時間だ。
婚約破棄から、辛く苦しい時間もあったけど、
それをプラスの力にして、悲しみも優しさに変えて、
家族になる人を、大切に、幸せに、守っていきたい。
失うものもあるけど、変わらないものだってある。
失敗や「さよなら」が教えてくれることも、人生にはたくさんある。
明日は土曜日だ。
少しゆっくり、のんびり過ごそう。

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