腕を這うもの
2006/03/20 22:26 登録: カダンS
この実話は怖いというかキモイというか…虫の嫌いな方は読まない方が良いかも知れません。
僕の実家には花壇を造るような庭が無かったので、僕の母はプランターに様々な植物を植えて楽しんでいました。
僕もたまに植物の手入れを手伝いました。僕の好きなクチナシの花は春先や初夏には葉に蝶の幼虫が付くので箸で摘んで駆除したりしていました。
さて、それは今から十数年前の異常に暑かった夏の夜の出来事です。
その日の夜も気温が下がらず、茹だるような熱帯夜でした。でも僕はエアコンが苦手なので窓を開けて網戸にして汗だくになりながら寝るのです。
僕は暑さに辟易しながらも、窓の外のすぐ近くに置いてあるプランターのクチナシの花から漂ってくる甘い香りを嗅ぎつつ、いつしか眠りに落ちていました。
どのくらい寝た頃でしょうか。
僕は自分の体に何かの感触を感じて眠気が覚めました。
まだ眠くて朦朧としながらも感触がどこから来るのか意識を集中し、その感触が左腕なのだという事に気が付きました。
そして僕は慄然としました。半袖パジャマから出ている左腕。その左腕を誰かが触れている感覚がするのです!
まるでヒンヤリとした女の指先で触れられているような感触…。そしてその感触が徐々にゆ〜っくりと動かされるのを感じて鳥肌が立ちました。
もしかして幽霊? 勘弁してくれよ。僕には霊感なんて無いし、金縛りにもなった事無いっていうのに!
僕は完全に目が覚めましたが、恐怖で目を開ける事ができません。
だが! その感触が手首あたりから上腕の方へ上がって来たのです!
僕はもう恐怖の頂点でしたが勇気を振り絞って目を開けてみる決意をしました。
そして薄目を明けて恐る恐る左腕を見てみると…
な、なんと! そこには女性の指の太さほどの黄緑色のイモ虫があっ!!
そのイモ虫が左腕を這って登って来ているのです!!
もう僕はそのあまりにもおぞましい光景に身の毛がよだちました。
僕は虫は全て嫌いという訳ではありませんが、イモ虫や毛虫系は身の毛がよだつ程嫌いなのです。
もう僕は恐怖の絶頂です。幽霊の方がまだマシだったかも知れません。だが何とかせねば! どんどん登って来るぞ!
僕はどうやってこのイモ虫を腕から取るかを瞬時に考えて行動しました。
僕は飛び起きるなり思いっきり腕を振ると、幸運にもイモ虫は枕の上に落ちた。そして網戸を開けるなり、外に向かって枕を振ってイモ虫を振り落としました。
恐怖の時が去り、まだ鳥肌の立つ中で僕はなぜイモ虫が部屋の中に居たのかを考えました。
そうだ、あのイモ虫はクチナシの花に付いてたヤツだ。今日の昼間、僕はクチナシの花に付いたイモ虫を取って水を入れた缶の中に捨てた。
だがイモ虫は生き延びて壁を登り、網戸と窓の隙間から部屋の中へ侵入したのだ。
だが…。なぜあのイモ虫はクチナシの花に戻らずに、食べ物となる葉っぱも無い部屋の中に入って来て僕の腕にたかる必要があったのだろう?
もしあのまま僕が気付かずにいたらイモ虫はどうする気だったのだろう? そして僕はどうなっていたのだろう?
害虫として駆除した僕への復讐だとしたら、一体何をする気だったのだろう?
僕はこの出来事を思い出すたびにこの疑問が湧いて背筋が寒くなるのです。

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