水原(番外編:二人の想い)

2006/05/18 16:41 登録: えっちな名無しさん

水原と付き合い始めて、はや3ヶ月が経とうとしていた。
俺達は決して焦ることもなく、自分達のペースで愛を育んでいった。
水原はお世辞にも地味な娘とは言えない。
でもデートなどはいつも、学校帰りに河川敷に座って話をしたり、
商店街をブラブラしたり…そういう地味なデートを求めてきた。
高校生の頃の俺は、まだちゃんとした恋愛をしたことがなかった為、
お金をかけるデートこそ女の子が喜ぶデートなんだという概念を抱いていた。
そんな俺に水原は、「一緒にいれるだけでいいんだよ」と言ってくれた時は、
一生水原のそばにいてやりたいと思った。
そんな幸せな日々が続いていたある日、俺は委員会の仕事というものを引き受けることになった。
基本的に無駄なことはしたくない性格の俺がなぜ委員会などに手を出したか…。
理由はかなり不純なものだった。
俺は数学がとても苦手で、授業も聞いていてもわからない為、ほとんど授業中に寝ていたりしていた。
ただでさえテストで点が取れないのに、平常点(提出物や授業態度でつけられる点)
が無くては必ず単位を落としてしまう!
それを恐れて、数学教師が担当する委員会に志願した。
その数学教師は、かなり生徒の好き嫌いで点をつけることで有名で(絶対、教師失格W)、
授業態度が悪いのを委員会活動で気に入ってもらい汚名返上しようという魂胆だった。
今思い出しても、なんて狡い生徒だろうと思う。W
水原もその頃からバイトの日が増えたりし、お互い忙しい日々を送るようになった。
俺も不本意とはいえ、委員会活動を頑張るようになった。
ちなみに俺が通っていた高校での委員会というのは完全有志のもので、
いわば教師の雑用の手伝い。ほとんどのマジメ君たちは就職や進学に有利という理由で、
なんらかの委員会についていた。
ちなみに俺は図書委員になった。
幸い本は好きな方だったので、まだマシだった。
やる事といえば、借りる者など限られている本の整理や図書カードの整理。ごく簡単なもの。
やっていると以外にこなすようになってきて、
例の数学教師にも「委員会の仕事をしっかりやるマジメな生徒」
っていう印象を植え付けることにも成功した。作戦は成功したと俺は確信した。W
委員会の活動は6時までで、その後は水原のバイト先へ直行。
俺は図書室で借りた本を読みながら、ドリンクバーを頼んで、水原の働く姿を時折眺めていた。
俺は最初、水原が働きづらいだろうと思ってバイト先に行くことを控えていた。
でも水原が、毎日来てほしいというので俺は通っていた。
実は俺も、水原のウエイトレス姿を見れるのを少し楽しみにしていた。
あの服を来てる水原と一度エッチしてみたいといつも考えていたのは、今だに口にできないW

話は戻るが、俺は委員会で数人新たな友達もできた。
その一人、高梨さん。図書委員らしく、地味系の女の子を絵に書いたような娘だった。
彼女は当時委員長をしていて、俺にいろいろ仕事を教えてくれた。
それがきっかけで、親しくなった…と俺は思う。
なにせとても無口で恥ずかしがりな娘で、俺と話す時は目も合わしてくれない。
でも親切だし感じのいい娘だった。言うなれば…水原とは真逆のような女の子。
でも俺と高梨さんは同じ系列の文庫本が好きという事でなぜか話が弾み、
だんだん親しくなっていった。
ある日の昼休み。俺は席を隣同士にくっつけて、水原と昼飯を食べていた。
そういえば水原とこうして一緒に昼飯を食べてる時、とんでもない事があった。
俺達はいつものようにパンを食べていると、クラス内で「オヤジ」
(高校生でありながらすでに顔と体形がおじさんのような見た目から)
というあだ名をつけられている男子二人がいて、そいつらが俺達のもとにやってきた。
俺達は驚いた表情をしていると、「あッ…あの…一緒に食べていい?」といきなり言ってきた。
俺はハッキリ言ってこの二人が苦手だった。
いつも死んだような顔をしていて、人の顔を覗くように見てくるのがかなり嫌悪感を煽った。
それにちゃんと話したこともないのに、いきなり一緒に昼飯はないだろ…と俺は困惑してしまった。
すると、「あぁ、○○君(俺)は席はずしてほしいな…」
などと言ってきた。俺は意味が分からず困惑するばかりだった。
すると水原がいきなり立ち上がった。
「なんだよ、テメェらはよぉ!キモいんだよ!近くにくんじゃねぇ!」
水原がいきなり怒気のこもった声で言った。
「今○○とご飯食べてんの見て分かんないのか?ウザいから消えろ!」
水原はそう言って片方の男子におもっいきり蹴りをいれた。二人組みは化け物でも見たように腰を抜かした。
そして…教室内にいた数人の他の生徒は唖然としていた…。
しばらく沈黙…。
二人組みはそそくさと教室を出ていった。
「マジふざけんなよ…」
水原はブツフツ言いながら席に座った。すると、苦笑いを浮かべていただろう俺に気付き、
「アイツらが悪いんだからねッ!邪魔されるの嫌だし…」
少しバツが悪そうにしていた。ブチギレを俺に見られて嫌だったらしい。
俺は「まぁ、こういう部分も含めて水原か…」となんとか広い心で受け入れていたW
その騒動があってから一日中、水原は俺の前で無理矢理おしとやかにつとめていたのがなんだかおかしかった。
その日の帰り道、水原は気まずそうにしていた。
「水原、気にしてないからいつも通りにしてよ。らしくないのは、俺嫌だからさ。」
俺がそう言うと、水原は俺の腕にギュッと抱き着いてきた。
そして、「アンタのそういうトコが大好きなんだ、私…」と言った。
俺は顔がカァっと熱くなり、嬉しいながらも回りをキョロキョロしながら歩いていた…。
話を元に戻そう。
その日も水原のブチギレ騒動と同じように水原と昼飯を食べていた。
すると、離れた所から俺を呼ぶ声がした。振り向くと、そこには高梨さんが立っていた。
ちなみに高梨さんは別のクラスだ。俺は教室のドア近くに歩み寄った。
「おう。どうしたの?」
「これ、前話してた本…。私もう読んだから、よかったら○○君にもって思って。」
高梨さんは、前回の委員会の時に話題に出た本を差し出した。
「えぇ?貸してくれるの?ありがとう!」
俺はありがたく受け取った。
「…うん。じゃあまた。」高梨さんはいつものように照れ臭そうにして去っていった。
俺も本を片手に席に戻った。すると、そこに待っていたのはなぜか鬼の形相をした水原だった。
「誰?アレ。」
「あぁ、図書委員で一緒の高梨さん。」
「そうなんだ。かなり仲良さそうじゃん。」
「どうだろ…あの娘あんまり話さないから…。…なんだ?何怒ってんの?」
俺は全く水原が怒っている意味がわからなかった。
「信じらんない…。アンタさ、私がバイト必死で頑張ってる間に他の女と遊んでるワケ?」
「はぁ?何言ってんの?」
「もういい!アンタって最低だねッ!」
水原は俺にかじりかけのパンを投げ付け、教室を出ていってしまった。
俺は一体何がなんだか分からず、ただクラスの連中がクスクス笑う中、呆然としていた。
水原は5時間目になっても戻ってこなかった。早退したらしい…。
俺は心配で授業をまるで聞けなかった。
その日は委員会も休みで、学校が終わるとすぐに水原のバイト先に直行した。
しかし、水原の姿はない。
水原の先輩らしき人が俺の姿を見つけて、
今日は体調不良で休みたいという電話があったと教えてくれた。
ケータイに連絡はしているが、全く繋がらない…。
俺の頭の中で、嫌な事がたくさん浮かんだ。
俺はいてもたってもいられず、水原がいそうな場所をくまなく探した。
もちろん自宅にも行ってみたが、インターフォンを押しても誰も出ない…。
結局その日は水原を見つける事ができなかった。
俺は一晩中眠れず、布団の中で水原の事を考え続けていた。
俺に責任があるのは明白…でもその原因がよくわからない。
しかし、クソ鈍感な俺は部屋の机の上に置いてある、高梨さんに借りた本を見てようやく気がついた。

高梨さんとのことを誤解してる…

次の日、俺は一晩中寝れずじまいで登校していた。眠い目を擦りながら教室に着くと、
水原は机に座ってぼぉーとしていた。
俺はとてもホッとした…。
「水原、おはよう…」俺は探るように挨拶をした。
見事に無視された…。「なぁ…挨拶ぐらいしろよ…」
俺は少しムッとした。
「うるさい…話しかけるな…」
今だかつてない程の冷徹な物言いだった。俺はしばらくそっとしておくことにした。
まぁいい。勝負は昼休みだ…。今日はちゃんと秘密兵器を用意してある!
水原の好きなパンとジュースを買ってあるのだ!それで話す口実を作るつもりだった。
昼休み…。俺はすぐに水原に声をかけようとした。しかし、間髪いれず教室を出ていってしまった…。
また一人で昼飯を食うハメになってしまった…。
放課後、水原はバイトですぐに帰ってしまった。俺は委員会活動がある…。
重い気持ちと身体を引きずりながら、図書室へと向かった。
図書室に行くと、高梨さんが慌てて俺のところに駆け寄ってきた。
「○○君…、ちょっといいかな…?」
俺は高梨さんに呼ばれるまま、図書室の隅に行った。
「あッ…あのね、今日のお昼休みに、水原さんって人が私のとこに来たの…。」
「マジ…?」
俺は一気に顔が引きつった…。
「うん…それで、私の事見て、あなたならいいか…って言って、○○君よろしくって…。
私、なんのことかよくわからなくて…。あの人知り合いかな?」
俺は思わず頭を抱えた…。水原の勘違いは、とんでもない所までいってしまっていた。
「あぁ…気にしないで!あの娘、同じクラスでさ。変な事言わないようにちゃんと言っとくねッ!」
「うん…。ただちょっとビックリしたから…。」
このままでは本当に取り返しのつかないことになる気がした。
俺はその日、委員会の仕事をダッシュで済ませ、すぐに水原のバイト先に向かうつもりでいた。
仕事を終え、急いで帰る支度をしている俺に、高梨さんが声をかけてきた。
「○○君、ちょっといい?」
「ん?何?」俺は振り向かずに返事し、鞄に持ち物を入れていた。
「あのね、この前私が好きだって言ってた本がね、舞台になるんだって。
それで…今度の日曜にあるんだけど…よかったら一緒に行かないかなって思って…」
俺は一瞬、手が止まった。高梨さんに誘ってもらえるのは嬉しいが、
あの時の俺はそんな誘いを受けれるような状態じゃなかった。それに俺は水原に惚れている。
だから水原以外の女の子と遊ぶつもりなど毛頭ない。
「ごめん…。日曜は用事があるんだよ。ごめんね!」俺は嘘をついてしまった…。
「そっか…。じゃあ、また機会あったら行こうね…。じゃあ…お先に…」
高梨さんは図書室を出て行った。
俺はなんだか頭が爆発しそうだった…いろんな事がありすぎて、もうワケがわからない…。
俺は溜息をつきながら、図書室を出た。
すると…そこには水原が立っていた。俺はその場で立ち尽くしてしまった。
「あッ…バイトは…?」
「今日は休み…。」
「そうだったんだ。」さっきの高梨さんとの会話は必ず聞かれていたはず。
俺はもう逃げるのはよして、水原の誤解をとくことにした。
「水原…。話がある。とりあえず、学校出よう。」
「いいよ。私も話あるから…」
俺たちは音が出そうな程ピリピリした空気を発しながら、学校をあとにした。
いつもデートで来る河川敷…しかし、その時の俺にはそこが最悪な場所のように思えた。
しばらくの間、お互いなにも話すことができなかった。俺は水原の顔を横目でチラチラ見つつ、遠くの景色を眺めていた。
「高梨さん…だったよね。きっとあの子、アンタの事好きだよ。」
水原はいきなり呟いた。
「ちょっと…なんだよそれ?そんなワケないだろ…。」
俺はあっさり否定した。当然だ…高梨さんとはそういう感情が芽生える間柄でもないし、
意識もしていない。水原にしては随分バカなことを言うもんだと思ってしまった。
「分かるんだよ。あの娘…私と同じ人が好き…。だから分かるの。」
「だったらなんだっていうんだよ!俺だって水原の事好きなんだ!
ハッキリ言って高梨さんの事なんかなんとも思ってないから。変な誤解してほしくない…」
俺は必死で水原に訴えかけた。
「私さ、よく考えたんだ…。アンタってさ、優しいし真面目だし、
私みたいなワガママでどうしようもない女じゃ…釣り合わないよ…。
きっと…高梨さんみたいな大人しそうで真面目な娘の方が相応しいって…」
ごもっともな事を言ってる気がするが、水原の目は潤んでいた。
「なぁ水原…。どうしたんだ?なんでそうい事言うんだよ!俺の気持ちは無視なのか?」
俺は水原の肩を必死で掴んでいた。
「私…ダメだよ…。すぐにアンタに突っ掛かるし、怒鳴っちゃうし…。
いつまでたってもアンタに相応しい娘になれない…」
俺は我慢の限界を迎え、水原を抱きしめた。
「相応しいとか…なんだよ相応しいって。俺はいつも自分らしい水原が好きなんだよ。
ずっと一緒にいたい。一日だって離したくないよ!なんでそんな事思うんだ?」
「アンタの事、好きになればなるほど、もっといい娘にならなきゃって思ってしまう…。」
一番わかってなかったのは、俺だった。
俺は知らず知らずの間に水原を苦しめていたのかもしれない…そう気がついた。
「高梨さんから本受け取ってる時のアンタ見てたら、腹立つ程二人がお似合いに見えて、
私といるのが逆に変に見えた…」
「もういい…。何も言わなくていいよ。」
俺は立ち上がり、水原の手を握り、引っ張るようにして歩きだした。
そしてある場所で足を止めた。商店街のど真ん中。
「周り見てみなよ。たくさん人いるし、ウチの学校の生徒もウロウロしてるな。
高梨さんもどっかにいるかもしれない。」
確かにその時間の商店街は買い物客や学生で溢れかえっていた。
「何…?どうしたの?」
俺は訳がわからないといった表情の水原に向かい合い、見つめた。そして、軽いキスをした。
「これでわかってくれたか?」
水原は真っ赤な顔をして、恥ずかしさのあまりオロオロしていた。
周りも、制服姿の学生が商店街のど真ん中でいきなりキスなどをしたせいで、軽くざわめきたっていた。
俺はすぐに水原の手を引き、商店街を後にした。
俺はそのまま帰路につき、自宅に水原を連れてきていた。
「もう…あんな事するなんて…ヤバいよ…」
水原はまだ顔を赤くしていた。
「俺はさ、水原と付き合っていることも、水原を好きだってことも、全く恥ずかしくなんかない。
水原は、俺の中で最高の女の子だから。」
そう言うと、水原はまた泣き出した。俺は少しおかしかった。
こんな喜怒哀楽の激しい娘は、そうそういないと思ってしまった。
「水原…ずっと一緒にいような。もうあんな不安は勘弁してくれよッ。」
俺は水原を抱き寄せた。
「ごめん…ホントごめん…」
水原は俺の腕の中で、肩を震わせて泣いていた。
俺達はお互いに少しだけ、成長できたような気がした…。
次の日、俺は久しぶりに健やかな気持ちで登校した。ウキウキした気持ちで教室に向かう。
いつものように水原はすでに登校していて、机に座って鏡を取り出して髪をくくっていた。
「おはようッ♪」
俺は浮ついた気持ちで水原に挨拶する。
「…おはよう。」
水原が照れ臭そうに挨拶を返した。その顔を見た俺の頭の中に、昨夜の事がフラッシュバックする…。
「たくさん心配かけたお詫び…」と言って制服のボタンに指をかけ、下着姿になって俺を誘惑する水原…。
思い出すだけでも股間が熱くなりそうだった…W
その日は久々に水原とお昼も一緒に過ごした。
やはり俺にとって水原は、かけがえのない存在だとあらため感じた。
その日の放課後、水原はバイトへ。俺は委員会活動だった。
高梨さんの事もあり、少しだけ気まずくはあったが、
そんなに気にすることでもないと思い、いつもどおりに図書室へと向かった。
しかし、そこはいつもと明らかに違っていた。高梨さんがいない…。
他の女子の委員に聞くと、どうやら今日は休んでいるらしい。
学年でもトップクラスの成績である高梨さんは、今まで学校を休んだことなどなかった。
そりゃ体調を崩す時もあるだろうが、昨日の事がやはり引っ掛かってしまい、気にせずにはいれなかった。
しかし、いくら気にした所でどうにかなるもんじゃない…。
とりあえずその日は、いつも通りに委員会の仕事を終え、水原のバイト先に寄ってから帰路についた。
翌日、俺は高梨さんに借りた本を返すついでに、
クラスまで行って高梨さんの様子を見にいってみることにした。もちろん、水原にはちゃんと話して。
俺の姿を見つけて一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐにいつも通りに振る舞っていた。
「本、ありがとうね。おもしろかったよ。」「そっか…。気に入ってくれたんならうれしいな。」
「昨日、休んでたね。大丈夫?体調でも崩した?」
「うん…昨日はちょっと朝から気分が悪くて…」
なぜか歯切れの悪い口ぶりだった。
「そうか…あんまり無理しないようにね!じゃ、また。」
「○○君!ちょっと…」去ろうとする俺を、高梨さんは急に呼び止めた。
「あのね…今日の放課後…、時間あるかな?少し話したいことがあって…」
「うん、大丈夫だよ。」
ちょうどいい機会だと思った。昨日、誘いを断った理由をちゃんと話そうと思った。
水原にはちゃんと訳を話した。どうやら俺を信じてくれているようで、咎めることもなかった。
俺は高梨さんが待つ、中庭へと向かった。
中庭に着くと、高梨さんはベンチに座って本を読んでいた。
俺の姿を見つけると慌てて本を鞄にしまい、立ち上がった。
「ごめんね!待たして。」
「ううん。こちらこそごめんね…急に時間作ってもらって…」
「いやいや、俺暇人だからさ。で…、どうしたの?なんか悩み事?」
「そうじゃないの…。私、○○君に謝らなきゃいけないの…」
「え?なんで?」
「私…○○君と水原さんが付き合ってるの知ってて、昨日舞台に誘ったの…。
少し前に、○○君のクラスにいる中学からの友達に、聞いたから…」
俺は無言だった。
「だから○○君、断るのわかってた。
だって…○○君は彼女がいるのに他の女子と遊びにいくような人じゃないって分かるから…」
いつもの高梨さんとは違って、とてもたくさん話していた。俺の目をしっかりと見据えながら…
「でもね…もしかしたらって思って…。
水原さんが私のとこに来た時のこともあったし、もう二人がなんでもないなら…って思って。」
「高梨さん…ごめん、俺さ…」
「いいの…。○○君は何も言わないで…。私ね…恥ずかしいけど、
こんなに仲良くなった男子って○○君が初めてだったの。
それで…私一人でいろいろ想っちゃって…舞い上がって…」
俺の心がキリキリと痛む…。頭の中に水原の、「私と同じ人が好き…」というあの時の言葉が甦る…。
「でも…駄目だよね…。水原さんみたいな綺麗な人に、私が勝てるわけない…私なんて…」
「勝ちとか負けとかないって!高梨さんだって水原にはない良さがある!」
俺は少し声を荒げてしまった。
「…じゃあ、○○君は私と一緒にいてくれるの?…水原さんを捨てて、私を選んでくれる?」
俺は何も言えなかった。高梨さんは涙を溜め、眼鏡の奥から鋭い目で俺を見ていた。
「…ごめん…。俺が一緒にいたいのは水原なんだ…。だから高梨さん一緒にはいられない」
俺は正直に言った。高梨さんに、嘘や建前を言う気にはなれなかった。
高梨さんは眼鏡を外し、涙を拭いながら俺に背を向けた。少し震えているようだった…。
「ごめんなさい…私って…、嫌な女だよね……。
○○君…いろいろ話してくれたり、私の趣味に共感してくれたりとか…、
私…感謝しなきゃいけないくらいなのに、こんな事言わせて…」
俺は高梨さんにかけてやる言葉を何も見つけることができなかった…。
「少し前ね。お昼休みに○○君の教室の前通ったら、水原さんとご飯食べてて…。
○○君が水原さんに優しい顔してるの見てたら辛くて…でも…もしかしたらって気持ちもあって…」

俺なんかの事を想ってくれてたなんて…。どうして俺は気付けなかったんだろう…。
いつも委員会でお話して、親しい間柄だった…気がついてもおかしくない…
いや、気がついてあげなきゃいけなかった。
こんな事を高梨さんに言わせる前に、ちゃんと話さなきゃいけなかった…。
ただ俺は悔いるばかりだった…。
「ごめん…」
結局、俺が言えた言葉はこれだけだった…。
「謝らないでよ。私、大丈夫だから。○○君が私を嫌いだからフラれたんじゃないのわかるから…。」
俺は胸が痛くなった。でも優しい言葉をかけることはできない…。
それが高梨さんにとってはツラいものにしかならないのが、俺にはわかっていた。
ふと高梨さんが俺の方に向き直る。もう泣いてはいなかった。
「ありがとう、○○君。もう…水原さんの所に行ってあげて。」俺は無言で頷いた。
「それと…水原さんとはずっと一緒にいてあげてね。じゃなきゃ…私が泣いた意味…なくなるから…。約束してね」
「わかった…ありがとう…。」
「うん…。委員会もあと少しだけど頑張ろうね。」
「うん。役立たずの委員だけど頑張るよ。」俺がそう言うと、高梨さんの表情が少し和んだ。
「じゃあ…またね」
高梨さんは中庭を後にした。俺はしばらくベンチに座って物思いにふけっていた。
それからすぐに学校を出て、今一番会いたい人がいる場所…水原のバイト先に向かう。
店の扉を開けると、いつものように水原が明るい声で俺を客として迎えた。
元気に働く水原を眺めながら、俺はこの娘を一生賭けて幸せにしてあげたい…そう思っていた…。


苦手なヤンキー女2
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(・∀・): 276 | (・A・): 75

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