夫が嫌う同僚に身も心も寝取られ奪われた人妻
2023/06/15 02:51 登録: えっちな名無しさん
■ポイント
この寝取られ小説のテーマは、『夫のライバルであり、嫌っている同僚に浸食され奪われていく人妻』です。
夫一筋で相思相愛の夫婦が、一人の男の存在により壊れていく様子を長編寝取られ小説として描いています。
夫が嫌っているやり手の同僚に徐々に身も心も寝取られていく人妻の姿を背徳感強めで描いています。
人妻の心の移り変わりと体の変化を丁寧に描いています。
背徳感が強くストーリー重視の寝取られ小説がお好きな方と相性が良い作品に仕上げました。
※ストーリーと背徳感を強めて寝取られ感を出すことを重視して執筆したため、寝取られに入るまでの過程を長くしています。
サクサクっと短編の寝取られ小説を楽しみたい方よりも、ストーリー性重視の長編寝取られ小説を楽しみたい方向けの作品です。
主要登場人物
細貝守(夫)
細貝彩菜(妻)
須藤拓也(守が嫌っている同僚であり学生時代からのライバル)
森田光(守の同期で社内では一番仲が良い)
目次
第1話『夫が嫌う同僚と人妻との再会』
第2話『須藤拓也と彩菜の過去』
第3話『夫が嫌う同僚に唇を奪われる人妻』
第4話『変えられていく人妻の体と心』
第5話『夫が嫌う同僚に抱かれてしまった人妻』
第6話『傾いていく人妻の心』
第7話「夫の同僚の精子を子宮で受け入れた人妻」
第8話「身も心も寝取られた人妻」
第1話『夫が嫌う同僚と人妻との再会』
ピピピピッ ピピピピッ
目覚まし時計の音が部屋に鳴り響くと、いつものように眠たそうに起き上がる。
「ふぁ〜もう朝かぁ・・・」
目をこすりながらベットから起き上がる守。
寝ぐせでクシャクシャになったまま、リビングに降りると、妻の彩菜が朝食の準備をしていた。
「彩菜おはよう〜」
守が眠たそうにしながら彩菜に挨拶をする。
「おはよー!てか早く支度しないと遅刻しちゃうよ?髪もボサボサだし・・・」
童顔でクシャっとした可愛い笑顔で寝起きの守に注意する彩菜。
二人の朝は、いつもこのような平和な感じで始まる。
細貝守と細貝彩菜は、結婚して3年目だが新婚のように仲が良い。
守と彩菜は現在26歳で、高校生の時から付き合っていた。
同じ大学に進学し、就職してから1年後に結婚した。
守は食品関係の営業をしており、彩菜も同じ会社で営業をしている。
彩菜は結婚のタイミングで退社することも考えたが、退社することは踏みとどまった。
結婚してすぐ建てた家のローンのことや売れない営業マンの守の収入だけでは不安だったことも関係していた。
守は男性として頼りないが、誰よりも優しく、彩菜のことを大切にしていた。
彩菜はそんな守のことが大好きだった。
付き合いだしてもうすぐ10年経過するが、守への気持ちは今でも変わることがない。
「守〜早くご飯食べて準備しないと本当に遅刻しちゃうよ。」
いつものようにダラダラとする守を優しく注意する彩菜。
「う〜ん。わかった。」
まだ眠気が抜けていない様子だが、彩菜の呼びかけに朝食をモグモグと食べ始める守。
「守〜美味しい?」
覗き込みながら、少し照れ気味に守を見つめながら聞く彩菜。
「モグモグ。う〜ん。いつもと変わらない。」
いつものように女心を気にしないでマイペースで答える守。
「ふーんあっそ。じゃぁもう作ってあげないよ〜だ」
守の気遣いのない言動に子供のようにじゃれ合うように言い返す彩菜。
「あ〜彩菜が怒っちゃったぁ。嘘だよ。めっちゃ美味しいよ。」
守の言葉に、わかりやすく彩菜の表情が明るくなった。
「ありがとうー。守に喜んでもらえると嬉しい!」
子供のように機嫌がよくなり、はしゃぎだす彩菜。
守はそんな彩菜を優しく見つめる。
「俺は世界一の幸せ者だなぁ。彩菜みたいな可愛い奥さんもらえて。」
朝食を食べながらニヤけた表情でつぶやく。
「えへへ。私も守と結婚できて幸せだよ〜」
朝食を取りながら、いつものように照れながらお互いの幸せを感じていた。
二人は付き合いたてのカップルのように相思相愛で夫婦仲は良かった。
あの男が現れるまでは・・・・・・
朝食を取り終えると、二人で揃って自宅を出て出社した。
守と彩菜は、同じ会社に勤めているため、いつも一緒に出社していた。
二人は社内でも仲が良いことで有名な夫婦だった。
出社すると、社内はいつもとは少し違いザワザワしていた。
「どうしたんだろうな?今日はなんかいつもと社内の雰囲気が違うな。」
普段と様子が違う社内の雰囲気にすぐに気づく守。
守は普段は男性として頼りなくマイペースな性格だが、勘の鋭さだけは優秀だった。
「そう?いつもの何も変わらないと思うけど・・・・」
彩菜は社内の雰囲気の違いに気づいていなかった。
守と違い彩菜はしっかり者だが、少し鈍感な性格なため、勘は鈍かった。
少しすると、部長の掛け声により朝礼が行われた。
部長「みんな集まったかぁ?今日から一緒に頑張ってくれる仲間が一人増えることになったから紹介する」
急な部長からの知らせに社内は少しざわついた。
「中途入社の人かな?新入社員なら俺が育ててやろうかな?」
「守は人のこと気にする前に自分の営業成績をなんとなしないとダメだよ。」
危機感の少ない守のことを真顔で注意する彩菜。
「んー。そうだよね。俺ももっとしっかりしないと。先月もノルマ達成できなかったもんなぁ。」
彩菜の的確な指摘に珍しく反省する守。
「クス。守可愛い。頑張ろうね。応援してるからね。」
彩菜の優しい気遣いと言葉に守の顔はすぐにニヤけてしまった。
「今日から仲間になる中途社員を紹介する。須藤拓也君だ。」
部長に名前を呼ばれると、一人の中途社員が部長の横に立ち社員の前に姿を現した。
身長は180cm前後、筋肉質でスーツを着ていても引き締まった体をしていることがすぐにわかるようなモデル体型。
顔は、キリっとした顔立ちで、そこらへんの芸能人よりも整った顔立ちで女性ウケするような美形の持ち主だった。
「では須藤君。みんなに挨拶と自己紹介をよろしく。」
部長からの合図で中途社員のイケメン男性は口を開いた。
「はじめまして。須藤拓也です。前職でも営業職をしていました。1日も早く戦力になれるようにがんばります。」
お手本のような挨拶だったが、どこかできる男を感じさせるような自己紹介だった。
「うはー。またすごいイケメンの中途社員がきたな。あれは絶対にすぐに売れる営業マンになりそうだな。でも、あの人どっかで見たことがあるんだよなぁ・・・」
曖昧な記憶をたどりながら思い出そうとするが、なかなか思い出せない守。
そんな守とは対照的に彩菜は気まずそうな表情を浮かべている。
「彩菜?どうしたの?なんか浮かない顔してるけど・・・」
鈍感な守でもすぐに気づくくらい、いつもと違う表情を浮かべていた。
「ん?いやなんでもないよ。」
彩菜は守からの質問に冷静を装いながら誤魔化した。
「そっか。なんかいつもと少し様子がおかしかったからさ。」
「そう?いつもと変わらないでしょう。守の勘違いだよ。」
「ふーん。なんか変なの。あっ!わかった。あの中途社員がイケメンだから見とれてたんだな?」
少しふざけて茶化すような言い方で守が彩菜に問いかける。
「はぁ?そんなわけないでしょ。男なんて守以外興味ないもん」
少し照れた様子で、守のふざけた質問に返答する彩菜。
「そっかぁ。ありがとう。なんかちょっと心配になっちゃってさ・・・身長も高いしイケメンだし・・・」
彩菜からの言葉に照れながらちょっとしたヤキモチを感じたことを、なんとなくアピールした。
「ふーん。私が他の男に興味があると思ってるんだぁ?なんかショック。」
「違う違う。そんなこと思ってないよ。ただちょっと心配になっただけだよ。」
お互いを思い合っている相思相愛の幸せな夫婦の会話を周りの同僚は、いつものことのように聞いていた。
「おまえら本当に仲が良いよな。マジで羨ましいわ。俺にもその幸せ分けてくれよ。」
二人の会話を近くで聞いていた同僚の森田が二人に話しかけた。
森田は、守と彩菜と同期で一番仲が良い同僚だ。
二人とは大学も一緒で、結婚式ではスピーチもしてくれた仲だった。
「そうだろ?おまえも早く良い女性見つけて結婚しろよ」
得意げに守が森田に忠告する。
「うるせー。俺だってそのうち結婚するから心配するなよ。」
森田は守と同じ営業部だが、営業成績は守と同じく最下位ラインを行き来するような成績だった。
二人は売れない営業員として、お互いの苦労や愚痴を言い合うような関係でもあった。
「新しい新人だけどさ、森田お前どう思う?すげーイケメンですぐに売れそうな感じするよな」
「ああ。須藤君ね。あれ俺たちと同い年なんだよな。」
「へーお前詳しいね。なんで同い年って知っているの?」
守が不思議そうな表情で森谷問いかけた。
「は?おまえ覚えてないの?俺たちと同じ大学だったよ。話したことはないけどな。ゼミも学部も違うから喋ったこともないけど」
森田と守の会話を横で聞いていた彩菜の心臓は普段よりも鼓動が速くなっていた。
「マジで?同じ大学だったんだ。だから見たことがあるって感じたのか。でも俺も喋ったこと一度もないな多分。」
「でも大学時代にあの新人君の噂は聞いたことあるよ。あんまりいい噂じゃなかったけどね」
二人の会話を横で聞いている彩菜の心臓の鼓動はさらに早くなっていく。
「へーどんな噂が流れていたの?ちょっと興味あるかも。」
噂好きな守がすぐに森田に聞き直す。
「女癖がかなり悪いらしい。気に入った女は彼氏がいようが結婚していようが必ず堕として自分の女にしてたみたいだよ」
「うわ。なんだそれ。最悪な奴だな。あのビジュアルなら自分からいかなくても女に困ることはないだろ。なんで人の女取ろうとするかね。神経疑うわ。」
森田の話を聞いて守は嫌悪感を露わにしていた。
そんな守の反応を見て森田は面白くなり話を続けた。
「でもあのビジュアルだろ。。トーク力も高いからさ、初めは嫌がって拒否している女性も、あいつにしつこく口説かれていくうちに堕とされちゃうみたいだぜ。」
「ふーん。なんか嫌な奴だな。俺あいつのことあんまり好きになれそうにないわ。」
森田の話を聞いて、守は早くも須藤のことを嫌いになっていた。
守は比較的誰とでも仲良くなれる性格だが、少しひがみ癖があり、自分よりも優れている相手やビジュアルに恵まれている相手に対しては嫌悪感を持ちやすい性格だった。
須藤の場合は、それに加わり高身長でイケメンというステータスも加わっており、女癖も悪く印象は最悪の状態になっていた。
「まぁ、守の場合は愛されすぎているから心配ないか。羨ましいかぎりですよ。」
彩菜の方を見ながら茶化すように言う森田。
しかし、彩菜の表情はいつもと違い複雑な表情をしていたが、森田は気づかなかった。
「当たり前だろ。彩菜は俺以外の男には興味がないんだから。心配なんてしてないよ。」
彩菜の顔を見ながら少し照れくさそうに言う守。
「おーおー朝からいい感じだね。俺も早く奥さん見つけないとな。須藤君に誰か紹介してもらおうかな。」
「やめろよ。あんな奴に紹介してもらってもロクな女と出会えないだろ。知らないけど。」
二人の会話を聞きながら、彩菜の頭の中には大学時代の記憶が少しずつ蘇っていた。
そして、彩菜の心臓の鼓動はまだおさまることなく早くなっていた。
「彩菜?やっぱりちょっと様子が変だけど体調悪いの?大丈夫?」
冷静を装っているが、いつもと様子が違う彩菜の様子に気づき心配する守。
「大丈夫だって言ってるでしょう。心配しすぎだよ。いつもと何も変わらないよ。」
少し焦りといら立ちを抑えるような様子で守の問いかけに答える彩菜。
「守は彩菜ちゃんのことが大好きだから心配し過ぎちゃうんだよな。あんまり気にしない方がいいよ。」
二人の会話を聞いていた森田が絶妙なフォローを入れて場の空気を和ました。
そんなやり取りをしていると、自己紹介を終えた須藤拓也と部長が3人の元に歩いてきた。
「彩菜君、悪いんだけど今日から須藤君の教育係になってもらってもいいかな?」
「えっ?私ですか?」
部長からの一言に戸惑いを見せる彩菜。
「ああ。彩菜君は営業成績も優秀だし、後輩への指導も優れているから適任だと思うんだ」
「はい・・でも私もより適任者はいると思いますけど・・・」
明らかに須藤の教育係をすることを嫌がる彩菜。
そんな彩菜のことを須藤は目をそらさずに見つめ続ける。
「まぁ、忙しいところ申し訳ないんだけど、頼むよ。今日から研修として3ヶ月の間は営業にも同行してもらおうかな。」
「3ヶ月ですか?長いですね。私の営業に同行しても、そんなに学べるところはないと思いますけど・・」
なんとか須藤の教育係から逃げようとする彩菜だったが、部長から押し切られる形で断れなかった。
「じゃあ、決まりだな。よろしく頼むよ彩菜君。須藤君は前の会社でも営業成績でトップだったそうだから、呑み込みも早いし安心してくれ」
彩菜は部長の指示とはいえ、明らかに不快な様子を隠せないでいた。
そんな彩菜のことを目をそらさずに見つめていた須藤が口を開いた。
「今日から入社した須藤です。ご迷惑おかけしますが、今日から営業に同行させていただきます。よろしくお願いします。」
芸能人レベルの整った顔と爽やかな笑顔で明るく彩菜に挨拶する須藤。
「細貝です。今日からよろしくお願いします。」
いつもの明るい彩菜とは違い、少し暗く戸惑ったような様子で、簡単な挨拶をした。
須藤は、そんな彩菜のことを目をそらさずにキリっとした大きく綺麗な目で目を離さずに見つめ続けていた。
そんな二人の様子を近くで見ていた守と森田は、何か違和感を感じていた。
「細貝さん、森田さん、今日から営業部に配属になりました。右の左もわかりませんので、ご迷惑をかけることもあるかと思いますが、よろしくお願いします。」
そんな守と森谷も須藤は笑顔で丁寧に挨拶をしてきた。
「ああ、営業部の細貝守です。今日からよろしくお願いします。」
いつもよりも少し無愛想な感じで簡単な挨拶をする守。
女癖が悪いという森田からの情報と自分と違い高身長でスタイルも良くイケメンの須藤のことをすでに悪い印象を持っていた。
そして、女癖が悪いという須藤が自分の愛する妻の彩菜と3ヶ月間も営業に同行することが気に入らなかった。
守はこの時は考えもしていなかった。
目の前に現れたこの男に、自分の大切な存在の全てを奪われてしまうことになる未来を・・・・・・・・・・
第2話『須藤拓也と彩菜の過去』
中途入社で須藤が入ったことにより、営業部では新体制でのスタートとして、社内では席替えが行われた。
彩菜のデスクの隣が須藤の席になった。
須藤の教育係になったため、デスクが隣同士になった方が連携が取りやすいという部長からの配慮だった。
それまでは、守のデスクだったが、須藤が入社したことにより、守は少し離れたデスクに引っ越しすることになった。
「なんだよ守。不満そうな顔して。彩菜ちゃんと離れ離れになったことが気に入らないんだろ?」
不機嫌そうな態度と表情をする守に気づいた森田が、いつものように茶化してきた。
「ああ。まったくその通りだよ。なんで彩菜と席を離されないといけないんだよ。しかも新人の須藤にデスクを取られるなんて余計気いらないよ。」
守は自分のデスクを奪われたことに対して隠さず森谷に不満をぶちまけた。
「まーそんなに気を悪くするなよ。彩菜ちゃんに悪い虫が付かないように俺がちゃんと見張っててあげるからさ。」
森田の席は、彩菜と須藤の向かいの席だったため、二人の様子も好きな時に見れるような位置だった。
「ああ頼むよ。彩菜だから大丈夫だと思うけど、お前から須藤の話聞いてたらちょっと不安になってきたよ。」
須藤の彩菜を見る時の目が気になっていた守だったが、この嫌な予感は当たっていたことを徐々に知っていくことになる・・・
その日は、守と森田は取引先への挨拶周りのためにすぐに会社を出た。
一方、須藤の教育係になった彩菜は、今日の自分のスケジュールの説明と業務の流れについて須藤に説明していた。
「とりあえず、今日は社内で取引先との商談用のプレゼン資料を作成する予定です。」
機械的な態度で須藤に今日の業務内容を伝えていく彩菜。
説明をしている彩菜の表情を大きな目で一度もそらさずに見つめる須藤。
その視線には、最初から気づいている彩菜だったが、気づいていないふりをしていた。
「今日の予定はそんな感じですけど、何か質問や疑問点はありますか?」
業務内容と予定を伝え終わると、彩菜は事務的な感じで須藤に質問した。
「変わらないね。大学時代と変わらずに真面目で優しいその感じ。まさかこんな所で会えるなんて思わなかったな。」
そんな彩菜の態度に気づいた須藤は、整った顔をクシャっとさせるような笑顔でそう言い放った。
「・・・・・入社初日からタメ口はどうかと思いますよ?今は仕事中ですから。」
少し動揺した様子と須藤のことをけん制するような態度で彩菜も言い放つ。
「ああ。そうですよね。同級生とはいえ今は僕は後輩ですよね。すいません。嬉しくてついタメ口になっちゃいました。」
須藤の言葉を聞いて、彩菜は少し複雑な感情とイライラが重なり表情が険しくなった。
「プレゼン用の資料の作成は今日中に終わらせなければいけませんので、無駄口たたいている暇はありませんよ」
冷たく言い放つと彩菜は自分のデスクに座りプレゼン用の資料を作り始めた。
「冷たいなぁ。久しぶりの再会なのに。」
彩菜に聞こえないようにボソッと須藤がつぶやいた。
その日は、彩菜からの指示を受けながら、須藤はプレゼン用の資料をおとなしく作っていた。
夕方前に取引先の挨拶周りから森田が帰社した。
「お疲れ様です。取引先の挨拶周りから帰りましたぁ。今日も疲れたなぁ〜」
帰社すると、いつものように森田が陽気な感じで自分のデスクに座った。
森田は、営業成績は悪いが、性格が明るく社員が人気が高く誰とでも良い関係性を保っていた。
営業部の中では、ムードメーカー的な存在だった。
「森田さんお帰りなさい。取引先の挨拶周りお疲れ様でした。」
明るく気さくに森谷挨拶する須藤。
「ありがとう。須藤さんも彩菜さんの助手として頑張ってくださいね。この人厳しいから怒られないように気を付けてね。」
森田のいつもの冗談に彩菜は反応せずに無言でプレゼン用の資料を一生懸命作っていた。
「ははは。細貝さんに迷惑かけないように頑張ります。てか森田さんって僕と同い年じゃないですか?」
「俺は今26歳だよ?顔はふけてるから40代に見られるけどね・・・須藤さんはいくつなの?」
本当は同い年だと知っていたが、会話を続けるためにあえて知らないふりをする森田。
「やっぱり同じ年ですね。僕も今26歳です。ちなみに森田さんってT大出身じゃないですか?俺T大だったんですけど、森田さんのこと何回か見たことがある気がするんですけど」
「大学はT大だったよ。須藤君のT大だったんだ?偶然だね〜。一度も話したことないから気づかなかったよ。世間は狭いね」
最初から同じ大学に通っていたことは気づいていたが、役者の森田は上手く演技して誤魔化した。
「ちなみに、営業部のアイドル的存在の細貝彩菜さんもT大で俺たちと同い年なんだよ。」
森田の余計な一言に彩菜の心臓の鼓動はまた少し早くなった。
「ちょっと森田さんやめてよ。一応個人情報なんだから。」
彩菜は少し焦った様子で森田を注意した。
「へぇーそうなんですねー。知らなかったです。世間って狭いですね。でも共通点があってなんか嬉しいです。みんな同じ大学なんて偶然ですね。」
須藤は、綺麗な目を少し細くして怪しい目で彩菜を見た。
「・・・・・・」
彩菜は少し気まずそうな表情を隠すように顔を下に向けた。
「ん?細貝さんどうかしたの?なんかいつもよりも元気ないけど。体調悪い?」
いつもの様子が違うことに気づいた森田が彩菜に問いかける。
「え?いつもと変わらないでしょ。」
森田からの問いかけに少し焦った様子で言い返す彩菜だったが、森田は何か違和感を感じていた。
しかし、この時の森田にはこの違和感の正体に気づくことはなかった。
3人で雑談をしていると、取引先の外回りを終えた守が帰社した。
「ただいま戻りました。って俺はデスクの場所変わったんだった。」
いつもの習慣からか、帰社した守は無意識に元のデスクで今は須藤が座っているデスクに向かって歩いていた。
「おおー。守おかえり。てかお前のデスクあっちに移動になったじゃん。さては疲れてるなぁ〜」
いつものように森田が守をおちょくりだした。
「お帰りなさい。細貝さん。すいません。細貝さんのデスク自分なんかが座らせていただいて。」
須藤が腰を低くして愛想よく守に謝りだす。
「いや。須藤さんが悪いわけじゃないから大丈夫だよ。」
内心面白く感じていなかった守は、そっけない言い方で言い返す。
「そういえば須藤さん、守も俺たち同じT大出身で同い年なんだよ。」
会話好きな森田がまた話を広げようと余計な情報を須藤に伝えた。
「へぇーそうなんですか?世間は狭いですね。自分のこと見たことありますか?」
「いや、須藤さんのことは一度も見たことないな。」
なぜか須藤のことが好きになれない守は、先ほどと同じくそっけなく無愛想な感じで言い返した。
「そうなんですね。もしかしたら、一度くらいすれ違ったことくらいはあるかもしれませんね。」
守のそっけない態度とは対照的に、明るくハキハキとした態度でコミュニケーションを取ってくる須藤。
そんな須藤に対して、なぜか理由もなく苛立ちを感じていく守だったが、これはこれから始まる圧倒的な焦燥感と絶望の始まりにしか過ぎなかった。
「守は大学時代は、ちょっとした有名人で結構モテたからなぁ。噂くらいは聞いたことがあるかもしれないね。」
イラついている守に気づいた森田がすかさずフォローを入れる。
「やめろよ森田。俺はまったくモテてなかっただろ。」
「いやそんなことないでしょ。だって営業部のマドンナ的な存在の彩菜さんを射止めたんだから。」
森田のその言葉に一瞬だけだが、須藤の表情が変わり守を睨みつけるような目で見つめた。
「ええっ!そうなんですか?苗字が同じなのは偶然だと思ってましたけど、違うんですか?」
少し興奮した様子の須藤に戸惑う森田と守と彩菜。
「まぁ・・そうだね。一応夫婦なんだよ。俺達。」
守は少し照れながらも勝ち誇ったような言い方をした。
「ちょっとやめてよ守。今は仕事中なんだから。それに一応って何よ?」
焦った様子で雑談を中断しようとする彩菜だったが、守の一応夫婦という言葉に少し過剰に反応した。
「ああ〜さぁ仕事だ仕事。守も早く自分のデスクに戻って仕事しなさい。」
ヒートアップしそうな二人の雰囲気を察知した森田が焦ったようにフォローを入れる。
守は少し焦った様子で逃げるように自分のデスクに戻っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
須藤はそんな守の背中を無言で睨みつけるような目で見ていた。
「須藤君どうしたの?なんか表情が違うけど大丈夫か?体調悪い?」
守を後ろから睨みつけるようにこわばった表情で見つめていた須藤に気づいた森田が声をかける。
「いえなんでもないです。お二人が夫婦だったとは知らなかったので。僕のせいでデスクが離れてなんか悪いことしちゃいましたね・・・・」
「いやいや大丈夫だよ。二人はラブラブだから。デスクが離れてるくらいが丁度いいんだよ。」
「ちょっと!森田君やめてよ。今は仕事中でしょ。無駄話ばかりしてないで仕事しなさいよ」
彩菜は少し顔を赤くして照れながら森田を注意した。
「細貝さんすいません。僕が余計な質問をしてしまったから・・・・今度から注意します。」
「・・・・・・・・・・・」
須藤の謝罪に何も言わずに無言で仕事に集中する彩菜。
「いや俺が悪い。ちょっとふざけすぎました。反省します。」
森田は彩菜の空気を察していつものようにふざけずにデスクに座り仕事を始めた。
3人は自分の仕事に集中し無言の時間が数時間続いたが、しばらくすると須藤が口を開いた。
「細貝さん、取引先とのプレゼンに使う資料ですが、完成したので確認お願いできますか?」
「もうできたんですか?内容的には作成日数を3日程度みてたんですけど。ちょっと見せてもらえますか」
予想していたよりも早くプレゼン資料が完成したことに驚く彩菜。
須藤が作成したプレゼン資料は、彩菜の想像を遥かに超えるような出来栄えで文句のつけようがないくらい完成度が高かった。
「細貝さん僕の作ったプレゼン資料どうですか?修正点があればすぐに直しますけど。」
彩菜の顔を大きな目で見つめながら須藤が問いただす。
「・・・いえ。特に修正点はありません。完成度も高いのでこのまま部長に確認して問題なければプレゼンで使います。」
事務的に須藤の問いかけに答えたが、内心では彩菜は驚いていた。
中途社員とはいえ、今日入社してきた人間が作ったとは思えないほど高い完成度のプレゼン資料だった。
恐らく、社内の全ての社員でも、これほどレベルの高いプレゼン資料を作れないと思えるほどの完成度だった。
「ありがとうございます。良かったです。少しほっとしました。」
整った顔をクシャっとさせながら、子供のような笑顔で喜ぶ須藤。
「いや〜須藤君さすがだね。細貝さんのチェックの厳しさは社内でも有名なんだよ。それを一発でクリアするとは。外見だけじゃなくて能力の優秀なんだね〜」
近くで二人のやり取りを聞いていた森田が須藤に声をかけた。
「いえ、細貝さんが丁寧に指導してくれたおかげです。僕は教えてもらったことをそのままやっただけなので。」
彩菜は須藤の言葉を聞いて少し照れたような仕草を見せたが、誤魔化すように席を立った。
そのまま須藤が作成したプレゼン資料の最終確認のために部長のデスクに向かったが、すでに先客がいた。
その先客とは守だったが、どうも二人の会話を後ろで聞いていると部長から説教を受けている様子だった。
「お前入社何年目だ?こんなレベルの資料を取引先のプレゼンに使うつもりか?契約取る気がないだろ?すぐに作り直せ。」
守が作成したプレゼン資料の完成度の低さにご立腹の様子だった。
営業部の社内はそこまで広くないため、部長からの説教は全ての営業員にほぼ丸聞こえになってしまう。
つまり、部長に叱責を受けると、公開処刑されるようなものだった。
「すいません。すぐに作り直します。」
守は部長からの激しい叱責にひどく落ち込んだ様子で自分の席に戻った。
心配そうに守のことを見つめる彩菜。
「細貝さん待たせたね。そっちもプレゼンの資料の確認だよね?確か完成までに数日時間が必要って言ってなかった?」
「はい。3日程度見込んでいましたが、1日で仕上がりました。確認をお願いします。」
部長は彩菜から渡されたプレゼン資料を険しい表情で読み進めていく。
しばらく沈黙が続いた後、全てのプレゼン資料に目を通した部長が表情を変えて彩菜の顔を見た。
「このプレゼン資料の完成度は凄いね。これなら取引先の方も満足してくれるだろう。さすがだね細貝さん。」
「ありがとうございます。この資料は、須藤さんに作成してもらいました。私はただ指示を出しただけですので。」
「おお。そうなのか。さすが須藤君は優秀だね。時期営業部のエースだな。期待しているよ。」
部長は営業部の全員に聞こえるように大きな声で須藤を褒めた。
先ほどまで守のせいで不機嫌になっていた部長は、須藤の完成度の高いプレゼン資料を見て180度機嫌を直していた。
「なんだよっ。俺の時は無駄に厳しいくせに。」
つい先ほどまで激しい叱責を受けた守は、全員の前で褒められていた須藤が妬ましく思えていた。
「じゃぁ細貝さん、引き続き須藤君の教育係をお願いするよ。彼は優秀だから教えるのも楽なはずだから大丈夫だろ」
「はぁ・・・私にできる限りのことはします。」
彩菜は須藤の教育係に乗る気ではないとわかるくらいの態度と雰囲気で部長に伝えた。
「ああそうだ。急で申し訳ないんだけど、明後日は週末だから営業部で須藤君の歓迎会をしようと思う。みんな忙しい中で申し訳ないが、極力全員参加してくれ。」
須藤の完成度の高いプレゼン資料を見て機嫌が良くなった部長は、その勢いで須藤の歓迎会をその場で企画した。
「守、お前須藤君の歓迎会の幹事をやれ。すぐに歓迎会ができそうなお店押さえておけよ。」
部長は彩菜や須藤と接する時とまったく違う雑な態度で守に偉そうに命令した。
「えっ?俺ですか?プレゼンの資料作りや商談で忙しいんですけど・・・・」
守はあからさまに嫌がった。
「実績を出していない営業が飲み会の幹事や雑務をするのは当たり前だろ?悔しかったちゃんと実績出してから言えよ。それに今日入社したばかりの須藤が作ったプレゼン資料は、お前が作った資料よりも数倍出来が良かったぞ。」
「はぁ・・・・・・・・・・・わかりました。」
部長の的確な言葉に営業として実績を出していない守は何も言い返せなくなった。
他の営業部員の前で、先ほどと同じく叱責を受けて立場を無くしていた。
須藤はそんな守のことを見て、一瞬邪悪な笑みを浮かべたが、その笑みには誰も気づかなかった。
部長が社内からいなくなると、須藤は落ち込む守の元に向かった。
「細貝さん。すいません。自分なんかの歓迎会の幹事をしてもらうことになってしまって。余計な仕事を増やす形になって申し訳ないです。」
部長からの叱責と雑な扱いを受けてイライラしているところに、元凶の須藤からのこと言葉は守にとって屈辱だった。
「いや。別に須藤君が悪いわけではないし。気にしないで。」
イライラを隠すことができずに、冷たい言い方になってしまう。
一言だけ守に伝えると須藤は自分のデスクに戻った。
この時、須藤は心の中で邪悪な笑みを浮かべていることにも、まだ誰も気づいていなかった。
その日は、自宅に戻ると妻の彩菜に愚痴を聞いてもらった。
「部長はさ、俺にだけ特別厳しいからイライラするんだよな。今日だってみんなの前で馬鹿にされたし。」
守は普段は飲まない酒を飲みながら、不満を爆発させていた。
「まぁ部長も色々大変なんでしょ。今日は嫌な思いしたけど、明日からまた頑張ろうよ。結果を出して見返せばいいじゃない。」
「まぁ、そうなんだけどさ。今日入社したばかりの奴と比較されて馬鹿にされるのはやっぱり悔しいよ。」
他の営業部員の前で須藤と比較されて叱責されたことが守にとっては屈辱だった。
「頑張って成績出せば部長だって守のこと見直してくれるよ。私のためにも頑張って!」
「彩菜・・・ありがとう。」
守は自分のことを必死に励ましてくれる彩菜のことが急に愛おしくなり、抱きしめた。
「守大好き。」
彩菜は少し照れながら守に自分の気持ちを伝えると、キスをせがむように自分の顔を守に近づけた。
二人はそのままキスをした後、寝室に行き愛し合った。
「ぁん・・守・・好き・・・好き・・」
「はぁ・・・はぁ・・・彩菜・・・好きだよ・・」
二人は夫婦で寝ている少し大きめのベットで正常位で繋がり抱き合った。
守は細身で身長も165?と小さく男性としては頼りないが、彩菜は自分のことを大切にしてくれる守のことが大好きだった。
不器用な守はセックスも下手くそだが、男性経験が少ない彩菜はそのことに気づいていなかった。
「あん・・ぁん・・はぁ・・・はぁ・・・守・・・守・・・」
「はぁ・・はぁ・・・彩菜・・愛しているよ・・・ああ彩菜・・・」
守も女性経験が少なく、二人のセックスはいつも正常位のみでワンパターンだった。
しかし、彩菜は守とのセックスには不満はなかった。
お互いの気持ちが確認できるだけでも、彩菜にとっては満足だったから。
この時は・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ・・はぁ・・ああ・・彩菜・・イクよ・・ああ・・出る・・」
「あん・・守・・・守・・・大好きだよ・・ぁん」
しばらくすると、いつものように挿入してから5分と持たずに守が果てた。
ドピュっ
彩菜の中に守の薄く少量の精液が注がれた。
「はぁ・・・はぁ・・・ごめんね。いつも俺だけ早くて。」
「ううん。気にしないで。早く守との子供が欲しいな。。」
守と彩菜は、セックスする時は必ず中に出しているが、なかなか子宝に恵まれない。
本格的に妊活をしてるわけではないが、二人はすぐにでも子供が欲しいと考えていた。
二人は正常位で繋がったまましばらく抱き合った。
「はぁ・・・・はぁ・・・守ぅ・・・大好き」
「彩菜・・・俺も大好きだよ。愛しているよ。」
二人はお互いの気持ちを確認しあいながら、眠りについた。
二人は本当に愛し合っていた。
この幸せが永遠に続くと本気で思っていた。
彩菜との絆が須藤の存在により壊れていくことを、この時の守には知る由もなかった・・・・・・
翌朝、いつものように起きると、二人は朝食を食べて仲良く出社した。
会社に着くと、須藤がすでに出社してデスク周りの掃除をしていた。
「おはようございます。細貝さん、今日もご指導よろしくお願いします。」
彩菜を見つけると、元気よく挨拶する須藤だったが、守のことは見ていなかった。
「おはよう。須藤さん。今日もよろしくお願いします。」
少しよそよそしい感じで事務的な挨拶して、避けるように自分のデスクに座った。
鈍感な守でさえ少し違和感を感じるくらい、いつもの彩菜の態度と違っていた。
よくわからない違和感を感じながら、守も自分のデスクに座り、昨日の汚名返上をしようと取引先とのプレゼン資料の作成を始めた。
しばらくすると、営業部恒例の社内ミーティングが行われた。
営業部の社内ミーティングでは、各営業部員のスケジュールの報告や予算管理が主な目的になっている。
しかし、それだけではなく、営業成績が悪い営業員のつるし上げと叱責もあるため、成績が悪い守や森田にとっては恐怖の時間となっていた。
いつものように各自の行動予定と予算管理の報告が順番に行われた。
この日の社内ミーティングでは、特に営業成績が悪い人間のつるし上げはなく、守や森田は内心ホッとしていた。
「そういえば守、須藤君の歓迎会に使う店はちゃんと予約したのか?」
不意を突いたように部長が守に質問した。
「あ・・・今探しているところです。今日中に探して予約しておきます。すみません。」
「はぁ?須藤君の歓迎会は明日だぞ?間に合うのか?今日の午前中までには絶対に予約しておけよ。」
まだ店の予約を取っていない守に対して苛立ちを募らせる部長。
「部長。今日の予定ですが、どうすればよいですか?予定していたプレゼン用の資料は昨日須藤君が完成させてくれました。」
守をフォローするように彩菜が話を遮るように質問する。
「ああ。そうだな。じゃぁ今日は須藤君を連れて取引先に挨拶回りに行ってくれないか?須藤君を紹介するいい機会でもあるしな」
「はぁ・・・わかりました。」
彩菜はあまり乗る気にならないような態度で部長に返事をする。
社内ミーティングが終わると各自が自分のデスクに戻り、この日の業務の段取りをしていた。
「細貝さん、今日は営業に同行させていただけるんですよね?よろしくお願いします。」
須藤が嬉しそうに彩菜に声をかけた。
「今日は取引先への簡単な挨拶回りをするだけです。1日かけて回るので、すぐに準備してください。」
彩菜は少し距離を取るように冷たい言い方で須藤に指示した。
「わかりました。すぐに準備します。よろしくお願いします。」
冷たく指示されても、嬉しそうに彩菜の指示に従う須藤のことを森田は少し不思議そうに見ていた。
守は、やりたくもない須藤の歓迎会に使うための店探しのために自分の仕事を後回しにすることにした。
「細貝さん、自分の歓迎会のために労力を割いてもらってすいません。ありがとうございます。」
歓迎会の店探しをしていた守の元にやってきて須藤は、丁寧にお礼をした。
しかし、それは彩菜と話す時とは違い、どこか事務的で悪意を感じるような言い方だった。
鈍感な守も、なぜかこの時だけは須藤が自分に放つ異様な雰囲気を察した。
「別に。部長に頼まれたからやってるだけだよ。須藤君のせいではないから気にしなくていいよ。」
守は逆にあからさまに須藤に対して冷たい態度を取り、イラつきを抑えることのないような言い方をする。
須藤はそんな守に対して事務的に挨拶だけして、自分のデスクに戻った。
「なんだよあいつ。本当に人のことイラつかせるな。早く辞めないかな。」
ボソッと独り言のように心の声が漏れた。
そんな守の元に今度は彩菜が声をかけにやってきた。
「守大丈夫?ちょっとふてくされてるような顔してるよ?」
須藤に指示を出す時とは対照的に優しい言い方で守に声をかける彩菜。
「いやー須藤の歓迎会なんだけどさ、いい店が見つからなくて。というか正直歓迎してないしめんどくさい。」
「でもまた部長に怒られちゃうじゃん。この店なんかどう?お店大きいし人数も入るから歓迎会に使えそうだけど」
彩菜は守のために昨夜自分で歓迎会に使えそうな店を調べていた。
「おおー。この店なら使えそうだね。彩菜ありがとう。さっそく電話して予約してみるよ。」
守は機嫌が良くなり嬉しそうになった。
「良かった喜んでくれて。じゃぁ、私は取引先の挨拶回りあるからもう行くね。頑張ってね守。」
「ありがとう。彩菜も頑張ってね。須藤に何か変なことされたらすぐに俺に連絡してね。虐めてやるから。」
守は須藤に対しての敵対心と嫉妬心を爆発させる。
「ありがとう。私には守がいるから安心だね。でも変なことなんてされないから大丈夫でしょ。じゃぁ行ってくるね。」
守は自分のデスクに戻る彩菜の小さな体を見つめながら、何か言いようのない不安感に襲われた。
この時感じた言いようのない不安感の正体にこの時の守は気づいていなかった・・・・・
しばらくすると、彩菜と須藤が一緒に社内を出ていった。
須藤と愛する彩菜が二人で行動するだけでも、守にとっては嫉妬と不快感で気分が悪くなった。
取引先に向かう車内は無言の状態が続いていた。
しばらくすると須藤が口を開いた。
「今日の取引先の挨拶回りは何件程度ですか?」
「今日の挨拶回りは、10社を予定しています。1日かけて回る予定でいます。」
事務的なぎこちない会話だけで、二人の会話はまったく弾まない。
その理由は、彩菜が須藤に終始冷たく、そっけない態度を取っているからだった。
大げさないい方をすると、会話のキャッチボールを拒絶しているような状態だった。
そして、そのことに須藤は気づいていた。
その理由も知っていた・・・・・
午前中は、取引先の挨拶回りは予定通りに順調に行えた。
「お昼どうしますか?俺この辺で美味しいパスタ屋知ってますけど良かったら一緒に行きませんか?」
須藤からの急な昼食の提案に少し驚く彩菜。
本来であれば、教育係として須藤とコミュニケーションを取るために昼食を一緒に食べる必要があることはわかっていた。
「すいません。私お弁当持ってきているので。お昼は別々に食べてまた13時頃に次の取引先に向かいます。」
逃げるように須藤からの提案を断る彩菜だったが、本当はお弁当は持ってきていなかった。
「わかりました。じゃぁ、僕は適当にお店で食べてきますね。」
断られたことを残念そうにしながらも、心の中では笑みを浮かべていた。
「やっぱり彩菜は可愛いな。まだ時間かかりそうだけど、脈ありだな。今度こそ絶対堕として俺の女にしてやる」
パスタを食べながら、須藤は今後のことを考え、不敵な笑みを浮かべながらつぶやいた・・・・・
昼食を終えると、二人は予定していた取引先の挨拶回りをした。
営業職経験者ということもあり、須藤は取引先との応対に慣れていた。
整った顔立ちと笑顔を上手く使い分け、取引先の担当者と上手くコミュニケーションを取っていた。
彩菜も須藤の立ち振る舞いの上手さとコミュニケーション能力の高さに驚いていた。
相手の懐に上手く入り込む能力と、誰とでもすぐに仲良くなれるような雰囲気は生まれ持った天性のものだと感じた。
二人は取引先との挨拶回りを無事に終えると、社内に戻った。
「部長、取引先への挨拶回りですが、予定通り完了しました。」
会社に戻ると、彩菜はすぐに部長にこの日の業務報告をした。
「おお。お疲れ様。予定通り回れたみたいでよかった。で須藤君はどんな感じかな?」
「営業経験者ということもあり、取引先とのコミュニケーションも上手く問題ないかと思います。」
「そうかそうか。やっぱり須藤君は営業部のエースになれる人材だな。私の目に狂いはなかったな。」
部長は彩菜からの報告を聞いて上機嫌になっていた。
「まだ始まったばかりだが、これから3ヶ月間は独り立ちできるように教育係よろしく頼むよ。」
「でも今日の感じだと、私なんかが教育係しなくても大丈夫な感じはしますけど・・・」
彩菜は、少しでも早く須藤の教育係を辞めたい雰囲気を隠さずに出した。
「いや。営業部の期待のエースだからな。焦らずにじっくり育てていきたい。忙しいのはわかるが、頼むよ。」
「はぁ。わかりました。」
またしても部長に押し切られる形で教育係を断れずに継続することになった。
二人の会話をすぐ近くで聞いていた須藤は、心の中でニヤッと笑った。
「よかった。3ヶ月間も猶予があるなら十分チャンスはある。必ず俺の女にしてやる。」
心の中でそう呟いた。
その日、自宅に戻ると彩菜は守に愚痴を聞いてもらっていた。
「須藤君の教育係なんだけど、辞めたいけど部長が辞めさせてくれないんだよね。嫌だなぁ。」
「あんな表裏激しそうなやつの教育なんてしなくていいよ。彩菜の負担が増えるだけじゃん。」
嫉妬と僻みから言い方が荒くなる。
「こら!そんな言い方しないの。でも心配してくれてありがとう。」
「だって俺の彩菜と二人っきりで行動するだけでもイラつくのに。あの無駄にイケメンなのも鼻につくんだよな。変なことされてないよね?口説かれたりとかされた?」
「変なことなんてされてないから大丈夫だよ。口説かれてもないし。」
守の質問に少しだけ彩菜の心臓の鼓動が速くなった。
お互いの愚痴を聞き会った後は、二人で寝室でいつものように愛し合った。
「はぁ・・はぁ・・彩菜・・好きだよ」
正常位で抱き合いながら細い体で彩菜を突いていく守。
「あん・・はぁ・・はぁ・・あん‥守ぅ・・好き・・大好き・・」
二人の気持ちを確認し合うようにお互いの気持ちを言い合う二人。
「はぁ・・はぁ・・彩菜・・ごめん・・もうイクよ・・・ああ」
「あん・・守ぅ・・きて・・・守・・あん・・」
ピュっ
挿入してから3分くらいで、守は果ててしまった。
彩菜の中には守の少量で薄い精液が流れ込んだが、子宮には届いていなかった。
短くワンパターンな守のセックスには何も不満はなかった。
ただ、お互いの気持ちを確認できて愛し合えるだけで幸せだった。
この時は・・・・・・・・・・・
守は、疲れが溜まっていたため、そのまますぐに寝てしまった。
隣で寝ている守の顔を見ながら、彩菜は大学時代のことを思い出していた。
彩菜は大学生時代に守と出会い付き合うことになったが、実はその前にある一人の男からしつこく口説かれていた。
その男とは、今教育係を任されている須藤拓也だった。
須藤とは同じ経済学部で履修している科目も被っており、ゼミの一緒だった。
同じ学部なので、須藤の女癖の悪さの噂は彩菜の耳にも届いていた。
ある時、彩菜のことを見て一目ぼれした須藤は、共通の知り合いに合コンをセッティングしてほしいと頼み込んだ。
友人に頼まれた彩菜は、断り切れずに嫌々合コンに参加したが、その場で須藤はしつこく彩菜を口説いた。
須藤のチャラい感じと女性慣れした感じが苦手で、嫌悪感さえ感じるほどだった。
しかし、元々おとなしい性格で押しに弱い彩菜は、断り切れずに須藤と連絡先を交換した。
須藤はビジュアルが良く、口も上手いため女性から人気があり、友達からは勝手に美男美女カップルともてはやされた。
そして嫌々参加した合コンをキッカケに、須藤からの猛烈なアプローチが始まった。
毎日のように連絡をしてきては、デートの誘ってきた。
何回も断っても諦めないで誘ってくる須藤に、押しに弱い彩菜は断り切れずに一度だけならとデートに応じてしまった。
二人っきりのデートではなく、お互い共通の友達を交えて4人でならという条件でOKした。
女癖の悪い須藤に対して嫌悪感を感じており、完全に恋愛対象外だった。
デート当日は、大学生らしく泊りがけでキャンプに出掛けた。
彩菜は、一番仲の良い親友に頼んで一緒に来てもらった。
遊びなれているだけあり、須藤はバーベキューでも手際よく準備したり、食材を焼いて女性陣に配っていた。
須藤の狙いは彩菜であったため、一緒に来ていた親友には目もくれずに、わかりやすく彩菜の隣に座り終始口説いていた。
4人でバーベキューをした後は、将来の夢や目標についてお酒を飲みながら語り合った。
お酒が入ったからか、須藤の彩菜へのアプローチはさらに加速していき本気で口説き堕とす体制に入っていた。
そんな須藤に気づいた他の二人が気を使って席を外してしまったため、薄暗い中で彩菜は須藤と二人っきりになってしまった。
男性と交際経験もない彩菜にとっては、このシュチュエーションは気持ち的にもつらい状況だった。
「彩菜さんは今気になる人とかいないの?」
須藤は緊張して固まっている彩菜に遠慮なく質問をした。
「まぁ・・気になる人くらいはいるけど。」
遠慮気味に答えた彩菜だったが、その気になる人とは、後に自分の夫になる守のことだった。
「へぇそうなんだ。彩菜さんから好かれるなんて羨ましいな。よっぽどカッコいい男なんだろうね。」
少しイラっとしたような口調と雰囲気を漂わせた。
「・・・・別にカッコよくはないんだけど、優しいし一緒にいると楽しいから。」
「ふ〜ん。そうなんだ。俺なんかどう?恋愛対象に見てくれる?」
ふいを突いたように須藤からの問いかけに彩菜は言葉に詰まってしまった。
「えっ?・・・・ごめんなさい。須藤君のこと恋愛対象としては見てないです。」
勘違いさせないようにハッキリと須藤に恋愛対象外と伝えた。
「そう。じゃぁさ、お試しでもいいから俺と1ヶ月だけ付き合ってみない?嫌ならそれっきりでいいからさ」
ハッキリと断られても引かずに、むしろアプローチが強くなっていく。
女性のことを口説き堕とし慣れている須藤からすると、彩菜のような反応をされることには慣れていた。
むしろ、このような展開の方が須藤にとっては燃えやすかった。
「ごめんなさん。私、そんな軽い考えで男性と付き合うことはしたくないの。」
彩菜は、須藤の積極的で強引なアプローチをハッキリと断った。
「どうしてもダメ?俺マジで彩菜ちゃんのことタイプなんだよね。絶対大事にするからさ。」
「ごめんなさい。気になる人もいるし。」
断ってもしつこく口説いてくる須藤に嫌気がさしてその場を立ち去ろうとすると、須藤は彩菜のことを自分の方に引き寄せて顔を近づけてキスをしようとする。
「いやっ!やめてっ!」
バシッ
唇と唇が触れ合う寸前で、彩菜は須藤の頬を叩いて逃げ出した。
そのまま、彩菜は須藤から逃げるようにその場から離れ、友達の元に合流した。
「ちっ。もう少しだったのに。もっと素直になればいいのによ。つまらねぇな。」
一人その場に残された須藤は、屈辱に顔を歪めながら爆発しそうな怒りを必死に抑えていた。
ビジュアルが良くモテる須藤は、女性からまともに拒絶された経験はなかった。
「クソっ!でもマジでいい女だな。一回だけでも抱ければ堕とせる自信があるんだけどな。」
ブツブツと独り言をいいながら、少し時間をつぶした後に須藤も3人と合流した。
二人の気まずい空気を察した友人は、間に入ってフォローした。
それからも須藤から定期的にデートの誘いがあったが、彩菜は全て断った。
最終的に須藤からの連絡を無視して、着信も拒否して疎遠になっていた。
まさか、今頃になって同じ会社に入社して再会するとは思いもしなかった。
もちろん、須藤と彩菜の間にそのようなことがあったことなど、夫の守は知らない。
第3話『夫が嫌う同僚に唇を奪われる人妻』
大学時代のことを思い出しながらベットに横たわっていると、気が付くと朝になっていた。
次の日、いつものように守と一緒に出社すると、須藤はすでに出社して掃除をしていた。
須藤の姿が目に入ると、彩菜はなぜか無意識にドキッとして心臓の鼓動が少し早くなっていた。
「細貝さんおはようございます。今日もよろしくお願いします。」
須藤は隣にいた守には目もくれずに、爽やかに彩菜に挨拶した。
そんな須藤の姿に守は苛立ちを隠すこともせずに挨拶もしないで自分のデスクに座った。
そんな守を見て、須藤はニヤッと嫌な笑みを浮かべていた。
その日は、須藤の歓迎会ということもあり、営業部の社員は守が予約した居酒屋に集合した。
歓迎会の席は、ほぼ全て部長が独断で決めていた。
教育係ということで、須藤の隣には彩菜とデスクが近い森田が割り当てられた。
守は、彩菜と森田と少し離れた席になった。
「では、須藤君の歓迎会を始める。須藤君、簡単に挨拶してくれ」
部長が音頭を取って須藤に挨拶をするように命じた。
「今月から入社した須藤です。今日はお忙しい中、私の歓迎会を開いていただきありがとうございます。これから営業部の一員として頑張ります。よろしくお願いします。」
本性を隠してお手本のような挨拶をするイケメンの須藤を見る女子社員は彩菜を覗いて全員が女の目になっていた。
「じゃぁ、今日は楽しく飲もう!乾杯っ」
部長の一言で須藤の歓迎会が開始された。
主役の須藤は、慣れたように部長や次長など管理職に酒を注いで自分を売り込んでいた。
しばらくすると、須藤は自分の席に戻り、彩菜に酒を注ごうとした。
「細貝さんお疲れ様です。自分の教育係をしてもらいありがとうございます。」
「いえ。私なんか須藤さんに教えることあまりないので。お礼なんて大丈夫ですよ。」
彩菜は、断ることができずに須藤から注がれた酒を受け入れた。
「須藤君〜彩菜ちゃんだけじゃなくて俺にもお酒注いでよ。」
「あっ。すいません。森田さんもいつも良くしてもらってありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
二人の間に割って入るように陽気に森田が話しかけた。
「須藤君。一応言っておくけど、彩菜ちゃんには愛する細貝守という旦那がいるから、間違っても狙ったらだめだよ。」
「はははっ。バレちゃいました?実はこっそり狙ってたんですよ。旦那さんが同じ営業部じゃ手が出せませんね。」
須藤は森田のおちゃらけに合わせるように上手く話していたが、彩菜のことを本気で堕とすために狙っていた・・・・・
「彩菜ちゃんと守の間に入れる男なんて世界中に存在しないからな。ねー彩菜ちゃん。」
「ちょっと森田さんやめてよ。恥ずかしいでしょ。」
彩菜は少し照れるように顔を赤くした。
「さすがに先輩の奥さんに手は出せませんよ。それに同じ職場ですし。」
「いやーどうかなぁ?須藤君が女癖悪いという情報は、しっかり俺の頭の中に入っているからね〜」
二人の会話を横で聞いている彩菜は、大学時代のことを思い出して心臓の鼓動が少し早くなっていた。
「確かに大学時代は女遊び激しかったですね。それに関しては否定しません。でも今の俺は真面目人間に生まれ変わりました!」
「彩菜ちゃんどう思う?教育係として須藤君は真面目人間に見える?」
森田からのキラーパスに困惑する彩菜。
「ん〜どうなんだろう。よくわからないけど、真面目に仕事してると思うけど・・・」
「森田さんやめてくださいよ〜。俺今は本当に真面目で一途なんですから。」
「本当かな〜そんなこと言って本当は彩菜ちゃんのこと狙ってたりしてね。気を付けなくっちゃね。彩菜ちゃん。」
酔いが回り話が盛り上がり始めた3人を守は少し離れた席から心配そうにチラチラと見ていた。
森田から事前に須藤が女癖が悪いという情報を得ていたため、彩菜が須藤に口説かれないか不安で仕方なかった。
そんな守の不安を煽るかのように須藤は彩菜に積極的に話しかけていた。
しかし、彩菜は大学時代の記憶が原因で須藤のことを信用できずに、距離を取っていた。
須藤はそんな彩菜の心理状態を把握していたが、自分から積極的に彩菜に話しかけ打ち解けようとしていた。
「じゃぁ、俺は守のところに行って慰めてきてやろうかな。最近部長に怒られてばかりでイジけてるみたいだし。」
森田が席を外すと、二人の間に微妙に流れていた空気を須藤の一言が一気に変えた。
「細貝さん。大学生以来ですね。まさかこの会社でまた会えるなんて思っていませんでした。」
「っ!そうですね。その・・あの時はごめんなさい。連絡も返さないで無視してしまって。」
「いえ。あの時は自分の行動に問題があったので気にしないでください。あの時はすいませんでした。細貝さんがあんまりにも可愛かったので、つい・・・・」
「いえ。学生時代のことですので、もう気にしていません。。それに今は結婚もしているので・・・・」
そのころ、守と森田は、須藤と彩菜が真剣な表情で話している姿を遠くから観察していた。
「おい守。須藤に彩菜ちゃんが口説かれてるぞ。間に入った方がいいんじゃないの?」
「大丈夫だよ。彩菜は俺以外の男には興味ないから。それにしても須藤の奴マジでムカつくな。人の奥さんに気やすく話かけすぎだろ。」
「ははは。何ヤキモチ焼いてるんだよ。本当は心配しているだろ。彩菜ちゃんが須藤に口説かれて堕とされるかもしれないって」
「心配なんかしてねーよ。いい加減にしないとマジで怒るぞ?」
須藤と彩菜が話している姿を見て明らかに守はイライラしていた。
しばらくすると、堅かった彩菜の表情が徐々に笑顔に変わっていた。
最初の頃よりもリラックスして楽しそうに須藤と話す彩菜のことを遠くから見つめて不安を募らせていく守。
守の位置からでは、二人がどんな会話をしているのか、まったくわからなかった。
「よーし時間だから一次会はそろそろ終わりにするか。2次会の参加は自由にする。須藤と彩菜は今後の話もしたいから悪いけど参加してくれ。」
須藤の歓迎会が始まり2時間が経過した頃、部長から2次会の提案がされた。
部長から叱責されてばかりの守は、気まずいため2次会は不参加にすることにした。
「森田。お前2次会参加するだろ?須藤が彩菜に変なことしないか見張っててくれ。」
「はは。心配性だな。彩菜ちゃんなら心配する必要ないだろ。でも任せろ。俺がしっかり見張っててやるよ。」
守は帰り際に彩菜にも声をかけた。
「悪いけど俺は2次会は不参加にするから先に帰ってるね。何かあったらすぐに連絡して。」
「え〜守帰っちゃうの?それなら私も帰ろうかな。」
「でも部長から指名されてるから帰るわけにもいかないだろ?」
「ん〜そうだね。嫌だけど我慢して参加してくる。守は先に帰ってゆっくり休んでて。」
そう守に告げると、彩菜は2次会に参加するメンバーとそのまま別の店に向かって歩き始めた。
守は、彩菜と須藤が隣同士で歩いている後姿を言いようのない不安感を感じながら見つめていた。
自宅に戻ると、守は不安な気持ちを押し殺すように缶ビールをゴクゴクと一人で飲んでいた。
気が付くと、時刻は日付が変わり0時を過ぎていた。
「もう帰ってきてもいい頃だけど・・・盛り上がってるのかな?」
イライラと不安な気持ちを抑えながら、守は森田に状況を把握するために連絡を入れた。
ぷるる・・ぷるる・・・
「もしもし。お疲れ。今2次会ってどんな状況になってるの?」
「お疲れ。2次会めちゃくちゃ盛り上がってるよ。須藤と彩菜ちゃんさぁ、ずっと隣で喋ってる。まぁ仕事の話がほとんどだけど。ちゃんと監視してるから安心して。」
森田からの報告を聞いて、守の中で須藤へのイライラがさらに強くなっていた。
それから1時間が経過しても、まだ彩菜は自宅に帰ってこない。
焦りが強くなり、今度は森田ではなく彩菜に直接電話をかけた。
ぷるる・・ぷるる・・・ぷるる・・・
「もしもし守。どうしたの?」
「お疲れ。帰りが遅いから心配になって電話しちゃった。まだ2次会は終わらない感じ?」
「う〜ん。どうだろ?盛り上がってるから、まだ終わらないかも。ごめんね帰り遅くなっちゃって。できるだけ早く帰るようにするね。」
少し酔った様子だったが、彩菜の声が聞けて守の中で不安が少し消えた。
疲れもあり、ソファーに横たわったまま守は寝てしまった。
そのころ、2次会では須藤と彩菜が楽しそうに話していた。
彩菜の中にあった須藤への不信感やわだかまりは、須藤のトーク力の高さとお酒の力により嘘のようにすっかり消え失せていた。
守に見せるような笑顔を見せながら、楽しそうに須藤と話す姿を森田は離れた席から観察していた。
「ん〜これはちょっと守には見せれない光景だな。須藤のやつ本領を発揮してきたのか?」
独り言のようにブツブツとつぶやく森田。
しばらくすると、彩菜はトイレのために席を立った。
その後を追うように、須藤も席を立ち二人は2次会の部屋から消えた。
トイレから出て2次会の部屋に戻ろうとすると、須藤が待ち構えていた。
「須藤さんどうしたんですか?」
「いえちょっと夜風に当たろうと思って。お酒あんまり強くないんですけど、自分の歓迎会だからちょっと頑張って飲みすぎちゃいました。」
須藤は酔いが回って少し気持ち悪そうにしていた。
「大丈夫ですか?ちょっと体調悪そうだけど。もしダメそうなら、部長には私から言っておくから先に帰っても大丈夫ですよ?」
体調が悪そうな須藤を気遣う彩菜だったが、これは須藤の演技だった。
本当は酒に弱くなく、むしろ強い。
「ちょっと外で休めば大丈夫です。でも心配してくれてありがとございます。やっぱり彩菜さん・・いえ細貝さんは優しいですね。」
須藤から名前を呼ばれてなぜかドキッとしてしまう彩菜。
「ちょっと俺のわがまま聞いてもらえますか?」
「え?わがままってなんですか?」
「少し飲み過ぎたので、酔いが冷めるまで一緒に外を歩いてくれませんか?」
「んー。歩くだけならいいですけど、あんまり遅くなるとみんなが心配するから数分だけですよ?」
何かと勘ぐってしまったが、一緒に外を歩くだけならいいと思い、須藤のわがままを聞いてしまった。
「やったー。ありがとうございます。嬉しいな。」
子供のように笑顔に見せる須藤の顔を見て彩菜はなぜか嬉しくなってしまった。
隣り合って一緒に歩くと、須藤が長身でスタイルが良く男性として魅力が高いことに改めて気づかされた。
小柄で身長が低い守とは、全然違うと無意識に感じてしまい、なぜか罪悪感に包まれた。
少し歩くと、近くに公園があった。
「細貝さん、ちょっとあの公園で一休みしてから戻りませんか?」
「わぁ。こんなところに公園なんてあったんですね。全然気づかなかった。じゃぁ、少し休んでから戻りますか。」
公園のベンチで隣り合って座り少し休むことにした二人。
彩菜は須藤への警戒心が残っていたため、少し距離をとるために離れて座ろうとしたが、須藤は体が触れ合うくらい近くに座ってきた。
緊張から彩菜は須藤から離れることができずに体が硬直してしまう。
心臓はドクンドクンと鼓動が激しくなっていた。
「なんか細貝さんとこうしてると、すごい気分が落ち着くし一緒にいて楽しいです。」
「急にどうしたんですか。恥ずかしいから、そうゆうのやめてください。」
緊張して固まる彩菜のことを見透かすように見つめる須藤。
しばらく二人の間に沈黙が流れた後、須藤は彩菜の顔を手を添えて自分の顔を近づけた。
「いやっ!やめてっ!」
大学時代と同じく唇と唇が触れ合う寸前で彩菜が拒絶した。
しかし、須藤は引き下がらず、彩菜のことを見つめて再び顔を近づけた。
「細貝さん・・・いや・・・彩菜さん・・俺やっぱり彩菜さんが欲しい。大学生の時からずっと忘れられなかった。」
「だめ。私には守がいるの。本当に嫌だからやめて。」
本気で嫌がる彩菜を無視して、須藤は彩菜を自分の方に抱き寄せ無理やり唇を奪った。
彩菜を抱き寄せられ唇を奪うと、須藤は舌を入れようとしてきた。
彩菜は口を閉じて須藤の舌の侵入を拒んだが、構わずに唇を舐めまわされた。
ピチャ ジュル ジュル
卑猥な音を立てて須藤に唇を吸われたり唾液を塗られていく。
女性慣れしている須藤のキスは守の不器用なキスとは違い上手かった。
彩菜は無意識に抵抗を辞めて舌を絡めようとするもう一人の自分を理性で抑え込み、必死に口を閉じて須藤のキスを拒み抵抗した。
それでも須藤は彩菜の唇を吸い続けてキスを辞めようとしなかった。
5分以上もの間、須藤から情熱的なキスをされたが、彩菜は拒み続け耐えきった。
唇と唇が離れると、須藤の唾液が糸を引いていた。
顔を離しても、須藤は彩菜のことを見つめ続けた。
彩菜も須藤から目を離すことができずに見つめていたが、その表情は完全にメスの表情になっていた。
少しの沈黙の後、再び須藤は彩菜の唇に自分の唇を重ねた。
その須藤からの2回目のキスを彩菜は拒絶することができなかった・・・・・
続きはこちらから
https://note.com/murikamo/n/n326b1edc40cd
出典:a
リンク:https://ninkimanga.com/

(・∀・): 5 | (・A・): 4
TOP