「長編寝取られ小説」夫の勤め先の社長に身も心も寝取られ奪略された人妻

2023/08/04 21:39 登録: えっちな名無しさん

■ポイント

この寝取られ小説のテーマは、『夫のことを虐めている憎むべき社長に心まで寝取られ奪われる人妻』です。




夫のことを愛しており支える良き妻が、社会的な地位と収入という男のステータスを兼ね備えている男に寝取られる様子を長編小説として描いています。




男としもオスとしても優秀な男に全てを奪われていく、相思相愛の夫婦の姿を背徳感強めで描いています。




人妻の心の移り変わりと体の変化を丁寧に描いています。

背徳感が強くストーリー重視の寝取られ小説がお好きな方と相性が良い作品に仕上げました。

※ストーリーと背徳感を強めて寝取られ感を出すことを重視して執筆したため、寝取られに入るまでの過程を長くしています。

サクサクっと短編の寝取られ小説を楽しみたい方よりも、ストーリー性重視の長編寝取られ小説を楽しみたい方向けの作品です。




主要登場人物

相沢良太(夫)

相沢千春(妻)

金田康介(良太の勤め先の社長)

佐々木正樹(良太の最大の理解者であり上司)




目次

第1話「夫の社長に狙われた人妻」

第2話「社長の策略」

第3話「奪われた人妻の唇」

第4話「夫の社長からの黒い提案」

第5話「夫を守ための人妻の決断」

第6話「夫の勤め先の社長と繋がってしまった人妻」

第7話「傾く人妻の心」

第8話「本物の雄の体液を体に流し込まれる人妻」

第9話「夫の社長に心まで奪われる人妻」







第1話「夫の社長に狙われた人妻」




相沢良太と相沢千春は、結婚して3年目の現在26歳の若い夫婦。




高校生から付き合いだし、就職して1年後に結婚した。




結婚して3年目だが、相思相愛でお互いを思いやり愛し合っている、誰から見ても幸せな夫婦だ。




夫の良太は、新卒で入社した会社にて営業部員として働いている。




大手企業ではなく、従業員は50人未満と小さな印刷会社だったが、人間関係も良く、上司にも恵まれ、良太にとってはストレスが少ない環境だった。




大手ではなく、零細企業であるため、給料や福利厚生については、他の企業と比較すると条件が悪く、生活自体は楽ではない状況だった。




妻の千春は、良太を支えるために、結婚と同時に努めている会社を退職し、今は専業主婦として良太を支えている。




夫である良太の収入が少ないため、共働きを考えていたが、良太のことを支えたいと考え、専業主婦を選択した。




二人の間にまだ子供はいないが、現在も妊活中ではあるが、子宝に恵まれないでいた。




夫の良太は、真面目な性格で気が弱く、精神的にも少し弱い所があるが、妻の千春のことを誰よりも愛し大事にしていた。




妻の千春も、そんな良太のことを誰よりも愛し、夫に尽くすために日々家事を完璧にこなす良妻だった。




千春は、身長は150?と小柄で童顔なので、26歳だが20歳前後に見られる容姿だった。




外見は、綺麗系よりも可愛い系で、胸はDカップと男性から好まれやすいタイプの女性だ。




そのため、千春は学生時代から男性から、とにかくモテた。




言い寄ってくる男性は多く、色々な男から口説かれていた。




しかし、千春は自分のことを口説いてくる全ての男性を拒絶してシャットアウトしていた。




その理由は、良太の存在があったからだった。




千春と良太は幼馴染であり、子供の頃から千春は良太のことが大好きだった。




その感情が、思春期になるにつれ、恋愛感情へと変わっていった。




告白したのも、良太ではなく千春からだった。




良太も千春のことを、女性として意識していたが、気の弱さから積極的に口説くこともできずにモジモジしていた。




そんな時に、千春から告白を受けたことで、二人の交際が始まった。




良太は、それまで女性と付き合ったこともなく、当然女性との性行為もしたことがなかった。




気が弱く、消極的な性格なため、まともに目を見て女性と話すこともできないような感じの男だった。




周りから見れば、男性からモテる千春が、なぜ良太を選んだのか理解できないほどだった。




男性からモテるが、良太以外の男性は恋愛対象外と完全にシャットアウトしていたため、千春も良太が初めて彼氏だった。




お互い恋愛において初心なため、手を繋ぐのでさえ付き合ってから半年後と他のカップルと比較すると遅かった。




良太も千春もセックス経験が無く、初めて同士だったため、初めて二人が繋がったのは、付き合ってから1年以上経過してからだった。




男性からモテる千春は、良太と付き合っている間にも、数えきれないほどの男性から言い寄られてきた。




しかし、良太以外の男性に興味が無いため、当然全て上手く断っていた。




そして、それは結婚して人妻になった現在でも、変わることはない。




そのため、千春は恋愛経験やセックス経験は良太しかないが、自分のことを口説いてくる男性のことを上手く回避することには長けていた。




結婚して3年目になる現在でも、付き合った当初から良太への気持ちは、全く変わっていない。




いや、むしろ逆に付き合った頃よりも今の方が、良太のことを愛する気持ちは強くなっている。




そして、夫である良太もそれは同じであった。




お互いが思いあい、深く愛し合っている相思相愛の夫婦。




この気持ちが変わることなど、絶対にないと思っていた。




あの男が目の前に現れる前では・・・・・・・・・




ある日、仕事から帰ってきた良太は、少し元気がなく疲れている様子だった。




「良太おかえりなさい。どうしたの?ちょっと疲れてるみたいだけど。」




「ただいま千春。実はさぁ、今週の週末なんだけど、会社の行事でバーベキューをすることになったんだけど、その準備をさせられてさ、なんか無駄に仕事増えて疲れたよ。」




良太が勤めている会社では、定期的に社員や社員の家族参加型の行事が開催されていた。




アットホームで従業員同士は仲が良く、家族同士で付き合いがある社員も多かった。




まだ若手の良太は、行事が開催される度に、段取りから準備までさせられていた。




「そうなんだ。大変だったね。今回も家族で参加する感じなの?」




「うん。金田社長がせっかくだから、今回は奥さんも呼んでこいって言うからさ。多分、みんなの奥さんがどんな女なのか興味あるだけだと思うけど。」




良太が勤める会社の社長の金田は、自分で今の会社を立ち上げたやり手の社長だった。




身長は180?で、自宅に筋トレルームを作るほど体を鍛えているため、ラグビー選手のように筋肉質で逞しい体をしていた。




まだ41歳と年齢的には若く、外見は色黒でワイルドで良太とは正反対のタイプだった。




社交的でコミュニケーション能力も高く、ビジュアルも若々しく、30代前半くらいに見られることが多い。




会社の規模は小さいが、利益はそこそこ出しているため、従業員の収入は少ないが、社長である金田の収入は、そこらへんの上場企業の社長や役員よりも圧倒的に稼いでいる。




社会的地位や財力もあり、コミュニケーション能力や経営者としての能力も高く、男性としての魅力も申し分ないタイプだった。




しかし、同時に無類の女好きで、自分が気に入った女性は、どんな手を使っても堕として、自分の女にしていた。




会社に入社してきた若い女性にも手を出していた。




そのため、心配性な良太は、自分の妻である千春を金田に会わせたくなかった。




もし、金田が千春のことを見て気に入ってしまった場合のことも考えて、良太は今まで会社の行事に千春を参加させていなかった。




毎回、適当な理由を作って千春を参加させていなかったが、今回のイベントは全従業員とその家族を強制的に参加する雰囲気にされてしまったため、気が弱い良太は断ることができなかった。




「何それ。笑 じゃぁ、私も参加しなきゃだね。でも、みんなでバーベキューなんて楽しそう。」




「まぁ、会社の人はみんないい人だから、楽しいと思うよ。でも金田社長には気を付けてね。あの人、本当に女好きみたいだからさ。」




本音を言えば、金田と千春を接触させたくなかった。




女好きな金田がもし千春のことを見て、気に入ってしまったら・・・・




そんなことを考えるだけで、良太は不安に襲われていた。




男性から見ても、社長の金田は魅力的で優れたオスであることがすぐにわかる。




細くきゃしゃな体格で気が小さく、収入が低い、普通の会社員である自分と比較しても、誰が見ても金田の方が優れていることは明白だった。




もちろん千春のことは信じている。




自分のことを誰よりも思い、愛してくれていると。




しかし、金田の魅力と「気に入った女性は堕として自分の女にする」という噂が良太を不安にさせていた。




「心配しなくても大丈夫だよ。私は、良太のこと愛してるし。他の男性なんて興味ないもん。昔からそうなの良太も知ってるでしょ?」




「ありがとう。俺も千春のこと信じてるし、本当に愛してる。ただ、心配でさ。ごめんね。」




千春の言葉に照れながらも嬉しさを隠せなかった。




「会社の人と会えるのも楽しみ。でも私のこと心配してくれて嬉しいな。ありがとう良太。」




そう言うと、千春は甘えるような顔をして、目を瞑ると顔を良太に近づけた。




良太にしかわからない、千春がキスがしてほしいと求めている時の行動だった。




良太は、そっと顔を近づけて千春にキスをした。




唇と唇が軽く触れ合う程度の付き合いたてのカップルがするようなキスだった。




結婚して夫婦になっても、良太の消極的な性格は変わっていなかった。




セックス経験も千春としかないため、いつもワンパターンなセックスしかしたことがない。




しかし、千春も男性経験が良太としかないため、それが普通のことだと思っていた。




寝室に行き、ベットに入ると良太は千春の服を不器用に脱がせはじめた。




女性経験が少ないからなのか、千春の服や下着を脱がす時に、違和感を感じるほど時間をかけていた。




しかし、そんな良太の不器用な所も千春は愛おしくさえ感じていた。




千春の服と下着を脱がすと、透き通るような白い肌と形が良い胸が露出した。




男性から誰もが目を奪われるであろう、千春の美しい裸体だった。




千春の透き通るような美しい裸は、まだ良太しか見たことがない。




この時は・・・・・・・・・・




良太も自分で服を脱ぐと、裸の状態で二人はベットで抱き合った。




お互いの温もりと愛を確かめ合うように。




良太が千春の胸を遠慮気味に揉むと、千春は小さな体をビクンとさせた。




ピンク色の綺麗は乳首を触ると、千春はまた体を可愛くビクンとさせ反応した。




大好きな良太に体を触れられると、この気持ちの呼応するように、千春の性器はすぐに濡れだした。




「千春綺麗だよ。」




「良太・・恥ずかしいよ」




良太と千春は、結婚してからも最低でも週に2回はセックスをしている。




二人の愛を確かめ合うためでもあるが、子供が欲しいため妊活目的でもあった。




元々、セックスに対して興味が無い良太と千春は、行為自体は淡白ですぐに終わらせてしまう。




特に良太は男性だが、性欲が極端に弱く、セックスに対する苦手意識もあり、自分から積極的に千春とのセックスを求めることはなかった。




ベットに入り、裸になり、少し胸を触り、正常位で挿入して5分程度で射精する。




この流れが、良太と千春のセックスの定番となっていた。




普通の女性であれば、セックスに対して確実に物足りなさを感じてしまうレベルだった。




しかし、千春の体は良太とのセックスしか知らないため、特に疑問も感じずにいた。




「千春そろそろ入れるよ。」




いつものように、正常位の態勢になると、勃起しても子供ようなサイズの性器を千春の秘部に入れようとした。




「千春・・入ったよ。」




良太は細い体をぎこちなく揺らしながら、必死に腰を動かした。




「ぁん・・良太・・好きぃ・・」




千春の口からは、甘い吐息が漏れ出した。




「はぁ・・はぁ・・千春・・もうイクよ」




ピュッ




挿入してから5分もしないうちに、良太は射精した。




中に出されたことも気づかない程の少量で薄い精液だった。




「ふぅ・・ごめん。今日も俺だけ早くイッちゃったね。」




「ううん。大丈夫だよ。気持ち良かったよ。良太大好き。」




千春はいつものように甘える感じで良太に抱きついた。




しばらくすると、千春は子供のような可愛い顔をして寝ていた。




良太は、千春の寝顔を見ながら、幸せを感じていた。




この時は、この幸せがいつまでも続くと思っていた。




自分の目の前から、千春がいなくなる未来なんて想像していなかった。




千春の額にキスをすると、良太も眠りについた。




次の日、眠りから覚めると、ベットに千春はいなかった。




千春は、良太よりも早く起きて、いつものように朝食とお弁当を作ってくれていた。




「良太おはよう〜ご飯できたから一緒に食べよう」




明るく、可愛い笑顔を見せながら、良太のことを見て嬉しそうな表情をした。




良太は、毎朝見せてくれるこの千春の笑顔が大好きだった。




「おはよう。いつもありがとう。」




二人は朝食を一緒に食べると、良太は出勤の準備をして、自宅を出ようとした。




「良太行ってきますのチューはぁ?」




玄関で甘えるように千春が良太にキスを求めた。




「行ってきます。」




良太は千春に軽くキスをして自宅を出た。




そして、日々の業務に追われながら、並行して会社のイベントの準備と段取りに追われた。




「良太お疲れさん。週末のイベントの準備は大丈夫か?」




終業後、会社に残って準備をしていた良太に上司の佐々木が声をかけた。




「お疲れ様です。大変ですが、なんとか当日までには間に合わせます。」




「そうか。何か俺に手伝えることがあったら相談してくれ。あんまり無理するなよ。営業成績も最近落ちてるからな。本業が疎かにならないように気をつけるんだぞ。」




上司の佐々木は、良太が入社した時から目をかけてくれていた。




社会人1年目で、右も左もわからない状態の良太のことを、基本から指導してくれた数少ない人間だった。




人間性も優れていて、部下である良太の悩みや愚痴もよく聞いてくれる。




良太自身も、佐々木のことを最も信頼しており、困った時には一番に相談するほど信頼していた。




佐々木に指摘された通り、良太は営業成績が落ち込んでいた。




良太は元々、コミュニケーション能力が高いわけでもなく、社交性があるタイプでもない。




気が弱く、押すべき時に押すことができない性格で、本来であれば営業職には向いていない。




しかし、そんな自分の性格を変えたいと思い、良太は営業職の道を選んだ。




今までは、育成期間として大目に見てもらっていたが、3年目になると会社としても見逃すわけにはいかない。




実際、良太の営業成績では給料泥棒と言われても仕方がないレベルだった。




入社当時から可愛がっていた可愛い部下である良太を、なんとか救おうと指導も厳しくなっていた。




社長の金田からも、良太の営業実績を改善するように命じられていた。




日々の業務とイベントの準備に追われていると、早くも週末のイベント当日の日を迎えた。




他社員と上司の協力のおかげと準備に時間を使ったため、特に抜けが無く当日を迎えることができた。




全社員とその家族が全員出席する形となったイベントは、総勢40人前後となった。




イベント開催は、社長である金田の挨拶から始まった。




金田の挨拶が終わると、クジ引きで5組ほどに分かれて、お酒を飲みながらバーベキューを楽しんだ。




良太と千春は、運が良いことに上司である佐々木の家族と同じ組になった。




他にも、会社の中では特に良くしてもらっている先輩も同じ組で、酒が入っている関係もあり、普段では話さないような愚痴も語り合った。




千春も、佐々木の家族や良太の同僚の家族と楽しそうに会話をしていた。




「それにしても、良太の奥さんがこんなに綺麗な方だなんて思わなかったぞ。こんな綺麗な奥さんがいるんだから、もっと仕事も頑張らないとな」




上司である佐々木が冗談半分で良太のことを激励した。




他の良太の同僚も、千春のことを見て、容姿を大絶賛していた。




千春は、容姿も良いが、礼儀正しく周りに対して気遣いもしっかりできるタイプだった。




人当たりも良く、社交性もあるため、すぐに良太の同僚やその家族と馴染むことができていた。




千春を同じ会社の人間とはいえ、男性が多数いる場に連れてくることに不安を感じていた良太だったが、楽しさとアルコールの影響もあり、いつの間にか不安は消えていた。




しかし、バーベキュー開始から1時間が経過した頃、社長の金田が良太達のグループに合流したことで、流れが一気に変わってしまう。




「初めまして社長の金田と申します。今日は忙しい中、参加していただきありがとうございます。ちょっとお邪魔させてもらいます。」




いきなり、ひょんと現れ自然な形でグループの輪の中に入り込んだ。




簡単な挨拶をすると、従業員の家族を物色するように参加しているメンバーの顔を見渡した。




金田は千春のことを見ると、視線を止めて、しばらく千春を見つめていた。




「金田社長、私の妻の千春です。今後ともよろしくお願いいたします。」




金田のその視線に気づいた良太は、危機感を覚えながらも、自分の妻であると千春のことを紹介した。




「良太の妻の千春です。今日はお誘いいただきありがとうございます。夫がいつもお世話になっております。今後ともよろしくお願いいたします。」




社長の金田に礼儀正しく挨拶をする千春。




その千春のことを、金田はまるで舐めるような視線で上から下までジロジロと品定めでもするように目を見開きながら見ていた。




まるで、一目惚れした人間が相手に向けて見るような目だった。




良太は、そんな金田のことを見て、自分の不安が現実化してしまう可能性を感じていた。




「良太の奥さんでしたか。こんな綺麗な女性は初めて見ましたよ。こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。」




今後とも・・・・それはどういう意味で言っているのか?




普通なら気にせずスルーするような言葉だが、この時の良太は異常なほど不安に駆られていた。




千春は、金田から綺麗と言われたことに照れているのか、少し照れているような様子だった。




しかし、金田が千春のことを見る時の目は、他の人間に向ける目とは明らかに異なっていることに良太は気づいていた。




そして、上司ある佐々木も金田の千春に向ける視線に気づいていた。




運が悪いことに、偶然にも千春の隣の席が空いていたため、金田は自然な形で千春の隣に座り込んだ。




社長ということもあり、千春は金田のグラスにお酒を注ぎ、お肉や野菜を取り皿に盛って、金田の相手をすることになった。




「いやぁ、それにしても、先ほども言いましたが、こんな可愛い奥さん見たことがないですよ。良太もやる時はやる男だな。営業成績は悪いけど。」




愛する妻のことを褒められるのは嬉しかったが、同時に妻の前で馬鹿にされたことが悔しく仕方なかった。




しかし、社長に対して失礼な態度を取るわけにはいかないため、口惜しさを押し殺して冷静になるよう自分に言い聞かせた。




「妻のことを褒めていただきありがとうございます。営業成績は、今後は改善するように頑張ります。」




「こんなに綺麗な奥さんがいるんだからな。しっかり頑張らないと、他の男に取られちゃうかもしれないぞ」




千春はまるで良太のことを挑発するような言い方をする金田に違和感を感じた。




それに加えて、まるで自分が良太以外の男性のことを選んでしまうような言い方をされ、少し不快な気持ちになっていた。




「社長、良太のことは私が指導してなんとかします。あんまり可愛い部下を虐めないでやってください。」




上司である佐々木が、間に入ってフォローした。




「まぁ、お前に任せてはいるが、頼むぞ本当に。良太も綺麗な奥さんためにもっと頑張れ。じゃないと俺が口説いちゃうぞ。」




「ははは。社長それくらいで勘弁してください。それに妻は俺以外の男性には興味ないんで大丈夫ですよ。」




怒りを抑えるので精一杯だった。




「俺が口説く」この言葉が一気に良太の怒りと不安を大きくさせた。




気が小さく自分に自信が無い良太は、普段なら「妻は自分以外の男性には興味ない」なんて人前では、絶対に言わない。




しかし、金田に少し傲慢な言動と、自分の愛する妻を軽視するような発言が許せず、つい言葉に出してしまった。




この良太の「妻は自分以外の男性には興味ない」という発言が、金田の心を着火させてしまったことに、この時の良太は気づいていなかった。




結局、その日はイベントが終わるまで金田は千春の隣を離れることがなかった。




コミュニケーション能力と女性を堕とし慣れしていることもあり、反応が薄い千春にも果敢に話しかけていた。




夫が勤めている会社の社長であるため、あまり変な態度も取るわけにもいかず、イベントが終わるまで我慢して会話に付き合っていた。




その間、良太は隣で心配そうにしながら、二人の会話を聞いていたが、何もできずにモジモジしているだけだった。




イベント自体は、何もトラブルなく無事に終わることができた。




自宅に戻ると、珍しく温厚な千春の機嫌が悪かった。




良太にも原因はわかっていた。




「何なのあの社長さん。良太のこと馬鹿にするようなこと言ってきたり、私のこと軽い女みたいな感じで見てるみたいだったし。せっかく楽しかったのに気分悪くなっちゃった。」




「ごめんな。不快な思いさせちゃってさ。社長以外の人は良い人ばかりなんだけど・・・・」




千春が言ってることも正論だった。




いくら会社の社長だからとはいえ、従業員の妻に対して言うことではない発言を繰り返していた。




良太自身も、愛する妻の前で、自分の営業成績が悪いことを暴露され、馬鹿にされたような気分になり不快だった。




何もできずに言い返すこともできない自分のことが嫌で仕方なかった。




「良太が謝ることじゃないよ。他の社員さんはみんないい人ばかりだったし。でも、もうあの社長さんとは会いたくないな。なんか感じ悪いし、正直嫌い。」




「そっか。ありがとう。次のイベントの時は、上手く断るようにするね。」




唯一の救いは、妻の千春が社長に対して不快感を感じたことだった。




社長に対しての印象が、もし良いものであったなら、良太の気分はさらに最悪な状態になっていた。




千春のことは信じている。




しかし、社長である金田の男性としての魅力は、自分よりも遥かに上であることを良太は自覚していた。




社長のような優秀な男性から本気で言い寄られたら、千春が自分では手が届かない場所に連れて行かれてしまうのでないかという不安に襲われていた。




社長の今日の千春を見た時の表情や接し方を見ると、確実に千春のことを女として見ていることは、誰から見ても明らかだった。




もう千春のことを社長と会わせたくない。




良太は心からそう感じていた。




しかし、現実は良太の思いとは真逆の方向に進んでいくことになる・・・・・・・










第2話「社長の策略」




イベントから早くも2週間が経過した。




良太は、低迷している営業成績を改善するために、自分なりに試行錯誤して奮闘していた。




しかし、努力と頑張りが報われることなく、契約が取れない日々が続いていた。




気が付くと、毎月課せられているノルマは4ヶ月間連続で未達成の状態だった。




会社の暗黙の決まりとして、営業目標が6ヶ月間未達成だった場合は、正社員から契約社員に契約が変更されてしまう。




もちろん、会社側から本人の了承を得ずに勝手に契約変更をすることはない。




しかし、未達成が続く営業部員には、会社側からの圧力が強くなり、実質的に居場所を無くされてしまう。




良太に残された猶予は、残り2ヶ月を切っていた。




愛する妻の千春と、これから作る予定の子供のことを考えると、絶対に営業目標を達成する必要があった。




打開策が見いだせず、焦りから完全に空回りしていた。




残酷にも時間だけが、経過していく。




猶予が2ヶ月を切ったタイミングで、社長の金田は良太に直接圧力をかけてくるようになった。




「お疲れさん。良太どうだ?今月は契約は何件取れそうだ?」




「社長お疲れ様です。正直に申し上げますと、今のところ、目途が立っていません。必ず月末までに営業目標は達成します。」




社長からの問いかけに、冷や汗をかきながら、必死に答える良太。




「本当に大丈夫なのか?4ヶ月以上も未達成なんだぞ。今月は必ず目標を達成しろよ。あんな綺麗な奥さんがいるのに恥ずかしくないのか。俺なら死ぬ気で頑張るけどな。」




営業目標が未達成だからなのか、イベントの日から、社長は良太に対してなぜか態度がキツくなっていた。




金田は社会的な地位と経済力を持っているが独身だった。




女癖の悪さと性格から、気に入った女性のことを堕とせても結婚まではできずにいた。




千春のような若く綺麗で一途な妻がいる良太のことを僻んでいるのは、言動からも明白だった。




「はい。今月は必ず営業目標を達成します。」




社長の余計な一言に感情を逆なでされながらも、良太は冷静さを装って必死に答えた。




しかし、具体的な打開策や契約が取れそうな相手も見つけることができず、良太は途方に暮れていた。




そして、結局その月も営業目標は未達に終わってしまう。




妻である千春には、自分がこのような状況に追い詰められていることは一言も言っていなかった。




心配させたくないという思いと、無様な自分の姿を見せたくないという思いから、千春には黙っていた。




しかし、その行動が事態を悪い方向に導いてしまう。




残り1ヶ月を切った段階で、社長と佐々木と面談を行うことになった。




「営業成績が低迷しているが、改善の兆しが見えない。君は今の状況をどのように考えている?」




社長の金田が嫌な言い方と口調で佐々木に問いかけた。




「彼なりに営業成績を改善しようと努力はしているのですが、残念ながら、まだ実績は出せていません。」




「この会社は、大手企業とは違い、実績が出せない営業の面倒はいつまでも見ていられない。もう十分猶予は与えたつもりだが、今後の見通しはどうなんだ?」




金田は不機嫌な表情と威圧的な態度で二人に詰め寄った。




「彼は、まだ若くこれからこの会社の中心になってくれる人材です。どうか、もう少し猶予をください。」




上司の佐々木は、何も言えずに下を向いている良太のことを守ろうと頭を下げて必死に社長に頼み込んだ。




しかし、金田はまったく納得していないような表情を浮かべていた。




良太は、金田の言動と態度で自分が退職に追い込まれつつある状況であると再認識していた。




「で、良太はどう考えているんだ?これからどうしていきたい?」




金田は佐々木ではなく良太本人に質問を投げかけた。




「私はまだこの会社で営業部員として頑張りたいと考えております。実績が出せていない状況ですが、必ず実績を出しますので、チャンスをください。」




良太は、プライドを捨てて嫌いな金田に頭を下げた。




自分だけでなく、愛する妻である千春のことも考えての行動だった。




「さっきも言ったが、この会社は大手とは資金力も収益性も違う。ハッキリ言うが、売れない営業を雇う体力はない。必ず実績を出して証明しろ。」




金田は、嫌そうな表情を浮かべながらも、良太に最後のチャンスを与えた。




結局、この日の面談でハッキリしたことは良太にとっては絶望的な状況だけだった。




与えられた猶予は、残り3ヶ月間。




3ヶ月の間に目標を達成できなければ、今の正社員としての立場を失うことになる。




この状況を打開する具体策は、今の良太にはまったく思いつかなかった。




しかし、良太には死に物狂いで実績を出す以外に道はなかった。




自分とは不釣り合いなほど、美しく夫思いの妻である千春との幸せな生活を守ために・・・・




自宅に戻ると、いつものように千春が明るく出迎えてくれた。




「良太お帰り〜今日もお疲れ様でした。」




千春の笑顔を見ていると、嫌な気持ちや疲れは、すぐに吹き飛んでしまう。




しかし、この日の良太は、千春の笑顔を見ても、平常心を取り戻せずにいた。




もし、今の正社員としての自分の立場を失ってしまったら、千春のことを失ってしまうかもしれない。




良太は、自分の目の前から千春がいなくなってしまう恐怖に包まれていた。




「良太どうしたの?ちょっと顔色悪いよ。体調悪い?」




いつもと様子が違う良太に気づいた千春は、心配そうに問いかけた。




「ん?大丈夫だよ。ごめんね。ちょっと疲れが溜まってるかも。」




良太は、自分が置かれている状況を千春に悟らせないために平然を装った。




「そっか。大丈夫ならよかった。じゃぁ、ご飯食べよ」




いつものように笑顔を見せて、明るく対応した。




しかし、千春は良太がいつもと様子が違うことに違和感を感じていた。




いつものように一緒に食事をしていても、良太の口数は明らかに少なかった。




会話も続かず、食事を終えると、すぐにお風呂に入った。




ベットに入り、寝ようとするが、面談で金田に言われたことが頭から離れず、結局朝まで寝れなかった。




次の日、出社すると社内がいつもよりもざわついていた。




人が集まっている場所に向かうと、そこには紙が貼られていた。




それは、各営業部員の成績が記されていた。




良太の成績は、全営業部員の中で最下位だった。




今までは、会社の雰囲気が悪くなるという理由で、営業部員の実績を全員が見渡せるように張り出すことはしていなかった。




しかし、社長の金田の意向により、営業部員ごとの実績を全員が周知できるようにした。




この日は、月に1回ある全社員が参加する会議がある日だった。




いつものように、金田の挨拶から始まり、社内での問題や会社の方針などの話が中心に話し合われた。




「えーすでにみんなも確認していると思うが、今月から営業部員ごとの実績を全従業員が把握できる体制に変えていく。」




金田は強面の表情を変えずに淡々と語り始めた。




「今までは、社内の雰囲気を考えてしなかったが、正直今は会社の業績も低迷している。そのため、各営業部員に奮起してもらいたい。また、一部の営業部員の成績が低迷していることも原因の一つだ。」




明らかに良太のことを指していた。




良太以外にも営業成績が低迷している者もいたが、その営業部員はすでに退職に追い込まれた。




誰も口に出さなかったが、このままの状態が継続すると、次は良太が退職に追い込まれることは誰もが気づいていた。




良太は、いつ自分が金田から名指しされるか不安に感じながら話を聞いていた。




「今後は、実績を出していない者には今までよりも厳しく対応していくつもりだ。みんなもそのつもりで、日々の業務に取り組んでくれ。」




ラグビー選手のような体格に、強面の表情の金田の言葉に、全従業員の緊張感が一気に高まった。




金田は、社長業をしているだけあり、人のことを引き付ける魅力と迫力を兼ね備えていた。




強面だが、身長も高く恵まれた体格と雰囲気を兼ね備えており、性格を除けば優秀なビジネスマンだった。




良太は、自分の営業成績が全従業員の前でさらされてしまったことで、さらに以前よりも会社に居心地が悪くなってしまった。




追い込まれた良太は、この日から以前よりも営業活動に力を入れた。




しかし、実績を出すことができず、また具体的な対応策もないまま、時間だけが無駄に過ぎていった。




上司の佐々木の良太のためにできる限りの協力をしたが、現実は残酷にも実績には繋がらなかった。




そして、早くも金田との面談から1ヶ月が経過した。




良太は、1ヶ月間必死に働いたが、営業目標には、まったく届かずノルマ未達成に終わった。




そして、また金田と面談をすることになった。




今回の面談には佐々木は参加しなかった。




「今月も目標未達成で終わったが、ちゃんと営業活動はしていたのか?これじゃぁ、この前の面談の意味がないだろ。」




佐々木がいないためか、金田の態度は、前回の面談の時よりも高圧的になっていた。




営業目標未達成で実績を残せなかった良太は、何も言えずに下を向いて金田の話を聞くしかなかった。




「この前も言ったが、役に立たない営業は会社にいてもらっても困るだけなんだよ。あんな綺麗な奥さんがいるのに勿体ない。俺なら死ぬ気でやるけどな。」




妻の千春のことを話の引き合いに出されることが良太には耐えがたいほどの苦痛だった。




独身の金田は、千春のような綺麗な女性と結婚できた良太のことを僻んでいた。




苦痛と激しい怒りに耐えながら、良太は金田の話を聞くしかなかった。




しかし、そんな良太の表情を確認しながら、金田は嫌な笑みを浮かべて話を続けた。




「与えた猶予は、後2ヶ月間だが、本当に大丈夫なのか?何か具体的な策はあるのか?」




金田は、良太が具体的な策が無いことは知っていた。




良太と面談をする前に、上司の佐々木とも面談をして事前に確認をしていた。




しかし、良太のことを追い詰めたいと考えていた金田は、あえて嫌味な言い方で良太に問い詰めた。




少しずつ、少しずつ精神的に良太のことを追い詰めるために・・・・・




「具体的な策は・・・・・正直ありません。ただ、与えていただいた期間内に必ず実績を出します。」




今の良太には、金田に対してこのような言い方しかできなかった。




現状、確実に契約が取れる当てがなく、絶望的な状況だった。




そして、そんな状況であることも金田は当然把握していた。




「はぁ?お前今の状況わかってるの?いい加減にしろよ。綺麗な奥さんが悲しむぞ。」




金田はまるで良太のことを挑発するように嫌な言い方をした。




「・・・・はい。申し訳ありません。」




怒りに打ち震えながらも、必死に堪えるしかない自分が情けなくなった。




面談を終え帰宅すると、出迎えてくれた千春を見て、辛さから泣きそうになった。




必死に涙を堪えるので精一杯だった。




ここで涙を見せたら、千春のことを心配させてしまう。




そう感じた良太は、流れそうになる涙を必死に堪え、何もなかったかのように明るく装った。




寝室に行くと、良太は不安からなのか、千春のことを抱きしめた。




「良太やっぱり何かあったの?最近の良太少し変だよ?」




「何もないよ。ごめんね心配させて。千春しよ?」




千春は何も言わずに目を瞑って唇を少し前に出した。




良太は、千春の顔を見つめながら、優しくキスをした。




「良太好きだよ」




キスをした後、千春は照れながら呟いた。




良太は、そんな千春のことを愛おしく感じた。




千春のためなら、どんなことでも頑張れる。




金田からの嫌がらせのようなパワハラを受け、つらい現実に押しつぶされそうになっていた自分を恥じた。




唇と唇が軽く触れ合う程度のキスをした後、いつものように正常位の態勢になった。




挿入しようとした時、千春はいつもと違うような違和感を感じた。




目を開けると、何か気まずそうにしている良太の姿があった。




「ごめん千春。今日ダメみたい。」




良太は金田からのパワハラと営業目標が達成できないストレスから、満足に勃起しなくなっていた。




仕事も上手くいかず、セックスの満足にできない。




今の良太の中の男としてのプライドはズタズタに傷ついていた。




「大丈夫だよ。良太最近疲れてたから。気にしないで。私は良太と一緒にいられるだけで十分幸せだから。」




そう言うと、千春は良太に甘えるように抱きついた。




千春の言葉に嘘はなかった。




男性経験が良太しかないため、特にセックスに対しての欲望もない。




セックスは性欲を満たすためではなく、良太との愛を確かめ合う行為としか考えていなかった。




この時は・・・・・・・・・・・・・・・




良太は、千春のことを強く抱きしめ、そのまま二人は抱き合ったまま眠りについた。




そして、面談からさらに1ヶ月が経過した。




良太は、今月も営業目標を達成できなかった。




社内には、各営業の実績が貼られ、良太は吊るし上げにされていた。




また、金田との面談の日を迎えた。




この日は、上司の佐々木も面談に同席した。




「で今月も営業目標未達成だったみたいだけど、これはどうゆうことだ?必ず目標を達成すると言っていたのに。口だけかお前は?」




面談が始まってすぐに金田は嫌味な言い方で良太を攻撃した。




しかし、実績を出せずにいた良太は、ただひたすら大人しく金田の嫌味に耐えるしかなかった。




「自分なりに精一杯頑張ったのですが・・・申し訳ありません。」




「頑張るなんて誰でも言えるだろ。与えた猶予期間はあと1ヶ月しかないけど、本当に大丈夫なのか?」




嫌な笑みを浮かべながら、良太のことを挑発するような言い方で圧力をかけた。




「社長、申し訳ありません。上司である私の指導不足です。」




二人の間の異常な空気を感じ取った上司の佐々木がフォローに入った。




「いや、これは佐々木君の責任でもあるが、ハッキリ言うが、一番の元凶は良太だ。先々月から何も改善されていない。これじゃぁ、完全に給料泥棒だよ。」




良太は、金田の暴言に何も言い返せなかった。




「猶予は後1ヶ月間あります。必ず期間内に営業目標をクリアさせます。もう一度だけ、良太にチャンスをください。」




佐々木は、金田に頭を下げて部下の良太のことを必死に守ろうとした。




対照的に社長の金田は、落ち込み下を向くしかない良太のことを、嫌な笑みを浮かべて見ていた。




「まぁ、与えた猶予は後1ヶ月間あるからな。それまでは見逃してやるが、それ以上も目標未達が続くようなら・・・・私もそれなりの処分を考えなければいけないからな。それは理解しておけよ。」




良太にとっては、実質的な死刑宣告のようなものだった。




後1ヶ月いないに、状況を改善しなければ、今の立場を失ってしまう。




千春との幸せな日常とこれからの未来が崩れ落ちるような気がしていた。




そして、いよいよ追い込まれたことで、良太は最悪の場合に備えて、現状を千春に打ち明けることにした。




重い足取りで帰宅すると、いつもと変わらない笑顔で千春が出迎えてくれた。




「千春、ちょっと大事な話があるんだ。」




良太は思いつめた様子で千春に現状の全てを打ち明けた。




もしかしたら、千春は自分に失望して、見限るかもしれない。




そんな不安を抱えつつ、千春に包み隠さず、今まで溜めていたものを吐き出すように話した。




少し驚くような素振りを見せたが、全てを知った千春のリアクションは良太が想像していたものとは違っていた。




「そうなんだ。全部話してくれてありがとう。今まで辛かったのに、気づいてあげられなくてごめんね。」




千春は、良太のことを責めるのではなく、良太の気持ちに気づいてあげられなかった自分のことを責めていた。




「本当につらいなら、今の会社辞めてもいいんだよ?良太もまだ若いんだから、仕事なんて探せばすぐに見つかるよ。それに私も働いてもいいし。」




千春の優しさに良太は今まで我慢していた感情が一気にこみ上げ、気が付くと泣いてしまっていた。




「ありがとう。心配かけてごめんね。でももう少し頑張ってみるよ。社長以外の人はみんな良い人だし、できれば今の会社で長く頑張りたいんだ。」




「そっか。でもあんまり無理しないでね。私にできることがあったら、なんでもするから!一緒に頑張ろうね。」




千春は、愛する夫である良太のことを心配しながらも妻として支えようとしていた。




その日は、寝室のベットでお互いの気持ちを確認するように、抱き合いながら眠りについた。




しかし、良太のストレスからくる勃起不全は改善しておらず、セックスはできなかった・・・・・




次の日、出社すると良太は社長の金田に呼び出された。




「この前の面談で話したからわかっていると思うが、今月中に結果を必ず出せよ。俺もお前の奥さんを悲しませるようなことしたくないからな。」




金田は、嫌な笑みを浮かべながら、嫌味を含めたような言い方をした。




金田の口から千春のことを口に出され、良太は我慢できないほどの怒りが込み上げてきた。




「はい。今月中に必ず結果を出します。」




良太は、こみ上げるような怒りの感情を抑えつつ、冷静に答えた。




社長室を出ると、良太は自分のデスクに戻り、上司の佐々木に相談しつつ、残り1ヶ月間の行動について戦略を練っていた。




1ヶ月間で結果を出すには、無駄な行動はできない。




千春との幸せな生活を守るために良太はその日から必死になって営業活動をした。




契約獲得のために、休日も返上して、自分を限界まで追い込んだ。




しかし、契約が取れないまま早くも残り2週間を切ってしまった。




焦りながらも、結果を出すために必死に営業活動をしている良太は気が付いていなかった。




水面下で動いていた金田の行動に・・・・・・・・・







第3話「奪われた人妻の唇」




遡ること1ヶ月前。




つまり、良太と金田が面談をした次の日のことだった。




良太が千春に現在の状況をカミングアウトした次の日、金田は良太の自宅を訪れていた。




ピンポーン




チャイムの音に気づいた千春は、ドアを開けた。




ドアを開けると、良太に見せる時のような陰湿な表情でわなく、爽やかな表情の金田が立ってた。




良太から話を聞いていたため、突然の金田の訪問に千春は動揺した。




「突然すみません。少しお話をしたいことがありまして、寄らせてもらいました。お時間は大丈夫でしょうか?」




長身でガッチリ体系で、強面の金田の迫力に圧倒された。




「はい。大丈夫です。」




突然の金田の訪問に動揺した千春は、満足に受け答えができなかった。




そんな千春のことはお構いなしに、金田は玄関に入ってきた。




「立ち話するような内容ではありませんので、家の中でお話させてもらっても大丈夫ですか?」




「あ・・はい。大丈夫です。」




断ることができず、千春は金田を自宅に入れてしまった。




自宅に入ると、金田は辺りはキョロキョロと見渡した。




「綺麗にされているんですね。まるで奥さんみたいですよ。」




金田の冗談に千春はなぜか嫌悪感を感じてしまっていた。




初めて会った時から、千春は金田に対して、あまり良い印象は感じていなかった。




馴れ馴れしく、女好きで女性慣れしていることは接していて、女の直感ですぐに気づいていた。




良太に対しての態度や扱いも悪いことを知っていたため、千春は金田に対して良い印象が持てなかった。




金田はいつも良太が座る席に腰をかけると、先ほどまでの爽やかな表情ではなく、少し強張った表情で話を始めた。




「実は、旦那さんのことについて奥さんに話しておきたいことがありまして。何か良太君から聞いていますか?」




「はい。昨日少しだけ夫から話は聞いています。夫がご迷惑をかけて申し訳ありません。」




千春は、良太の立場が悪くなることを避けるために、嫌々ながら金田に謝った。




「そうですか。良太君の営業成績が悪く、このままでは私としても非常な決断をしなければなりません。今日は、良太君の今後について奥さんとお話をしたくてお邪魔しました。」




金田は、真剣な表情で話しながらも、千春のことを舐めるような視線で見つめていた。




千春も金田の視線に気づいていたが、立場上何も言える状況でないため、気が付いていない振りをしていた。




「良太・いえ夫は今の金田社長の会社で、今後も頑張りたいと言っていました。どうか夫のことをよろしくお願いします。」




千春は嫌悪感を抱きながらも、良太を守るために必死に金田に頭を下げた。




「私としても、良太君には今後も私の会社で頑張ってもらいたいと考えています。しかし、他の社員の手前、実績を出していない社員を、そのままにしておくこともできない。」




金田は、真剣な表情をしながら話している最中も、千春の胸元や下半身をチラチラと見ていた。




「夫も結果を出そうと必死に頑張っています。どうか夫のことをよろしくお願いします。」




「いやぁ・・そう言われましてもねぇ。私のも立場もありますし、実績を出していない良太君のことを特別扱いするわけにもいかないんですよね。」




金田は嫌な笑みを浮かべながら、頭を下げる千春の胸元と下半身をジロジロと見ていた。




「お願いします。私にできることがあれば、なんでもします。」




良太のことを守りたいために、つい言ってしまった千春のこの言葉が、後に二人の運命を大きく変えてしまうことになる。




「なんでもですか・・じゃぁ、一度だけでいいので、食事に付き合ってくれませんか?」




一瞬、千春の思考が停止した。




「はい?食事ですか・・・?」




「ええ。奥さんが食事に付き合ってくれるなら、良太君の今後の処遇も検討しますよ。もちろん、実績を出せない社員を特別扱いするわけにはいきません。あくまで猶予期間を延長する形になります。」




金田から出された提案に千春は一瞬考え込んでしまう。




嫌悪感を抱いる金田と二人っきりで食事には正直行きたくない。




愛する良太以外の男性と、食事だけとはいえ、二人で出かけることにも抵抗を感じていた。




「少し、考えさせてもらってもいいですか?すいません。」




「わかりました。考えが決まりましたら、連絡をください。これが私の連絡先です。」




金田は、戸惑っている千春に自分の名刺を渡し、そのまま家を出ていった。




千春は、しばらく一人で考え込んでいた。




良太の話では、まだ1ヶ月間は猶予期間がある。




千春は1時間程度考えた結果、後2週間だけ様子を見てから判断することにした。




しかし、現実は残酷にも千春が望むような展開にはならなかった。




契約が取れず、精神的に追い詰められていく良太の姿を見て、千春は望まない決断をする。




猶予期間が残り2週間となったタイミングで、千春は金田から渡された連絡先に連絡を入れた。




金田の行動は早く、次の日に食事の段取りを取り付けてきた。




あまりに早い展開に千春は動揺したが、良太を守るために一度だけと我慢することにした。




良太を守るためとはいえ、夫以外の男性と二人っきりで食事に行くことに罪悪感を感じていた。




食事は、金田の仕事が終わった後のため、少し遅く19時前後の予定だった。




千春は良太に気づかれないために、この日は友達と会う約束があると嘘をついた。




金田と一緒にいるところを見られたくないため、自宅から少し離れた場所を待ち合わせ場所にした。




千春は約束の時間よりも少し早く着いて金田を待った。




少しすると、高級車に乗った金田が千春の前に現れた。




「お待たせ。さぁ早く乗って。お店は予約してあるから。」




金田は、車を降りて助手席のドアを開けて千春を車の中に招き入れた。




千春も良太も軽自動車しか乗ったことがないため、高級車に乗るのは初めてだった。




社内は、少しキツい香水のような匂いが漂っていた。




「今日は千春ちゃんのために本当なら予約しないと入れない超人気店のお寿司屋さん行くから。めちゃくちゃ美味しいから好きなだけ食べてね。」




金田から馴れ馴れしく「千春ちゃん」と呼ばれることに激し嫌悪感を感じていた。




「そうなんですか。楽しみです。今日はよろしくお願いします。」




千春は社交辞令のように適当に言葉を返した。




高級寿司店なんて本当はまったく興味がなかった。




本心では、早く金田との食事を終えて良太がいる自宅に戻りたかった。




店に向かう車内では、金田が一方的に千春に話しかけていた。




千春は金田の上から下まで舐めるような視線が嫌で仕方なかったが、機嫌を悪くさせないために愛想よく対応していた。




店に着くと、個室に案内された。




良太と普段外食する時は、比較的料金が安い店ばかり選んでいたため、このような高級店に来たのは初めてだった。




「すごいでしょ。この店予約だけでも半年間は埋まってるからね。俺がこの店のオーナと知り合いじゃなかったら、多分入れないよ。」




「そうなんですね。こんな高級なお店にご招待していただき本当にありがとうございます。」




金田の自慢話も、嫌な顔せずに聞いて上手く対応した。




メニューも千春の意見は聞かずに、金田が全て決めて注文した。




支配欲が強く、自己中心的な金田の性格が行動に現れていた。




良太だったら、絶対にこんなことしない。




千春は心の中で金田と良太を比べて、金田のことを否定していた。




食事中の会話も千春にとっては不快な内容だった。




「千春ちゃんそんな可愛いんだから結構モテたでしょ?なんで良太君と結婚したの?」




まるで良太のことを馬鹿にしたような発言に千春はイラっとした。




「全然モテませんでしたよ。良太は本当に優しかったので。私のこと大事にしてくれたんです。」




「ふーん。でも千春ちゃんなら良太君じゃなくても、他にもっといい男いたんじゃない?俺とかさ。」




金田のナルシストな発言に不快感を感じた。




「良太以外の男性のことは考えられません。それに金田さんこそ女性からモテそうですよね。」




「うーん。まぁ、女には困ったことはないかな。でも結婚したいって思う女性と出会うことがなくてさ。だから未だに独身なんだよね。」




お世辞で金田のことを褒めつつ、上手く気分を良くさせて良太の立場を良くしてもらおうと立ち振る舞った。




「金田さんなら、きっとすぐに結婚したいって思える女性と出会えますよ。」




「魅力的な女性ならもう出会っちゃったんだよね。でもその人は結婚してるんだよね。」




意味深な言葉に、千春は嫌な予感がしたが、会話を続かせるために聞き返した。




「そうなんですか?結婚してる方なんですね。職場の方とかですか?」




「いやぁ職場と言ったら職場なんだけどねぇ。いけないことなんだけど、従業員の奥さんなんだよね。」




千春の心臓の鼓動はどんどん早くなっていく。




自分の嫌な予感が外れていることを心から願った。




しかし、金田の口から出た言葉に千春は絶望した。




「ここまでわかりやすく言えばわかると思うけど、千春ちゃんのことなんだよね。今まで出会った女性の中で一番魅力的で一目惚れしちゃったよ。」




「はは。金田さん冗談が上手ですね。それに私は良太の妻なので。夫以外の男性のことは考えられないですよ。」




千春は上手く金田のことをかわそうと誤魔化すように返した。




「冗談じゃなくて本当のことだよ。千春ちゃんのこと自分の女にしたいって思ってる。今日だって千春ちゃんじゃなかったら食事なんて誘ってないから。」




先ほどよりも真面目な表情で千春のことを真っすぐ見つめながら言い放った。




千春はどう対応すればいいかわからず、無言になってしまった。




しばらく沈黙が続くが、それでも金田は千春から目を離そうとせず、見つめ続けた。




「私は良太の妻ですし、良太のことを愛しています。申し訳ありませんが、そんなこと言われても困ります。」




千春は、金田にハッキリと拒絶の意志を言葉で示した。




その言葉を聞き、金田はしばらく不機嫌そうな表情をしていたが、急に笑い出した。




「ははは。そりゃそうだよね。急にこんなこと言われても千春ちゃんも困るよね。でも、俺は諦めないからね。マジで千春ちゃんに惚れちゃったから。」




「本当に困るのでやめてください。今日だって、良太のために来たんです。」




「わかってるよ。俺は約束はちゃんと守るからさ。良太君の猶予期限は1ヶ月間引き延ばすよ。でも、その後は良太君次第だからね。実績を出せないなら、守ってあげることもできないから。それだけは言っておくよ。」




たった1ヶ月間引き延ばされただけ。




千春は金田の言葉を聞いて落胆した。




金田と食事に付き合えば、もう少し良太のことを優遇してもらえると考えていた。




自分の考えが甘かったと痛感したが、今の千春には金田のことを頼るしか選択肢がなかった。




「ありがとうございます。夫をよろしくお願いします。」




感情を押し殺し、金田に頭を下げた。




食事を終えると、金田の高級車に乗り自宅に向かった。




本当なら、1秒でも一緒に居たくなかったが、どうしても送らせてくれと金田にお願いされたため、押しに弱い千春は断れなかった。




帰りの車内でも、金田は千春のことを積極的に口説いていた。




「千春ちゃん今日はありがとう。楽しかったよ。また会ってくれないかな?」




「金田社長やめてください。本当に困ります。私には良太がいるので。申し訳ありませんが、二人で会うのはこれで最後にしてください。」




千春の言葉に金田は舌打ちをしてわかりやすく不機嫌になった。




二人は無言になり社内は気まずい雰囲気になった。




無言のまましばらく車を走らせると、千春の自宅に向かう通路から少し外れた人気のない道に停車した。




そして沈黙を破るように金田が口を開いた。




「俺は千春ちゃんのこと諦めないから。絶対に振り向かせてやる。良太君よりも俺の方が千春ちゃんのこと幸せにできるからね。」




そう言うと、金田は自分の顔を助手席にいる千春に近づけた。




突然のことで気が動転した千春は、怖くなり体が硬直して動けなかった。




気が付くと、目の前には自分のことを真っすぐに見つめる金田の顔があった。




そして、金田は千春の小さな顔を両手で添えるように掴むと、自分の方に引き寄せて唇を奪った・・・・・・・・


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