都市伝説の少年

2006/07/16 23:34 登録: えっちな名無しさん

 私がその都市伝説の少年に出会ったのは一通の投書がきっかけでした。

 我がスーパーミステリーマガジン『ムウウー』編集部にその封書が舞い込んだのはほんの数週間前の事でした。
 投稿編集担当の私は「また妄想癖さんの妄想投稿か」と辟易しながらも封書を開け、中の便箋を読み始め、意外な内容に驚きました。

「ムウウー編集部のみなさんこんにちは。ところで編集部の皆さんは「ゲゲゲの鬼多朗」の都市伝説が本当だという事をお信じになるでしょうか〜」

 そんな書き出しの投書の内容を要約するとこうでした。
 なんでも最近多発している猟奇事件は妖怪の仕業であり、鬼多朗という少年が、その人間に害をなす妖怪を密かに退治しているのだという。
 そしてその鬼多朗は実在の少年であり、HPも開設していて、妖怪の被害に遭って困っている人はそのHPからコンタクトが取れるのだという。書面にはそのHPのURLも記載してありました。
 私は「現代はブロードバンドネットによるスピード化の時代だし、郵政民営化も近いし、さすがに妖怪ポスト等という前時代的な物は止めたんだなあ」と思いました。
 私は雑誌のネタ枯れの時期でもあり、渡りに船とばかりにこのネタを記事にする事にしました。そして私は記載してあったURLにアクセスしてみたのです。

 そのHPはどんな物だったかと言えば。
 まず、真っ黒な画面の中央に白字で、
「霊感の強い方は閲覧をご遠慮下さい。興味本位で閲覧すると寿命が一年縮みます。御覚悟の有る方にみ〔enter〕を」
 と表示されました。怖さより好奇心の勝った私は迷わず〔enter〕をクリックしました。
 すると…暗い墓場の画像が現れ、そのあちこちがコンテンツの隠しボタンになっており、クリックしてみると様々なコンテンツが現れました。
 鬼多朗のお祓い講座。妖怪恋占い。妖怪ギャラリー。妖怪BBS。妖怪・霊障Q&A。そして…ようやく墓石のお供えの饅頭の所に〔鬼多朗へのアクセス〕を見つけました。

 私がそれをクリックすると…。
 なんと突然、廃屋に敷いた布団に横たわる全裸の少女の画像に変わりました。
 その少女は小学校3〜4年生くらいに見え、乳房に発達する前の乳輪の膨らみだけの胸と、まだ恥毛の生えていないツルツルの割れ目がモロに見えました。そしてよくよく顔を見てみると、一見なかなかの美少女に見えましたが、目が猫の眼なのです! 私は「ああ! この子が噂に聞く『猫娘』なのか。実在していたんだ!」と思うと同時に、少しロリ気のある私はティムポが少しオギオギしてしまいした。
 そして画像の下に、
「ア〜ン見ちゃニャ〜ン! 鬼多朗へのアクセスはこ・ち・ら!」というenterボタンが。
 私はそれをクリックすると、氏名、住所、TEL No.の必須記入欄が出ました。私は個人情報保護の観点から少しためらいましたが、取材の為だからと打ち込みしてenterしたところ、メーラーが開きました。
 私はそこに取材依頼と、決して興味本位でない事を書き込みして送信しました。

 二週間後。「やっぱあのHPはデタラメだったんだなあ」と忘れかけていた所、

 「拝啓。ムウウー編集部様。お返事遅れてすみません。取材の件、お受けします。会見場所は〜」
 という取材の了解と会見場所を指定した返信メールが入りました。

 さて会見は深夜の青山墓地。静まりかえった霊園内の休憩用の東屋で私は鬼多朗を待ちました。そして深夜二時を過ぎ、いわゆる丑三つ時になった時。

「チャッチャカ、チャッチャカ」という携帯ミュージックプレーヤーのヘッドフォンの音漏れらしき音が近づいてきます。
 音の方へ振り向いてみると…どうやら鬼多朗君のようです。でも何かが違う。

「ペッタ、ペッタ、ペッタ…」

「ん? ペッタペッタ?」
 そう思って鬼多朗の足元を見ると…ナイキのエア入りビーサンでした。
 (下駄でカランコロンじゃないんかい!)と、ちょっとガッカリしました。

 そして鬼多朗は私の眼前に姿を見せました。
 その鬼多朗とは。
 年の頃なら小学校5〜6年生くらいの小柄な少年だ。だが、その姿は…。
 片目の隠れるロン毛オカッパ…ではなく、片目の隠れるドレッドヘアにニットキャップだ。そしてトレードマークの黄色と黒のチャンチャンコ…ではなく、黄色と黒で鋭いスタッドを打ち込まれた皮ベストだ。そして服装は昔の小学生風…ではなく、バスケジャージと極端な短足ズボンだ。そして鼻ピアスと耳ピアスをジャラジャラ付けてるという渋谷辺りのヒップホップ小僧風だ。
 
 もう私は漫画やアニメのイメージと全然違うのにがっかりしましたが、気を取り直して挨拶しました。
「どうも。鬼多朗君ですね? ムウウー編集部の○です。取材受けて下さって感謝します」

 私がそう言うと鬼多朗も応えました。
「そう、俺が鬼多朗さ。またの名をDJ.GeGe。よろしくな。Yoメ〜ン!ワッツアプ?」

 DJ.GeGeって…。 私は腰砕けしながらもインタビューに入りました。
「ところで鬼多朗君。この世で一番怖い事は何でしょう?」

「一番怖い事だあ? そりゃ人間の憎悪だろうよ。現代の人間は妖怪以上に凶悪だぜ。今は小僧でも平気で人を殺すだろ? それに比べりゃ妖怪の悪さなんて可愛いもんだぜ」

「あ、そうですか。…じゃ、じゃあ最強の妖怪はどの妖怪なんでしょうか? 妖怪じゃなくても幽霊族の鬼多朗君ですかねえ?」

「俺? とんでもねえよ。あのな、本当に最強(狂)の存在はな、妖怪じゃなくて人間にいるじゃねえか。ほら今、女優のY.AのジゴロやってるO.Mだよ。アイツが背負ってる水子と、食って捨てて憑いた女の生き霊の数がどれ程膨大な数だか知ってるかい? あれだけ背負って命に別状がないってのが俺には信じらんねえよ。よっぽど強大な守護霊着いてんだろな。俺も猫娘ハラました水子一人だけでヒーヒー言ってるのにさ、ましてやあんな膨大な生き霊に憑かれたら為す術もないぜ。アンタも気を付けたほうがいいぜ」

 なんかあまりの俗っぽさに冷めてきた私がインタビューを打ち切ろうとした時、鬼多朗の片目を覆うドレッドヘアがガザガサと動き、目玉の親父が現れた。

「おや鬼多朗。取材を受けるとは珍しい事もあるもんじゃのう」
 そういう目玉の親父の目にはブルーの猫眼カラーコンタクトがハマっていた。
 私は妖怪の世界も俗世間に毒されているんだなあと思い知りましたよ。

 そして取材も済み、謝礼を渡すと鬼多朗は、

「ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ〜、夜は墓場で 気分爽快 運動会、楽しいな 嬉しいな、お化けは死なない 1979ない? 〜」
 と、ヒップホップアレンジの主題歌を韻を踏みながら歌い、去って行きました。

 そして取材後数日も経たずして『KITAROコミュニケーションズ』なる差し出し人で「請求書在中」と書かれた封書が私の家に届いたのです。
(請求書? 身に覚えは…)と思い、中身を見てみると…
「あなた様のご覧になった有料アダルト画像サイトのご料金が未納となっております。つきましては延滞料金も含め○万円を〜」

 ば、馬鹿な! アダルト画像なんて見た覚えは…
 あっ! ま、まさか。あの鬼多朗のサイトか? あああっ! も、もしかしてあの猫娘の全裸画像がそうなのか? あれ見ただけでえ〜?

 ったく、正義の幽霊族がワンクリック詐欺かい!



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