試着室

2006/11/27 17:14 登録: えっちな名無しさん

「やっぱ無理があるんじゃない?」
 私は勇気をだしてみた。
「なんで?」
 ビキニを着た人は、心底不思議そうにつぶやく。
 ――だって。
 二十代なら、まだしも、あなたはどう見たって三十代後半。そんな人が、たとえ試着室だろうと、ビキニなんて。この人は変態に違いない。
 おなかは贅肉でトランポリンだし、ちょっとこんがりした肌は、もうしみができてるしさ、おまけに露出多い夏じゃないせいか、毛の処理が甘い、思わず目をそらしたくなる。


 何で私がこんな変態と絡んでいるかっていうと、何でだろう。理由が思い当たらない。
 私はついさっき、友達を待っていたんだ。
 けどそれはドタキャンメール一本で、無と化した。ああ、もう帰ろう。
 そんなときに、試着室の前を通りかかると、中に人がいた。カーテンは開けっ放しだ。もちろん、着替えてからとったんだろうけど。
 その人は言った。
「ねぇ、似合う?」
 普通の人なら、初めて会う人にそんなこと聞かないだろう。……待てよ、コイツ見たことあるぞ。
「田中さん?」
 親戚の、田中さん。 ああ、何でこんな人と親戚なんだろう、私は自分の血を少しだけ呪った。


 やっぱり帰ろう、義理はない。
「あの、帰ります」
「え、まってよ、ちょっと!」
「だって」
 私はさらに、勇気を振り絞った、限界まで。
「どっちみち、男の人にビキニはちょっと……」


出典:とあるブログに載ってた小説
リンク:小説

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