ある日突然・・・すぎるだろ!

2006/12/13 17:23 登録: えっちな名無しさん

 透明人間になった覚えはない。
「誰かぁ、あ、そうだ、明美っ」
 とっさに、隣の席の明美に声をかけたが反応無し。あれ? 透明人間の声ってあったっけ。いやいや、なったつもりはないんだ、うん!
「じゃあ、美里! あんたはあたしを無視しないよねって――あれ?」
 隣の席で、本を読んでいた美里はあたしの言葉をはねのけ、くるりと振り返ってしまった。「ねぇ、この漢字読めない」
 バカだ……じゃなくて。
 もしかして、まさかとは思ったけど、“いじめ”じゃん。

 教室に入ったあたしは、無視の対象だった。誰も挨拶しないし、やさしかったはずの里香まで。男子なんか、いつもはじろりと一瞥するくせに、今日はそれさい無し。
 黒板に、あたしを無視しろと文字はないけど、こりゃあ集団でのいじめだ。あまりの何もなさに、目のまわりが熱くなってきた。
 つんと、わさびなんかよりずっと深く、痛さが襲ってくる。
 あたしは、誰もいない自分の机に座って、顔をふせた。まわりが暗くなる、みんなの話に、誰にも分からないようにそっと耳を傾ける。
「はい、みんな座ってね、おはよう」
 急にイスを引く音がうるさくなって、ぴたりとやむ。
「先生っ」
 泣いてる顔を、みんなにみられてもいい、逃げ道を、助けをもとめた。 
「はい、今日の宿題だしてねぇ」
 ――先生っ。
 この人まで、無視しちゃいけないはずの人まで、無視だ。あたし、あたし――。
「……そんなっ」
 絞るような声がでた。


「悲しいお知らせがあります、今日の朝、登校中に渡辺さんが亡くなりました――」


 え、あたし死んでたの?
 なぁーんだ。



出典:とあるブログに載ってた小説
リンク:小説

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