小さな手袋
2007/01/18 20:21 登録: ナナシ
俺と彼女のMはもう2年以上の付き合いになる。
お互いのいいところも、悪いところもわかっているつもりだ。
ある日俺とMは些細な事て喧嘩をしてしまった。
内容は俺が、彼女以外の女とメールをしていたといったものだった。
それからというもの、Mはメールも電話もくれなくなった。
やはり相当怒っているらしい。
俺は猛烈に反省をした。しかしいくらメールを送っても、電話をかけても返事が無い。
ついに終わりか…。
徐々にそんな思いが頭を駆け巡るようになっていた。
謝りたい…謝ってもう一度あの日のように話がしたい…
もう一度、一緒に手を繋いで2人で歩いていきたい…
そう考えると涙が止まらなくなっていた。
気が付くと俺は携帯を握っていた。
トゥルルル〜
ガチャ!
「はい。」
彼女が電話に出てくれた。
まさか出てくれると思ってなかった俺は焦りながら
「あ、あ、あのさ、この前はごめん!俺やっぱお前が必要だ。もう一回ちゃんと会って話がしたい。」
沈黙が続いた。
しばらくの沈黙の末、Mが口を開いた。
「いいよ。私も悪かったし。今度の12日の17時にN君(俺)の家行くから。」
俺の返事はもちろん決まってる。
「わかった。」
その日は10日だった。Mが来る約束の2日間、俺は緊張して眠れない日々を過ごしていた。
そして12日が来た。
しかし約束の17時になっても、Mは家に来ない。
不思議に思った俺はMの携帯に電話をしてみた。
しかし何回コールしても繋がらない。
俺は異常なまでの不安に襲われた。
すると突然家の電話が鳴り出した。
ガチャ!
「はい。」
「あ!N君?私Mの母ですけど…。」
「あ〜。どうかされました?」
「Mが交通事故に合ったの!すぐ○○病院まで来て!!」
「え…」
俺はなにがなんだか分らなかった。
混乱したまま病院まで車を走らせた。
「N君!!」
病院に着いた俺をMの母が迎えてくれた。
病室のベットには変わり果てたMの姿があった。
俺が行った時にはもう遅く息を引き取った後だった。
暴走した大型のダンプにはねられ、即死だったらしい。
俺は泣いた。我慢なんて出来やしない。体のそこから涙が溢れた。
しばらく泣いて少し落ち着いた俺にMの母があるものを手渡した。
「そうだN君、Mがこんなものを持ってたの。はねられても、これは大事そうに持ってったらしいわ。」
渡された袋には手袋と手紙が入っていた。
手紙には、
『Nくんへ。いままでメールや電話無視しちゃってごめんなさい。
私もやっぱりN君が必要です。あの時電話で私のこと必要だっていってくれて私すっごいうれしかったんだから!N君が誰とメールしようと、私はN君だけを愛してくつもりだから。
ps 誕生日おめでとう!私お金ないから何あげたらいいか迷ったんだけど、いまから寒くなるので手袋を編みました。良かったら使ってね。』
今日は俺の誕生日だった。完全に忘れてた。俺はまた泣いてしまった。一緒に入っていた手袋を手にはめようとしてもなかなか入らない。Mがサイズ間違えたみたいだった。
ドジなところはMらしい。そう思った俺は手袋に紐をつけ、いつも持っている鞄に着けた。
M…。いまごろ向こうで幸せにやってるか?
俺はたぶんM以上の彼女なんて出来やしないって思うよ。
M、いままでありがとう。そしてごめんな。
Mがくれた手袋はいつも一緒にいるから。
これならずっと一緒にいられるよな。
これからもずっとずっと一緒に生きていこうな。
そう天国のMに言い残し、俺は病院を出て行った…。
出典:オリ
リンク:ジナル

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