〜可憐日記(前編)〜
2007/02/06 17:01 登録: えっちな名無しさん
お兄ちゃんと可憐は、生まれる前から運命の糸で結ばれた二人…
お兄ちゃん大好き!
お兄ちゃんは可憐を、そして可憐はお兄ちゃんを愛さなければいけないんです…
だからお兄ちゃん大好き!
お兄ちゃんと可憐が離れ離れになると、この世界は滅亡してしまうんです…
絶対にお兄ちゃん大好き!
お兄ちゃんが見とれていい女性は可憐だけ、可憐が見つめていい男性はお兄ちゃんだけ…
死んだってお兄ちゃん大好き!
お兄ちゃんが、もし死んでしまったら可憐も死ななければいけないんです。可憐が死んだら同様に
お兄ちゃんも死ななければならないんです。
狂おしいほどにお兄ちゃん大好き!!!
※※※
小さい頃の記憶はあまり残っていない。気が付いたらお母さんと二人で暮らしていた。それが小学生
の頃の話。お父さんは病気で早くに亡くなったそうだ。他に親戚も知らないし、家族も知らない。
ましてやお兄ちゃんがいるだなんて… いえ、でも本当は知っていた。私は、可憐は、お兄ちゃんを
知っていた。ただ、幼い時の記憶を覆い隠さざるを得なかった事が一つだけ…
お父さんにはお父さんの、お母さんにはお母さんの都合があった。決して二人では暮らせない。
だけどそれではあまりにも悲しい。だから母は可憐を、お父さんはお兄ちゃんを引き取った。
月に一度、お兄ちゃんと会える日がある。お兄ちゃんの日… その日は、お母さんと一緒に可憐は
大好きなお兄ちゃんに会いに行く。だけど、お母さんがお父さんのことを大好きだったか
どうかまでは今でもよく分からない。
大きなお屋敷。たくさんのお部屋。当主とその一人息子が住む家にしては大き過ぎるとしか思えない。
しかし、今にして思えば、それにも納得がいく。あそこが可憐の部屋、ここは咲耶ちゃんの、そして
その隣があの女の部屋… でも、当時は、無機質で寂しいただの空き部屋に過ぎなかった。
大切なお客さんや屋敷で働くメイドさんに一部あてがわれていただけの…
あの女? あの女とは… いったい誰だったんだろうか…?
可憐のお部屋はあの時から今日まで変わっていない。他の11人が来た時も、可憐のお部屋
だけは決まっていた。ドキドキしながら大好きなお兄ちゃんとクッキーを食べたあのお部屋。
ワクワクしながらお兄ちゃんが話す冒険譚に小さな胸躍らせたあのお部屋。何の疑いも無く
大好きなお兄ちゃんの胸に飛び込むことが出来たあのお部屋。ずっと一緒に居たかった。
握ったこの手を離したくなかった。もっと強く抱きしめて欲しかった。好奇心からで無く、本心から
お兄ちゃんとキスがしたかった。でもその願いは、私たちの年齢に伴った愛情表現であるはずも
無く、迎えた結末は悲惨の一語。それが最近まで忘れさせていた低学年時の記憶の真実だった。
あの事件が元で、お兄ちゃんの日がカレンダーから消え、可憐はその苦しさから逃れるために
お兄ちゃんを忘れた… 幼心に最も幸せであり、最も不幸だったあの夏の日…
夏休みと重なった八月のお兄ちゃんの日。来たその日からお兄ちゃんとずっと一緒だった。
野山を駆け回り、プールで、海ではしゃぎ回り、美味しいお菓子を食べて、疲れたら同じシーツに
包まって夢を見る。誰も邪魔をするものはいない。お兄ちゃんと可憐だけのはかない現世。
短いお兄ちゃんの日、始まりという幸せの時間があるのと同じく、終わりの辛く悲しい時間は
避けようも無い。つないだ手を離したくない。抱きしめられた腕を解いて欲しくない。
あの時もそうだった。明日帰らなければいけないという現実が私を少しだけ大人にさせた。
一緒にお昼寝してたお兄ちゃんを見つめる。言いようの無いドキドキ感に襲われると同時に、
別れが近づいているという焦りの中で、可憐はお兄ちゃんに口付けを…
「可憐! なにやってるの!?」
びっくりして戸口に目を向けると、お母さんが今まで見たことも無いような怖い顔で私を、ううん、
お兄ちゃんを睨み付けていた。すぐにお母さんに手を引かれ、引っ張られて部屋から連れ出された。
どうしてそんなに怒ってるの? ねぇ、可憐はただお兄ちゃんの事が大好きなだけなんだよ?
お母さん、そんなに怖い顔しないで… それとも可憐がしたことは、そんなに悪いことだったの?
残り数センチの距離はそのまま夢となり、今もまだその夢が可憐にとってお兄ちゃんまでの
最短距離。そして、その出来事以後、可憐はお兄ちゃんと同じ布団で寝ることを禁じられた。
周りの大人たちに少しずつ引き離されていった。月に一度のお兄ちゃんの日も、お兄ちゃんの
具合が良くないとかで、お母さんの機嫌が悪いと会うことさえ許されなかった。
会えないと思いは募るばかり、何度もお兄ちゃんとのキスを思い浮かべては、今の二人の
距離に涙を流した。お兄ちゃんに会いたい! 抱きしめたい! そしてキスしたい!
夢に出てくるのはいつもお兄ちゃん。可憐に会いたい、会いたいと言ってくれるお兄ちゃん。
お兄ちゃん… 大きくなったら可憐と… 可憐と結婚してくれますか?
昔、勇気を出してお兄ちゃんにこう尋ねてみた。その答えは、答えは… どうだったんだろう?
なぜか肝心な部分を思い出せない。唖然とし困ったような、照れたようなお兄ちゃんの顔。
曖昧な言葉で誤魔化そうとしていたお兄ちゃんだったけど、最後には答えてもらえたはず。
そのときお兄ちゃんは可憐に何ていったんだろう? たしか、
確か、
タシカ、
tasika…
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
可憐達が触れ合えるのは、そう、夢の中だけだった… そして、お兄ちゃんへの想いを
胸に抱いたまま、可憐は中学を卒業した。そして、知らなかったこと。可憐の代わりに
あの女がお兄ちゃんにあてがわれたこと。そして、お兄ちゃんがたぶらかされていったこと。
可憐もお兄ちゃんも同じ被害者だった。悲しいほどに、狂おしいほどに…
高校にあがってしばらくして、お母さんが亡くなった。本当は長生きできたはずなのに亡くなった。
不思議と涙は出なかった。それよりもお兄ちゃんに会えないことの方が何倍も悲しかった。
お母さんは一人寂しく、ううん、寂しいと思う前に亡くなったはず。多分… あれ? お母さんは
別に病気でも何でも無かったけど… どうして亡くなったんだろう? 確か可憐が高校入学の
記念にお兄ちゃんに会いに行きたいってお願いしたまでは覚えているけど…
そうそう、お母さんッたらおかしいの。いつもは凛としてて生真面目で潔癖なのに、だらんと
舌を伸ばしてだらしなく床に転がっていて、お母さんもたまには悪ふざけするんだなぁって
少しだけ関心したっけ… でも、ずっと見てたら飽きちゃった。お母さんぴくりとも動かないで
同じ格好ばかりしてるんだもの。可憐は、そんな何でも笑うような子供じゃないんですよーだ。
ふふふ… ばーか。
お母さんがいなくなった私が頼りにするのは、当然お父さん。お父さんの家には、お兄ちゃんが
いる。やっと会える。お兄ちゃんに会える。荷物を揃える。明日にでも、今日にでも出発しよう。
もうすぐ幸せな毎日が始まる。お兄ちゃんと可憐の幸せな毎日が。
そして、屋敷の扉を開ける。パタパタと足音鳴らして誰かがやってくる。お兄ちゃん?
あ、お兄ちゃんだ! 可憐、すぐにわかったよ! もう何年ぶりになるのかな? 覚えてますか?
可憐のことを。でも… お兄ちゃん、その隣にいる人は誰ですか? それも一人じゃない…
ぽかんとしている可憐にお兄ちゃんが紹介してくれました。彼女達も私と同じお兄ちゃんの
妹であること。一人は大人っぽい咲耶ちゃん。一人は… ああ、あの女だ… 私のカワリ…
まだ居たの… さっさと… じゃえば… い ・・のに。
上辺だけの笑顔、控えめな態度、隣に侍る大型犬。可憐のお兄ちゃんを誘惑し続けている
忌むべき存在。「こんにちは…」わざとらしい挨拶に一応形だけ応えてやる。でも、いつか
その長い間積み重ねてきた罪の重さを分からせてあげる。そして、お兄ちゃんの目を可憐が
醒めさせてあげるの… そして、あのキスの続きをしましょう。今度は邪魔が入らないように
きちんと扉に鍵をかけて、ベットのシーツも整えて、ずっと二人で生きていこうよ。可憐ね、
あの女よりもずっと、ずーっと素敵だよ? お兄ちゃんは知らないだろうけど、可憐ね、今日まで
お兄ちゃんのためだけに頑張ってきたんだよ? 可憐全部に満足してもらえるように、
可憐に飽きちゃわないように。
部屋に通された。その前に可憐はお兄ちゃんのお部屋をチェックしておきました。いつでも
会いにいけるように、と。また、お父さんは海外に長く出張していて、これからもしばらくは
兄妹で生活していかなければならないこと。そして、妹がまだまだ増える予定であるということ。
でも、それはあまり気にしていない。いずれも初めてお兄ちゃんに会う、もしくは幼児期以来と
いうこともあり、可憐が望まないような事態には発展しないはず。それよりもなによりも、
当面の課題はあの女の処理だ。一応、説得はしてみるつもりだけど、もしダメなら可憐は、
あの女にしかるべき罰を与えなければいけないんです。そう、これは夢の中でお兄ちゃんに
言われたこと。夢は、その人間の深層心理を映し出すといわれている。確かに可憐のそれでは
あるけれど、お兄ちゃんが出てきたということは、少なからずお兄ちゃんのそれでもあるはず。
だから私が行う行為は、お兄ちゃんの望みでもあるんです。可憐の勝手な思い込みでは
無いんです。でも、最近はお兄ちゃんのこととなると、我を忘れることが増えてしまって、可憐も
自制を心がけているの… だって、お兄ちゃんに嫌われたら、可憐生きていけないもの…
それに可憐が生きていけないと、お兄ちゃんも生きていけない。二人は一心同体。だから
私は自分のことだけじゃなく、お兄ちゃんを気遣うことも必要… がんばらないと…
お兄ちゃんの目を覚ますために、可憐はいろいろ努力しました。常に側にいるようにして、
食事や着替えのお世話、買い物の付き添い。もちろん学校には一緒に行き、これも運命なん
だろうか?お兄ちゃんと同じクラスになれた。ますます二人の時間が増えた。ただ、あの女の
洗脳効果がかなり残っているようで、週末はあの女と療養所に出かけてしまう。これじゃあ、可憐が
どんなに頑張っても意味無いよ。お兄ちゃん、気付いて! それとも今以上に可憐が頑張らないと
ダメなの? 可憐達が長く離れてしまったせいで、こんなにも険しい壁が出来ていたなんて!
なんなのよ! あの女は! そうだ! あのメガネに何か仕掛けがあるに違いない!
そうじゃなきゃ、お兄ちゃんがあんなのにたぶらかされる訳ないよ! 可憐より先だった?
関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!
関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!かんjhふぃうjsdkhfrjrkじゅdkはhr!!
愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛
愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛・愛!
愛があるの!地上で一番の愛が在るの!これは地球を救うためじゃない!お兄ちゃんを
私を二人を救うためにあるの!なのになのになのに!!!!!! あいつあいつあいつあいつ!!
居ないと ……ってたのに ただ… の間に … っただけなんて! 会えな… は あいつが…
せい…の! 認めない!認めない!認めない!認めない!みとmraんbrみべない!!!
そしてその夜、私はあの女のメガネを割った。本当は、かけたままの状態で叩き割ってやりたかった
けど、そこまでするのはさすがに酷に思えた。だから庭に持ち出して可憐の靴で思いっきり
踏み潰してやった。踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで
踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで
踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏み潰してやったんです!
今までにないくらい気分がすっと晴れ渡った。踏んでよかった。心からそう思った。ただ、可憐の
靴がボロボロになったのが少し鬱陶しかった。あの女、メガネだけでも可憐をバカにするの!
そして、翌朝それは大事件になった。あの女が泣いていた。すごく良い顔をしているな、と
可憐は初めて彼女に感心しました。でも、お兄ちゃんに必要以上に慰められて
いたことが癪に障った。まだ、懲りていないみたいだ。今度の作戦は時間がかかる。
だけど、次で最後になるでしょう。うふふ…
春・夏と来て、作戦決行の秋がやってきた。その日はみんなでみかん狩りにいく予定になっていた。
場所は裏山。とは言っても、それなりに距離がある。だけど、可憐は知っている。そこから
この屋敷までの最短距離を行く抜け道の存在を。だって可憐が今日のこの日に備えて
少しずつ切り開いて行った秘密の通路なんですもの。ここが可憐とお兄ちゃんの愛を
育んで行くスタート地点になるのね… ああ、お兄ちゃん… 大好き!
皆で家を出て現地に到着したのは10時前、そこからは自由行動。白雪ちゃん他数人は、
お昼のバーベキューの準備に取り掛かって、お兄ちゃんは雛子ちゃんと亞里亞ちゃんの
相手をしている。子供相手なら可憐も安心して行動に移せる。あの女は… 木陰で犬と
一緒に読書に精を出してる… 何しに来たのかしら… ほんと、バカね。
お昼。みんなで食べたバーベキュー。とても美味しかった。もう、白雪ちゃんは欠かせないわね。
午後は可憐もお兄ちゃんと一緒にみかん狩り。あの女は… ってもう可憐に狩られちゃった
んだね。ふふふ、亡骸は何処に捨ててやろうかしら? ああ、早く屋敷に戻りたい。
そして、あなたの泣きっ面を可憐に見せて! 可憐に元気をちょうだい!
…。
…。
大事になった。帰宅後、しばらくして部屋からあの女の悲鳴があがった。お兄ちゃんに
負けないくらいに、可憐もあの女の部屋に飛び込んだ。そこで見たものは… 私の期待を遥かに
超えたものだった。あの女の喜びは可憐の悲しみ、あの女の悲しみは可憐の喜び。
今までに類を見ない喜びがそこに転がっていた。偉そうにして転がっていたのです!!!!!!!!
お兄ちゃん大好き!
(後編に続く)
出典:〜可憐日記(前編)〜
リンク:http://arekore.s10.xrea.com/marie/karen1.htm

(・∀・): 25 | (・A・): 60
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