〜可憐日記(後編)〜
2007/02/06 17:02 登録: えっちな名無しさん
お兄ちゃんを誘惑する女、騙す女、利用する女、誰一人として許さない。
純真で、無垢で、限りなく優しいお兄ちゃんを虐める女という仮面を被った醜悪な豚共に罰を。
そして、この可憐がこの世に居る限り、まとわり付く全ての災厄からお兄ちゃんを守り抜く。
お兄ちゃんが可憐を愛することに集中できる環境を作り上げるのもまた、可憐の大切な役目。
それにしてもあの女… 可憐に化けてお兄ちゃんを誘惑するだなんて! なんて女なの…
でもだめよ、だって可憐は女狐狩りの名人なんですもの! それをこの手で証明してあげる!!!!
楽しかったはずのピクニック。屋敷に帰り着いたときに一人欠けていた住人。それは… ミカエル。
雛子ちゃんや亞里亞ちゃんと一緒にここまで戻ってきたのは確か。でも、気がつくと彼の姿が彼女達の
前から忽然と消えていた… みたい。兄妹全員がここに帰ってきても、やっぱりミカエルは姿を
現すことは無かった。みんなは、口々に自分で散歩にでもいったんだ、なんて言ってたけど、そんな
訳ないよね? 鞠絵ちゃん。彼がこんなにも長くあなたから離れた事ってこれが初めてなんじゃないかな?
でもね、今さら騒いでももう遅いのよ。
クスクス… あら、いけないいけない。まだ祭りは始まってもいないのに、こんなところでネタ明かし
するわけにはいかないわね。別れっていうものは、相手が大切な存在であるほど辛いものだと言うけれど、
それでもお別れする時間に恵まれた人は、まだ幸せだと可憐は思うな。本当に悲しいのは、その最後の
一時でさえ得られない場合。一体それはどれほどの悲しみを伴うのでしょうか? さぁ、あなたの出番よ。
見せて頂戴。私にその深く癒しがたい悲しみの様を見せて頂戴! でも、その前にちょっとした余興が
あるんだけれど、あなたは喜んでくれるかしら?
みんなが自分の部屋を皮切りに、屋敷内を探し始めた。当然、彼女もとりあえず自分の部屋に彼が
戻っていないか調べに行っちゃったんだけど… そこは… うふふ… さぁ、綺麗な声で鳴いて頂戴!
可憐があなたに送る第一のプレゼントよ! だって可憐は …の ……なん …・の!
「きゃあああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!」
ほーら、聞こえてきた。ステキな金切り声。でも、少し期待はずれかな? ま、所詮余興ですもの。
本番に期待ということで♪ その悲鳴が鳴り響いた瞬間、蜘蛛の子のように散ったみんながすごい
勢いで彼女の部屋に集まってきた。さて、みんなはどんな反応を見せるのかな? 何だか可憐すごく
ドキドキしています。今まで憎んで憎んで憎み倒してきたあの女に、可憐がこんな気持ちを抱くなんて
世の中何が起こるかわかりませんね。そうだ、可憐も急いで現場に行かなくちゃ!(てへっ)
…。
ドアの外から部屋の中を覗いただけで、そこが明らかに異常だと見て取れる。鏡、花瓶、ガラスが
ことごとく叩き割られ、ベットのシーツはカーテンと共に引き裂かれていた。もちろん、彼女の衣服も
例外でなく、ボロ布の憂き目にあっていた。さらに、仕上げとばかりに室内に真っ赤なペンキが
撒き散らされていた。本当は、それはニワトリの… なんなんだけどね♪ とにかく、その部屋の
真ん中で例の女がへたり込んでいたの。気を保とうとしているのか、両手で口を押さえつけていた
その必死な表情を浮かべる彼女が、少しステキに思えた。残念なのは、まだ抑えが利く状態で
あったということ。まあ、楽しみは後に取っておいた方がいいよね? お兄ちゃん。
あらら、雛子ちゃんはつられて泣いちゃってる。そして、それはすぐ亞里亞ちゃんの涙を呼び、またそれが
周りに伝わって… あっという間に皆が涙に暮れていた。あの千影ちゃんも下を向いている。咲耶ちゃんは
居心地悪そうに、そして、お兄ちゃんは呆然と立ちすくんでいる。どう、声をかけていいか、よく
分からない。そんな風に可憐の目からは見えました。でも、そんなにビックリすることなのかなぁ?
普通に、元気出して!なんてことを言ってあげれば良いのに… あ、もちろん私は彼女に優しく語り掛けて
あげたよ。ここは、お兄ちゃんから沢山好感度をゲットできる最高の猟場なんですもの。
「酷い… こんなの酷いよ… 鞠絵ちゃんが… かわいそう過ぎるよ… グスッ…」
出たとこ勝負だったけど、上手い具合に涙が出た。そっとお兄ちゃんに寄りかかる。思った通り、
お兄ちゃんは私をそのまま受け入れてくれた。そして、優しく可憐の手を握ってくれた。やっぱり
お兄ちゃんは優しい。うん、まだ大丈夫。手遅れじゃない。でも、当の本人は私を一瞥して、心配してくれて
ありがとう、その一言だけだった。もしかして、可憐の演技に気が付いているの…? でもね、
それだからこそ、次の計画が用意してあるの。あなたが正気を保っていられなくなるように…
さあ、とっととアレに気付きなさい。次なるステージにあなたを誘うアレに。
そう、アレ。
ガラスの破片が散らばっている机の上に置かれてた小さな紙片。次の計画に移るための大切な
メッセージが書かれているの… もし、それを見落とされたら可憐泣いちゃうから… なんてね。
大体、可憐がここまでやるのにどれだけ苦労したのか分かってるの? ドミノは、まだ倒れ始めた
ばかり。苦労した分は、ちゃーんと取り替えさせてもらうから(はぁと) お洋服が汚れないように
ガラスを割ったり、何匹ものニワトリの首をはねて、血をかき集めたりする作業はとても大変でした。
いくら可憐だからといっても、アリバイを抱えたままでやれるのは、この辺が精一杯。だから、アレに
関しては、これから用意しないといけないんです。
あ、そうそう、今はアレのお話だったね。アレを最初に見つけてくれたのは白雪ちゃん。
読んだ彼女は、不思議そうに頭を傾げていました。そして、それは人伝いに衛ちゃんからお兄ちゃん
へと達し、最後に本人の手に渡りました。書かれていた、というか書いた文面はこう…
大切なものは何ですか? 二つ持つなんて贅沢じゃありませんか? 陽が沈むと同時に、宝物の
片方が永遠に失われる。急がば回れ、急がば回れ。美味しい料理は何処で出来る?
意味がわからないけど、こんな部屋で見つかったメッセージ。きっと良くないことを示しているに
違いない。千影ちゃんでなくても、それくらいは誰でも察することができるらしい。一ヶ所に集まった
みんなが今度は二人ずつ組になって、怪しいところ、心当たりがありそうなところへと。そして、
この場に残ったのは、可憐とお兄ちゃんと部屋の少女。まあ、可憐はこの後、やらないといけない
ことが山ほどあるので、お兄ちゃんには鞠絵ちゃんの側に居てあげて、と嘘を付いた。少し心が
痛んだけど、仕方無い。長い目で見たら、これは可憐とお兄ちゃんのためでもあるのだから…
上手い具合に一人になる事が出来た。とは言っても、もうやることなんてほとんど無いのだけれど、
最後の運搬作業をこなして、はい終了。後はあの子が上手くやってくれるでしょう。ふふふ、
さあ、どんな表情を可憐に見せてくれるのかな? とにかくその時が来るまで、可憐もみんなと
同じように探す振りを続けなくっちゃ! 面倒だけど、その後の展開を考えると頑張らずには
いられない。そして、その必死に探す可憐の姿が、お兄ちゃんの心を捉えるという事も疑い無いし、
まさに良い事ずくめの作戦ね!
小一時間ほど適当に辺りを散策した後、みんなが集まるリビングへ戻った。皆、心痛な面持ちを浮かべ、
誰一人言葉を発しようとしない。これも計画通り。ただ、時計の針の動く音だけが鳴り響く室内。
ここで仕上げの引き金を引く。それは提案。ステキな提案。記念に可憐の出した提案をここに
書き留めておこうっと。
「あの… 皆さん… このままじっとしていても仕方無いと思います。だから… とりあえず夕ご飯に
しませんか? 白雪ちゃん、ご飯のしたくお願い… みんなが元気になるように美味しいご飯を
作って下さいね。それから亞里亞ちゃんと雛子ちゃんは白雪ちゃんのお手伝いをお願い。後の皆さんは、
食器の用意や鞠絵ちゃんの部屋の後片付けを… あ、鞠絵ちゃんはお風呂のお湯張りをお願いします。
そこのボタンを押してもらうだけでいいですから…」
上手くいった。みんながここまで黙り込んでしまったからこそ、可憐の意見を思うまま通すことが
できた。ロボットみたいにのそのそと仕事を始める皆さん。そして、辛いながらも前向きに頑張る
姿を見せる可憐。なんて理想的な展開なの… やっぱり可憐とお兄ちゃんは結ばれる運命に
あるんですね。最後に声をかけたあの女が一番早く仕事を終えたみたい。ま、ボタンを押すだけだから
早いんですけど。しばらくして鈴凛ちゃんや咲耶ちゃんが戻ってきた。手持ち無沙汰に成るのが
嫌なのか、みんなで協力してご飯を作った。そして、遅めの夕食。暗い食卓。犬がいなくなったことも
そうだけど、部屋荒らしの件が皆の心を怯えさせた。って、自分で言うのも何だけど失礼な話ですね。
夕飯の後も、みんなで今後の事について話すはずが、誰も口を開かない。いいえ、開けなかった。
重い空気が立ち込める。そんなうんざりする空気に根負けしたのか、衛ちゃんが気分転換を
はかる目的なんでしょう。お風呂に入ると言い出した。お兄ちゃんもその方がいいね、って言っていた。
そして…
祭りのクライマックス。
衛ちゃんが発した一言。あれ…? お風呂まだ沸いたままになってる… 当然、そんな何時間も
沸かしつづけたお湯になんか入れたものじゃありません。備え付けられている湯沸し装置を
見ると、自動湯沸しではなく、手動で、しかも240分で設定されていた。たぶん、中はグツグツに
煮えたっているに違いない。危ないからって、お兄ちゃんと春歌ちゃんが上蓋を取って中を調べる
ことになった。もし、空焚きになっていたら危険だという理由で。
蓋を開けると中から猛烈な湯気が噴出し、一瞬でお風呂場一体が真っ白になった。湯沸しボタンは
解除してあるけど、中の温度はとんでもないことになっていたことは誰にでも理解できたと思う。
時間が経つにつれて、湯船の中を見て取れるようになった。すると何か中で浮いているのが見えた。
バスタオルのようなものが浮かんでいた。でも、まだ湯船からはもうもうと湯気が立ち込めていて、
中の確認は危険ということになった。窓を開け放ち、水でうめて、安全になったとお兄ちゃんが
判断した午後9時過ぎに再びみんながそこに集まった。
やっぱり浮かんでいたのはバスタオルらしきもの。でも、ここでみんなが使っているそれとは、
明らかに違っていた。なぜならそのバスタオルは赤く染まっていたからだ。バスタオルが赤いなら
湯も赤い。ペンキのような類じゃない。ましてや血でも無さそうだった。何と言うか、アレはこういう
色になるのか、と可憐は少し感心しました。物知りな鈴凛ちゃんか千影ちゃんに意見を求めようとした
お兄ちゃんの間を割って入ってきたのが彼女。湯船を一瞥。すると突然これまでにない大声で
喚きだしたの! 文字に出来ないのが残念なくらい、言葉にならない声とでもいうのかな?
そ。
この中身はね、彼女の大切な親友のミカエルくんなのでした〜♪
可憐に沈められた彼が浮かぶ水面に火を入れたのは誰でしょう?
あはっ♪
あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
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そう! 可憐はその顔が見たかったの! その声が聞きたかったの! ステキ!素敵! すてきよ!
抱きしめたいくらいに素敵! 涙が止まらないでしょう? 声が詰まるほど、だけど搾り出さずには
いられないでしょう? だってあなたの親友は、湯船の中でスープになっちゃったんですもの!
グツグツ煮えたぎる熱湯の中で少しずつ崩れていったのよ! そして、最後には溶けちゃったのよ!
残ったのは毛皮と骨だけ! あとはぜーんぶスープなの!エキスなの!身体にいいのよ!!!!!!
食べなさい! 飲み干しなさい! だって、それはあなたのお友達ですもの! 親友ですもの!
何をぼーっとしてるのよ! この間抜け女! 泣いてるばかりじゃ面白くないでしょ! あ、でも
やっぱりその泣き顔も素敵だな… うふふ、可憐迷っちゃう(はぁと)
でも、ミカエル、ミカエルってうるさいね。それ以外に何も言えないのかなぁ? 変わり果てた姿と
言っても、これほど変わっちゃったら、そりゃ気もおかしくなりますね。ご愁傷様でした、なんてね。
お兄ちゃんに抱きかかえられている姿が癪に障ったので、少し虐めてあげることにしました。
「誰がこんな酷いことを… お風呂の用意をした人が気付いていれば… あっ! ご、ごめんなさい…」
そうしたらまたスゴイ勢いで泣き始めちゃって、見てる私もこんなに楽しんでいいのかしら? って、
全然問題ないよね。だってこれは罰なんですもの… 罪を犯した彼女が受けなければならない罰…
いけにえは親友の犬っころ。今夜は気持ちよく眠れそうです。さようならミカエル。あはは。
この祭りが起こってすぐ、危険防止のために各妹が生家に帰された。そして、この屋敷に残ったのは、
お兄ちゃんとその護衛役の春歌ちゃん。そして、帰る家が無い可憐と、あの一件以来心神耗弱状態に
陥ってしまった妹、鞠絵の四人だけになりました。これからはこの四人が可憐の家族です。大切でも
何でもないけれど、お兄ちゃんがいてくれるだけで可憐は幸せです。お兄ちゃん大好きです。誰よりも
大好きです。あんな狂人の世話は春歌ちゃんに任せて、可憐と二人で暮らしませんか? 可憐、
お兄ちゃんのためだったらなんでも出来るよ… だから、お兄ちゃん… 早く可憐の気持ちに気付いて…
あまり焦らされると、可憐おかしくなっちゃうよ。
(完結編に続く)
出典:〜可憐日記(後編)〜
リンク:http://arekore.s10.xrea.com/marie/karen2.htm

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