バイク事故

2007/03/10 10:54 登録: えっちな名無しさん

大学3年目の夏。
俺はバイクが好きで、そのころはこれ以外なにもいらないと考えていた。

暇を持て余していた休日。
交差点直進する俺に横からトラックが突っ込んできた。
突き飛ばされた俺は宙を舞い、アスファルトに打ち付けられた。
意識が飛び、気がつけば病院。それも小さな病院ではなく、患者でいっぱいの大病院。

俺の意識がもどったのは事故の2日後。
視界がぼやけて、自分がなにを考えているかもわからなかったが、田舎からとんできた両親と姉が泣いていたのはハッキリとわかった。

頭を強く打ったらしいが、後遺症は残らず、後は足の複雑骨折が治れば問題ないということだった。
全身に縫い目があり、右足が全く動かせない。
愛車が廃車になったのを知り、俺は生きがいを失った気分だった。

だが、それもしばらくのこと。
そんな風に俺は考えていた。


病院の個室にいることがすばらしくつまらないことを知った俺はいつも屋上にいたり、意味もなく病院内を徘徊することでストレスを緩和する方法をとる。
そんな中で、俺は彼女とであった。
屋上のベンチに座り込む俺に、同じく右足を骨折している彼女は明るく話しかけてくる。陽気に笑いながら話す彼女との会話は、話題が尽きることが無く、幸せだった。

友好が深まるにつれ、俺はバイクの話も良くするようになった。
それで俺は言ってしまった。一度俺のバイクの後ろに乗せてやる、と。

先に退院した彼女は俺が退院するまでの間、毎日のように病院に通ってくれた。
そして俺も退院。再び愛車を手に入れるべく、今までの2倍バイトのシフトを増やし、ようやく生きがいであるバイクを手に入れた。


新車を買い、その初走行に彼女を乗せる。
それができたら告白しよう。俺の頭のなかはそれでいっぱい。
バイクより彼女のほうが気持ちは断然上だった。

新愛車を見せると、彼女はかなり喜んでくれた。

そしてバイクに跨る俺と彼女。
だが、なにかが違う。アクセルを握る手は震え、額から汗が止まらない。
かつて何度もこの手のドラマは見たことがある。なるわけがない、そう思う俺はこのとき消えた。

汗をぬぐい、走りだした俺はすぐさまブレーキをかけてしまった。
彼女を降ろし、何度も、何度も挑戦する。
最後には転倒。バイクに寄り添い俺は泣いた。
涙が止まることなく流れてくる。
これで、本当に生きがいだったものは消えてしまった。

そっと背中に抱きついてきた彼女。
涙を流しながら、いつもの笑顔で彼女は言ってくれた。

「私と付き合ってくれませんか?」

突然過ぎる告白に俺はより多く涙を流すことになった。


当初の予定だった告白は彼女にされてしまい、バイクにも怖くて乗れない。
こんな情けない俺だが、彼女を大切にするのが俺の生きがい。

俺のために免許まで取ってくれた彼女のバイクの後ろに乗るのは、どんなことよりも幸せなのだと本当に今は思える。




出典:オリジナル
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