縁日の金魚すくい
2007/03/27 12:31 登録: えっちな名無しさん
俺が打ってる店(金魚すくい)に兄妹だと思われる
7歳ぐらいの女の子と10歳ぐらいの男の子がやってきた。
妹は他の子供たちが金魚すくいをしているのを、
興味津々で長い間見ていたが、やがてせがむように兄の方を見た。
正直、二人の身なりは裕福そうには見えず、男の子は「1回300円」と
書かれた看板を、何とも言えない表情でしばらく見つめていた。
そしてもう一度妹の方を見てから、俺に向かって
「1回」と言いながら、握り閉めた手を差し出した。
彼の手から渡された3枚の100円硬貨は、余程大事に握っていたのか、
とても熱かった。
妹は満面の笑みを浮かべて、俺から紙を受け取ると、夢中で金魚すくいを始めた。
男の子は妹が楽しそうに遊んでいるのを見ながら、満足そうだったが、
やはり自分も遊びたいのだろう、身を乗り出してソワソワとしている。
こんな時、俺はわざと手を滑らせて、紙を船の中に落とす。
「あー、しまった、濡れてもうた、しゃーない、勿体無いからボク使え」
そう言って、濡れた紙を男の子に渡した。
男の子はすごく嬉しそうな顔をして、
「ありがとう」と言うと、眼を輝かせて、金魚すくいをしようとしたが、ちょうどその時、
妹が兄のそばに寄ろうとして躓いた。そしてその拍子に兄とぶつかり、妹の紙が
破れてしまった。
妹の泣きそうな顔を見て、男の子は俺に、
「あげてもいい」
と手にした紙を見せた。俺が頷くと男はニッコリ笑って手にした紙を妹に差し出した。
そして、妹と俺に気を使わせない為だろうか、
「俺、ちょっと向こう見てくるから、ここで遊んどけよ」
と言って走り去っていった。
妹はしばらく困ったように立ち竦んでいたが、やがて再び金魚すくいを始めた。
しばらくして、妹が遊び終わった時、隠れてみていたのか、タイミング良く兄が現れた。
そして俺に向かって、再び「ありがとう」と笑顔で言い、妹にも同じように言わせると、
妹の手を引いて、行ってしまった。
もう10年前の話だが、俺は今も彼の笑顔を忘れてはいない。
出典:2ch
リンク:2ch
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