ずっと好きだった友達
2007/04/11 18:03 登録: えっちな名無しさん
小学校の頃からずっと好きだったKに中学3年の夏、告白した。
一度小学生の時に、「これって告白?」と思うようなことを言われたけど、
相手は何事も無かったように振舞うし、自分だけ意識するのもバカみたいだから
結局スルー。それからずっと「仲イイお友達」の距離。
居心地が悪いわけではないんだけど、このままもイヤだったから2人で映画見に行ったときに告白した。(俺が思うに)いい雰囲気だったし。
言葉は考えてたわけではなかったけど案外簡単に言えた。
Kは最初笑いながら「冗談でしょ?ビックリするぢゃん!笑 あ、練習?そういえば好きな人いるって言ってたよね?うまく言ってる?」ってかなり早口で喋った。でも顔は真っ赤だったから多分俺が本気って分かってたと思う。
「迷惑ならいいよ、ごめんな」
『・・・本気?冗談?』
「冗談でこんなこと言わん」
『え、だって好きな人いるって』
「普通に考えてお前だろ。気づかん?」
『気づかないよ・・・普通。』
しばらくの沈黙 のあと、Kが「でも・・・」ってボソッとつぶやいた。
なんかこれフラレル雰囲気・・・?と感じた俺は「返事はいつでもいいから・・帰ろ」
と提案し、2人でバスにのり、トボトボ帰った。
家に着くとKにメール。きまづくなってメールできなくなるのもイヤだから友達っぽく明るく「映画おもしろかったな!また行かん?あぁでも俺ら受験生か(笑」と送信。
Kからは帰ってこなかった。
メール途絶えて1週間後。
Kと道でばったり遭遇。俺は買い物、Kは塾みたいだった。
むこうがあからさまに目をそらしてきて、Kが横を通りすぎるときおもわず腕をつかんだ。
『え、何?』
「何?じゃねえだろ。」
『腕放して』
イヤだという理由も無いので素直にはなす。
「メール・・・」
と言いかけたとき、Kが目を真ん丸くしていたことに気づく。
後ろを振り返ってみると5人の男子の団体が向かってきた。5人とも友達だった。
『よぉーあれ、なに、彼女いたの?お前。』
「・・・(まだ)違うよ。」
『へぇーお前ら仲良かったんだ』
『いいねぇ、励ましあえるね(笑』
「バカカ。」
ふとその仲にKの元彼発見。
元彼は一言も喋らず、だんまりとしていた。
『じゃ、お二人ともラブラブでお幸せに〜バイ』
「だから違うって。」
5人を見送り、はぁーとため息をつきながらKをちらっと見ると、いつまでも5人を見ていた。Kの目線の先を見ると一人だけこっちを向いていた。遠くからでも分かる元彼の身長の高さがうらやましいと思ったよ。2人は俺が声をかけるまで見詰め合ってた。
「おい。」
『え?あ、、、何?あ、塾遅れちゃうから、、じゃ。』
「え、ちょっ、おい!」
Kは俺から逃げるように走っていった。
その夜、俺はベッドに寝転がりながらKと元彼のことを考えていた。
2人が付き合ってたのは知ってて、別れたことも知ってる。なんで別れたかは知らないけど、なんとなく嫌いで別れたんじゃないなっていうのは察してた。でもKはもうなんとも思ってないって言ってたし、元彼にも新しく彼女ができたと聞いた。俺にはそれっきり2人はもう何のかかわりも無いと思ってた。だけど今日の2人を見てると、やっぱりまだお互い好きなんじゃないかって気がしてならなかった。そのとき突然Kからメール。
題名が「ごめんね」からして明らかに振られるなって思ったけど、
一呼吸おいて一応開く。
題名 ごめんね
本文 メール送ってなくてごめんね。なんかやっぱり送りづらくて^^; 返事なんだ けど・・・あたしなんかでよかったら・・・ってこれ返事になってるのかな。
目を疑った。「いや、あなたがいいんです」と何度もつっこんだ後、すぐ返信。
題名 無題
本文 え、いいの?本当に?まぢで?
10分後Kから返信
題名 ムダイ
本文 うん*^^*
その後長々とメールしたけど本当にバカっぽいメールなんで省略。たとえばお互いどう呼び合うかとか。俺なんかもう下の名前で呼べるってだけで浮かれてて、なんか古いけど「こいつ俺のなんだ!」みたいな錯角を起こした。バカだなホント。
本当に元彼とはなにもないのか?と聞きたかったけど、聞いちゃいけないような気がしてやめた。「今でも好きだよ」といわれたらそれっきりだし。
夏休みだけど受験を控えているので、そんなにあってはいなかった。
時々「勉強しよう」と2人であうけど、どっからかお邪魔虫がわいてきて2人きりで会うことはあんまり無かった気がする。
夏休みも終わりに近づいたある日。
やっと2人きりで会うことになり、一応それなりの進展を期待して部屋を掃除。
正座してまってたらチャイムが鳴った。
早足で玄関に向かい、ドアを開けるとやっぱりK。
思わずやっぱりっと発してしまった。
『やっぱりって?』
「あぁぁ、いや。なんでもない。どうぞ?」
勉強目的なんで座るなり彼女は問題集を出し、さっさとはじめる。
彼女は県で一番の進学校を狙っていて、推薦でもいけるんぢゃないかと周りから期待されていた。俺はというと頭は中くらいだから、サッカーでスポーツ推薦をねらっていた。正直そんなに勉強を大切にしていなかった。(今思うと)
俺は学校から言われた「最低限の勉強」分の問題集をそれなりにこなしていたけど、彼女はありえない分厚さの問題集を、参考書を片手に解いていた。数学の問題をチラッと見たけどさっぱり分からなかった。
「なんでこんなの分かるの・・・?」
『え・・・適当・・・?数学の問題解くときは何にも考えてないや(笑』
「うらやましい・・」
『S(俺)のほうがうらやましいよ。。。スポーツで推薦とるなんて』
「そうかぁ?結構いっぱいいるぞ?」
『そうかなぁ・・・』
ちょっとの沈黙でも意識してしまう健全な俺。彼女がちょっと下向き加減のときに、しようかな、どうしようかな、ちゃんと許可貰ってからしたほうがいいのかな、と勉強以上に頭を使っていた。
『どうしたの?』
「へ?」
『すごい顔してるけど。。。(笑』
「へ、そう?」
『うん』
危ない俺。そんなに顔に出てたのかと思い少し赤くなる。
そんなこんなで1時間たって、いつも以上に頭を回転させた俺はDVDでも見るか!と休憩を提案。彼女もそれに応じた。
DVDといってもそんなにいいものは無くて、題名は忘れたけどアメリカの映画だった気がする。字幕は頭が痛くなるので吹き替え版で。
2人で並んでベッドによっかかり、正面にあるテレビで見始めた。
アクションもののはずだったのに、アメリカのドラマとか映画ってやたらHなシーンが多くて、少ないとしても日本のより激しいんだよ。そういうシーンになるとチラッって彼女を見たけど、彼女は顔をうずめててどんな顔してるか分からなかった。
開始してから1時間。相変わらずHなシーンはところどころ出てきて、一番激しいんじゃないかっていう場面のとき、彼女が寝ていることに気がついた。こういうとき俺の肩に頭を乗せてくればいいのに、たいそう座りしてやっぱり顔をうずめてた。思わずキスできねぇぢゃん!っと悔しがったが、寝てるときにやるとさすがにヤバイなと思い直す。泊まんなくなるよ、きっと。
ホントニ寝てるのかなっとちょっと疑問に思い、頭をちょんっとつついてみた。反応なし。そして耳を触ってみると、ビクッっと体全体が動いた。おもしれぇ!
映画なんかそっちのけで彼女をいろんな角度から見た。(なんか俺変態っぽいな・・・
ベッドに上がり、後ろからみると、首がいやにいやらしく映った。スッとなぞってみると、彼女は『んんっ』と声を出し、起きた。
「ハロー」 (Kの隣に移動)
『あれ?寝てた・・・?』
「うん、ばっちり。」
『そう。。。ごめん』
「映画詰まんなかった?」
『なんか・・・ストリーがわかんなくなった。』
「あぁ、俺も。アクションシーンしかねぇし。」
『うん・・・』
眠たい目を指先ではなく、手の甲でこする姿はなんともいえないカワイさがあった。
(これでちょっとでかめの長袖を着てたら最高だったと思う。指先がちょっと見えるぐら いの。)
「・・・K・・」
『ん?』
Kの頭の後ろに手をまわし、引き寄せた。初めてだったけど、なんとか歯は当たらずにキスできた。チュッという音を期待したけどならなかった。そんなもんか?
その後の行動をまったく考えて無かった俺は、とりあえず抱きしめようと腕をまわそうとしたとき、Kが俺を突き放してきた。 テレかな・・・?と勝手に思ったが、Kの目を見ると少し潤んでた。失敗した・・・かな・・・
「ごめん・・・急に。」
『・・・・・』
「本当ごめん・・・」
『・・・・・』
「イヤだよな・・・?」
『・・・・・』
何も言われないと逆につらくて、その場を後にしようと思い立つと、Kが俺の服の袖をつかんだ。何?と聞いても何も答えない。でも袖も離そうとしない。しばらくのあと、Kがやっと口を開いた。
『ごめん・・・』
「へ?」
『別にイヤとかじゃないんだけど・・・いきなりでビックリしたっていうか・・・そ の・ ・・えっと・・・誤らないで・・・?』
真っ赤な顔をしながら俺の誤解を解こうとしている彼女を見て、
ますますかわいいと思った。
俺は座り、もう一度キスした。離したときに、少しチュッって音がした気がした。
『なんか・・・恥ずかしいね・・・』
「あぁ・・・」
もう何にも喋れなかった。ずっと照れて、ずっと笑いあってた。
外はまだ明るかったけど、もうそろそろと彼女が帰りの支度を始めた。一応送ってった。家の前だと恥ずかしいという彼女の気持ちもあり、彼女の家の近くの公園まで。
『じゃあね』
「あぁ。」
それ以上言葉は交わさなかった。彼女が見えなくなるまで俺は直立不動。
背景は2倍速のように動いていたが、彼女だけはゆっくり動いていたように見えた。
夏休みの間、キスをしたのはその日だけだった。
なんかお互い意識しすぎて一定の距離を置くようになっちゃったし、2人きりにもなれなかった。でもなんかもう友達じゃないんだなって実感がわいた。十分な進歩だ。
学校が始まってからは、教室が離れているため喋れなくなり、
廊下ですれ違う程度だった。
メールは毎日していたけど、彼女の塾が無いとき+俺のサッカークラブの練習がないときでないとあまりできなかった。土日も遊ぶわけでもなく、 メールのみ。正直会いたかったけど、彼女は勉強で忙しそうだった。そういう時、なんかつりあわないなって感じる。頭もいいし、かわいいし、やさしいし。好きだという男子は結構いた。元彼はそんな彼女にぴったりで、運動神経ばつぐんで背も高くてかっこいい。それに頭も、俺なんかとは比べ物にならない。もてる同士のカップルってなんか無敵のような気がする。お互いがまだ好きだったら・・・もう不安だらけだった。
そのうち、どんどんメールの数も少なくなった。街がカップルであふれるクリスマスや初詣も、会えなかった。約束するたび、「やっぱりごめん」の彼女のメールが増えていった。
私立入試も終わり、いよいよ公立受験まっしぐら。
「勉強に集中したい。携帯の電源切るから」の彼女のメールを最後に、俺も電源を切った。音が鳴るたび、彼女からだと体が勝手に期待してしまうからだった。
俺は高校から推薦の話が来ていて、皆より一足早く、受験が終わった。
一般入試の人にとって、推薦が決まっている人がそばにいることはあまりいいことではないとOBの先輩にアドバイスされた。特に彼女のように、難しいところへ受験しようとしている人ならなおさらだと。この時期、受験生は皆、ストレスがたまっている。体調をくずす人も少なくは無い。受験の話とか、成績の話、プレッシャーをかけるような話はしないほうがよいと念を押された。彼女も、体調をくずしぎみだと聞いた。
公立受験の日、推薦が決まっている人・私立に行くという人はひとつの教室に集まった。別に何をするわけでもなく、ただ先生が思い出話をかたるだけだった。
受験が終わり、休日をはさんでの学校。教室は開放感に満ち溢れていた。自信を持って笑顔でいる人、もうだめだと不安そうな人。あきらめたとさっぱりしている人。それぞれ。
受験が終わった3年生は卒業式練習しかすることが無い。寒い体育館で返事の練習・
証書授与の練習・歌の練習。丸1日使って行っていた。
休憩のたび、彼女を目で探してみても、彼女の姿は見えなかった。彼女と同じクラスのTに聞くと「休み」。ストレスがたまり、体を壊しているとのことだった。
俺とKが付き合っていると知っている唯一の友達T。Tは俺とも彼女とも仲良くて、本当にいい存在だった。「Kが気になる?」とニヤっとされちょっと俺は赤くなった。するとTはまじめな顔になり、話し始めた。
『あいつつらいだろうな。』
「え?」
『あいつにかかってるプレッシャーって相当なもんだと思うよ。頭良くて当たり前、分 かってて当たり前。テストだって、90点とっても満足しないらしいし。100点と ってようやくってカンジだろ?あいつ本当は進学校なんて行きたくないってさ。働き たいっていってたから、てっきり商業系の、俺と同じところいくかと思ってた。あい つの頭なら十分入れるし、少し余裕をもって入りたいっていってたぜ?周りもそこが いいならいいって行ってるみたいだったけど、必ずもったいないって言われるって。 皆は進学校イクの期待してるって。でも落ちたらイヤだって。親にも恥ずかしい思いを させるだろうって。あいつの兄貴もあそこだろ?しかもトップで入ったって。すごい 迷ってたみたいだったよ。』
「・・・・・」
『だからどっちの高校も推薦申し出なかったんだよ。一般入試の願書出す直前まで悩んでたし。公立2つ受けられればいいのになって笑ってた。結局進学校のほう受けたけど、全然ダメだったって。私立受かってて良かったって。そんなこと行っても誰も信じなかったらしいけどな、あいつがストレスたまんのも分かるわ。』
Tの話を聞いて、ショックを受けた。彼女がそんなに悩んでるなんて思わなかったから。時々見る笑顔で、俺は「お前なら余裕やな」って何度も言った。やっぱり彼女からのメールを期待して電源をいれ、「頑張れ」「合格確実!」「余裕余裕^^」と何度も打った。彼女は見てないかも知れないけど、プレッシャーを与えたかもしれない。
「なんでお前そんなに知ってんの?」
『メールしてたから』
「いつ?」
『え、ずっと。まぁところどころは推測。でもあいつの目見てりゃ誰だってわかるよ。 今にも死にそうな目してた。笑ってるけど、笑って無かったよ。お前気づかなかっ た?』
「・・・・・」
『まぁ大丈夫だよ。すぐよくなるって。』
「おぉ。」
なんかうらやましかった。俺なんかよりずっとKのこと知ってるTが。俺が分かってあげたかったのにって何度も思って、卒業式の練習中、ずっと手を握り締めてた。
卒業式前日。やっと彼女がきた。今日練習初めてとは思えないぐらい、なじんでた。家で練習したんだろうか。休憩中目で追っていたけど、見ただけぢゃそんなに悩んでる風には見えなかった。Tの言っていたことが本当なら、そうとうな演技力だと思う。
卒業式当日。卒業式自体は長〜くてつまんなかったけど、女子のほとんどが泣いていた。卒業生代表で挨拶した人が涙ながらに読んでたから、それにつられたんだと思う。証書授与の時、すでに先生も泣いていたし。退場の時、チラと彼女を見ると、やっぱりないていた。 終わったあと、男子はボタンを意識し、女子はネームや名札を意識していた。男子は女子に告白されるのではないかと、女子は後輩がもらってくれるのではないかと期待していたのだ。俺はもう彼女にあげるき満々だったから、特に寂しい思いもしなかった。
帰るとき彼女を見つけたが、後輩に囲まれていてとても話しかけれなかった。やっとどいたかと思うと、今度はTとその友達がやってきた。どうやらTは付き添いらしく、その友達が彼女に告白しようとやってきたみたいだった。どうせ無理だと分かってるならとめろよ、とTに後で言っておこうと思ったら、Kはそいつのボタンを受け取った。TとKだけになると足早に向かっていった。
「なんで受け取ってんだよ。」
『え?』
『あいつが無理やり渡したんだよ。』
『無理やりって言うか・・・』
「?」
『あいつもう泣きそうな顔して、これだけ受け取ってもらえればいいからって
渡したの』
『だから深い意味はないって。ね?』
Tが去ると、俺は自分のボタンを外そうとした。
『いいよいいよ。』
「え?」
『今ボタン外しちゃうとあれだし。離任式もあるしね。』
「いいよ、そんな心配しなくて。」
『いいって。離任式の日ね。』
なんか俺のぢゃ無くて、他の男のボタンを持ってるKがむかついた。
Kは「離任式でね」ともう一度言ったあと、俺と一緒に帰るという約束を忘れたのか友達と帰っていった。その集団のなかに、Kの元彼がいたのが見えた。
卒業式翌日、公立高校の発表。
いつ、どんな風にKから報告を受けるかどきどきしていた。もしかしたら会いに着てくれるんぢゃないかとまで思っていた。
正午を少し過ぎた頃、Kからメールが来た。
題名 やったよ^^
本文 受かったよー点数危なかったけど(笑
でもまた勉強の毎日だなぁ、やっぱり同じ高校受けとけばよかったね。
そしたらまた悩みとか相談できたのに。。。Tってやさしいよね、
見た目によらずw
Tも合格おめでと☆そっちの学校のコト色々聞かせてね。んぢゃ(手の絵文字)
2行目あたりからなんとなく感づいた。俺じゃねぇなって。思いっきりTあてぢゃん。しかも俺より先に合格の報告してやがる。なんなんだ。 またメールが来た。
題名 ムダイ
本文 ごめん、メール送り間違え。消しておいて(>人<)
消すものかとおもった。しかも結局俺に報告してないし。
題名 おめでとう
本文 受かったんだろ?おめでとう。メールはちゃんと消しといたから。
返信は無かった。
春休み中、こんどこそ会おうと思ったけど、また「やっぱりごめん」のメールが増えた。学校が始まると、ますますメールも減り、1ヶ月に2、3回会うだけだった。
あってもただ喋るだけ。彼女から聞く話題はT中心だった。
彼女の誕生日は7月7日の七夕で、俺はその翌日。こういう日ぐらい会いたかったけど平日で、プレゼントぐらい渡したくて一番近い休日に会おうということになった。
今度はドタキャンされなかったけど、彼女はプレゼントを受け取らずに帰った。なんでかは言わなかったけど、あまりの拒否りように無理やり渡すのも気がひけた。それにより空気も悪くなり、キスなんてできる状況じゃなかった。
付き合って2度目の夏休み。
今までとは打って変わってメールの回数もふえ、悩んでた自分がバカみたいだった。
付き合ってる雰囲気もやっとでできたってかんじ。予定はなかなか会わなかったけど、あった日には2人とも笑顔だった。
「なんか最近変わったな。」
『そう?』
「明るくなったっていうかなんていうか。」
『なんか高校が思ったよりハードでさ。受からなきゃ良かったって思ってたんだけど ね。やっと慣れてきてさ、楽しくなってきた。少し余裕も出てきたし。』
「そっか。よかったな」
『うん。』
会話が一時中断し、いてもたってもいられなくなっていきなりだけどキスしてみた。
今度は俺を突き放すことも無く、舌を入れてもそれに応じてくれた。
お互いぎこちなかったけど、なんか幸せだった。
ときとき聞こえる彼女の「んっ」って声で余計興奮した。
付き合って1年の記念日。
その日も会うことになった。さすがにHを意識しだす。予習も準備も万全!
でもいざ彼女が着てみると、意識しすぎて会話もうまくできなかった。(ヘタレです)
そんな俺の焦りを知らない彼女はいつも以上に早口で喋るし。とりあえず一人でゆっくりと精神統一する時間が欲しかったので、誕生日に受け取ってもらえなかったプレゼントを出した。中身は見るからに分かる。俺の「はめてみて」という一言で、彼女は中身が指輪であることを理解したみたいだった。テーブルにおいて、スッと彼女の方に置いた。彼女はじっと見るけど、触ろうとしなかった。今度こそもらってもらおうと思い、無理やり彼女の手をとり、握らせた。
「遠慮せんで。あげたいと思っただけやから。」
『でも・・・』
「いいっていいって。」
なかなかあけようとしない彼女に言った。
「別に見返り(?)が欲しくてあげるんじゃないから。な?まぁ俺なんかと付き合って くれてありがとうみたいなカンジ。これからも・・・」
よろしくといおうとしたとき、彼女が「あの!」と俺の言葉をさえぎった。
「何?」
『あのさ・・・あの・・・』
「どうしたん?笑」
彼女はしばらくだまってたけど、きまりがわるそうに話し出した。
『・・・やっぱり友達がいい。』
「・・・・は?」
『いまさらなんだけど、彼氏っていうより友達のほうが近い気がする、のね。ずっと思 ってたんだけどなかなかいえなくて・・・Sにはね、あたしなんかよりずっとずっと かわいくてさ、女の子っぽい子のほうが似合うと思うんだよね。そう思うでしょ?あ たしたちさ仲良かったからソレを好きと勘違いしたんじゃないかなって思うのね。S ならさ、すぐ彼女できるよ、Sの高校女子多いし、かわいい子もいっぱいいるし。だ から・・・新しい彼女に上げなよ、これ。指輪でしょ?違ってたらあれだけど・・女 の子ならきっと指輪もらったら喜ぶと思うよ。ね?だから・・・その・・・』
「・・・・・」
『ごめん。』
理解できなかった。
さっきまで笑顔だったよ?笑ってたジャン。なにいきなり?あ、冗談か。なら笑い飛ばしたがどうにかなるか。てか友達ってなに?別れるってコト?てか別れるって何だっけ?
自問自答を繰り返した。「冗談だろ?」って笑うこともできなかった。それぐらい、余裕が無かった。もう何もいえなかった。
俺の返答を待っているのか分からないけど、彼女も何も喋らず黙っていた。
静かななか、彼女の携帯がなる。着信音が長いところを見ると、電話だろう。俺に遠慮してか彼女は止むのを待っていたが、いつまでたってもなり続けるので電話に出た。
『もしもし?うん。うん。ごめん、今ちょっと忙しいんだ、後でかけなおすね。うん、 じゃ。』
かすかに男の声がした。そいつと付き合いたいから俺と別れるのか。そうかそうか。
『じゃあ、これ。きっと喜ぶよ。』
沈黙に耐え切れなくなったか、彼女は指輪を俺のほうへスッと返してきた。俺はそれを受け取り、握り締めたままたって、壁に思いっきりぶつけた。ガンって音がして、指輪の入った箱は角がつぶれていた。
『え、ちょっ・・S?』
「ふざけんな!」
Kの肩が震えた。
「なにいきなり。ばかじゃねぇの?つか可愛い子のほうが似合うとかなに?は?いみわ かんねぇ。友達がいい?本当いまさらだよな。勘違いって・・・お前ずっと思ってた のかよ。そんなら最初ッから断っとけヤ。それとも何?きまづくなるのがイヤだったと か?そんなやさしさいらねぇよ!なにおまぇ。何がしたいんだよ。まじうぜぇ・・」
『・・・・・』
「なんかいえや!!」
『・・・ごめん・・・』
「・・・・・勝手にしろ。」
俺は隣の部屋に入り、戸によっかかった。もう何も考えられなかった。呆然としていると、足音が近づいてきて、との前でとまった。
『・・・S?そこにいる?』
「・・・・・」
『ごめんね。』
「・・・・・」
『本当ごめ「もう帰れ!」
すっごい大人げなかった。(まだ高1だけど)
マンガとか、「分かった」の一言でよく静かに終わるけど、そんな寛大にはなれなかった。まだケンカした後とか、しばらく連絡とってなかった後とかなら少しは感づいて、別れ話を聞く準備もできてたかもしれないけど、こう突然言われるとパニックが起きる。しばらくは何も考えられなかった。
2年生になる頃、Tから「K、元彼とより戻したってよ。」と聞いた。やっぱりお互い好きなままだったって。周りから言わせて貰えば、2人が想いあってるの一目瞭然だったって。最初から俺なんか入る隙間無かったんだよ。Kのコトをよく分かっているはずのTも、まさかまだ好きだったとは・・といっていた。Kの演技力って本当すごいよ。
2年の夏。1年たったとはいえ、やっぱり忘れられなかった。Kとはもう全然メールしてないし、会っても無い。友達に戻るなんて無理だった。まだ好きとかそういうのを一切合財なしにして、純粋に「友達」に戻ろうと思い、メールを送った。すぐ返事は帰ってきた。そしてその後、電話もかかってきた。
「よぉ。」
『久しぶり。サッカー頑張ってる?』
「あぁ一応。暑いけどなぁ、外で練習しかないよ。たまには室内でトレーニングしたいんだけど、顧問代わってさ、外で練習するのが一番とか言い出して、もっぱら外。」
『熱中症とかならないの?』
「俺はならないけど、なったやついっぱいいるよ。」
『それでも外?』
「そ。でも精神が弱いだけだ!だってさ。いみわかんねぇしw」
『そっか〜気をつけてね。』
「おぉ。」
『・・・・』
「そういえば・・・」
『え?』
「彼氏できたんだって?」
『あぁ・・・うん』
「より戻したって聞いたけど?」
『まぁね。』
「ちゃんと会ってるか?」
『ちゃんとって・・・今入院してるんだ、彼。』
「入院?」
『うん。この前手術したんだけど、あんまり良くならなくて・・・』
「大丈夫なのか?」
『まだ分からないって・・・本人はありえなく元気なんだけどね(笑』
「そっか・・・」
『うん・・・・』
「・・・・・泣いてんのか?」
『え?』
「いや、なんとなく。」
『・・・・記憶無いんだってさ。』
「は?」
『だから・・・もういや・・・』
Kが号泣しだした。
「ちょっおい!今どこ?家?今からいくから!」
尋常じゃないと思い、Kのうちへ向かった。家の前にKが立ってた。
「お前どうした?あ、俺んちこい。泣きそうな顔して・・外いられねぇだろ」
『・・・・・』
Kはだまって、俺に連れられるままトボトボついてきた。家に入り、付き合ってたときのように、テーブルをはさんで真向かいに座った。
「なんかあったか?」
最初は黙ってたけど、徐々に話し出した。
『R(彼氏)がね、事故にあって・・病院いったら、命に別状はないっていわれて・・・ でも骨折とかひどいらしくて、手術したらしいのね。経過もよくてね、本人もすごい 元気なんだ。だけど・・・あたしが顔見せたとき・・・誰?って・・・冗談かと思っ て笑ってみたけど・・本当に忘れてるみたい・・ショック受けてたら、Rのお母さん が私たちのことも分からないのよって・・・家族のことも分からないって。でも友達 は全員覚えてるんだよ?あたしのコトだけ忘れてる・・・』
「お前は友達じゃねぇだろ?だからじゃないの?」
『でも・・・自信なくなっちゃった・・前にね、Rとそういう映画みたんだ。事故に巻 き込まれて、ショックで記憶なくして。主人公はね、みんなのコト忘れちゃってるんだ けど、彼氏っていうか・・好きな人のことだけはなんとなく覚えてたって。映画だか ら、いいようにできてるんだねって言ったら、そんなことないよってRがいったの。 好きな人だけは忘れないよって、まぁ本当に好きだったらだけどなって。俺は絶対忘 れないよって。でもあたしのこと忘れちゃったね・・・』
「逆なんじゃない?」
『え?』
「強く思ってれば思うほど、忘れるって言うこともあるよ。だからそっちじゃない?家 族と同じくらい、お前が大きい存在だったんだよ。」
『そうかな・・・』
「そう思ってないとお前もつらいだろ?」
『そうだね(笑』
張り裂けそうだった笑顔を見るのもイヤで、思わずKの隣に行き、抱きしめた。
Kは嫌がらず、我慢していたものを吐き出すように子供みたいに声をあげて泣いた。
しばらくたった後、Kはごめんねといい、俺から離れた。
『ごめんね、久しぶりなのにこんな話・・・』
「いいよ、全然OK!笑」
『相変わらずだね(笑』
「なにが?」
『んー雰囲気っていうか・・オーラが?』
「そう?」
『そう。じゃあね。色々頑張ってみる。写真とかいっぱい引っ張り出してw』
「おぉ、あ、送ってくよ。」
『いいよ。病院よってから帰るし。じゃあありがとね。』
「じゃあな」
『バイバイ』
電話のとき、泣いてるって分かった俺ってすごいなってちょっと思った。
Tみたいな超能力的なものが働いた気がした。K限定だけど。
それから、週に何回かはKに会い、相談とかRの様子について色々聞いた。
部活中心の夏休みも終わり、(秋を通り過ぎて)寒い冬が来た。
Kは勉強より彼氏の方が気になるみたいで、「別に進学校っていっても就職希望だから」と俺に言っていたが、多分自分に言い聞かせてたんだと思う。彼氏は今だ記憶は戻らないものの、フラッシュバックは良く起きるみたい。前見た風景を見れば「ここきたことある」と思い出を語るらしい。普通に生活するぶんには大丈夫なので、退院はすぐできた。リハビリはまだしてるらしい。学校になじむには多少時間が要ったみたいだけど、Rの性格は変わってないらしく、すぐ輪の中に入っていったらしいよ とKから聞いた。
ある日、学校からかえると家の前にKがいた。おーいと声をかけようとしたけど、Kの目が赤いのに気づいた。思わず走ってKの元に行った。
「おい、どうした?」
『あ、おかえり』
「いや、おかえりじゃなくて。なんかあったか?」
『うん・・・ちょっとね』
「とりあえずうち入れ。」
『うん・・・』
部屋に入ると、我慢できなくなったのか、Kはわんわん泣き出した。
とりあえず泣き止むのを待って、話を聞いた。
『ごめん・・・なんかホッとしちゃって・・・。』
「まぁもうなれたけど・・・どうしたん?Rのこと?」
『うん・・・なんかさ、記憶なくす前にどんどん戻り始めてね、ほぼ変わんないんだ、 前と。相変わらず忘れられちゃってるけどwでもね、付き合ってたんだよって言った らそうかと思ったって。Rね、あたしと誕生日に撮った写真定期の中に入れてたみた いでさ (笑 それみてなんとなく付き合ってたって思ったらしいの』
「のろけ?笑」
『違う!笑 本題はここから』
「はいはい」
『でもね、やっぱりそこだけは前と同じって訳にはいかなかった・・・』
「・・・どういうこと?」
『好きな子・・・できたんだって・・・』
「・・・・・」
『RはRだけど、あたしの好きなRじゃなくなっちゃったんだ・・・記憶なくしても一 番近い存在だよねって勝手に思ってたあたしが悪いんだけどさ・・・Rと同じ学校の 子なんだって・・・この前写真もって家に行ったとき来てたこでさ、すごい可愛かっ たんだ。その子がね、あたしを見てRに聞いたんだ。「誰?」って。てっきり彼女っ て紹介されるかと思ったけど、「大切な友達」だって。いや、うれしかったんだよ? 大切ってところは(笑 でもね、やっぱり記憶なくしたら・・・ゼロに戻っちゃうん だね・・Rね、あたしに何度もごめんって謝ったの。俺のせいで寂しい思いさせてご めんって。Rのせいじゃないよっていったんだけどね、泣いて謝られちゃった。俺の こと忘れてくれって。俺なんかが一緒にいたらつらい思いさせるからって・・・大丈 夫だよっていったけど、俺がつらいからって話聞いてくれなかった・・・』
「・・・Rの気持ちも分からないでもないよ」
『分からないよ!全然分からない!分かりたくもない!』
「Rのコトも考えろ。お前もつらいと思うよ。だけど一番つらいのはRじゃない?家族の ことも、好きだったお前のコトも忘れて。でもお前も家族の人もあいつにはやさしく接 したろ?だから余計つらいんじゃないん?俺だったら、「なんで忘れたんだろう」っ て自分のこと追い込むと思うよ。やさしくするから余計つらいんだよ。冷たくしろと は言わん。だけどあいつの記憶が戻るまでは、お前も一定の距離をとれ。みんなつら いんだよ。」
少しきついことをいったかも知れない。Kは俺の言葉を聞いて、ポロポロ涙を流した。
いつかのときのように、俺はKを抱きしめた。悲しさが伝わってきた。Kの気持ちも分からなくも無い。言葉で言い表せないほど、つらいと思う。
「俺がいてやるから・・・」
思わず発した一言だった。Kは驚いたようだったけど、受け入れてくれた。
好きっていう気持ちもあったけど、なんともいえぬ気持ちになり、無意識にキスしていた。
Kは抵抗しなかった。
悲しさを埋めるため っていうには格好よすぎるけど、そのまま最後までコトが運んだ。
時折聞こえるKの声は喘ぎ声なんてもんじゃなく、涙声だった。
突然のコトでゴムも用意してなかったし、なによりKが痛がってなかったことに少しショックを受けた。Kはずっと手で顔を覆い、俺はそれをどけることは無かった。
複雑な気持ちでやっててもやっぱり「イク」感覚はくるもので、何も言わず、ほとんど自己満足のような気がする。俺が着替えようとすると、Kは「ごめんなさい」と何度も繰り返していた。その瞬間罪悪感がものすごい勢いで押し寄せた。
Kが謝るべきじゃない。俺が謝るのが普通だ。でも何もいえなかった。
Kが着替え終わり、帰ろうとするときも何もいえなかった。
『ごめんね・・・・じゃあ。』
何でお前が謝るの?って何度も思った。けど俺はなぜか謝れなかった。声が出ない。
悪いことしたと自覚はあったけど、忘れられず、どうしても思い出してしまう。
その日、Kからメールが来た。
題名 ごめん
本文 ごめんね、今日のコト・・・忘れよう? Rのこともうちょっと頑張ってみるね。
題名Fe:ごめん
本文 お前が謝ることじゃないよ、俺が悪かった。ごめんな。お前さ、つらいなら もうやめとけよ。俺がいるから。だからもうやめろ。
題名 ムダイ
本文 ありがと。でもあたしやっぱりRのこと好きだから。だから頑張ってみる。
数日後、Kからとてつもなく長いメールが来た。
『Rの記憶が戻った』 その文が不思議なくらいすぐ目に入った。
長いメールを読み終えると、なんともいえない感情になった。
【KがRの家にいくと、いつも来ていた女の子がいなくて、KはRを2人の思い出の場 所に連れて行った。その途中、トラックと乗用車の事故があり、巻き込まれなかった ものの現場を目撃。そのときRが急にフラフラと頭を抱えながら倒れ、Kは病院に連 れて行った。Rは病院に運ばれるとすぐ目をさまし、そばで目を開けるのを待ってい たKを見て、「お前こんなところで何してるんだ?」といった。Kは「Rが急に倒れ たんだよ?」というと「俺事故にあったんだ!」といい、「何でおれ無事なの?」と 続けた。Kは医師を呼び、確認すると、Rは記憶を取り戻したと判断された。その代 わり・・・記憶をなくしていたときのコトは思い出せない・・つまり忘れていた。Rか らしたら、事故にあったあの日から、日が経っていない感じ。】
(メールの内容はこんな感じです。そうだとからしいとかは省きました。)
Kにとってはいい記憶のなくし方だと思ったよ。よくできてるなって思った。
でも今までのKを見ていると、それもありかなって悔しいけど思う。
記憶を取り戻したRは、Kの献身ぶりを母親から聞いたらしく、ありがとうと何度もKにいったそうだ。Kは泣きながら喜んで、自然に2人はよりを戻した。
Kが笑顔になったのはうれしかった。
でも本当は俺がしたかった。結局、俺はKを困らせることしかできなかったんだ。
(Kが誕生日に俺のプレゼントを受け取らなかったのはRと誕生日の思い出があるらしく、俺なんかとの思い出を作りたくなかったかららしいです。)
出典:長文・乱文すいません。
リンク:長文・乱文・すいません。

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