再会　１

中学生の時俺の事を好きと言ってくれた子がいた。
それ程の美人ではなかったが170ｃｍの長身で色白で大人しく、
性格的には最高と言う感じであった。
当時俺も170ｃｍだったから随分背が高いなぁとは感じていた。

俺は容姿的にその子の事が嫌いと言う訳ではなかったが、
当時まだ女性と付き合うと言う事に対し積極的ではなかったし、
野球に夢中だった事から、その時はそのままになり付き合う事はなかった。
ただ別にその子の事が嫌いと言うわけではないから、
普通に友達としては接していた。
ここら辺が俺の非常に鈍い所である。

時が経ち中学から高校　高校から大学に進学し3年になった頃
その子が結婚したと人づてに聞いた。
随分早く結婚したなぁと思ったが、
友人の中には既に結婚していた人もいたから
それ程の驚きが無かったのも事実である。
俺にも何人かの彼女が出来、
出会いと別れを繰り返しながら歳を重ねていった。

そんなこんなで大学生活も終わり、就職し働いているうちに
その子の事も結婚したと言う話も全て忘れていたのだが、
25歳になった休日のある日、
バイクをとめてコンビニに入ろうとした所で偶然の再会を果たした。
見ただけの時俺は気付かなかったのだけど、彼女から声をかけてきたのだ。

“○○君？”
“はい・・・そうですけど　ん？　○○さん？”

中学卒業以来10年ぶりの再会である。
相変わらず色が白くて、長身で、大人しそうな感じ。
俺は高校の時背が伸びて182になっていたから彼女はその事に驚いていた。

“随分背が伸びたね・・・　”

声をかけてきたのはいいけど、それ以上言葉が出てこないらしく、
モジモジしていたから俺から言ってみた。

“今暇？どっかで何か飲んでいこうか？”
そう言うと、笑顔でコクンと首を縦に振った。

近くにスターバックスがあったからバイクを適当な所に置き、
店内に入りそれぞれ注文し席に着いた。

“久し振りだねぇ”
“うん、久し振り”

などと言う他愛の無い会話があり、
少しずつ雰囲気が解れていくと、彼女は積極的に話すようになってきた。

高校になってから手紙を書いたけど戻ってきた。
物凄く好きだった。
離婚した。

おいおい、ちょっと重過ぎる話も出ちゃったよ！なんて思いながら
俺は結構真剣に聞いていた。

高校の時引越ししたから届かなかったのかなぁと言うと、
“嫌われたから拒否されたんじゃなかったんだ・・・”
と言い、何だかホッとしたようだった。
離婚を2年前にして、今はゆっくり暮らしているとの事。
子供がいないから思い切る事が出来たなんて事も言っていた。
今まで生きてきた中で俺に告白した事と
離婚を切り出した事が一番勇気の要る事だったとも話してくれた。

そんなこんなで結局2時間近く話し込み、
コーヒーだけじゃ悪いからパンやらケーキやら注文しまくり、
会計が5000円超えていたのには笑ってしまったが、
結構楽しい時間が過ごせたから良しとした。

店を出てバイクに戻るまでまた彼女は大人しいバージョンに戻ったが、
俺がヘルメットをつけた時に言った。

“今度バイク乗せてくれる？”と。

別に断る理由も無いから
“あぁいいよ　来週でもどっか行こうか？”と言うと
満面の笑みを浮かべて“うん”とうなづいた。
俺はその表情を見てその日始めてグッと来る感情が芽生えた。
それまでは同級生の一人であったのだが、
そこから始まる何かを予感させた笑顔であったのである。

互いの携帯番号・メールアドレスを交換しその日は別れた。

続く

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