再会 2
2007/04/13 12:24 登録: 黒烏龍
次の週にバイクでどこかに連れて行くという約束は
俺にとってもなんだか楽しみな事になっていたから、
“どこへ行きたい?どこでも連れて行くけど”とメールすると
直ぐに返事が来た。
“山に行きたい”と。
山かぁ、俺と彼女は東京の23区内に住んでいて、
山に行くとすれば茨城の筑波山か高尾山くらいしか思い浮かばない。
それなら手軽な高尾山でも行こうかなと思い、メールすると、
“高尾山行った事ないから行きたい!”と返ってきた。
長文をメールで送るのが面倒になったし、
細かい事を打ち合わせようと思って電話してみると、
“電話してくれてありがとう 凄く嬉しい”などと言うではないか。
再会した日の微笑みにぐっと来た俺だったが、
この電話での第一声にもクラクラっとしてしまった。
何て良い子なんだろうと。
俺はバイクでどこか行くと決まった瞬間から
あるものを彼女にプレゼントしようと考えていた。
ヘルメットである。
だからプレゼントする為に週末までに1度会わなければならない。
だから彼女に言ってみた。
“週末までに一度夜会える?”
断られるかとも思ったが直ぐに返事が返ってきた
“私はいつでも大丈夫だから”と。
と言う事でバイク屋がある場所で仕事後待ち合わせる事にした。
まだヘルメットをプレゼントすると言う事は伝えてなかったから、
恐らくこの段階で彼女は食事に行くとでも思っていたのだろう。
待ち合わせ場所に俺が行くと既に彼女は来ていて、
俺を確認すると照れくさそうな笑顔を浮かべ近づいてきた。
挨拶を交わし早速彼女を誘導する。
“どこへ行くの?”
当然の台詞である。
“ちょっとついて来て”
おれはあくまでも行く場所を言わない。
5分ほど歩いて着いたバイク屋に入ろうとすると、
“買い物?週末の準備?”と聞いてくる。
“そうだよ買わなきゃならないものがあるから”
そう言うともの珍しそうに辺りを見回しながら店に入った彼女である。
そこでいきなり切り出した。
“ヘルメットを買おう 好きなの選んで”
彼女は驚いた顔で俺を見た。
“ヘルメットが無いと山行けないよ プレゼントするから”
そう言うと顔をピンク色に染めて笑顔を浮かべる。
目にはうっすら涙まで浮かべている。
えええ、何で泣くんだ?!と思って慌ててしまったが、
照れくさい上に動転した俺に対処できる能力はなく、
“どれでもいいから好きなの選んで”と言うしかなかった。
彼女は気を使ってか安いの安いのを選ぼうとするから
“値段は本当に気にしないで好きなの選んでよ”と言うと
うんと言いながらあれこれ手にとっては迷っていた。
何しろバイクに乗った経験すらないらしいから
ヘルメットを選ぶ事すら難しかったようなのだ。
俺は彼女がこれだと言うまでじっくり待つ事にした。
15分くらい色々なものを見た後
“これがいい”と彼女が手に取ったのは俺と同じ色のヘルメット。
これにもジーンときたが、俺は気付かない振りをして店員を呼び購入した。
その後食事をして別れたのだが、
買ってあげたヘルメットを大事そうに抱えていた姿がまた素敵だった。
その後待ち合わせ場所・待ち合わせ時間
バイクは意外と寒いから上に着るものを用意してねなど
色々な事を電話で伝えた後
互いに日常を過ごし、待つだけとなった。
週末までの毎日が楽しくて楽しくてたまらなくなり、
仕事が思い切りはかどったのには笑えた。
気持ちと言うのは人間の能力を高める力になり得るものだと悟った。
金曜日の仕事が終わり、家に帰って寝るだけの状態になった時、
彼女に電話し“準備はOK?”と聞くと、
“今日は眠れないかも”などと言う事を言っている。
“待ち合わせ時間は朝の6時だよ。寝ないときついから頑張って寝てね”
と言い、電話を切った。
俺も興奮して眠れないかと思ったが、しっかり眠る事ができ、
朝5時に起きて完璧な準備をし、出発した。
5時45分頃待ち合わせ場所に着いたのだが、
既に彼女が来ていて笑顔で俺を迎えてくれた。
きちんと上着をつけていたし、ヘルメットもしっかり抱えていたし、
準備は完璧 後ろに彼女を乗せ早速出発した。
さて走り出すかと言う直前彼女が困っているのを感じた。
“どうしたの?”と聞くと
“どこを持っていいかわからない”と言う。
“俺の腰に手を回していいよ”と言うと、
照れくさそうにこくんとうなづいた。
人妻だった過去もあるのに昔と変わらないなぁと、
改めて彼女の魅力を感じた俺 この段階で完全に好きになっていた。
バイクは走り出し新宿 高井戸 調布と甲州街道をドンドン進んでいった。
信号で止まる毎に彼女の方を振り返り
“寒くない?トイレ大丈夫?”と聞いたりしていたのだが、
彼女は“うん大丈夫”と言い、微笑んでいた。
その間決して俺の腰に回した手は離さず、
それを離したらこの旅も終わってしまうのではないかと思っている様にも思えた位だ。
だから俺は言った。
“手少し位離しても大丈夫だよ”と。
それでも彼女はニコッと笑うだけで離さない。
ちょっと可笑しくなったがその気持ちは嬉しかった。
八王子に入り道路の看板に高尾の文字が見え始めると
彼女が結構積極的に会話するようになってきた。
“バイクの後ろって凄く楽しい”とか
“ここら辺まで来ると景色が綺麗だ”なんて感じで。
走っていると余り聞こえないのだが、
それでも離し続けていた。
そして2時間半位かかったろうか、遂に高尾山口駅前に到着し、
殆ど休みなく走ってきた為少し疲れた身体をバイクから下ろし、
その時やっと彼女の手が俺の手から離れた。
可笑しかったのはバイクから降りて直ぐに彼女がトイレに行った事。
我慢しているんだったら言えば良かったのにと
内心思ったりもしたが、可愛いなぁと感じたりもした。
ヘルメットをバイクにくくりつけ、
さぁ高尾山にのぼろうか!とすると彼女が言う。
“ヘルメット大丈夫なの?”と。
“盗る人いないよ大丈夫”と言うと、
まだちょっとだけ心配なのか、ちらちらバイクの方を見ていたが、
決心したように俺と一緒に歩き始めた。
はじめリフトで途中まで上がろうとしたのだが、
その時間はまだ稼動しておらず、
ならば横の道から歩いて上がろうと言う事になった。
朝の山の空気を浴びながら山を歩くのは素敵だと彼女も言うから、
ちょっと疲れていたけどそう決断した私である。
それが始まりになろうとも知らずに・・・
続く
出典:おり
リンク:おり

(・∀・): 79 | (・A・): 23
TOP