10代最後のツーリング
2007/04/24 21:27 登録: えっちな名無しさん
買ったばかりのトランクスを履き、3年まえに買ったジーパンを履き、赤いユニク
ロのタンクを着て、古着屋で買ったライダースジャケットを着た。
そしてオカンがなぜかかってくれたエンジニアブーツを履き家をでた。
外には愛車のZX。
俺はZXにまたがると夜の町を走りだした。
それはある夏の物語。
十代最後のツーリング。
俺はまず海沿いの道を走り出した。
あーこの海。
よく高校時代にきていたっけ。
あの時、まさか車の免許をとるのが面倒臭くて原チャの免許だけしかとっていな
い事なんか考えてもいなかった。
俺は高校時代いつも立ち寄っていた浜にZXを止めた。
近くには120円で買える温もりを売っている自動販売機。
だが俺は夏ということもあり、冷たいコーフィーを買った。
好奇心で買ったコーフィー。
苦い…大人の味がした。
あと三時間もすれば、俺は二十歳か…。
ふと空を見上げると満天の星。
まるで、俺が大人の仲間入りすることを祝福してくれているようだった。
暫く海を眺めていると、後ろから中途半端な改造でうるさいだけのZZが現れた
。
そして、ZZに乗った若者はこう言った。
ZZ乗り(俺は、十代最後のツーリングをしているんだが、君は夜遅くに何をして
いるんだい?
俺(奇遇だね。俺も今十代最後のツーリングをしているんだ。一緒に十代最後の夜
を共に走ろう。
そして、俺は新たな仲間と共に走り出した。
途中、交番のある交差点を左に曲がり俺の地元最大の峠を攻める事になった。
だが俺は峠に入る直前で足がすくんでしまった。
俺は最近、何もない直線で何故かバランスを崩しこけ膝の肉をえぐってしまった
のだ。
幸い縫わずにすんだが、体の傷以上に心に傷を負ってしまっていたようだ。
俺が峠に入る事を躊躇していると、ZZ乗りの男はこう言った。
ZZ乗り(確かにこのくねり曲がった峠を30キロものスピードを出し攻めていくの
は怖いかもしれない。だが俺達はあと一時間もすれば嫌でも10代という時間に別
れを告げなくてはいけない。ヤンチャ出来るのは今だけだ。30キロが怖いなら20
キロでもいい。この峠を乗り越えて腐った社会を建て直すための肝を鍛えよう。
俺はこの言葉を聞き覚悟を決めた。
十代最後の祭。
人生で一番華やかな物にしてやる。
そしてZXと共に、峠という暗闇の城に攻め行った。
昼間の雨のせいか、地面は濡れ滑りやすくなっていた。
少しでも油断すれば、たちまち崖から落ち奈落の底へと消えてしまう。
背中合わせの恐怖と闘ながら、猛スピード(30キロ)で峠を登っていく。
そして最初の難関、地元ではU字磁石と呼ばれれるカーブが近づいてきた。
ここを曲がれば頂上だ…と思った瞬間!!
タイヤが滑りZXがバランスを崩した!!
もうだめだ…っとその時、俺の足は力強く地面を蹴った!
ZXはたちまちバランスを取り戻しU字磁石を攻略。
冷や汗と少しの小便で新品のトランクスを濡らしながら頂上に到着した。
ZZ乗り(今のは危なかったな(笑)
俺(死ぬかと思ったよ。だがこの事が自信に繋がったよ。
ZZ乗り(やったな!二十歳に向けてまた成長しているな。
俺(ああ。下りも俺たちの熱い魂を見せてやろうぜ。
そして頂上で一息ついたあと、遂に地元最難関の下り坂を降りていった。
下った先に見える新たなステージを求めて…
唸るエンジン。
燃えるビート。
冷静でいて情熱的な魂。
その一つ一つが俺の力となり最難関と呼ばれたこの峠を紙一重で駆け降りていく
……
そして0時…
大人になった俺達は暗闇の海に照らされた月を見つめながら、明日を夢見ていた
。
ZZ乗り(おまえ…明日からどうするんだ?
俺(取りあえず…もう大人だしな。車の免許でもとりにいくは。おまえこそどうす
るんだ?
ZZ乗り(俺はもう少しコイツと日本を走しり回るわ。
とZZを叩いた。
そしてZZ乗りは暗闇の町に消えて行った。
俺)俺もそろそろ帰るかな。
帰り道、俺はある事を考えていた。
俺達は何故生きているのだろう。
そんな問いを自問自答しながら、俺は青春の日々に別れを告げ、大人への一歩を
踏み出したのだ。
出典:kuma
リンク:kuma

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