叔父さん
2007/04/30 17:12 登録: えっちな名無しさん
まだ1歳にもなってない頃。
両親が事故にあって、俺は叔父に引き取られた。
俺も事故に巻き込まれたらしいのだが、母親が俺を抱え、
その母を親父が力強く抱えていた。
その話を聞いたのは中学生のときだった。
それまでは叔父を親父だと当たり前のように思い、
従兄妹にあたる紗代を妹だと思っていた。
「お前は本当の家族ではない」
直接言われてこそ無いが、突然こんな事実をつきつけられると
何も考えられなくなってしまう。
部屋にこもってしまった俺をみて、紗代は
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。紗代のお兄ちゃん。
お父さんもお父さん。紗代とお兄ちゃんのお父さん。ね?」
と笑顔で俺に言った。それが紗代の口癖になった。
部屋から出ると、親父は
「すまんな。いずれはいうつもりだったんだ。」
と1枚の紙切れを俺に渡した。
よく見ると地図だった。
「お前の本当の両親の墓があるところだ。いきたければいってきなさい。
ただひとつ言っておく。お前は俺の息子だ。ちゃんと帰ってきなさい。
分かったか?」
親父はゴツゴツした硬い手で俺の頭をなでた。
お墓の前に行くと、まるで親戚の墓参りに来ているような気持ちになった。
「親父、おふくろ。ただいま。俺は元気だよ。
事故のこと聞いてビックリしたけど、でも叔父さんも紗代もやさしいから
なんとかやっていけるよ。時々また戻ってくるから。じゃあ」
家に帰ると紗代が玄関で正座して待ってた。
「おかえりなさい。お兄ちゃん。遅かったね」
奥から親父も出てきた。
「おかえり。行って来たか?ちゃんと元気だって言って来たか?」
「もちろん」
「そうか。じゃあご飯にするか。」
「叔父さん。」
「お父さんと呼べお父さんと。」
「ありがとう。」
「・・・・」
「今まで本当にありがとう」
「お前はお父さんにだな。あいつもよく笑ってありがとうっていってたよ」
意味は無い。
ただ涙が止まらなかった。
親父は去年、肺の病気で無くなった。
「紗代を頼むな。」
「もう死ぬみたいな言い方やめろよ、親父。」
「お前みたいな息子を持てて幸せだよ。お前の両親も喜んだだろうな。」
「じゃあ親父は今喜んでる?」
「あぁ、もちろん。 お前は俺の自慢の息子だ。」
それが父と交わした最後の言葉だった。
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