金色のファルコ
2007/05/11 13:12 登録: 武藤
高校に入って一番最初に出来た友人。
俺とは全く違うタイプの男だった。
俺はスポーツが好き、外で遊ぶのが好き、車やバイクが好き。
友人はスポーツが苦手、漫画や本が好き。
それでも何故か意気投合し、バカ話で盛り上がりいつまでも笑い合ってた。
お互い、大学進学が決まった頃、友人に相談を持ちかけられた。
「俺、自分を変えたいんだよ。熱くなれるような趣味持ちたいし、アカ抜けたい。」
確かにそいつはアカ抜けてないし、周りからみればオタクっぽかったかもしれない。
そこで、俺は美容室を教えたり、ヘアカタログを貸したり、車の本を貸してあげた。
そいつは少しずつだがファッションに気を使うようになり、行動的になった。
親の車ではあるが手を加えたり、バイトして原付を買っては自慢するようになった。
大学に入ると、友人はバイクサークルに入り二輪、大型二輪と相次いで免許取得。
大型バイクを購入し、ツーリングの話を楽しそうに俺に話してくれた。
メカニックの知識も俺なんか足元に及ばないまでになってた。
2年ほど前のある日、友人から1通のメールが来た。
「癌の一種に侵されちまって、入院することになったよ。
発見が早かったから、治療で何とかなるみたい。留年しちゃうかもしれないけどね。」と。
それから何度かお見舞い行ってはお互いの近況報告をした。
友人は検査でナースに裸を見られる恥ずかしさや治療の方法、
薬の副作用で髪が抜けて丸坊主にしたことをユーモアたっぷりに話してくれた。
それだけでなく、一人暮らしをしてる俺の心配までしてくれてどっちが病人か分からないくらいだった。
しばらくして、また1通のメールが来た。
「俺、金色のファルコになるわ!」
俺には何の事だか分からなかったが、聞けば北斗の拳の片足が義足のキャラらしい。
北斗バカだった友人の精一杯の強がりだったと思う。
右足を切断することになって、未練が残らないようにその日のうちにバイクを売ったことも後から聞いた。
五体満足で生活している俺にはバカなメールを返して笑わせてあげることしか出来なかった。
笑ってくれたかどうか分からないが、同情するよりも笑わせてあげたかった。
義足をつけてリハビリをしていても、
「俺の義足、かっこいいんだぜ。今度見せてやるよ。」
と、リハビリの辛さや足を失った辛さなんて感じさせないメールをくれた。
しばらく見舞いに行けないまま時が流れた。
ある日、仲の良い同級生数人で見舞いに行こうという話が持ち上がった。
しかし俺は、他に用事が入っていたため、見舞いには行かなかった。
その日から3日後、夢に友人が出てきた。何をする訳でもなく笑いあう夢だった。
次の日の夜、友人の親から連絡が入った。
息を引きとったこと、葬儀の日程の連絡だった。
俺は頭が真っ白になると同時に最後に見舞いに行かなかったことを悔やんだ。
迎えた葬儀の日、最期の御花入れを促されたが、俺には出来なかった。
見舞いに行かなかった自分を悔やみ、涙が溢れ、最期の別れなんてしたくなかった。
今思えば、友人は別れを告げに夢に出てきてくれたのだと思う。
それなのに、俺は別れを交さなかった。
今年の夏は、見舞いに行かなかったこと、最期の別れを交さなかったことを謝りに墓参りに行こうと思う。
そして、「バカ話でもしながら酒飲もう」と友人と病室で交した約束を数十年後に果たしたい。
出典:2CH
リンク:2CH

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