ありがとうK君

2007/07/04 16:56 登録: えっちな名無しさん

今から十数年前。当時小6だった俺は小学校の合唱クラブに参加していた。
合唱コンクールに出場するために、希望する有志を集めたクラブで、
不定期に放課後の音楽室で練習をしていた。

ある、給食が無い午前授業の日のこと。
合唱クラブのメンバーは弁当を持参して、昼食後に練習する事になっていたが、
俺は当日のお昼に音楽室へ行ってから弁当を忘れた事に気がついた。
お金も無く、家は遠いので戻る事も難しかったし
合唱を担当する先生は昼食後にやってくるのでその場にはおらず、
いまから思えば職員室に行って事情を話せばなんとかなったのだろうが、
当時はそんなこと考えつかなかったので、
俺はすっかり食事を諦めて、弁当を広げるみんなを見ながらボーっとしていた。

一人食事をしない俺を見て、同じクラスのK君がやって来た。
K君は冬でもランニングに短パンで、いつも真っ黒に焼けた元気な男の子。
俺は友達が多い方じゃなかったし、K君とも特別仲が良かった訳では無い。
K君「お弁当食べないの?」
俺「忘れちゃった。お金も無いし我慢するよ」
K君「そっか。わかった」
というと、K君はやおら立ち上がり
K君「みんな聞いてー!○○君が弁当忘れたんだって。おかずちょっとわけてー!」
と大声で宣言すると彼自身の弁当の蓋をひっくり返して皿がわりにして
その場の皆からご飯やおかずを集めだした。
一人一品位なんだけど30人近いから
あっと言う間に一人分には十分な食料が蓋に盛られた。

突然の出来事で碌にお礼も言えずにポカーンとしてる俺に
蓋弁当を渡してK君はにっこり笑った。
直前まで「今日はお昼抜きだな」と諦めていた事のギャップと
K君の機転と発想と優しさに、涙がこぼれてしまった。

K君は礼を言いながら少し涙を流す俺に慌てながら
「なっ泣かないでよ。対した事してないし。分けてくれた皆のおかげだよ!」
なんて言ってた。

あの時は本当に嬉しかったんだ。ありがとうK君。


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