爺ちゃんと山登り

2007/07/10 22:09 登録: えっちな名無しさん

俺が小学生の頃、週末には爺ちゃん婆ちゃんの家に行き、爺ちゃんと山登りをしていた。
肩車をしてもらって坂を下ったり、杖を作ったり、弁当を食べたり、俺は爺ちゃんが大好きだった。
俺の高校受験が迫っている時、爺ちゃんは肝臓を患って入退院を繰り返していた。
受験を控えあまり爺ちゃんの家に行けなかったけど、親から「たまには顔を見せてあげなさい」
と言う事で、何ヶ月か振りに爺ちゃんに会いに行った。
爺「おぉ〜、よぉ来たのぉ。今日もあのに登るか?」
俺「爺ちゃん元気良さそうだね。」
爺「当たり前じゃないか。わしゃ、まだ死にゃせんよ」
何年ぶりかにいつもの山に登った。
もう昔の様に肩車やカケッコなどは出来ないけど、凄く懐かしくて良い気分だった。
そんな時、爺ちゃんが、突然止まり
爺「おっ!これは見つかるかも知れんぞぉ。」
と、山道外れた草むらに入って行った。
俺「どうしたの?爺ちゃん。」
爺「クローバーじゃ。四ツ葉のクローバーじゃ。」
それから、小一時間程、爺ちゃんと四ツ葉のクローバーを探した。
そしてまず、爺ちゃんが
爺「よっしゃ〜。あったぞぉ!」
と、四ツ葉のクローバーを摘んで天高く、勝ち誇ったかの様に見せた。
それから、数分後、俺も見付ける事に成功した。
俺「やったね!爺ちゃん。
爺「やったなぁ。よし!これをおまえにやろう!これを持って受験に望めば必ず合格するぞぉ。」
俺「ありがと!じゃ、僕が採ったのは爺ちゃんにあげるね。これで肝臓も元気になるね。」
爺「はははっ!これでお互い怖いものなしじゃな!(笑)」
あれから半年後、爺ちゃんから貰った四ツ葉のクローバーをしおりにして、受験に望んだ。
しかし、その数日後、爺ちゃんが倒れた。
良く病名が分からなかったけど、以前からC型肝炎と言う病気だったらしい。
そして、合格発表の当日、爺ちゃんは亡くなった。
俺は受験に合格していた。
吉報を爺ちゃんに伝える事ができなかった。
通夜の席でも俺は何故か涙が出なかった。
亡くなった実感がないのか、親戚がいるから恥ずかしいのか、涙が出ない理由が分からなかった。
線香の火が耐えないよう、家族が交代で起きていた。
そして第一便の番は俺と婆ちゃんだった。
婆ちゃんは昔のアルバムを棚から出して見せてくれた。
最初のページには、俺が産まれた間もない頃で爺ちゃんが俺を洗面器につけて、楽しそうに洗ってるシーンから始まり、七五三、入園式、海水浴、温泉旅行、タコ上げ、山登り、川釣り。
常に俺の隣には爺ちゃんが写っていた。
そしていろんな思い出の写真の隣には爺ちゃんのコメントが書いてあった。
段々昔の事がこみあげて来て、爺ちゃんとの思い出を思い出すと涙が出そうになった。
次々にページを捲り、最後のページには半年前に爺ちゃんと採った四ツ葉のクローバーが綺麗にアルバムに鋏んであった。
そしてクローバーの横には
『爺はいつまでも元気』
と書いてあった。
あの時の爺ちゃんを思い出すと、堪えきれなくて、大粒の涙が溢れてきた。
爺ちゃん、ずっとずっと可愛がってくれて、ありがとね。


出典:爺ちゃん
リンク:ありがとう

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