チンピラさんの小噺 ?
2007/07/26 16:12 登録: えっちな名無しさん
私は20代の頃、ある大繁華街でチンピラとして過ごしました。
チンピラというのはもう社会の底辺中の底辺ですし、兄貴達にも世間様にも人間扱いされません。
しかし、ストレスが溜まりまくってる分、逆説的ですがスーッとする機会も多いわけです。
そんな生活をしていた頃のこと、ちょっと思い出したことを書きます。
チンピラというのはとにかくお金がありません。
その分、ちょっとした収入があったときは、皆、例外なくパァーッと使ってしまいます。
何しろ私らストレスのカタマリですからね。もうそれこそ惜しみなく散在してしまうのです。
ある時、ちょっと仕事が上手くいって、私にもお金が入りました。
といってもたいした金額じゃない。ほんの15万くらいです。
しかし、普段が普段ですから、嬉しくて嬉しくて、もう飛び上がるように出かけたものです。
かるく焼き鳥屋で飲んで、下地を作ってからキャバクラへ。
ご無沙汰していたオキニ嬢に軽口を叩きながら今夜の約束を取り付けます。
2時間ほどで閉店になると、着替えてでてきた嬢と腕を組みつつ寿司屋へ向かいました。
この寿司屋、この街で一番値が張るんですよ。
だけど、嬢が寿司食いたいって言えばこの店に連れてくるしかありません。
私らホントに見栄っ張りですからね。他の店じゃカッコつかない、なんて思ってるんです。
とりあえずビールで乾杯すると、店の主が声をかけます。
「何にしましょう。軽くツマミでも切りましょうか」
「おう、そうしてくれ。今日は何が旨いんだ?」
「白身は天然の真鯛にヒラメ、あと、今日はトキシラズありますよ。これはお勧めです」
「トキシラズって、鮭の最高級品のか。へぇ〜、じゃツマミでもらおうか」
などと適当に注文し、嬢と深夜の食事を堪能したのです。
さて、夜もしっぽり更けたころ、店を出れば当然ホテルへ、となります。
すぐ近くのホテル街へ歩いている途中、なぜかゲップが止まらない。何か胸ヤケがするのです。
私は体の異変を悟られないように、とにかくホテルへ連れ込みました。
入ってしまえばコッチのもの、と思った私がバカだった。
皆さん、食中毒を甘く見てはいけませんよ。
体中にジンマシンがでて、頭から足から掻きむしりながらゲーゲー嘔吐を繰り返す。
ムーディーなベッドの上で七転八倒転げまわり、ヒーヒー泣きながら背中をさすってもらってる私は、
この夜、世界一マヌケな送りオオカミでした。
朝が明けるのを待たず、嬢はあきれて帰ってしまった。
男一人でラブホテルに泊まり、その上なぜか延長してる客は、
フロントから見てもさぞかし不気味だったことでしょう。
やっとの思いで回復すると、今度は猛烈に怒りがこみ上げてきた。あたり前です。
原因は鮭に寄生していたであろうアニサキス君に決まってるのですから。
あの寿司屋の野郎、タダじゃおかねえ。
怒りに任せて今すぐにでも怒鳴り込もうと思っていましたが、ちょっと待てよ、と。
普通のサラリーマンならともかく、私ら一目でそれとわかるチンピラですからね。
下手すると、怒鳴り込んで金にするどころか、110番されて恐喝でパクられかねない。
私はしばし考えたあげく、妙案をひらめきました。
今、事務所では私の仲間が2人で当番をしている。
こいつらには悪いけど、あの寿司屋の寿司を食わせて食中毒にし、
ちゃんと診断書を持って3人で怒鳴り込めば万全じゃないかと。
信憑性がありますし、それに被害者が多い方が見舞金にもイロがつくに決まってます。
私はすぐに寿司屋にTELすると、特上2人前の出前を頼みました。
今日は特上だとどんなネタが入りますかぁ? などと白々しく聞いて、
「あ、ウニ苦手だから別のものがいいなぁ、え?トキシラズ? はい、じゃそれに換えてください、2つとも」
寿司屋へのTELを切ると、次は事務所です。
「おう!ご苦労さん! 俺、昨日ちょっと金入ってさ、メシまだだろ?何か差し入れするよ。
寿司好きだろ?うん、じゃ特上2人前届けさせるから。頑張ってな!」
さて、仕込みは上々です。
私は喫茶店でホットミルクなぞを飲み、少しパチンコをはじき、
そろそろのた打ち回ってる頃かな〜、とか思いつつ事務所へ行きました。
おうっす!と入ると、別にいつもと変わりない。
仲間2人は、ああさっきはごちそう様、お金たて替えといたから、などと、いたって普通です。
私は寿司の代金を払いつつ、
おかしい・・・。そうか!こいつら普段よっぽどロクなもん食ってねえんだ!こりゃ食わせる相手間違えた!
などと二人の免疫力に驚嘆しながら、ふと、キッチンの流しに目をやりました。
はて、寿司の桶は2つなのに、なぜか割り箸が3本ある。
「おい、これ、なんで割り箸が3本あるの?」
「ああ、ちょうど兄貴の野郎が来やがってさ、俺にも食わせろって取られたんだよ」
「ええっ!? 食ったの!? 兄貴が!? 何を!?」
「何ってお前、俺たちにガリと鉄火巻きだけ残して、あと全部食いやがったんだよ」
兄貴がピンサロで倒れてかつぎ込まれたと聞いたのは、それから約1時間後のことでした。
(了
出典:胸がスーッとする武勇伝を聞かせて下さい
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