バイクと夜桜
2007/07/30 00:40 登録: えっちな名無しさん
前略。
少し昔の話をします。家族とお花見に行ったら、どうしてもあなたに一筆
したためたくなったのです。
慣れない土地で一人暮しをはじめたばかりで心細かったあの頃。
仕事から帰ると、晩ごはんを食べる気力もなく、つけ放しのテレビの前で
ぼおっとしていると、窓の外に聞き慣れたオートバイの音。
「一五分だけ付きあえよ」と言ったあなたは、どこかで転倒でもしてきた
のか、袖が破れ血がにじんでさえいました。手当てをしようとする私を無
視して、「すごい発見をしたんだ。とにかく乗れよ」と言われるままに、
壊れたオートバイの後ろにまたがったときの私の気持ちなんか、きっとあ
なたは永久に分からないんでしょうね。
でも、近くの川べりをゆっくり流しているとき、へし曲がってあさっての
方向をむいたヘッドライトが、まるで宵闇をかき分けるように、次々と土
手沿いに腕を広げた満開の桜を浮かびあがらせたのです。
「な、すごいだろ?」
そう言って笑うあなたの単純な笑顔が、今ではとても懐かしく思い出さ
れます。そちらでもいい花は咲いていますか。
出典:わすれた
リンク:わすれた
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