物理の先生の思い出
2007/08/05 22:48 登録: えっちな名無しさん
俺の通ってた高校は県下で文字通りトップの進学校だった。
俺は理系クラスだったが、印象深い物理の教師のことをここに書こうと思う。
高校3年の時、物理を担当していた教師は、
研究者崩れといった感じのまだ若い(と言ってもたぶん30代後半)男性だった。
眼鏡をかけていて背は高く、痩せていた。
旧帝大の大学院を出て将来を嘱望されていた研究者だったらしいが、
今はなぜか地方で高校の教師についていた。
実は俺は物理が苦手で、正直、2年の時から物理の授業は苦痛でしかなかったのだが、
その教師の教え方は素晴らしく分かりやすく、
難解な理屈もまるで水が高所から低所に流れるように自然に理解できた。
話し方は抑揚がなく陰気な感じなのだが、
きっと恐ろしく頭の中が整理されていて理解のポイントのようなものを完璧に把握し、
最も効率よく分かりやすく説明してくれていたからだと思う。
出来の悪い学生なりに、この教師はものすごい頭の良い人なんだなあ、
と思っていた。
でも冗談も言わないし、なんか死神をしょってるみたいで生徒には全く人気がなかった。
こういうとオタクっぽい人格を想像するかもしれないが、
そういうのとも全然違って、オタクのような俗っぽさや何かに執着するエネルギーのようなものは全然なくて、本当に死神みたいな感じだった。
例えば、モーニング娘。なんて名前すら知らないような感じと言えば分かってもらえるだろうか。
2学期になってから体調不良とかでその教師が学校を休むことが多くなった。
見た感じ、あまり健康そうなタイプではなかったので、
みんな「まあそういうこともあるよな」って感じで気にしていなかったが、
飛び石のように学校に出てきたある日、その教師がこんなことを言い出した。
「突然ですが、私が現在研究中のテーマに男子にだけ協力してもらいたいので、
女子には申し訳ないが、少しの間だけ教室から出て行ってほしい。」
というわけで、女子だけ物理教室からHR教室に戻り、その間、調査?に協力することになった。
教師が言うには
「みんなにアンケートに協力してもらいたいので配った紙に書かれたテーマについて思うところを正直に自由に書いてほしい。」
そう言って配られた紙にあったテーマは『女性器が男性に与える影響』であった。
俺みたいな出来の悪い奴は呆然としていたが、
そこは県下最高レベルの優秀な学生も中にはいたわけで、
その中で事態の把握能力と実行力に優れた数人が、これはただ事ではない、といった感じで目配せしあって無言で一人が教室を出てゆき、学年主任と校長を連れて戻ってきた。
学年主任と校長はアンケート用紙を確認後、
生徒全員にHR教室に戻って待機するように指示を出し、物理教師と話をし始めた。
物理教師は少し困惑していたが、「これは真面目な研究なんです」とか説明していた。
それが、俺たちがその教師を見た最後だった。
この事件については緘口令が布かれ、何事もなかったように後任の物理の教師(一度退職したお爺ちゃんの非常勤講師)が来て、
俺は以前のように物理が全く分からなくなってしまった。
出典:オリジナル
リンク:オリジナル

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