愛したひとが実の妹だった 〜昼メロ編〜
2007/08/21 13:48 登録: えっちな名無しさん
俺の友人の話です。
すごく衝撃的な話でした。
自分の胸だけにとどめておけません。
つらつら書き連ねていくので、聞いて下さい。
ちなみに、友人としては今となっては古い笑い話だそうで、、(決して笑い話ではないですが)
なので、公開の許可を貰っています。
話は8年前の1999年。
友人の貴裕と、同じバイト先で知り合った綾香さんという女の子とのことです。
当時、貴裕は20歳、綾香さんは17歳です。
貴裕は大学生、綾香さんは都内の超有名な難関進学校に通う女子高生で、
二人はボウリング場のバイトをしていました。
貴裕は幼い頃に両親が離婚して、母親に引き取られたので結構貧しい生活をしていましたが、
奨学金や授業料免除のおかげで大学に進むことができました。
東京の大学に進んだ為、大学の寮で一人暮らしをしていますが、
これまで育ててもらった母親にこれ以上負担をかけさせたくなかったので、
生活費は深夜ボウリング場のアルバイトで稼いでいたのです。
ちなみに貴裕には綾香さんと同い年の早紀ちゃんという妹もいて、田舎の母親と一緒に暮らしています。
綾香さんは両親共健在で、お金持ちかつ頭脳明晰なお嬢様育ちなのにも関わらず、
何故か夕方の時間、バイトをしていたようです。
シフトが違うので、一緒に働くことは無かったのですが、引継ぎの時間に
たまたま同じ小説を読んでいたことがわかったのをきっかけに話すようになりました。
貴裕と綾香さんは好きな作家、好きな歌手、好きな映画、、かなりピッタンコだったようです。
お互い趣味がすごく一致するね、ということで、急速に仲がよくなったみたいです。
ちなみに綾香さんの写真を見せてもらいましたが、かなりかわいかったです。
貴裕も、自分からみてもなかなかカッコイイほうなので、美男美女カップルだと思います。
結局貴裕から告白して(どんな風に告ったのかは教えてもらえませんでしたが)
貴裕と綾香さんは付き合うことになったみたいです。
基本的に外にデートに行くことも有ることは有りましたが、
貴裕自身生活に余裕が無かった為、お互いの家で過ごすことが多かったようです。
あるときは貴裕の寮にこっそり連れ込む、、、
あるときは綾香さんの家に行く、、、など。
ちなみに綾香さんの家は、結構な豪邸だそうで、最初来たときはかなりのカルチャーショックを
受けたそうです。
体の関係を持ったのは、付き合ってから2ヶ月目くらいだそうです。
綾香さんの家は父親が会社の社長ながら、日本全国を忙しく回っていてしょっちゅう家を空けている
単身赴任中状態でした。 母親もまた、仕事を続けていて、大抵夜遅くにならないと帰ってこないため、
夜は綾香さんの家で一緒に過ごすことも有りました。
母親が徹夜で帰ってこれないという日に、貴裕が綾香さんの家に泊まりに行って、
エッチに至ったようです。(条例違反とかその辺のことは、一応スルーしときました。。。)
また貴裕の寮は、大学寮ながら、普通のワンルームマンションのようになっていたので
綾香さんは通い妻のように貴裕の部屋を訪れ、夕食を作ってあげたりしていたそうです。
趣味も話題も、そして体も、なにもかも相性ぴったりだと、当時は大変浮かれていました。
前置きはこんな感じです。
ちなみに登場人物の名前はすべて仮名です。
ある日、綾香さんの部屋でいつものようにイチャイチャしていると、予定の時間よりも早く
母親が帰ってきてしまいました。
特に脱衣してエロな行為をしていたわけではないので、変な姿ではないですが、
成り行き上、綾香さんは貴裕のことを初めて紹介しました。
これまでは別に貴裕と付き合っていることを隠していたわけでは有りませんが、
そもそも日中滅多に顔をあわせない母親なので、話していませんでした。
貴裕が
「初めまして、水島と申します。」
と自己紹介すると、綾香さんの母は、なんかいぶかしげな、不思議そうな表情で貴裕を見たそうです。
綾香さんの母も
「ごゆっくり」
と、無表情というか、冷たい表情で言うと、
そのまま自分の部屋に入ってしまったそうです。
なにやら居心地の悪さを感じた貴裕は、そのまま帰ることにしました。
綾香さんは
「うちの母、いつもあんなんだから気にしないでください。」
と言ってくれたそうですが、普段から綾香さんは、自分の家庭のコミュニケーション不足に悩んでいました。
単身赴任の父は、帰ってくるたびに学校のこととか普段の生活のこととか
そこそこ聞いてくれたり話してくれたりするのですが、半月に一回くらいしか帰ってきません。
母親は仕事が忙しすぎて、仕事から帰ってきてもすぐに寝てしまうか、
持ち帰りの仕事を始めてしまうかで、綾香さんとあまり会話や、夕食を一緒にしません。
ここは、余談ですが、綾香さんがバイトをする理由を貴裕が聞いてみたことがありました。
綾香さんの家は、両親ともそれなりの地位の仕事をしていたため、それなりに裕福でした。
だから、綾香さんが何故バイトをする必要があったのが不思議だったのです。
綾香さんは言いました。
「お母さんにプレゼントをしたい。お母さんを喜ばせたい。」
綾香さんは母親が心から喜んでいる姿をずっと見ていないみたいです。
たまに父親が帰ってきたとき、綾香さんの母と3人で夕食をしているときも、綾香さんの母は
何も感動も無く、無表情でいることが多いそうです。
だから綾香さんは母親に温泉旅行をプレゼントすることを計画したのです。
普段の仕事の疲れをゆっくり癒してもらいたい、でもその為には
両親からもらえるおこづかいではなく、自分で働いたお金でかなえないと
意味がないと感じたからだそうです。
貴裕はそれを聞いて、綾香さんを守ってあげたいと感じるようになったそうです。
余談を終わります。
綾香さんの母と初対面をしたその後日、綾香さんからこう切り出されました。
「今度の週末、お父さんが帰ってきます。一緒に食事しませんか?」
こないだ綾香さんの母と会ったので、せっかくだから父親にも紹介したいということです。
貴裕は躊躇しましたが、普段から綾香さんの家庭事情には同情というか、興味があったので
OKしたそうです。
そして土曜日、綾香さんと待ち合わせをして、綾香さんとともに会食の会場へ向かいました。
見た目はものすごい高級料亭だったそうで、いくら綾香さんの両親から自分の食事代も招待いただく
とはいえ、結構ビビったようです。
仲居さんに案内され奥に進むと、母親だけ先に到着していました。
貴裕は
「今日はお招きいただきましてありがとうございます。こないだはお邪魔していました。」
とたどたどしく挨拶をしましたが、母親は
「ええ、今日はごゆっくりして下さい。」
とやはり無表情で言ったそうです。
しかし、次の瞬間、初めて対面した時と同じような、いぶかしげな表情に変わりました。
貴裕は
「何か、えっと、どうかしましたか?」
とキョどって綾香さんの母に尋ねましたが
綾香さんの母は
「貴方、、、、いえ、なんでもないんです、ごめんなさい。」
と含みを持たせるような感じで、また元の表情に戻りました。
その場はすこし気まずい空気になっていたそうです。
遅れてくること10分くらい(貴裕にとっては30分くらいに感じたそうです。)
綾香さんの父親が到着しました。廊下を仲居さんに先導されて歩いてくる足音が聞こえてきます。
綾香さんの話では、父親は、母親よりもフランクだということでしたが、
それでも貴裕はとても緊張したようです。
ふすまが開き、綾香さんの父が入ってきました。
綾香さんの父は「善次郎」という名前だそうです。
善次郎さんは、
「おう、お疲れ。」
とドスの聞いた声で、こちらの顔を見ずに、どかっとだらしなく、座布団の上に座りました。
貴裕はこの時、はっきり言って、うさんくささみたいなものを感じ取っていました。
綾香さんが紹介を始めました。
「お父さん、紹介します。いまお付き合いしている水島貴裕さんです。」
「は、は、初めまして。 水島貴裕といいます。」
と、挨拶をした瞬間でした。
「みずしま、、、」
善次郎さんと貴裕が、お互い見つめあう時間が10秒くらいあったそうです。
貴裕も善次郎さんも同時に気づいたようです。
貴裕が6歳の頃、、今からだと22年前、両親が離婚しました。
貴裕の母の英子さんが言うには、原因は善次郎さんに隠し子がいたことが発覚した為です。
浮気相手の女性が妊娠して、そのまま出産。 善次郎さんには隠して育てていました。
なぜそうなったかは知りませんが、後にこのことは英子さんにバレ、善次郎さんは
貴裕と早紀ちゃんと英子さんを捨て、浮気相手と隠し子の父となる道を選択したそうです。
まさに、貴裕が対面している綾香さんの父は、貴裕の父でもありました。
貴裕はまったく信じられませんでした。
6歳の頃の父親の顔なんてはっきり覚えているものでもないですが、
直感的にこの人は、昔自分を捨てた父親だと悟ったのです。
善次郎さんもまた同じだったと貴裕は言いました。
目の前の青年は、忘れもしない、14年前に自分が捨てた息子だと感じ取ったと。
善次郎さんは口を開きました。
「貴裕か、、、?」
貴裕は思わず
「父さん、、、」とつぶやいてしまったようです。
綾香さんの母もまた、目を見開いていたそうです。
これまでは、貴裕のことを「どこかで見たこと有る」といったぼんやりして見ていた表情が、
合点がいったかのようにはっきりした表情に変わっていたみたいです。
後に貴裕が語りましたが、当時貴裕の父親を奪った浮気相手は、まさに綾香さんの母だったようです。
泣きそうな表情でたたずむ6歳の貴裕と3歳の早紀ちゃんを前に、善次郎さん、英子さん、浮気相手の3者が
言い争いをしていました。
なにやら話に決着がついたとき、浮気相手は、貴裕に向かって冷たい表情で
「ごめんね。」
と一言だけつぶやいて善次郎さんと去っていったといいます。
貴裕は後で思い出しましたが、その時の冷たい表情な浮気相手と、
普段の冷たい表情な綾香さんの母は、まさに同一人物だといいます。
話を元に戻します。
貴裕は、なんとも言い難い気分の悪さに耐え切れなくなり
「すいません、今日は失礼します」といって、きょとんとした綾香さんにも何も声をかけず
その場を逃げ出しました。
自分の家にたどり着き、混乱している頭が落ち着いてきた頃、様々な思いが頭を駆け巡りました。
それは、幼い頃に自分と母親を捨てて浮気相手の元へ行った父親への憎しみであったり、
そんな母親の状況を、何もわかっていなかった自分の無知への怒りであったといいます。
また、「当時3歳だった隠し子は、綾香自身じゃないのか?」という疑惑もありました。
そのときはそれを確認する術はなかったそうですが、そもそも自分の愛した人が
腹違いの妹だったとは怖くて確認することができませんでした。
その夜は綾香さんから、たくさんの着信とPメール(PHSのメール)が入っていましたが
出る気にも見る気にもなりませんでした。
その次の日はバイトが入っていましたが、休んで部屋でふさぎこんでいました。
あの「食事会」の日の2日後、突然部屋に綾香さんが尋ねてきました。
正直言って会う気はなかったそうですが、綾香さんの深刻な表情を見て、
とりあえず部屋に招き入れました。
綾香さんはしばらくうつむいたままです。
貴裕は、さすがに気を使って
「こないだはごめんね、ちょっと急に体の具合がわるくなっちゃって。
ご両親に謝っておいて。。。」
と声をかけました。
突然、綾香さんが
「謝らなければいけないのは、私なんです!」
と声をやや荒げて言いました。
綾香さんはあの「食事会」の次の日、煮え切らない両親の態度を一喝し、真実を聞き出しました。
自分の父親が幼い頃、別の家庭を持っていたこと。
自分が生まれたことで、その家庭を壊してしまったこと。
その家庭は、、、ほかならぬ、貴裕の家庭だったこと。
この真実を聞いたとき、綾香さんも相当ショックで、涙が止まらなかったそうです。
綾香さんの話を聞いて、貴裕はただ呆然と
(やはり綾香と俺は腹違いの兄妹なんだな)
と考えていました。
綾香さんは大粒の涙を流しながら、何度も何度も貴裕に謝罪していました。
お父さんを奪ってごめんなさい、本当にごめんなさい、
普段から自分の父親や母親とのことを無神経に喋って、
貴裕さんの気持ちを何もわかってなくてごめんなさい、貴裕さんを傷つけてごめんなさい、
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、、、と。
ただひたすら、泣きながらごめんなさいを繰り返していました。
貴裕はただ黙って、綾香さんを抱きしめてあげることしかできなかったそうです。
1時間くらいたったころ、綾香さんはすでに涙が枯れ果てていて
ただ貴裕にもたれかかっているだけでした。
貴裕は
「綾香は何も悪くない。
父親に対してうらみとかは持っていないし、何も感情を抱いていない。
あの人は、綾香のお父さんであって、俺の父親ではない。
俺の家族は、母親だけだし、これからもそう。
綾香とは何も関係がないんだよ。」
と、綾香さんに話しました。
いえ、綾香さんに話したのではなく、自分自身に言って聞かせたということでもあったそうです。
しばらく綾香さんとの関係も、貴裕自身にもわだかまりは残っていましたが、
一月も経って、また普段の関係が戻ってきました。
ただ、キスだのエッチとかはできなくなったといいます。
なんといっても、血が繋がった兄妹ですから。
ある日、綾香さんがバイトをやめることになりました。
貴裕が事情を聞くと、両親から辞めさせられる形になったそうです。
前よりおこづかいを増やすから、バイトなんかするなと。
それどころか、あの「食事会」の日から、綾香さんの両親は、何気なく
貴裕との付き合いは今どうなっているのか詮索し、
ついには、もう会うなとも言うようになったといいます。
バイトをやめさせられたのもそれが原因だと思います。
貴裕は憤慨しました。
(綾香がバイトをしている理由を何も知らないくせに。)
(自分達の勝手な都合で、俺たちの関係がこんなになってしまったというのに。)
激しい怒りを覚えたといいます。
貴裕と綾香さんは、綾香さんの両親に反抗するかのように、今まで以上に堂々と付き合うようにしました。
綾香さんの家に上がり、綾香さんの母が帰ってくる時間まで一緒にいました。
帰ってきた綾香さんの母に対して貴裕は
「お邪魔してます!」「綾香さんと一緒に夕食を食べませんか!」
と笑顔で声をかけるようにしました。
大抵、綾香さんの母は
「もう遅いから帰って」
と冷たく言うそうです。
綾香さんも積極的に貴裕と母を仲良くさせようと、明るく努めていました。
「そんなこといわずに、一緒にテレビをみよう?」
と。
貴裕と綾香さんは、ちゃんと二人を認めてもらうよう、交流を持とうとしました。
ある日、いつものように、帰ってきた綾香さんの母に積極的に話しかけたら
「もういい加減にして! これ以上、あまりウチに来て欲しくないんだけど!」
とつっけんどんに言いかえされました。
綾香さんが
「貴裕さんに対してなんでそんな風にいうの!」
と言い返すと
綾香さんの母は
「もうこの人と係わり合いを持ちたくない、別れなさい。
はっきり言って、(貴裕を指して)顔も見たくない」
と言い放ちました。
その場は綾香さんの母と綾香さんが言い合いになったそうです。
貴裕は黙ってみていました。
綾香さんの、両親と仲良くしたい、貴裕のことを認めて欲しい、貴裕と母に仲良くなって
もらいたいという、ひたむきな思いをただひたすら綾香さんの母は蹂躙していました。
そして綾香さんの母が
「いちいちうっさい!」
と綾香さんをビンタしたのを見て、貴裕の中で何かが切れてしまったようです。
綾香さんの母の洋服の襟首部分を握り締め、そのまま綾香さんの母を床に倒しました。
ひっ、と小さく悲鳴を上げる綾香さんの母に対して、
貴裕は頭上からつぶやきました。
「おい、俺はアンタのことなんかどうでもいいんだが、俺らの勝手にやらせてもらえないかな!」
綾香さんの母は
「なにすんの!警察呼ぶぞ!」
といいましたが貴裕は構わず
「アンタは人の家庭を壊したし、俺の母親の人生を壊したし、
今度は俺と綾香のことも
壊しちゃうの?これ以上まだ何を壊し足りないの?」
と言って、そのまま綾香さんを連れ出して行きました。
特に行く当てもなく、貴裕の部屋に連れ帰りました。
「ついかっとなっちゃった。暴力ふるってゴメン。」
「こっちこそ、ごめんなさい。」
と貴裕と綾香さんはしばらくうなだれていました。
綾香さんは、
「もうあの人は信じられない。 また貴裕さんを傷つけました。」
とまた涙を流しながら話しました。
貴裕は
「何も傷ついていないよ。 さっきはああいっちゃったけど、別に『壊された』なんて
思って無いしね。 ウチの母親は全然元気にやってるし。 今度の連休に肩でも揉みに
帰ろうかなってね。」
明るく綾香さんに語り掛けましたが、いつの間にか貴裕自身も、涙を流していました。
その時の貴裕は信じられないことに、自然とぽろぽろぽろぽろ涙が出てきたそうです。
何がそんなに悲しいのか、自分自身でも気づいていなかった部分が
徐々に剥がれ落ちるかのように、涙となって流れていきました。
綾香さんはそんな貴裕を見て
以前自分がしてもらったのと同じように、貴裕のことを抱きしめたそうです。
小さな体で、貴裕のことを一生懸命抱きかかえてみたそうです。
その日は結局、夜中に、綾香さんを玄関前まで送り届けました。
その後は、綾香さんの母から何か訴えられるのでは、とちょっとビクビクしてましたが
しばらくは特に何も起こらず平穏に暮らしていました。
綾香さんがバイトをやめさせられた後も、二人は頻繁に会っていました。
それから2ヵ月後、夕方貴裕と綾香さんが部屋で一緒にテレビを見ていると、
貴裕のPHSに着信が入りました。
出てみると、相手は善次郎さんでした。
「突然ですまない。ちょっと話があるんだが、いいか?」
善次郎さんはゆっくりそう言い、2時間後に駅前のある喫茶店を待ち合わせ場所に
指定してきました。
貴裕は心配そうな綾香さんを
「心配することは無いからね。」
やさしく諭し、ひとりで待ち合わせの場所に向かいました。
待ち合わせの場所にはすでに善次郎さんがいました。綾香さんの母はいませんでした。
「悪いな、急に呼び出してしまって。」
善次郎さんは意外にも明るい表情で、しかし重圧のある感じの声で貴裕に語りかけました。
「話ってなんでしょう。」
貴裕は、一応自分の実の父親だという事実は忘れて、他人行儀に接しました。
善次郎さんはしばらく、他愛の無い雑談を話しかけました。
貴裕はそれに対してただつっけんどんに答えました。
貴裕はいい加減
「そろそろ本題に移りませんか?」
と切り出しました。
善次郎さんは、ゆっくり話し出しました。
「貴裕には迷惑をかけた。 謝りたい。すまなかった。」
「迷惑って何でしょうか? 何も貴方にはされておりませんが。」
「お前たちには本当に苦労をかけたと思う。すまなかった。」
「だから、何が迷惑を?」
「小さい頃お前たちを捨てて、別の家庭を持ったことをだ。」
「だーかーらー、謝る相手が違うだろう!誰に謝ってんだ!」
周りの客に注目されてしまい、貴裕は我に返りました。
貴裕は声のトーンを落として、会話をまた始めました。
「母にはもう会っていないんですか?」
「あいつの方から、会わないでくれといわれている。
慰謝料や、お前と早紀の養育費も、受け取りを拒否されている。」
「母がどんな気持ちだったか知っているんですか?」
「さぁな。わからんよ。」
・・・・
しばらく無言の時間が続きました。
貴裕は、自分自身幼い頃に父親に捨てられたことなんて気にしていないと思い込んでいましたが
この場ではそれが、まったくの嘘だと悟りました。
裏切られた気持ち、ソレに対する怒りが彼の中を支配していたといいます。
善次郎さんが切り出します。
「綾香とは、まだ付き合っているのか?」
「はい。 綾香さんのお母さんには反対されています。」
「そうか。」
「はい。」
「俺も反対なんだがな。」
「何故です。」
「お前と綾香は血の繋がった兄妹だからだ。」
「それがなんです。」
「綾香には、普通にいい人みつけて、普通に暮らして欲しい」
「はぁ。」
「それが綾香の親としての望みだ。」
「望みですか。」
「これ以上、俺達家族を傷つけないで欲しい。」
「お断りします。 俺と綾香さんが兄妹なのはそっちの都合です。自分らには関係有りません。」
「綾香の母親も悲しむが?」
「関係ないね。」
「そうか。」
「うん。」
「なら、英子に連絡するが、いいか?」
英子さんは、貴裕の母親のことです。
「・・・なんで俺の母さんが関係あるんだ?」
「家族を守るためなら、なんでもするが。
金輪際、係わり合いを持たないよう、あいつからも強く言ってもらう。」
「・・・そりゃなしでしょ」
「それでもいいか?」
「・・・あの、マジで、ちょっと、母さんを巻き込むのは止めてくれる。」
「だったら、わかれ。」
こんな感じの会話だそうです。
そのまま善次郎さんは伝票を持って立ち去りました。
貴裕は悩みました。
綾香さんとの関係を続けるべきか否か。
『綾香に自分のことを忘れてもらって、普通な恋愛する』ことを望んだわけではないですが
自分の母親には、過去のことを蒸し返してまた不幸にさせたくない、迷惑をかけたくない。
という思いが残りました。
また、結局自分がやっていることが、綾香さんの家庭を壊すことになるのでは、、とも思いました。
貴裕は、綾香さんと距離を置こうとしました。
しかし、デートをするたびに、綾香さんは貴裕といままでと変わらず親密に接しますが
屈託の無い笑顔を見るたびに、告げるタイミングを逃していました。
ある日のデート、海浜公園を散歩していた時のこと。
夜も更けて、そろそろ帰らなきゃというときに綾香さんは、久しぶりに貴裕にキスをしようとしました。
辺りには誰もいません。 夜のいいムードで、ふたりっきりでした。
しかし、貴裕はとっさに顔をそらします。
綾香さんは貴裕にキスを拒否されたと感じて、少しショックを受けたような表情だったそうです。
綾香さんはすぐさま、貴裕に抱きついて言います。
「今日、お母さん徹夜で帰ってこなし、明日休みだから、、、このまま、どこかに泊まりませんか?」
貴裕は、綾香さんを引き離し、告げます。
「もううちらは会わないほうがいい。」
「どうして・・・?」
「やっぱり、俺たちは、実の兄妹なんだし。。。」
「どうしてですか!」
「なんていうか、ゴメン」
「納得いきません。。。」
綾香さんは静かに泣き始めました。
「自分でもまだ整理ついていないんだけどね。」
「・・・はい。」
「俺と綾香は、やっぱり会ってはいけないんだと思う。」
「・・・」
「綾香のご両親は、綾香のことを大切に思っていると思うよ。」
「・・・」
「そこで、昔捨てたはずの俺がひょっこり現れて、、、」
「・・・」
「で、お前を奪い取ろうとしていると、、、」
「・・・奪われるだなんて」
「でも綾香のご両親から見たら、俺が綾香の家庭を壊しているように見えるんじゃないかな。」
「・・・」
「もしかしたら俺は」
「・・・」
「昔父親にされたことと、同じことを、しようとしてるんじゃないかって。」
「・・・」
「・・・ごめん、上手く説明できないけど。」
「・・・いやです。」
「えっ?」
「私は、貴方のことが好きです!」
「・・・」
「兄妹だったとしても、、、それでも、、、愛しています。」
「でもな、、、」
「私はもう、あんな父と母のことなんて、関係有りません。」
「綾香・・・」
「離れたくないです、、、、」
「・・・」
「貴裕さんは私のことを、、、」
「うん。」
「妹としてしか見られなくなったんですか?」
「そんなことは、、、」
「さっきだってキスを」
「・・・」
「してくれなかった・・・」
「そんなことは無いよ。」
「・・・」
「そんなことは無い。」
「じゃあ、、、ちゃんと言ってください。」
「・・・」
「キスしてください、、、」
「綾香・・・」
「・・・」
「・・・」
そのまま二人は口付けを交しました。 しばらく公園のベンチで抱き合っていました。
そして答えが見つからないまま、貴裕は綾香さんを連れて、近くのホテルに入りました。
そして久しぶりに、肌と肌を重ねあいました。
何度も何度も、体を揺らしあい、父親のこと、母親のこと、全部忘れてカラッポにして、
ただただお互いがお互いを離したくないという想いだけで、
情愛をぶつけ合っていました。
・・・
綾香さんを腕枕しながら、貴裕はこれからのことをぼんやり考えていたとき、綾香さんが言います。
「私、貴裕さんのお母さんに会ってみたい。」
「どうして?」
「ちゃんと、貴裕さんのお母さんにも謝って、そして、私たちのことを、認めてもらえないかなって思って。」
貴裕は思いました。
本当なら、善次郎さんに脅されたときのように、『自分の母親を巻き込みたくない』という思いがありました。
でも、このままだと、善次郎さんが英子さんに接触してくるのは時間の問題でした。
(それならば、、、)
「実はさ、、」
「何ですか?」
「綾香のお父さんに言われたんだよね。 ほら、あの日、俺が呼び出された日。」
「えっ、何か変なこと言われました?」
「俺の母さんにも、俺達のことを引き離すように協力してもらうって」
「そんな、、、」
「このまま綾香のお父さんが俺の母さんに会うのは、はっきり言ってムカつくんだ。」
「ごめんなさい、貴裕さん、、、」
「いや、綾香は悪くないから、、、」
「はい、、、」
「でもね、綾香と俺が先に、俺の母さんに、全部先に打ち明けてしまった方がいいかなとも思った。」
「・・・はい。 そうですよね」
「俺の母さんなら、、、きっと分かってくれると思う。」
「はい、、、」
そのまま二人は抱き合いながら眠りました。
愛したひとが実の妹だった 〜サスペンス編〜 に続く
出典:2ch
リンク:2ch

(・∀・): 79 | (・A・): 25
TOP