愛したひとが実の妹だった 〜ノスタルジー編〜
2007/08/21 13:50 登録: えっちな名無しさん
貴裕と綾香さんはゆっくりと歩き出しました。
7階には何がまっているのか、何もわからないまま階段を上り続けました。
ただひたすら暗い重圧と闇が、二人を支配していました。
5階の踊り場のところまで来たところで、人影が見えました。
貴裕は綾香さんを後ろに隠し、身構えました。
早紀ちゃんでした、、、、
「兄ちゃん!」
「早紀っ!大丈夫か!」
「兄ちゃん、ごめんなさい、、綾香ちゃん、ごめんなさい、、、私、、、私、、、」
「ちょっ、、何か変なことはされていないか!」
「大丈夫、、何もされてない、、ごめんなさい、、、」
早紀ちゃんが無事だと知ると、安心感が沸いてきました。
「よかった、もう帰ろう、あんな奴のことなんか知らん!」
「うん、早く出ましょう、、裏口とか探しましょう!」
「兄ちゃん、綾香ちゃん、、こないだは、、、ごめんね、ごめんね、、、」
「早紀、その話はまた後だ、、、いまはとにかく、出よう!」
「うん、、、」
貴裕と綾香さんがまた非常階段を下に降りようとしたとき、
早紀ちゃんが声をかけました。
「あ、あのね、出口なんだけど、、、」
「えっ?」
「兄ちゃん、私さっき、この先のエレベーターが動くのを見たよ。」
「え、エレベーターって、、動くのか?」
「本当だよ、ランプついてたし。」
「ちょ、案内してくれ!」
3人は非常階段から5階フロアに入り、早紀ちゃんの案内でエレベーターホールまで来ました。
するとちょうどエレベーターが開いて貴裕たちを待ち構えていました。
「開くボタンをセロテープで固定しておいたの。いつでも逃げられるように。」
「じゅ、準備いいな!すごい!」
「これで1階とか、えーっと、地下駐車場とか?出られるかもしれませんね!」
「でかした早紀!」
貴裕たちはエレベーターの前までやってきました。
まず先に綾香さんが乗り込み、早紀ちゃんが乗り込み、最後に貴裕が乗り込もうとしました、、、
その瞬間、早紀ちゃんが貴裕を突き飛ばしました。
貴裕は、床にしりもちをついて転がります。
「兄ちゃんは乗っちゃ駄目、、、」
早紀ちゃんは突然綾香さんに蹴りを2発叩き込みました。
「ぎゃっ」
綾香さんは、おなかを抱えてうずくまってしまいました。
そして早紀ちゃんは「7階」のボタンを押すと、「開くボタン」のテープを剥がし
エレベーターから降りて、綾香さんだけエレベータに乗せて扉を閉めてしまいました。
「早紀っ!!なにをっ!!!!!」
「ごめんね、、、兄ちゃん、、、っていうか、、、兄ちゃんじゃないし、貴裕さんか、、、」
「早紀っ?!」
早紀ちゃんの表情が、変わっていました。
綾香さんを襲ったあのときの表情とはまた違った、冷たい表情になりました。
まるで、綾香さんの母親の、あの冷たい表情そっくりでした。
エレベーターは綾香さんだけを乗せたまま、7階に向かっていってしまいました。
「貴裕さん、、一緒に遊ぼう?」
「何を言っているんだ!」
「もう、あんな娘、どうでもいいじゃん、、、時間つぶそうよ。」
「早紀っ!」
早紀ちゃんは、エレベーターに向かい合わせの窓に腰をおろしました。
そして窓を勢いよくあけました。
空は月も出ていない漆黒の闇。
都会のネオンも、薄暗く感じました。
「わーーすごいね、風がつよいよ、、、落ちたら死んじゃうねーーー」
早紀ちゃんは窓の外に身を乗り出し、笑いながら言いました。
「ちょっ!早紀!危ないっ!!」
「大丈夫だよ?」
早紀は冷たく笑いかけました。
「綾香をどこに!」
「7階ではねぇ、、、お父さんが綾香ちゃんを出迎えてくれているよ。あははは、ははは!!!」
「・・・!」
貴裕は非常階段の方に戻ろうとしました。
「まって!」
「うるさい!綾香が危ないっ!」
「待ちなさいってば!!」
ガォン・・・
爆音に驚き、貴裕が振り向くと
早紀ちゃんの手には拳銃が握られていたそうです。
「へへ、すごいね、両手で握ってるのにすごい振動がくる、、へへ」
「おい、、、、なんで、そんなもの、、」
「お父さんんがくれたの!
これで、貴裕さんと遊んでいなさいって!」
銃弾はかろうじて、貴裕の体を傷つけていないようです。
「早紀、、、、」
「ねぇ、貴裕さん、、、」
早紀ちゃんは冷たい表情のまま語りかけます。
「な、何だ?」
「私ってやっぱり、、、邪魔な子だったのかなぁ?」
「えっ!」
「ずーっと、綾香ちゃんのことを、「生まれてこなければよかったのに」って思い続けてた。」
「・・・」
「でも、、実は私のほうが、「生まれてこなければよかった」んだよね、、、」
「そんなことは、、、」
「貴裕さんもそう思ってたんでしょ?」
「そんなことはないっ!!!!!」
「ずーっと17年間も、兄貴ヅラして、心の底では、私なんていなければいいなんて、
思ってたんだよね?貴裕さんっ!! でしょ?」
「違うっ!!」
「違わないよ、、、」
「お前はっ!!俺の大切な妹だっ!!!誰から生まれようとも、どうしたって
お前は俺にとってのっ!かけがえの無い妹なんだよ!!!」
「本当のことをいいなよ、、、無理しなくていいよ!」
「生まれてこなければいいなんて思ったことは無い!!」
むしろっ、、! お前という妹がいて、ありがとう!って思っているんだっ!!」
「嘘つき!!」
「本当だ!」
「嘘だっ!!」
「生まれてこなければいいやつなんて、、そんな人間はいないんだ!!」
「嘘だっ・・・」
「嘘じゃない、、、本当だ、、」
「・・・」
早紀ちゃんのほほには、いつの間にか、ひとすじの涙の跡がありました。
「実はね、、、」
「何だ?」
「お母さん、、ああえっと、英子お母さんじゃなくてね、
私の本当のお母さん、、、」
「ああ、お母さんが?」
「殺しちゃった」
「!!」
窓から吹き込む冷たい風が、二人を突き抜けていました。
「もう、遅いんだ、私はもうこの壊れた世界から逃げ出せないの。」
「・・・」
「私の生まれた時からの罪はドンドンおっきくなって、、、」
「・・・」
「とうとう、昨日ね、お母さん殺しちゃった。」
「早紀、、、」
「もうだから、私はあとは、最後の罪を仕上げをするしかないの。」
「早紀、、、」
「さっきの兄ちゃんの言葉、、、とってもうれしかったよ。」
早紀ちゃんは自分の拳銃を自分の胸に突きつけました。
「・・・!!!!!!
やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
「これで、、やっと、、、終わりです。」
「早紀ぃぃぃぃ!!!!!!」
「バイバイ!」
・・・
早紀ちゃんの体は、赤いしぶきを上げながら、弾けるように宙を舞ったそうです。
そのまま、ビルの外へ消えていきました。
エレベータホールには、硝煙の上る拳銃と、早紀ちゃんの血しぶきだけが残されていました。
・・・
このあたり、貴裕はしばらく記憶がなくなったようです。
ただただ呆然と、窓の外の景色を眺めていました。
しばらく時間が経って、、、やっと我に返りました。
(・・・・! 綾香っ、、、!)
貴裕は、非常階段ホールに戻り、7階まで駆け上がりました。
7階にたどり着くと、「大会議室」というプレートの部屋だけが明かりがついていて
ドアがすこし開いていました。
「綾香ぁ!!!!!!」
貴裕はドアを勢いよく蹴り破りました。
綾香さんは、全裸の状態でイスに縛り付けられていました。
その傍らには、善次郎さんが黒いスーツに身を包んでたたずんでいました。
「よぉ、早紀しんじまったなぁ!」
「てめぇえええぁああああああああああああああああああ」
貴裕は激昂し、善次郎さんに向かって突進しました。
善次郎さんは貴裕を余裕で弾き飛ばしました。
床に転がった貴裕に対して、善次郎さんは、早紀ちゃんと同じように、拳銃を突きつけました。
「ご苦労さん。お前の役目はもう終わったから、帰っていいよ。」
「何故!早紀や、、綾香をこんな目にっ!」
「綾香はさぁ、、、やっぱりかわいいよ。
英子にそっくりだ。 ああ、お前の本当の母さんな。」
「お前!やっぱりまさか、綾香のことっ!!綾香ああ!」
「うるさいなお前は」
「綾香に何したっ!!!この変態野郎!!!!!」
「人のこと言えないだろ、はははは。」
綾香さんは、気を失っているようでした。
なおも善次郎さんは話を続けます。
「俺はさ、本当はお前の英子と離婚なんてしたくなかったんだ。」
「なんだと!!」
「でもな、アイツにはさぁ、ものすごい借金をしてたんだよなあ。
いまの俺の事業が成功してるのも、アイツの実家の資金力のおかげだしなぁ。
英子と別れないと、俺の会社潰すって脅すんだぜ!」
「おいっ!!」
「わかる?俺は、泣く泣く離婚したわけ。」
「何を言ってやがる!!!クソ勝手な理屈こねがやって!!!!!」
「でもな、やっぱり俺は英子が好きだったんだよ、もちろん今もな。
もうお前は知ってると思うが、綾香が10歳になったとき、病院から連絡があった。」
「ああ?!」
「実は綾香は、俺と英子の子だったとな。」
「・・・」
「俺はこのときから誓った。 英子を愛しきれなかった分、綾香を愛することをな。」
「なんだそりゃぁああ!? まさかお前、綾香を無理矢理、、、!」
「まだ何もしてないよ。」
「裸にしてっ!!!イスに縛り上げて!!!」
「今は、まだ、なにもしてないよ。
でもさぁ、やっぱり綾香は、、、美しいよ。
この肌の柔らかさ、唇の柔らかさ、やっぱり英子そっくりだ。」
善次郎さんが綾香さんの裸体に黒い指先を這わせました。
「さわるなぁああああああああ!!!!」
「その点、早紀は本当に役に立った。」
「何っ?」
「早紀は俺を憎んでいた。 綾香を憎んでいた。 自分の家庭を壊した張本人をな。
その憎しみを、、、アイツにぶつけさせたんだよ。」
「まさか、、、お前が、、殺させた、、、、」
「早紀には洗いざらい出生の秘密をぶちまけてね、
なんかもう精神は崩壊寸前だったな。
だから、言ってあげたんだよ。
人生をリセットするには、お前の出生すべてもろともリセットするしかない。
だから、、、、」
「自分の母親を、、、殺させた、、、?」
「俺としては、これからの人生、綾香と二人っきりで、愛をはぐくみたいし、、、
余計な荷物をかたづけてくれて、早紀には感謝している。
まさか自分自身を片付けるなんておもわなかっ」
その瞬間、貴裕は善次郎さんの顔面を思いっきり殴りつけました。
「ぐっ!!」
善次郎さんは拳銃をすばやくに身構え、2発打ち抜きました。
1発が貴裕の左わき腹に命中しました。
「あああああああっ!!!」
貴裕はわき腹に、ものすごい熱を感じました。
痛みなのか何なのかわからず、ただただ、うずくまるしかできませんでした。
「おい、小僧、、お前なんて、もうどうでもいいんだ。
とっとと綾香と二人っきりにさせてくれないか。」
善次郎さんはまた拳銃を貴裕の方に向けました。
貴裕もまた、自分のポケットから、、、拳銃を取り出しました。
早紀ちゃんが使った拳銃でした、、、、
「親子で打ち合いか、、なんかいいね、ドラマチックじゃないか。」
善次郎さんがニヤリと笑いながら言うと貴裕は、引き金を引きました。
弾は見当違いの方向にそれ、壁に穴を開けました。
「片手で撃ってもあたらないよ。
ほら、たとえばこういうふうにしなきゃ。」
善次郎さんは綾香さんの体をイスごと引き寄せ、後ろから抱きつきました。
そのまま綾香さんの右肩に顎を乗せ、綾香さんの後ろから両手で銃身を貴裕に向けたのです。
「綾香に撃たれるみたいだろ?」
綾香さんの右耳たぶをなめながら善次郎さんは笑います。
「てめぇ・・・!」
「ちゃんと俺を狙わないと、綾香が死んじゃうぞ!!あははは」
「・・・・!」
「これじゃあ、撃てないだろ?」
貴裕は一生懸命両手で銃を握り締め、善次郎さんの顔を狙って、銃身を向けました。
わき腹の痛みで、だんだん感覚がおかしくなってきています。
貴裕は薄れゆく意識の中で、綾香さんのことを考えていました。
綾香・・・綾香・・・・・・・・守ってあげられなくて・・・・ゴメン・・・
もう、駄目かも、、、
「あれもうギブアップか。
じゃあ、、、、さよなら、マイサン。」
善次郎さんが引き金の指に力をこめようとした、
その瞬間、
綾香さんの意識が戻りかけました、、、
「貴・・・・裕・・さん、、、、、、、、」
綾香っ・・・・
「あなたを、、、、、、愛、、、し、、て、、、、ま、、、す、、、」
うあああああああああああああああああああああああああ
貴裕は最後の力を振り絞って、引き金を引きました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーー
意識が戻ったのは、病院のベッドの上でした。
「貴裕さんっ!!よかったっ!!!!!!!」
泣きじゃくる綾香さんの顔がそこにあったそうです。
あれから3日間、貴裕は昏睡状態になっていましたが、ようやく意識が戻ったのです。
警察の事情聴取はくたびれるほど受けました。
結局、貴裕の撃った弾は、善次郎さんの右ほほをかすめただけでした。
しかし次の瞬間、警察官がその場に駆けつけ、善次郎さんは取り押さえられて逮捕されました。
銃声と、少女の飛び降り自殺、近所の住民が通報し、警察が駆けつけるまでに
そんなに時間がかかりませんでした。
綾香さんの自宅からは、早紀ちゃんの母親の絞殺体が見つかりました。
調べによると、早紀ちゃんは単に鈍器で殴って気絶させただけで、とどめをさしたのは善次郎さん自身だったそうです。
早紀ちゃんが直接手を下していないとわかっただけでも、貴裕は何か救われた感じがしました。
貴裕は、不自由な右手で、綾香さんの頭をそっとなでて、自分の方に抱き寄せました。
いつまでもいつまでも、綾香さんは、泣きじゃくっていたそうです。
その後、貴裕は大学を中退し、綾香さんは高校を転校して、
二人は英子さんの元で過ごすことにしました。
カタメタワーの事件から半年後、
貴裕と綾香さんと英子さんは三人で、早紀ちゃんと早紀ちゃんの母親のお墓参りに行きました。
貴裕も綾香さんも、英子さんも、、、
二人の冥福をいつまでもいつまでも、祈りつづけました。
墓地を後にして帰る頃、
夕日の赤い影と涼しいそよ風が、3人を包んでいました。
英子さんはずいぶん前を歩いています。
隣の綾香さんはこっそり貴裕に言いました。
「私達は、、、ちゃんと堂々と生きていけるんでしょうか?」
「うん。
何も問題無いよ。」
「いいんですよね。」
「何もかも、、、これからだから。」
「はい、、、」
貴裕と綾香さんは、手を繋いだまま、ゆっくり、ゆっくり
歩いていきました。
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以上が、俺が友人の水島貴裕くんに聞いた話です。
現在貴裕君と綾香さんの二人は結婚して、英子さんと3人で暮らしています。
結婚式はしませんでしたが、俺を含めたごく限られた友人と英子さんに見守られて
永遠の誓いをたてました。
ふたりがいつまでも幸せであることを願って、、、、
〜〜〜おしまい〜〜〜
出典:2ch
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