遠い日の思い出

2007/08/27 22:03 登録: えっちな名無しさん

姉ちゃんが泣いている。
結婚式で両親に贈る手紙を今読んでいる。
姉ちゃんの涙を見るのは、かれこれ10年以上も前の事。
俺は、その当時の事を思い出した。
当時の俺は小三で姉ちゃんは小五だったと思う。
あの日は夏休みで、早朝のラジオ体操を終え、俺と姉、そして近所の友達数人で帰っていた。
帰り際、カマキリが居たので捕まえようとしたら、見事にカマキリの鎌に指を挟まれてしまい、
俺「いてててて〜!」
手を振り続けてやっとの思いで、カマキリを振り払った。
周りの友達は爆笑していたが、姉は心配したのか、こちらに近付き、
姉「何やってんの。指みせてごらん?」
そう言って少し血の出た俺の指を見つめたかと思うと、いきなり、俺の指をくわえてきた。
俺「ちょ、ちょっとやめろよ!」
友達もいるし恥ずかしかった。
姉はニッコリ笑顔で、こちらを見ながら俺の指をくわえたまま、まだ放そうとしなかったので、
俺「やめろって言ってるだろ!」
俺は姉を思いきり突き飛ばした。
姉は尻餅をついて倒れてしまった。
更に俺は姉にキツイ事を言ってしまった。
俺「何してんだよ!ツバつけんなよ!汚ね〜んだよ!」
姉は、その場で、もの凄い号泣をした。
今でも、あの時の姉の泣き顔は鮮明に覚えている。
どうしてあの時、素直になれなかったのだろうと言う悔しさと、姉の優しさに思わず、俺も涙が溢れてきた。
思い出せば思い出す程、涙が止まらなくなってきた。
姉は泣きながら手紙を読み終え、俺の両親もボロ泣きしている中、少し離れた席で、俺も号泣してしまい、周りの視線が俺に集まった。
姉は号泣している俺に気付き、こちらにやってきた。
姉「なんで泣くの?」
姉もポロポロ涙を流しながら聞いてきた。
俺は言葉にならないくらいの声で、
俺「ありがとね..ありがとね..」
とうつむき泣きながらありがとうを連呼していた。
姉は、俺の顔が見えるように、しゃがんで覗き込む形で
姉「幸せになるね。」
俺の指をくわえた時に見せた、あの時と同じニッコリ笑顔がそこにあった。

ありがとね。姉ちゃん。
幸せになってね!


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