優しさの遺伝

2007/09/09 03:01 登録: えっちな名無しさん

四歳の孫息子を連れて七年の夫婦生活にピリオドを打ち、出戻りしてきた我が娘。
顔に生気がなく、食べ物もあまり口にせず会話も生返事だけ。
娘と孫の支えとなるために、仕事はなるたけ定時で終わらせて、たまりにたまった有給を使って篭り気味の娘を元気付けるため、旅行を計画したりしてたそんなある日。

いつものように家族で食卓を囲んでいた夕飯時、醤油をとるときふと見た娘の目には涙が・・・。
震えていて痛々しく見えた反面、声も出さず泣いているその姿はどこか虚勢を張っているようで、どう声をかけたものか惑ってしまった。

こうゆう時男はだめだなと痛切に感じながらも、ない知恵絞った励ましの言葉をかけようとしたとき、孫息子が娘に近づき、
「お母さん、泣かないで。僕が守ってあげるよ。」と、涙を堪えて。
その言葉で堰を切ったように声を上げて泣き出す娘とこみ上げる私。

娘が五歳のとき妻を病気で失い、周囲には娘の支えにならないといけないから悲しんでいる暇はないと強がってはいても、空いた空洞を埋められず息をしながら死んでいた状態の私に、
「ママはさ。いなくなっちゃったけどさ。あーちゃがさ、ママになるからさ。」と、言ってくれた娘を思い出しその場で言葉も泣く二人を抱きしめてた。

月日は流れ二十数年、娘は立ち直り、以前以上の元気で素敵な女性に、そして母になっていた。
そして今日は孫息子の結婚式。
生来おしゃべり好きの私は、孫息子の過去を多大な自慢と少々の笑い話とさせてもらったが、この二つの思い出は私の宝物として、胸のうちとこの文を見ている方だけのものとさせてもらっている。

出典:呼んでくれてありがとう
リンク:終わり。

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