四人の男達
2007/10/07 01:17 登録: 名無しさん
今日もタクヤとアヤは体育倉庫に消えていく。だがそれは俺にとってはいつもの事。
タクヤとアヤは付き合っている。しかし皆には秘密にしている。
しかし俺は二人が付き合っている事を知っている。
放課後教室に忘れ物を取りに行った時、あろうことかあいつらの「真っ最中」に遭遇してしまったからだ。
その時二人は皆には内緒にしてほしい、と言った。
俺には関係ない事であるし、言ったって何も利益がある訳でもないから誰にも言ってない。
ある日、タクヤとアヤが慌てて教室に入ってきた。
タクヤ「な、なあ!」
俺 「・・・んぁ?どうした」
タクヤ「俺達の事、お前誰かに漏らしただろ!」
俺 「失礼なッ!俺の口はダイヤよりも堅いんだぞ!みくびるな!」
アヤ 「じゃあなんでアイツらが入ってきたのよ?!」
俺 「・・・はい?」
話によれば、二人がいつものように体育倉庫の奥で真っ最中に「志村」と「石嶋」が体育倉庫に入って来たという。
志村、石嶋は同じクラスの奴で「三沢」と「西尾」との四人でくだらない世間話をしている奴らだ。
真っ最中だったのでしばらく動けなかったがなんとかバレずに窓から逃げて来たというのだ。
アヤ 「なんであそこは減多に人なんか来ないのに・・・どうしてよ!」
俺 「だからなんで俺のせいになるんだ!」
そこへ志村と石嶋が教室に入って来た。固まるタクヤとアヤ。なぜか俺の体にも緊迫感が走る。
石嶋「うぇ、気持ち悪ぃ・・・」
西尾「どうした?」
志村「さっき体育倉庫に言ったんだが、なぜか中がカールのような匂いが充満していたんだ」
三沢「カール?」
石嶋「あまりにも匂いが濃くて気持ち悪くなっちまった・・・頭が痛い」
志村「何かクチャクチャ変な音がしてたしな、気味が悪い」
アヤは(何とかしてよ・・・!)という表情で俺を見ている。
俺は(俺にどうしろと?!)というジェスチャーをする。
西尾「誰かマナーの悪い奴が隠れてカール食ってたんだろ」
石嶋「すごい匂いだった、相当なカール好きな奴なんだな」
西尾「どこのくちヒゲ野郎だ」
志村「いや、顔は見てない」
それを聞いてタクヤとアヤの顔に安心感が戻る。しかし・・・
三沢「待て」
西、志、石「?」
三沢「おかしくないか?」
志村「何がだよ?」
三沢「クチャクチャ音がしてたんだよな?」
・・・気づいたか・・・?
石嶋「おう、随分長い間鳴ってたな」
三沢「カールを噛み砕く時、クチャクチャなんて音がするか?」
石嶋「・・・どういう事だ?」
三沢「カールは普通、サクサクッと音がするはずだ」
タクヤとアヤが、へ?というような顔をする
志村「確かにそんな音はしてなかったな」
石嶋「じゃあ、『アイツ』が食ってたのはカールじゃないって事か?」
西尾「どうでもいいだろ」
石嶋「ばかな。カールの匂いがしたんだぞ、むせるぐらいにな」
三沢「じゃあそのクチャクチャという音はどう説明するんだ?」
西尾「だったらガムでも食ってたんだろ」
志村「いや、確かにカールだった、こいつもカールだと言った、間違いないだろう」
石嶋「じゃああのカールの匂いは何なんだよッ!」
志村「落ち着けって」
西尾「・・・カール味のガムだったりしてな」
石嶋「ばかたれ」
志村「アホか」
三沢「たわけが。そんな物ある訳ないだろう。それならいちいちガムにせず、直接カールを食えばいい話だ」
志村「そこまでする必要性が理解出来ないね」
西尾「冗談で言っただけだろうがっ!そこまで言わなくてもいいだろクソッタレ!」
志村「いいから落ち着け」
西尾「貴様も言ってただろうがっ!」
三沢「・・・まてよ」
志村「?」
三沢「それは・・・考えられるかもしれん」
西尾「いやいやいやいや!お前もジョークは好きだよな?!冗談で言った事ぐらい分かるだろ!」
三沢「カールは食った事あるよな?カール自体はどんな味がした?」
石嶋「どんなって・・・いろいろあるからなぁ」
三沢「基本的には、だ」
志村「まあだいたいはチーズの味がするわな」
西、志、石「!」
石嶋「そうか!チーズ!チーズだ!チーズ味のガムだな!」
三沢「そうだ、『アイツ』はチーズ味のガムを食っていたのさ」
志村「最初のカールという先入観のせいで気がつかなかったぜ!」
西尾「確かにカールとチーズの味と匂いは似てるな」
石嶋「だからチーズの匂いがしたにも関わらず、クチャクチャと不釣合いな噛み音が聞こえたわけだ」
どんどん話が脱線していくのがコイツらのスタイルだ。
じつは彼らのこんなくだらない脱線話が学校内では結構人気で、わざわざ他のクラスから傍聴にきている奴もいる程だ。
当の彼らは、そんな事は微塵も思っていないらしいが。
石嶋「よし、これで音の問題は解決した。だがまだ問題が残っている。」
三沢「分かっている」
西尾「まだあるんかい」
志村「果たしてそのチーズ味のガムがおいしいものだったか、だろう?」
西尾「うまい訳ないだろ!」
三沢「言うとおり、チーズ味のガムだなんて想像しただけで吐き気がする」
石嶋「ぐ・・・想像したらまた気持ち悪くなってきた」
志村「おい、頼むから吐くなよ」
西尾「だが、倉庫にはむせる程匂いが充満していた・・・」
三沢「つまり、それほど大量に食べていたという事になる」
石嶋「だがチーズ味だぞ?相当なチーズ好きだとしても頭が痛くなるはずだ」
志村「しかし長い間音は続いていたぞ」
四人とも「うーむ・・・」
行き詰ったようだ。
しかし西尾がある事を思い出す。
西尾「奇食家・・・」
三、志、石「?」
西尾「奇食家だ!テレビで見た事がある!」
志村「き、奇食家?」
西尾「字の通り、奇妙な物や珍しい物を食う奴らだよ、世界中の珍しいものを食う事もある。納豆プリンやメロンご飯とかな」
石嶋「うげえ!気持ち悪い」
西尾「虫を乾燥させたやつを食ったりもしてたぞ」
三沢「ゲテモノ喰いか?」
西尾「ちと違うな。だが食える物ならなんでも食うみたいだ、牛の目玉、豚の脳みそ・・・」
石嶋「むぐッ!」
志村「やばい!トイレ行け!」
石嶋がトイレに走って行った。恐らく内容に耐えられなかったのだろう。
石嶋はゲテモノ系には弱い男だ。今までにもこのような話になった時トイレに走って行った事が何度かある。
石嶋「あー・・・」
西尾「大丈夫か?」
石嶋「なんとかな、よし、続けてくれ」
志村「だが、いくら寄食家でもあんな物を長い間噛んでいられるのか?」
西尾「寄食家にもルールという物があって、一度口に入れたらどんなにまずくても最後まで食べきるんだと」
石嶋「うわぁ・・・ある意味すごいよ・・・」
三沢「ふむ、つまり倉庫にいた『アイツ』は寄食家、というわけだな」
志村「でもなんでそんな隠れてまで?」
三沢「人前でそんな物を食っていたら明らかに引かれるのは目に見えている。
目の前で豚の脳みそなんか食われてみろ。うまい、といわれても引くだろう」
石嶋「もうよしてくれ、そういうの・・・」
志村「それもそうだ」
三沢「これで味の問題は解決だな。だがまだ問題があるぞ」
石嶋「え?まだあったか?」
三沢「果たしてチーズ味のガムだなんて本当に存在するか、だ」
志村「ああ!忘れてた!」
石嶋「確かにそんなガム見た事ないよな」
西尾「あっても誰も買わねえよ」
志村「だとしたら『アイツ』はどこでチーズ味のガムなんて手に入れたんだ?」
石嶋「問題はそこなんだよな」
再び頭を抱える四人。
しかしまた西尾が口を開く。
西尾「そういえばさ、これもテレビでやっていたんだが・・・」
三沢「なんだ?」
西尾「どこかのガムの会社か忘れたが、客のリクエストに答えて好きな味のガムを作ってくれる所があるらしい」
志村「つまり・・・とんな味のガムでも、頼めば作ってくれると?」
西尾「ああ。スルメ味、納豆味のガムとかな。頼めば牛の目玉味のガムも作ってくれるかもな」
石嶋「もうやめて・・・」
西尾「ガムの会社に住所を書いたリクエストの葉書を出せば、リクエストした味のガムが送られてくるらしい」
志村「じゃあ『アイツ』はそんなリクエストをしたってわけか」
三沢「随分変わったやつだな、チーズ味とは」
西尾「寄食家だからな」
そんなこんなで全て問題は解決したようだ。
そこでその会話を聞いていた生徒会長の「ミカ」が四人に近づいて
ミカ「・・・あのさぁ、それってただ単にチーズを食べてただけなんじゃないの?」
西尾「ッ!」
石嶋「っ!」
志村「ッ!」
三沢「あ・・・」
こんな感じでいつも四人はくだらない世間話に華を咲かせている。
タクヤとアヤの関係はというとまだバレずに続いているようだ。
出典:オジリナル
リンク:オジリナル

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