最後の電話相手1

2004/08/20 14:48 登録: えっちな名無しさん

俺の名前をアキラとしておく。(某アニメが好きなので
彼女のことが好きだったとしても、別れる話はよくある。
中3の時に付き合っていた彼女が、そうだった。
名前をユキとしておく。
彼女はいわゆる不良で、素行は悪くて有名だった。
しかし、俺は彼女と小学1年生からの付き合い。
根はいいやつだということを知っていたから、よくお喋りをした。

ユキとの付き合いが拡大して、俺の友人は不良が多かった。
酒やタバコは当たり前。ケンカもするしカツアゲ、万引きもしょっちゅうだ。
それでも、みんな仲間思いのイイヤツであった。
みんな、同じ小学校の人間なのだ。
小学校1年生のころは、ものすごく仲良しだった連中。
それが、みんな成長するにつれて、不良になってしまっただけのこと。
それだけだ。

そんな連中とツルんでいた俺は、一人だけまじめな生徒であったと思う。
勉強もした。学校の仕事もした。部活もはりきった。
だから、いわゆる優等生の友人も多い。
そんな俺だから、周りからは「お前は付き合いが広いよな」とよく言われた。
たまたま、そうなっただけのこと。

中3の春休みのことだ。
ユキは俺の家に突然押しかけてきた。
春休みの宿題が終わっていないから、俺のを写しにきたのである。
「しょうがない奴だな。」
「いいじゃん〜別に」
ユキは愛想のいい笑いを振りまいて、家にズシズシ上がりこんでくる。
俺は、文句を言いつつも部屋に招いて、ジュースをだしたりと世話してやる。
「丸写しなんて、許さないぞ。」
「だって、私の脳みそじゃ絶対おわらないよ」
「でも、やらないとお前のためにならないじゃないか」
「………じゃあ、アキラが教えてくれるなら、いいよ。」
面倒くさいことを言う女だ。しかし、彼女は可愛いのも事実。
(仕方ない、復習のつもりで、面倒みてやるか)
「わかったよ。まったく………」

俺の場合、春という季節は、なぜか性欲が高まる。
それはもう、アソコが馬鹿になったんじゃないかと思うほどに。
ヒマさえあれば自慰にふけっていたのも事実。
ユキに勉強を教えているときも、まずいことにアソコに血液が集中してしまった。
(バレたらやばいな)
だが、理性とは別に、どうも俺はユキの胸元ばかり目がいっていたらしい。
すぐにそれがユキにばれてしまった。
「そんなに見たいのかぁ?馬鹿。」
「………うるせぇ。勉強教えてやるんだ。そんくらいの代償は………」
言ってて恥ずかしくなった。たぶん、顔まで赤くなっていたと思う。
「別に、アキラなら、何してくれてもいいんだけどな。」
突然、とんでもない台詞が耳に飛び込んできた。
「………はぁあ!!?」
「だってさ、小さいときからの知り合いだもん。お互いのことならよく知っているし。だから―――付き合っても、いいかなって。」
そう言われて、俺も行動をおこさないわけにはいかなかった。
「俺も、好きだ」
そう言って、しばらく見つめあった後、キスをした。
その後、勉強そっちのけでセックスに突入してしまった。

その時ばかりは、ただヤりたいから「好きだ」と言ったのかもしれない。
付き合うようになってから、俺の感情は変わった。
今まで聞いたこともない様な、セックスするときの切ない声。
それが終わったあと、幸せそうに俺に微笑む時の笑顔。
学校では、アイツは決して笑わない。不良なのだ。女同士からは阻害されていた。
だが、ユキはそんな状況を辛いとは言わない。
ただ、「アキラがいるから、いい」と言ってくれる。
アイツの笑顔は、俺だけが知っている。そう思い込まずに入られなかった。

ユキと付き合う日々を重ねるある日。
俺はタカオに呼び出された。
タカオは、俺の親友といってもいいほどの存在であり、同時に学校でも指折りのワルだ。
コンビニでお菓子を買って、食べながらタカオと話をした。
「アキラお前、ユキと付き合いだしたんだってな。」
「………ああ。」
そこで、俺は思い出す。タカオは、ユキの前の彼氏だったのだ。
ただ、俺は二人が付き合っている現場を見たこともなかったので、噂でしか知らない話だ。
そういえば、ユキは処女ではなかった。
だとすれば、タカオがユキの最初の男なのだろうか―――
ユキとは別れたはずなのだろうが、今もユキとタカオが仲よさそうに廊下で話しているのを見かける。
どうやら、嫌いになって別れたのではないようだ。
そう考えると、目の前にいるタカオが、俺にどんな感情を抱いているのか不安になった。
「てめぇ、正直ムカつくわ。」
タカオが俺を睨みつけてくる。今でもユキのことが好きなんだろう。
「………ごめんよ。お前の気持ちとか、知らなかったんだ。」
素直に謝った。最も、今タカオの気持ちを知ったからといって、ユキと別れようとは思わなかったが。
「まあ、いいよ。頑張れや」
タカオが穏やかな表情を見せてくれたので、俺は安堵した。
「ああ。」

ある日。先生に誘われて、生徒会に入ることとなった。
生徒会長は友人だし、その他の生徒会のメンバーも俺の友人ばかりである。
仕事は大変そうだとは思ったが、友達と一緒に何かに取り組むのもおもしろそうなので、承諾した。

だが、生徒会メンバーには、一人だけ俺の苦手な女がいた。
副会長のミキコである。
彼女はやたら鼻っ柱が強く、自信過剰。そして、成績の悪い連中を見下す性格であった。
派閥をつくりたがり、他のグループの女子に皮肉やイジメをすることもしょっちゅうだ。
そして、やたらと先生に媚を売る。典型的な「イヤな女」であった。
特に、ミキコはユキを酷く毛嫌いしていた。
ユキは意志が強く、決してミキコに従おうとはしなかったからである。

ある日、ミキコは生徒会室にて、俺に言ってきた。
「アキラ君。君さぁ、いい加減に不良とかと付き合うのやめてくれない?」
「?なんでだよ。」
「だって、生徒会のメンバーが、校内で不良と仲良くしているなんて、生徒会のイメージが悪くなるから。」
「別に、イメージが悪くたって、キッチリ仕事をこなしていれば問題ないだろ。」
「問題あるわよ。私にまでよくない噂がたつかもしれないじゃない。」
良くない噂?まったく想像がつかない。
「生徒会にとっての『生徒』って、不良は含まれないのか?」
「………あんた、やっぱムカつくわ。不良とおんなじ。」
それだけ捨て台詞を吐いて、ミキコは鞄をもって生徒会室からでていった。

数日後の休日。ユキに公園に呼び出された。
当然、デートだと思い込んで、俺は気合を入れて公園にむかった。
だが、ユキは暗い顔をして待っていた。
「話があるんだけどさ」
「ん?」
「私と付き合うの、もう止めたほうがいいよ。」
突然何を言うかと思えば。わけがわからない。
「なんでさ。」
「だって………アキラは優等生なんだからさ。私みたいなのと付き合ってると、きっとダメになっちゃうよ。」
「何言ってるんだ!ぜんぜん関係ない!お前が気にすることじゃないだろ!」
「とにかく、私はもう、アキラのこと好きじゃないし。」
理由が二つも交差して出てきた。支離滅裂だ。
そこで、俺はあることに気付く。
「………ミキコに、なんか言われたんだろ。」
その瞬間、確かにユキの顔色は変わった。だが、ユキは言い張る。
「違う!私がアキラを嫌いになったの!」
強情な女である。意志の強さは魅力的だが、こういうときには厄介だ。
「ミキコなんかに、手出しはさせるかよ!」
強く言い張ると、ユキは口を閉じた。その日は、そのまま家に帰ることにした。

月曜日。生徒会室で、ミキコに言う。
「お前なぁ」
「何よ?」
お高くとまったような目線。穏やかに話をつけるつもりだったが、俺は感情を抑えきれなくなった。
「ユキにくだらないこと言うんじゃねえよ!」
机を叩きながら大声をだす。他のメンバーも同室していたが、かまわなかった。
(みんなに聞かれたってかまうか!むしろ、みんなからの意見をミキコに聞かせたいくらいだ!)
男子に怒鳴られたことなんてないのだろうか、ミキコはすぐに目に涙をうかべた。
「だってぇ………だって!」
周りのメンバーは「どうしたんだ?」と、集まってきた。女子たちは、ミキコを慰めるように近寄る。
ミキコはしゃくりあげながら言う。
「私はっ………生徒会を良くしようと思って………それで………」

女の子の涙に弱い奴は多い。
女子のメンバーは全員、ミキコをかばい、その意見に賛成し、俺を悪者のようににらみつける。
男子たちは、ミキコの性質の悪さを知っているため、沈黙を守っている。
(なんだよお前ら!黙ってないで、なんか助けてくれよ!)
だが、ここにいる男子たちは、殴り合いはおろか口喧嘩すら避けて生きてきた連中である。
確かに、人はいい。だが、問題を起こさないように極力努力している。
もしかしたら、俺と仲良くしているのだって、本心ではなかったのかもしれない。
『アキラは不良と付き合っているような男だ。逆らわないでおこう』
―――それが本心かもしれなかった。
できることなら、この部屋にいる俺以外の人間を全員殴り倒してやりたかった。
だが、それはできず、結局部屋から逃げ出すことになった。

ミキコをとめるどころか、事態はさらに悪くなってしまった。
だったら、生徒会を止めればいい。それなら、俺とユキが付き合っても問題は無い。
さっそく、生徒会の顧問の教師に話をしに向かった。
だが、教師はこう言って、俺を突っぱねた。
「いきなり止めるだなんて、許されるか。」
ほんとうの理由は言えない。男女の交際自体が厄介事だと思い込んでいる、この教師には。そういう男だった。
「お前は、やるって決めたんだろう。だったら、最後までやりとおせ!」
「まったく、ガッカリさせんなよ。」
そして、最後にこう言った。
「ここでやめたら、お前の内申とか、どうなると思う?」
―――絶句した。
別に、内申点を稼ぐために生徒会にはいったわけじゃない。
だが、もしかしたらこの教師は、俺が内申目当てだと思っているのかもしれない。
もしかしたら、他の教師も………

問題はここである。
内申なんか知ったことか!と言えれば、俺は男であっただろう。
だが、不覚にも俺は、ここで黙り込んでしまった。
なぜ返事ができなかったのだろうか、今でもわからない。
教師のあまりの台詞に、気圧されてしまったのだろうか。
ショックなことを言われて、動けなかったのか。
それとも、本当は内申点などというものが惜しかったのか………
「会議があるんだ。………生徒会、頑張れよ。」
そう言って、教師はいなくなった。
俺が泣き出したのは、その後すぐであった。

相談できる相手を必死に捜し求めた結果、相手はタカオに決まった。
電話で事情を話し、その後公園でタカオに会うと、いきなり殴りつけられた。
「死ねよ、お前。」
ヘタレ、と言いたいのだろう。好きな女を奪っといて、この体たらくだ。
殺して欲しかった。

タカオと殴り合いをしたことなんて、たくさんある。
だが、俺のほうが筋力があったので、負けたことは一度もなかった。
しかし、今はタカオに何の抵抗もできずに、顔面を殴られ、地面に転げまわると、最後に腹を蹴られた。
「うううう………」
我慢できなくなって、俺は腹を抑えてうずくまる。
そこで、ようやくタカオの攻撃がやんだ。
抵抗もしない情けない俺に、嫌気がさしたのか。
しばらくして、タカオが俺に声をかけてくる。
「大丈夫かよテメー………どうすんだよ、結局。」
優しい声だった。
俺は、ユキと付き合っていく自信をすっかりなくしてしまった。
「ユキとは………別れる」
タカオは、再び怒り交じりの声で言う。
「じゃあ、俺がもらってやる」

いろんなことに負けてしまった。
俺は生徒会の仕事を続けた。
ミキコは、オレに勝ち誇ったような表情をいつも見せ付けてくる。
ユキは、タカオと付き合うようになったようだ。
オレとは、もう学校で口を聞かなくなった。

(・∀・): 36 | (・A・): 79

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