出会い・再会・そして…

2007/10/15 01:15 登録: 2600-007

中学までの俺の人生はサッカー一色だった。
当時の夢は実業団でプレーする事だった。(Jリーグ発足前です)
中3の夏、全国大会前の練習中にアクシデントが俺を襲った。
診断書に書かれたのは左足首靭帯断裂・同骨端線離乖(骨の成長点が裂ける事 ようするに骨折)だった。
2度の手術と厳しく激しいリハビリも必死で耐えた。
そんな俺に突きつけられたのはユースチームへの昇格不可という夢も希望も失せてしまうほど酷なものだった。
ワルばかりやっていた幼馴染とつるんだりした。暴走行為にも参加したりもした。
そんな事で鬱憤を晴らそうとしていたのだと今になって思う。
しかし、いまいちワルに成りきれなかった。

俺は商業高校に進学した。新設された学科に興味を持ったからだった。
その学校で雪乃と出合った。一目惚れだった。
彼女は2コ上の野球部のマネージャー。小柄で色黒。短めの黒髪と白い歯がこぼれる笑顔が素敵な人だった。
野球部の入部希望者と間違えて声を掛けてきたのだった。
それがきっかけで話すようになり彼女の魅力の虜になった。
それまで女性と付き合った事すらなかった俺は必死で口説いた。付き合うまで半月程ほぼ毎日告白してた。(今だったらストーカーって言われかねない)

俺にとって雪乃と過ごした日々は初物尽くしだった。
初デート・初キス・初体験・初弁当・初旅行など数え切れないほど思い出がある。
しかし若気の至りか俺が19歳の時、些細な事からケンカをして別れてしまった。
未練があったが何故か謝れずに日々が過ぎそのまま別れてしまったのだった。

その後、何人かと付き合ったりしたが俺の一番の理解者は雪乃だった。
そして共通の友人から雪乃が結婚すると聞かされた。彼女が26歳の夏だった。
俺は7年振りに連絡を取り、精一杯虚栄を張り彼女の結婚を祝した。

丁度その頃から仕事が忙しくなった事もあり女性とは無縁の生活をしていた。
そして悪夢が突然やってきた。俺が28歳の誕生日の翌日だった。
仕事中、交通事故に遭い意識不明の重態だった。
意識が戻ったのは事故からほぼ1週間後の事だった。
強烈な痛みが全身を貫く。医者の説明では11ヶ所の骨折との事だった。死んでいてもおかしくない事故だったと聞かされた。
丈夫な身体のお陰で後遺症の可能性は低いと両親は意識が戻る前に説明を受けていた。
そして事故の2日後から毎日、雪乃が見舞いに来ていると母が言った。

その日の午後、雪乃と再会した。
彼女は泣きながら意識が戻った事を喜んでくれた。
それから退院までの約半年の間、彼女は1日も欠かさず見舞いにやってきた。

雪乃は離婚していた。原因は夫のDV。
結婚して2年ほど経ち妊娠した頃から暴力が始まったそうだ。夫は子供をあまり望んでいなかったようでつわりの激しかった雪乃を殴ったり蹴ったりした。
そして流産し離婚した。その時の影響で子供が出来ない身体になった。

俺は仕事の復帰の目処が立った日に雪乃にプロポーズした。
子供が出来ない身体でもいいのかと彼女は言ったが俺には雪乃が必要だった。
そして結婚した。

平凡な毎日が幸せだと歌詞ではないが忘れかけていた今年の春に異変が起きた。
雪乃が倒れたのだった。
病院で精密検査をした結果が余命半年。癌細胞が肺に転移していたのだった。
毎年夏に人間ドックに行っていたのに発見できなかったのが悔しい。

雪乃は延命治療はしたくないと言い、自宅療養をしている。
俺は会社を辞めた。彼女と最後の一瞬までずっと一緒にいたいからだ。
天使のような彼女と俺の命が交換できるのなら是非したい。

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