最後の晩餐

2007/11/25 20:51 登録: えっちな名無しさん

今日もタクヤとアヤは体育倉庫に消えていく。
本人達は隠したくてもあんなに頻繁にだと絶対気づかれるはずなのだが。
周りも周りでどうして気づかないのか、とツッコミ所満載である。
私はそんな事を寝起きでボーッとする頭で考えていた。
そこへ志村が教室に入ってきた。

西尾「おう」
三沢「よう」
石嶋「よっ」
志村「・・・おお」
石嶋「・・・どうした、今朝は随分とご機嫌ナナメのようだな」
西尾「何かあったか?」
志村「・・・昨日ちょっと嫌な事があってな」
西尾「嫌な事?」
志村「あるCMで「あなたと合体したい」ってほざくけしからんCMあるだろ」
西尾「ああ、あれか」
志村「あれ何とかならんのか?!あんなのが朝っぱらから流れてたらいかんだろ!」
石嶋「落ち着くんだ、リチャード君!」
西尾「誰だリチャードって」
三沢「どうしたんだ」
志村「じいさんとテレビを見てたんだが、チャンネルを変えたとたんあのCMが流れてな、
   そのとたん、「ばかやろう!何見てんだたわけ!」って俺を殴りやがったんだ。あの糞じじいめ」
西尾「そいつはとんだトバッチリだな」
志村「ったく、いつまで昭和ぶってんだ。第一何で俺が殴られるんだよ!絶対的にあのCMが悪いだろ!」
三沢「人の事言えないだろお前。それ以前にお前ら一族はなんで揃ってそういうものに
   嫌悪感を抱くんだ。」

志村は性的な物が苦手だ。志村のじいさん自体がそういう物に対し、嫌悪感を抱くのでその影響を少なからず受けたのだろう。
道端に落ちていたわいせつな本を見ただけで吐き気を催した時もあった程だ。
志村は物心ついた時から祖父の手によって育てられた。なのでどこかじじくさい所がある。

西尾「でも確かにあのCMは勘弁してほしいよな、家族と見てるとヒヤッとする」
石嶋「しかしなんであんなCMを流すんだろうな。日本もここまで堕ちたってか」
志村「夜なら仕方ないが朝方から流れるというのはどういう事だ!けしからん!」
三沢「時代の流れ、という事だな」
志村「まったく最近の若造はなっとらん!」
西尾「お前はいったいいくつなんだ」
石嶋「いつかPTAから苦情くるぞ」
三沢「しかし妙だな」
西尾「何が」
三沢「変だと思わんか?最近の世の中はそういうものに対して非常に敏感だ。苦情を受けると分かっていて何故そんな真似をする?」

三沢のネタ振りだ。この四人はいつもくだらなすぎる世間話をしているが、その発端のほとんどが三沢だ。
彼のせいで無駄な時間を過ごし、また彼のお陰で今の彼らがある。
三沢は常に冷静沈着で勘がとても鋭く、学生とは思えない雰囲気をかもし出している。
しかしその勘の鋭さの部分のピントがズレているのがタマにキズだ。

志村「PTAへの宣戦布告か?」
西尾「ばか、マスコミも味方についてるんだ、どうあがいても勝ち目は無いのは明白だろ」
石嶋「でもそうじゃないにしてもあれはメチャクチャだぜ」
志村「じゃあ一体何だあれは」
西尾「・・・重要な暗号が隠されてたりしてな」
志村「どついたろかアホが」
石嶋「このブタ野郎」
三沢「お前は史上最大のアホだ。ダヴィンチの『最後の晩餐』じゃあるまいし。バカも休み休み言え」
西尾「だぁかぁらぁッ!冗談で言っただけだっていっっつも言ってんだろーがッ!いちいち言いすぎなんだよ貴様らはッ!!」
石嶋「まあまあ、落ち着くんだ」
西尾「なんだその声はっ!お前は熱くなった若手刑事をなだめる平泉成かっ!!」
三沢「なんだそのマニアックなツッコミ方は」
志村「そのネタは俺達だからこそ通用するんだぞ」
石嶋「なにはともあれちゃんと伝わっててよかったよ」
西尾「もうんなことどうでもいい!」
石嶋「どうでもよくない!モノマネというのはだな」
西尾「あーうるさい!猿の脳みそッ!」
石嶋「や、やめんか!」
ミカ「ちょっと!うるさいよ!」
西尾「・・・」
三沢「・・・待て」
三人「?」
三沢「その可能性、0じゃないぞ」
西尾「ちょ、ちょっと待て!冗談で言っただけだって!」
三沢「じゃあなぜ白昼堂々とあんなCMを流す?」
石嶋「どういう事だ?」
三沢「あのセリフに何か重要なメッセージが隠されているとしたら?」
志村「じゅ、重要なメッセージ?」
三沢「そうだ。他の人間に知られてはならない、当事者にしか理解できない重要なメッセージだ」
西尾「んなわけないだろ」
石嶋「『あなたと合体したい』に隠されたメッセージ・・・」
志村「うう、そのセリフあまり聞きたくねぇ」
四人「うーむ・・・」

考え込む四人。廊下にはすでに四人の世間話を傍聴しにきた生徒達が集まっている。
ヒゲもないのにヒゲを撫でる動作をして考え込む三沢。
その横で西尾が最初に沈黙を破った。

西尾「臓器提供・・・」
志村「え?」
西尾「臓器提供の事じゃないか?」
石嶋「どういう事だ?」
西尾「合体したいって事はその他人とくっつくって事だ」
志村「おい、よせよ」
西尾「いいから聞けって。臓器提供とは他人と他人の臓器をくっつけるという事だ。
   くっつけるを別の言い方すると合体、って事になるよな」
石嶋「そうか!そういう事か!」
志村「合体というのは臓器同士の事か!」
三沢「なるほど。それならば昼夜関係なく流す事もうなずけるな。」
石嶋「でも食事中は勘弁してほしいぞ」
志村「しかし、何でそんな比喩的な表現をする必要がある?」
石嶋「そうだよな。ドナー募集のCMは普通に流れてるのに」
三沢「・・・ドナー募集者の正体がバレるとまずい事になる、という事かもしれん」
志村「まずい事?」
三沢「例えばだが、現在国家秘密だが天皇が病気になって臓器提供を必要としている、とかな」
石嶋「て、天皇が?!」
志村「マジか!で、でもそれじゃあ真っ先にマスコミが騒ぎ出すぞ!?」
西尾「アホか」
三沢「そんな事が知れたら日本はパニックになりその騒ぎに乗じて
   テロリストが天皇を狙う可能性が出てくるだろう」
西尾「あ、あのなぁ・・・」
石嶋「そうか・・・だからあのような比喩的な表現をする事しか出来ないのか」
三沢「そしてCMを見た各地の国の工作兵がそのメッセージを受け取り行動を起こす、というわけだ」
志村「ほぇ〜、なるほどなぁ」

たかだかCMの話題から国家レベルまで広がっていく。普通なら有り得ないが彼らにとっては珍しくない事だ。

石嶋「しかし・・・俺達こんな難しい暗号なんてよく解いたよな」
志村「『最後の晩餐』と同じような暗号を解いたんだよな!」
石嶋「すげぇ!という事は『最後の晩餐』の謎も解けるかもしれんぞ!」
三沢「もし『最後の晩餐』の謎を解けば俺達は世界的にも有名になれるかもしれん」
志村「よっしゃあ!そうと決まれば早速解いてやるぜえ!」
石嶋「ううむ・・・」
志村「ふーむ・・・」
三沢「・・・」
西尾「うむむ・・・」

四人「・・・だめだ分かんねえッ!」
ミカ「当たり前でしょうがッ!」

こんな感じでこの四人の一日は過ぎていく。
肝心の『最後の晩餐』の謎は当然のごとく解けてないようだ。

出典:オジリナル
リンク:オジリナル

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