若者

平日の出来事である。

その日は計２回の排泄を行ったのであるが、至って普通のウンコであった。
２回目のウンコは外勤時に、ＪＲ渋谷駅内のトイレで行った。

その時の出来事である。

拙者が排泄の体制を取ると同時に隣室にも人が入室した様子。

ベルトを外しチャックを開け、ズボンを下ろす所作の音が聞こえてきた。
かなり急いでいる様子である。恐らく緊急を要していたのであろう。

すぐさま排泄音が聞こえて来た。
恐ろしく遠慮のない排泄音である。
マシンガンでも乱射しているような音がトイレ内に響き渡る。

これは隣にいる拙者にワザと聞こえるようにしているのかと、錯覚してしまう程である。

ウンコ奉行の責を任じている拙者としては、このまま大人しくウンコをしている訳には行かない。
拙者の中で闘争心が激しく燃え上がるのを感じ、思い切り排泄を行う。

だが、この時の拙者は並のウンコであり、我慢しようと思えば出来る程度のウンコ量であった。

従って、排泄音も大した事はなく、とてもではないが隣人には及ばない。
諦めたらそこで試合は終了だと、かの偉大な監督も仰っているので拙者は尚も努力して排泄を続ける。

しかし、ここで隣人がトドメを刺すが如く大技を繰り出す。

ウンコと小便を同時に開始し始めたのである。

小便の勢いも並々ではない。
ウンコの排泄音と小便の噴射音が、絶妙なコラボレーションで聞こえて来た。

極めつけに、ウンコと平行してブーブーと屁を発し続ける。

この時点で、拙者は敗北を受け入れた。完敗である。
完全敗北ではあるが、相手のレベルが高かったと思わざるを得ない。

拙者は大人しく処理を行った。
隣人も排泄が終了したようで、処理を行っている模様だ。

奇しくも拙者と隣人が、ほぼ同時に大便所を出た。
拙者は尊敬の念を込めて隣人の風貌を拝見した。

驚くほど若い。
恐らくはまだ未成年であろう金髪にピアスのこの若者は、悠々と爽快顔で拙者の前を通り過ぎ、ハンドソープで丁寧に手を洗いトイレを後にした。

正直拙者は、近年の若者の行動を見ていて、眉をひそめる事が多かったのであるが、今回の事でいささか見直す思いがしたのである。

日本の若者も、まだまだ捨てたものではないと感じた日であった。


外へ出ると、燃えるような夕焼けが拙者を照らしていた。

出典：拾い物
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