鈴音の場合2

2004/09/10 10:18 登録: えっちな名無しさん

鈴音の場合

二 兆候

 鈴音が目を覚ますと、辺りは真っ暗闇になっていた。
 だんだん意識がはっきりしてくると、口の中に何かが詰め込まれているのが判った。それは猿ぐつわの如く顎に噛まされていて、歯を噛み合わすことや言葉を発する事を出来なくさせていた。
『あのギャグ・ボールだ』そう気付いた鈴音は、手を頭の後に回して、それを引き剥がそうとした。だが、それは叶わなかった。
 指を動かせなかったのだ。と言うのも、手のひらに固いゴムのテニスボールの様な物を握らされたまま、手首まですっぽりと頑丈な袋で包まれていたからだ。
 驚いた鈴音はベッドから飛び降りたが、そのとたんに足を滑らせて転んでしまった。そう、足の裏にも同じ様なゴムボールが入れられ、足首まで袋で包まれていたのだ。弾力のあるボールは、真っすぐに立つことを不可能にさせている。
 鈴音は手も足も使えない状態にされてしまっているのだ。
 そう言えば、こんな格好してゆうちゃんと遊んだんだっけ…。昨日のことを思い出して、鈴音は頬を紅らめた。でも、寝る前に外さなかったかな、コレ?
「むーっ。むぐううぅ」
 ゆうちゃん! そばにいるんでしょ? …急に襲ってきた不安感に、鈴音は怖くなって雄一を求めた。だが、返事は返ってこなかった。
「ふぅ! ふむぅん! ふぅうううっ!」
 まさか、わたしをこのままにして帰っちゃったんじゃあ…。肘と膝でもって部屋中を動き回り、体のあちこちをいろんな物にぶつけながら、鈴音は雄一を探した。
 半狂乱になりつつある鈴音の姿は、傍から見る分にはむしろ滑稽であった。
 だからなのか、鈴音の耳に
『くすくす』
 と人の笑い声が聞こえてきた。
 なんだ! ゆうちゃんいたんだ! もう〜人が悪いんだからぁ! …鈴音はホッとして声の聞こえた方に這っていった。すると
『くすくすっ』
 と今度は反対方向で笑い声がする。
「えっ!」と鈴音が驚くと
『くすくすくす』
『ぷっ! ぷははっ!』
『ひっひっひっ』
『きゃはははっ』
 一斉に部屋中から笑い声が聞こえ始めてきた。
 と同時に、部屋の中を大勢の人間が歩き回る音や振動が、鈴音に伝わってくる。
 な…なに? なんで人がこんなにいるの? …こんな大勢の人にわたし、見られてるの? …こんな…こんな恥ずかしい格好…こんな…こんな……。
「むああああああああっ!」
 鈴音は身を丸め、床の上にうずくまってしまった。何本もの視線が身体に突き刺さるのが判った。悪意のこもった視線だった。
 でも、なんで私のこと見えるんだろう? 暗いのに…私からは見えないのに?
 それに気付いたとき、彼女は体を恐怖に震わせた。
『これじゃ、まるで牝犬だね』
『そうだね。メスイヌだ』
『牡を探してうろつく、盛りのついた牝犬だ。肉奴隷なんて洒落たもんじゃないよ、こんなの!』
『でも、牝犬にしちゃあ、足りないものがねぇかコイツ?』
『そうだね』
『そうよね』
『足りないもの、プレゼントしてやろうよ』
『そうだ』
『そうだ』
『そうしよう!』
 四方から聞こえるその会話を聞いて、鈴音の理性は彼女に『逃げなければ!』と決心させた。サッと身を翻し、寝室のドアが有ると思われる方向に急いで這い出そうとする。
 だが、体は微動だにしなかった。恐怖の為ではない。彼女の本能がそうさせたのだ。欲望が動くことを拒否させたのだ。
 鈴音は己に絶望し涙を流しながら、その場に佇んだ。身体は震えていたが、それは何の為なのか判らなかった。…解っていたが、判らなかった。
 すると何本もの腕が鈴音に掴み掛かってきて、彼女を宙に抱えあげ、大きく両足を拡げさせてしまう。両手両足を暴れさせてみると、物凄い力で押さえ付けられているのが判った。ピクリとも動かすことが出来なかったのだ。まるで周りの闇が固体化していて、その中に取り込まれてしまったかの様だ。
 そして誰のものとも判らない男根が、彼女の胎内にめり込んできた。一本、二本、三本、四本…現実を無視した数のペニスが、鈴音の小さなヴァギナに挿入されていく。
「ふううぅううぅっ!」
 一本でもきつかったところに四本…今や五本の図太いペニスを無理矢理入れられ、彼女のヴァギナは信じられないくらいに拡がってしまっている。五本のペニスの間のわずかな隙間から、血と愛液の混合液が流れだしていた。
 そのキチキチの状態の中、五本のペニスはそれぞれ自分勝手に動き出し、膣壁や子宮をつつきだす。その度に鈴音の肉体が快感に悲鳴をあげた。
 全神経が下半身に集中し、全身が性器になったようだ。身体から吹き出す汗や涙すら愛液になっているようだった。
 その間、両の乳房は執拗に揉み続けられ、だいぶ柔らかくなってしまった。ギャグ・ボールを外された口には、何者かの指が入れられ、舌を弄ばれた。そのうちにペニスが指にとって代り、喉から食道、更には胃まで潜り込んできた。
「ぐっ! ぐむぅっ!」
 鈴音は強烈な嘔吐感に襲われたが、ペニスは容赦が無かった。
 ズルズルと何度も喉から胃までを往復し、ついには胃の奥底で、何か得体の知れない液体をさんざんに撒き散らした。
 口からペニスが引き抜かれると、鈴音はゲエゲエと戻し始めた。だが胃の中に吐き出されたモノは、そこから出てこようとはしなかった。微かに精液と小便の入り交じった様な味が、口の中に拡がっただけだった。
「うわ、うわあああああん」
 鈴音はその事実に声をあげて泣いた。
 そして、ヴァギナの中の五本のペニスが一斉に精を迸らせ、子宮を満杯に満たした時、鈴音はその冷たさに絶叫をあげた。彼女は生命を感じられぬ異様な精液で、子宮どころか身体全体を満たされてしまった様に感じた。
 精を吐き出して柔らかくなった五本のペニスが、ヌルリと身体から抜け出していった。と思いきや間髪を開けずに、今度は六本のペニスが彼女のヴァギナに突き刺さっていく。六本の次は七本、八本、九本と……。
 その度にたっぷりと射精され、鈴音の腹部はまるで妊娠したかのように、氷の様に冷たい精液でパンパンに膨らませられてしまった。
 こうして何度も何度も何度も犯されまくり、鈴音の少女らしく可愛かった女性器は、今や目も当てられぬモノへと変えられてしまった。それはSFに出てくる怪生物か、狂人の妄想に登場するようなものだ。でも、一番変えられてしまったのは………。
 自分が人類とは別の存在になってしまったのを悟り、鈴音は魂の底から号泣した。
『あれ? でもココはビッショリだよ』
『ひょっとしてコイツ、悦んでるのか?』
『やれやれ、どうやらこの女、牝犬以下らしいぞ』
『牝犬以下だったら何なのよ?』
『さてね。こんなのを表す言葉なんて無いと思うぞ』
『そうだね』
『そうよね』
『…そうだ! 一つだけあったぞ』
『なになに? 教えてよ』
『うん。教えてよ』
『それはな……
「いやああーーーーーーーーーーーーっ!」
 鈴音は叫びながら目を覚ました。

「夢…今の夢だったの?」
 汗で体中ビッショリ濡れていた。たっぷり眠ったはずなのに、昨日の疲れは全然取れていなかった。つい今し方までセックスしていたようだ。その証拠に乳首はとがり、女性器はグッショリと濡れ、シーツに大きな染みを作っている。それに、部屋の中には生臭い臭いが今だに漂っていた。微かに卵の腐った様な臭いさえも…。
 隣を見ると、既に雄一の姿はなかった。ネームを持って編集部に戻ったに違いない。
 シャワーを浴びて汗を流そうとベッドから立ち上がると、股間から何かがズルリと滑り落ち、その後から溜っていた愛液と精液がボタボタッと零れ出てきた。あの夢を思い出して悲鳴をあげながら目をやると、それは湯気を立てそうな程火照ったバイブレーターであった。その肉色の淫具は体液にまみれ、所々に白く濁った滓がこびりついていた。
「ははっ…。こんなの入れて眠ったりしたから、あんな夢見たんだ…」
 それでも股間に違和感を覚えたので、バスルームへ行って恐る恐る自分の性器を鏡で見てみた。
 鏡に映ったそれは、やはり以前のごとく可愛らしく慎ましやかなものではなかった。夢で見たものよりはまともではあったが、大きく口を開け、小陰唇などはかすかに震えていた。まるで、別の嫌らしい生き物が、そこにへばりついているかの様だった。
「いやぁーーっ!」
 鈴音は叫び、性器を元に戻そうと、はみ出した部分を中に押し込もうとした。そのとき計らずも腰に力が入ってしまった。すると、ヴァギナの奥から何かが震えながら姿を現してきた。そして…。
 ポトリ、と生み落とされた卵のように、ピンク色の卵形バイブが二個ほどこぼれ落ち、タイルの上でブブブと振動した。
「あは…あははっ」
 あの悪魔〜っ! ゆうちゃんたら、眠ってるわたしの中に、バイブを三つも入れてったんだわ!信じらんない!
 そしてしばらくすると、開いていたヴァギナも閉じだし、元の可愛い姿を取り戻した。熱いシャワーを浴びてさっぱりすると、今までの事が馬鹿らしく思えてきた。
 全てが雄一の所為だと判ると、心に余裕も生まれてきた。
 コレもゆうちゃんにコントロールされてるって事になるのかな?だとすれば、あの夢の事も覚えている限りは楽しみとしていいのかも知れない。
 でも、なんでもってわたしはこんな事ばかり考える様になっちゃったんだろ?そりゃ商売柄と言えなくもないんだけど…。それとも、コレがオトコを知るって事なのかな? 娘が高校出て半年もしないうちにこんなにエッチになっちゃったって、母さんが知ったら泣くな、こりゃあ。
 …そういえば、そろそろ鋼が東京に遊びにくるんじゃなかったっけ? 有明の同人誌即売会に行くとか言ってたなぁ。
 カレンダーを見ると、鋼が上京する日が丸でかこってあった。八月の十一日だ。それで今日は…と新聞の日付を見るとそこには8月11日と印刷されてあった。
「いっけな〜い! 今日じゃない! あんにゃろがくるの!」
 時計を見ると、もう正午近くになっている。わたわたわたっと、人には、特に身内には見せられないモノを片付け始めると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「ども〜! ねえちゃん久しぶり〜っ」
 鈴音が何か行動するより早く、鈴音に良く似た弟がドアを開けて中に入ってきた。そのとき運悪く、鈴音は両手にいっぱいのバイブやら写真やらを抱えていたのだ。
 鈴音の時が一瞬止まり、手からそれらのモノがバサバサと床に落ちた。
「は、早かったのね、鋼…」
 そう言うしかなかった。

 久しぶりに姉弟で昼食を取っていると
「あんなの気にすることないって。壱万円もあれば忘れちゃうし♪」
「なによそれ。実の姉を脅かす気?」
「イヤ〜今回軍資金が足りなくてさ。何だったら、あの写真でもいいよ」
「高く売れそ〜ってか? あんたがその気なら、わたしも母さんに、あんたが即売会でどんな本買ってるかバラしちゃうからね。あんた未成年だったわよねぇ〜確か」
「そ、そりゃないよ。ねえちゃんは東京だけど、オレは実家にいるんだからな!」
「だったら、この話はこれで終わり。OK?」
 という心暖まる会話が弾んだ。
「それにしても、ねえちゃん変わったなぁ」
 鋼がしみじみとそう言った。
「ふんだ! どうせ、エッチになりましたよ〜だ!」
「いや、それもあるけど、なんてゆーか、その、綺麗になったよ」
「お世辞言っても手しか出ないわよ」
「お世辞なんかじゃないよ!…さしずめ…雄一さんにたっぷり可愛がられてるからなんだろーなぁ〜」
 ガッと鈴音は鋼の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「なんであんたが、ゆうちゃんの事知ってんのよ!」
「さ〜て、なんででしょ? 知りたかったら壱万円」
「くぅ」
 鈴音は知りたかった。こんな事で壱万円を失うのは痛かったが。
「カンで言っただけだったんだけどね。編集者と漫画家がくっつくってよく有る事だし。ねえちゃんじぶんでバラしちゃうし♪」
 それに…と鋼はニヤニヤ笑った。
「ねえちゃん、首に何着けてるか忘れてるだろ?」
 しまった〜っ! 首輪着けたままだったっ!あまりに違和感が無いので忘れ去っていたのだ!
「これは、あの、その、別に…」
「『ゆうちゃんの肉奴隷』…だもんなぁ。でも、弟のオレが言うのも何だけど、ねえちゃん、それ似合いすぎ」
 鈴音は顔を真っ赤にして、もはや何も言うことが出来なかった。
「そりゃそうと、今度のコミケにはねえちゃんも出るの?」
 鋼が話題を変えてくれたことに鈴音は感謝した。
「うん。出るよ。12、13、14日だったよね、開催日。で13日の方」
「雄一さんもくるかなぁ」
「くるわよ。でも、なんでそんなこと聞くのよ?」
「え〜だって会ってみたいじゃん。ねえちゃんをこんなエッチにしちゃった人に」
「会って、ケンカなんかしないでしょうね」
「いずれ、にいちゃんになる人に、ケンカなんか売らないから、安心してよ」
 ふふ…『いずれ、にいちゃんになる人』かぁ。今まではっきりと意識したことはなかったけど、人からそう言われてみると確かにその通りだ。結婚するなら彼しか考えられない。とゆうか、彼なしじゃ生きていけそうもなかった。こうなりゃあ、妊娠する前に、ゆうちゃんを父さん達に紹介しなくっちゃ。
 …ゆうちゃんもそう思っててくれればいいのだけど…。
『だいじょぶだよ』心の中で声がした。
『アイツも、お前以外に選択肢が無い』
『だから安心して…』
『そう、安心して…』
『『『『犯されまくるといい!』』』』
 これは夢の中の声! なんで、なんで今も聞こえるの!なんで…!
「ねえちゃん?」
 心配そうな鋼の声で、鈴音はハッと我に帰った。
「な、何でもないの。ちょっと徹夜が続いたから…」
「雄一さんとうまくいってない…ワケないか。きっと、ねえちゃんヤリすぎなんだよ」
 はぁ…。確かにそのとーりなのかも知れない。

 開いてる部屋を使わせてもらって、鋼はそこに寝転んで考えた。
 ねえちゃん、本当に変わってたなぁ。この前会ったときから比べて、胸やオシリが大きくなっていたし。なんて言うか、色っぽくなっていた。
 オレが弟じゃなきゃ、押さえ込んで、組み伏せて、そして……いかんいかん!何を考えてんだオレは!
 でも…あの写真に映ってたねえちゃんの姿。首輪を着けたねえちゃんの格好。そしてねえちゃんのあのイイ匂い―女の臭い―が、頭にこびりついて離れなかった。こりゃ、一発抜かないとヤバイかも?
 鋼は、ズボンとパンツを一気に引き下げ、己の熱い塊を取り出すと、猛烈にしごき始めた。脳裏に姉の裸体をクッキリと浮かべて。
 そのとき
「ねぇ! 明日の事なんだけどさ」
 鈴音が襖を開けて入ってきた。
 今度は鋼の時間が一瞬止まった。
「…見た?」
 鋼はそう言うのが精一杯であった。

「まーったく! 姉の家で何やってんだか! まあ、わたしも判ってるつもりだから、あんまガミガミ言う気もないけどさ」
 鈴音は鋼の顔をじっと見つめた。そこには自分そっくりの顔がある。二人は非常に良く似た姉弟として近所でも評判であった。弟が姉に似ていて、小さい頃は女の子と間違えられたくらいだ。
 …エッチなのまで似てるのかしら? そう思って鈴音は苦笑した。鋼もマゾだったら姉としてはどーしたもンでしょか?
「言ってくれりゃあ、お姉ちゃんが抜いてやったのに♪」
「ね、ねえちゃん?」
「ウソよウソ。冗談よ。まあ、オナニーすんのは健康の証ってコトにしといてあげるわ」
 鋼はほっとした。が、その反面なんだか残念な気もしないではなかった。

 その夜、鋼は夢精をした。
 姉に気付かれぬうちにと、あせってパンツの処理をするうちに、あの吐き気すら覚える淫夢のことはすっかり忘れてしまっていた。だが、近いうちにまた同じものを見そうな気はした。
 姉の家に泊まっている間には…必ず……。

(・∀・): 10 | (・A・): 32

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